異世界アイドル道   作:ちーばば

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第24話 side それぞれの反応

Side 王国

 

王城。

 

国王の執務室へ、全国各地から今年の魔力測定結果が届けられていた。

 

「今年も始まったか。」

 

国王は報告書を一枚ずつ確認していく。

 

「火属性。」

 

「水属性。」

 

「風属性との複合か。」

 

希少属性や複合属性など、特筆すべき才能を持つ子供達だけが王城へ報告される。

 

そこへ。

 

宮廷魔術師長が一枚の報告書を見つめたまま固まった。

 

「……王よ。」

 

「どうした?」

 

「これをご覧ください。」

 

国王が報告書へ目を落とす。

 

『アルト・フォン・ルミナス』

 

『氷属性・光属性』

 

『希少属性複合保持者』

 

「なんと……。」

 

国王が目を見開いた。

 

「希少属性同士の複合だと?」

 

宮廷魔術師長も興奮を隠せない。

 

「前例がございません!」

 

「ぜひ将来、宮廷魔術師へ迎えたい逸材です!」

 

国王は報告書を見つめたまま頷く。

 

「……ふむ。」

 

「ルミナス大公爵家の子息か。」

 

「母はセレスティア嬢。」

 

「母方の祖父は、元宮廷魔術師長にして『氷結の大賢人』の異名を持つグラン卿。」

 

宮廷魔術師長も納得したように頷く。

 

「ええ。」

 

「ですが、それだけではありません。」

 

「父は『烈火の剣聖』レオンハルト殿。」

 

「さらに父方の祖父は、元王国軍総司令官『豪剣』ガイウス卿。」

 

「武と魔、その双方において王国屈指の血統です。」

 

「これほどの才を秘めていても、何ら不思議ではありません。」

 

国王は小さく笑った。

 

「レオンハルト殿とセレスティア嬢は、長らく子宝に恵まれなかったと聞く。」

 

「その末に授かった子か。」

 

「これは将来が楽しみだな。」

 

国王は静かに笑う。

 

「近頃は文官達が取り合う麒麟児も現れ、さらに聖女候補まで見つかった。」

 

「若い世代の勢いは実に頼もしい。」

 

宮廷魔術師長も頷く。

 

「まさに黄金世代。」

 

「勇者が現れるのも、そう遠くないかもしれませんな。」

 

王は報告書を閉じた。

 

「この子達が未来の王国を支える。」

 

「楽しみだ。」

 

 

Side 教会

 

「アモン神父より緊急報告です。」

 

教会本部。

 

一人の神官が報告書を差し出した。

 

司教は静かに目を通す。

 

「希少属性。」

 

「光属性。」

 

「さらに氷属性との複合保持者。」

 

「ルミナス大公爵家嫡男。」

 

口元がゆっくりと歪む。

 

「これは実に興味深い。」

 

教会では各地の魔力測定を担当する神父達へ、ある通達を出していた。

 

希少な才能を持つ子供が現れた場合は速やかに本部へ報告すること。

 

特に優秀な魔術師は、将来聖女を守護する部隊へ組み込む候補として管理されていた。

 

もちろん。

 

それだけが目的ではない。

 

優秀な人材を囲い込み。

 

教会の影響力を強める。

 

それこそが本当の狙いだった。

 

「聖女候補の教育も順調です。」

 

「守る剣まで揃えば。」

 

「教会の権威はさらに盤石になりますな。」

 

司教は満足そうに笑う。

 

「アルト・フォン・ルミナス。」

 

「ルミナス大公爵家の子息ですか。」

 

「ふふ……。」

 

「取り込むことができれば、大公爵家との繋がりまで得られる。」

 

「王家への発言力も増すでしょう。」

 

周囲の神官達も静かに頷く。

 

「優秀な駒は、多いに越したことはありません。」

 

「アモン神父には引き続き監視を。」

 

「必要なら接触も許可します。」

 

「功績次第では本部への栄転も。」

 

「使える者には、それ相応の褒美を与えねばなりませんから。」

 

報告書へ視線が落ちる。

 

そこには。

 

『アルト・フォン・ルミナス』

 

その名だけが静かに記されていた。

 

 

Side 麒麟児

 

「おい、聞いたか!?」

 

執務室の扉が勢いよく開いた。

 

息を切らしながら父が飛び込んでくる。

 

「どうしたんです?」

 

「今忙しいんですが。」

 

私は書類から目を離さず答える。

 

机の上には山積みの資料。

 

領地の収支。

 

作物の収穫量。

 

治水工事の進捗。

 

商会との取引報告。

 

私はそれらを次々と確認しながら、手を止めることなく決裁印を押していく。

 

この一年。

 

王立学園を史上最年少となる十一歳で卒業してから、私は本格的に領地経営へ携わるようになった。

 

下級貴族である我が家は決して豊かではない。

 

だからこそ。

 

無駄を削り。

 

利益を生み。

 

少しずつ力を蓄えてきた。

 

その結果。

 

この一年で領地の財政は大きく改善し、周囲の貴族達も驚くほどの発展を遂げていた。

 

「それどころではない!」

 

父は興奮した様子で報告書を机へ置く。

 

「ルミナス大公爵家の子息だ!」

 

「希少属性、それも複合持ちらしい!」

 

「今、貴族達の間で大騒ぎになっている!」

 

「アルト・フォン・ルミナスというそうだ!」

 

私は一瞬だけ報告書へ目を向けた。

 

アルト・フォン・ルミナス。

 

希少属性の複合持ち。

 

確かに珍しい。

 

「ふーん。」

 

返事はそれだけだった。

 

興味が無い訳ではない。

 

ただ。

 

今優先すべきことではない。

 

父は貴族同士の付き合いも大切だと言って、頻繁に夜会や茶会へ顔を出している。

 

確かにそれも必要なのだろう。

 

しかし。

 

今の領地に必要なのは見栄ではない。

 

領民が安心して暮らせる基盤を作ることだ。

 

私の視線は再び資料へ戻る。

 

今年の麦の収穫量。

 

市場価格。

 

隣領との交易。

 

来年の税収予測。

 

数字と現状を照らし合わせながら、次々と改善案を書き込んでいく。

 

ペンは止まらない。

 

思考も止まらない。

 

「おーい……?」

 

父が苦笑する。

 

「もう少し驚いてもいいのでは?」

 

「珍しいとは思います。」

 

私は淡々と答えた。

 

「ですが。」

 

「才能だけで領地は豊かになりません。」

 

「国も良くなりません。」

 

そう言って別の資料を父へ差し出す。

 

「橋の修繕費ですが、このままでは予算を超過します。」

 

「施工方法を変更しましょう。」

 

父は資料へ目を落とした。

 

「……本当だ。」

 

「よくこんな短時間で気付くな。」

 

「数字は嘘をつきませんから。」

 

父は苦笑しながら肩を竦めた。

 

「……全く。」

 

「お前らしいな。」

 

私は再び書類へ視線を落とす。

 

アルト・フォン・ルミナス。

 

その名前だけは、記憶の片隅へ静かに置いておくことにした。

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