異世界アイドル道   作:ちーばば

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第25話 ドレスと孫バカ

教会での魔力測定を終えてから一年。

 

七歳になった俺の毎日は、相変わらず充実していた。

 

朝は父様との剣術。

 

午後は母様との魔法の勉強。

 

時折やって来るグランお祖父様からの特別講義。

 

毎日がとても充実している。

 

魔法の腕は自分でも驚くほど上達していた。

 

イメージ出来るものも増え。

 

魔力操作も以前より遥かに滑らかになった。

 

……だが。

 

剣術だけは中々思うようにはいかない。

 

「むぅ……」

 

木剣を振り終え、肩で息をする。

 

父様は苦笑しながら言った。

 

「焦る必要はない。」

 

「剣は積み重ねだ。」

 

「はい。」

 

そんなある日のこと。

 

珍しく。

 

グランお祖父様と、旅から戻ってきたガイウスお祖父様が鉢合わせした。

 

「がっはっはっは!」

 

グランお祖父様が胸を張る。

 

「やはりアルトは儂の血を色濃く受け継いでおる!」

 

「魔法の才能はまさに天才じゃ!」

 

すると。

 

ガイウスお祖父様が鼻で笑った。

 

「言わせておけば!」

 

「アルトは大器晩成じゃい!」

 

「今にお前のへなちょこ魔法など追い抜くほどの剣豪になるわ!」

 

グランお祖父様の眉がぴくりと動く。

 

「ほう?」

 

「誰の魔法がへなちょこじゃと?」

 

「聞こえんかったのか?」

 

「へ・な・ちょ・こ・じゃ!」

 

「なんじゃとぉ!!」

 

しかし。

 

ガイウスお祖父様はすぐに豪快に笑った。

 

「まぁ!」

 

「剣の達人にならんでも構わん!」

 

「ルミナス家の……」

 

「いや!」

 

「儂の孫!」

 

「アルト・フォン・ルミナスという事実は変わらんからな!」

 

「ふぉっふぉっふぉっ!」

 

「勝手に自分だけの孫にするでない!」

 

気付けば。

 

二人は俺を巡って本気の口論になっていた。

 

そして。

 

口論は次第に肉体言語へと発展する。

 

元宮廷魔術師長、『氷結の大賢人』グラン・アークライト。

 

元王国軍総司令官、『豪剣』ガイウス・フォン・ルミナス。

 

王国最強格同士の衝突。

 

誰にも止められない。

 

……そう思われた。

 

その瞬間だった。

 

「あなた達。」

 

穏やかな声が響く。

 

ただ、それだけで。

 

張り詰めていた空気が一瞬で凍り付いた。

 

二人の動きがぴたりと止まる。

 

そこに立っていたのは。

 

エリシアお祖母様だった。

 

柔らかな笑み。

 

優しそうな微笑み。

 

だが。

 

俺ですら背筋が凍る。

 

「あらあら。」

 

「二人とも元気ね。」

 

「だけれど、アルトちゃんが怖がってるじゃない?」

 

「おやめなさい。」

 

その一言だけだった。

 

「……はい。」

 

「……すまん。」

 

さっきまでの勢いはどこへやら。

 

二人とも肩を落としてしょんぼりしている。

 

(お祖母様……強い。)

 

やはり。

 

ルミナス家最強はお祖母様なのかもしれない。

 

そんな穏やかな日々の中。

 

俺は用事があって母様の部屋を訪れた。

 

コンコン。

 

「お母様。」

 

「入ってもいいですか?」

 

「アルトちゃん?」

 

「どうぞ。」

 

部屋へ入ると。

 

母様は机へ向かい、何やら針を動かしていた。

 

「それは?」

 

「これ?」

 

母様は嬉しそうに微笑む。

 

「もうすぐリリアのお誕生日でしょう?」

 

リリア。

 

アークライト侯爵家に住む、俺より七歳年上の従姉である。

 

「プレゼントに手作りのドレスをお願いされちゃって。」

 

机の上には、美しいドレスが広げられていた。

 

細かな刺繍。

 

丁寧なレース。

 

まるで職人が仕立てたような出来栄えだ。

 

「お母様……凄く綺麗です。」

 

「ありがとう。」

 

「こういうのを作るの、大好きなの。」

 

少し照れながら笑う。

 

「ドレスしか作れないんだけどね。」

 

そう言えば。

 

母様は何かを思い出したように笑った。

 

「アルトちゃんが小さい頃にも作ってあげたでしょう?」

 

「あ……。」

 

何となく覚えている。

 

「恥ずかしがって一回しか着てくれなかったけど。」

 

「はは……。」

 

「まだ沢山あるのよ?」

 

母様がクローゼットを開ける。

 

「わぁ……。」

 

中には。

 

子供用のドレスがずらりと並んでいた。

 

色とりどり。

 

どれも可愛らしい。

 

(これ……。)

 

(少し手を加えればライブ衣装になるぞ。)

 

そんなことを考えていると。

 

「アルトちゃん。」

 

「着てみる?」

 

「え?」

 

「着てみたいです。」

 

「ほんと!?」

 

母様の目が輝いた。

 

「じゃあこれ!」

 

「いや、こっちも似合いそう!」

 

そこから先は。

 

完全に着せ替え人形だった。

 

「わぁ!」

 

「可愛い!」

 

「こっちも似合う!」

 

鏡の前に立つ。

 

……どう見ても。

 

美少女だった。

 

「お母様。」

 

「この辺にもう少しフリルを付けたらどうですか?」

 

「きゃあ!」

 

「それ素敵!」

 

「あと腰のリボンを少し大きくして……。」

 

「なるほど!」

 

「その発想はなかったわ!」

 

いつの間にか。

 

ドレス作りはファッションショー兼、衣装企画会議へと変わっていた。

 

そして。

 

「アルト坊ちゃま。」

 

「奥様。」

 

「夕食のご用意が整いました。」

 

メイドに夕食を告げられるまで。

 

俺と母様のファッションショー兼衣装企画会議は終わることがなかった。

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