割と早く投稿できました!
では、どうぞ!
――――――ホント、何も変わってねえなぁ…
春風カエデは目の前に現れた女性、金色に靡く髪をもち、ぞっとするほど美しい女性、クイーン・ハロウィンを優しげなまなざしで見つめる。
「あら、どうしたの?私のことを覚えていらっしゃらないのかしら?」
ふ、っと音もなくほぼゼロ距離まで距離を詰めたクイーンが、妖しげな笑みを浮かべながら囁く。
(近けぇ近けぇ暖けぇ柔らけぇ!??!)
という動揺はおくびにも出さず、
「…んなわけねえだろ。俺がお前と別れてから今まで、忘れたことなんざ一度もねえぞ?」
「…そ、そう。それはいい心がけね。(そ、そんな、常に私のことが恋しかったなんて……///)」
ポンッと音が立ちそうなほど一瞬でゆでだこ状態になるクイーン・ハロウィン。
――――――ホント、変わってねえなあ…
カエデは、クイーンを見つめたあと、再びギアスロールへと目を向ける。
『ハロウィンの夜に交わされる魔法を完成させよ』
勝利条件はこの一文のみ。
カエデは、クイーン・ハロウィンと出会った日―――箱庭に初めてきた日のことを思い出していた。時間は、カエデが十六夜とともに箱庭に来る数年前まで遡る。
「よし、これでたぶんなんとかなるんじゃねえか?」
冬の足音が聞こえ始めている秋の中頃、見事な秋晴れの空のもと、春風カエデは今しがた完成させた一つの魔法について満足のいく顔を浮かべていた。
カエデが今完成させた魔法、一言でいってしまえば、世界を移動する魔法である。いい加減退屈に飽き飽きしていたカエデは自分の内に宿る馬鹿げた魔力を使って、異世界への扉を開けないか考えていたところ、閃いてしまったのである。すなわち―――――――
「数えられねえ程の世界、時間があるとしたら、絶対に変わらねえ一点を自分で定めりゃいいじゃん。そこからならどこでも行って帰ってこれるじゃねえか」
時間軸上に遍在点を自らの魔力でもって生み出す。それが、カエデが考えついた異世界旅行の方法である。
「んじゃ、ちょっと行ってきますかねえ」
「-----、---、--------」
自らのうちに渦巻く魔力を喚起すると共に目の前に現れた巨大な扉を開き、カエデは異世界へと旅立った。
「…んで?来てみたはいいけど、どうなってんだ、これ?」
見渡す限り、山、山、荒地。空は気味が悪い色にそまり、人の気配すらない。
「しかし妙だなー。一度遍在点で止まってから改めて扉が現れるようにしてたと思うんだがよ…すっ飛ばしてもう違う世界にはいっちまったかあ?」
魔法を失敗したのか?…と考えるカエデを―――――――
ドッッッガアアアーーーーッッッッ!!!
何の前触れもなく、衝撃波と爆風が襲った。
「……どこのどいつだ?いきなり襲ってきやがったのは」
が、一瞬で障壁を展開したカエデは無傷で、力の出どころを探る。
「……見つけた、あいつか」
と、遥かかなたを見つめる。
「あら?何かしら、あれ?」
と、一人の少女が呟く。今しがた、「今日は気分がいいからあの辺りいったいを更地にしてしまいましょうか」とつぶやき、手の一振りでバカバカしい破壊を引き起こした少女、クイーン・ハロウィンと呼ばれる彼女は自分が更地にしたあたりから発せられる魔力に疑問を抱く。このあたりを領土としていたコミュニティはつい数日前、気分が悪いからという理由で壊滅させたはずだが…
と、一瞬のうちに、魔力を発する何かは自分の近くまで移動してきている。恐らく空間跳躍でもつかったのだろう。
「ふふ、面白いわ。どこの悪魔、神、魔王かしらね?」
見る者が魂を抜かれるであろう美しい笑みを湛え、彼女はこちらへくる何かを待つ。
空間を飛び越えて一瞬で力のでどころまで移動したカエデは、
「女のコ…?」
目の前に場違いなほど豪華なイスに悠然と座る存在に、目を奪われた。
燦然と輝く金色の髪に、妖艶な美貌。メリハリのあるプロポーション。
そして何より、存在が、桁違いに大きい。恐らく人間ではないのだろう。
「私を前にして、最初の言葉がそんなだった人間はあなたが初めてだわ。ねえ人間、あなたの名前は?」
「俺は春風カエデ。君は?」
「私?私はクイーン・ハロウィン。ねえ春風カエデ、私さっきからあなたの意識の境界線を操ろうとしてうまくいかないんだけど、なんでかしら?」
「さっきから感じる嫌な感じはそれかよ…俺がはじいてるからに決まってんだろ。それよりお前、何の前振りもなく襲ってきやがって、敵と勘違いして殺しちまってもしらねえぞ?」
音もなくカエデの懐に入り込み、カエデを見つめ、
「あら、敵かもしれないわよ?ふふふ、ねえ、人間、あなたはいったいなんなのかしら?普通の人間は私の前では意識を自分の意志で保ち続けるなんて無理なのだけど」
「俺は普通の人間とはいいがたいからなー。ともかく、いきなり攻撃はなしだぜ?君みてえな可愛い人、殺したくはねえからな」
クイーンは妖しく微笑み、
「あらあら、冗談がお上手なのね。ねえ人間、私とゲームをしない?あなたが勝ったら私の力でなんでも一つ、願いを叶えてあげる。ただし私が勝ったら、あなたの全てを貰い受けるわ。どうかしら?」
目の前の人間はいったいなんなのだろう?
クイーン・ハロウィンが最初に思ったことだ。意識の境界線をいじろうとしても何かにはじかれるように効かない。内側から感じる魔力は、底が全く見えない。
本当に面白い人間ね。
完全に自分を、星霊である自分を恐れておらず、あまつさえ対等な女性として扱ってさえいる。
この人間、欲しいわ。
騎士として自分の手元におくのもいいかもしれない。この、金色の青年ならばいい駒になってくれるだろう。
「ねえ人間、どうかしら?」
「そりゃまた突然な話だな。…ゲームの内容は?」
「単純よ。戦いあって、続行不可能になったほうが負けるの。」
「…わかった、いいぜ。ちょうどこの世界の情報も欲しかったしな。」
「ふふっ…じゃあはじめましょう?人間。」
「ああ、いいぜ、ハロウィン。」
その瞬間―――――
閃光と共に、大地が吹き飛んだ。
「ガハッ……いってえなこれ……グッ…」
巨大なエネルギーの爆発に巻き込まれ、大地にはクレーターができ、自分の周りに張り巡らした障壁がボロボロになったカエデがその中心で膝をついていた。
「あら、もう降参かしら?」
宙に浮かぶハロウィンが笑みを湛えながら見下ろしている。
「いや、んなわけねえだろ。」
魔法を用いた空間跳躍で一瞬でクイーンの背後に現れるカエデ。
「っ…」
しかし、水を纏ったそのこぶしは見事に空ぶる。
「私もそれ、できるのよ?」
「ガッ…!」
クイーンの殴打をくらい、再び地面にたたきつけられるカエデ。
「なら、もっともっと速度を上げてやるよ!!」
バチッという音と共に足に雷を纏い、空間跳躍を幾重にも織り交ぜ、クイーンへと攻撃を繰り出すカエデ。しかし、
「ふふふ」
「っ…」
まるで読まれるかのようにことごとくがかわされ、返される。何のことはない。ただ単に、跳躍に魔法を用いるカエデの一瞬のタイムラグのスキをついて、クイーンが先回りし、まるで読んでいるように見せているのだ。
「はぁ…はぁ…」
「そろそろ降参かしら?諦めて私のものになってくれるかしら?」
「八ッ…チェックだぜ、クイーン?」
「え?」
次の瞬間、カエデがこぶしや蹴りを繰り出したその後にわずかに残った魔力。いや、わずかしかないと思わせておいた魔力から、大量の水とその水の中を雷が駆け抜けた。
バチバチバチッッッッ!!!
勝負は決まったかに思えたが、
「ホントにすごいわね、人間の身で。でも、完全に私を下すにはたりないわ」
服の所々が破けた程度ですんでいるクイーン・ハロウィンが、カエデの目の前に浮かんでいた。
「今のを受けてその程度かよ…」
「ええ。むしろ矮小な人の身で私の体に傷をつけるなんて、すごいことだわ。こんなに傷をつけられたことなんて、今までなかったのよ?」
「……」
「?どうしたの?」
―――――――ああ。やっぱり、世界ってのは、広いなあ。
カエデはぼんやりとそんなことを思っていた。
2度めの転生をはたしてから、自分の魔法を全力で試す機会は今までなかった。何故か。簡単だ。全力の1割でも出そうものなら、世界が壊れてしまうからだ。カエデの魔力は、強すぎる。世界からはじきだされてしまうほどに。
だが、それがどうだ。全力を尽くしても勝てるかどうかわからない相手がいま目の前にいる。純粋に、嬉しかったのだ。
認められた気がして。
「----、------、---」
「-----、--------、-------」
「禁呪、発動。」
その瞬間、カエデの腕から黒と金色の禍々しい模様が浮かび上がり、瞬く間に顔にまで及ぶ。
そして、
大地が消し飛び、世界が割れた。
巨大なエネルギーは付近の地面を根こそぎ消し飛ばし、巨大な滝のような地形を作り上げ、クイーンはそのエネルギーに飲み込まれ、意識を失った。
「あら…?ここは?」
不思議な空間だった。深い海の底にいるような気がするのに、暖かい。柔らかな蒼の光に包まれている。試しに、境界を少しいじってみるが、何の反応もない。
「あぁ、ここは俺と君の精神だけの世界?俺が使う魔法の副作用みたいなもんらしい。」
と、そこに春風カエデがあらわれ、告げた。
「ホントに不思議な人間なのね、あなたは。…私、敗れたのね。初めて傷つけられた上に初めて負けたのが人間だなんて…」
「あぁ、俺の勝ちだ。んでも、顔とか髪は傷つかないようにしたつもりだからそこは心配しなくてもいいぜ」
「ふふふっ…あははははっ!」
「?」
「ホントにあなたって不思議な人…いえ、器が大きすぎる人なのね。人間でもない私を最初から最後まで女性扱いだなんて」
「いや、だってよ…」
「?」
カエデはクイーンに近づき、
「こんな綺麗な髪で、可愛い姿してんのに、女性に見えない方がおかしいだろ?」
と、髪に触れながら呟いた。
「……?…!?……な、何を言っているのかしら、この人間は!?///」
この時、クイーンは、
(私が存在してから初めて傷をつけられた上に敗北も刻まれて、あ、頭をなでられてドキドキしているだなんて…星霊である私が…春風カエデ……この人なら、私のそばにいてくれるのかしら?)
一方カエデは、少し悲しい気持ちでいた。というのも、クイーンの頭に触れたとき、流れ込んできたのだ。記憶、感情が。
ただ、一人。
周りにはなにもない。
圧倒的な力を持つが故の絶対な孤独。
寂しいという言葉さえ生ぬるいほどの孤独感。
魔法の副産物であるこの空間ゆえに星霊のもつ感情や記憶の深い部分まで触れることができたカエデは、
(俺でよければ、隣にいてやるよ)
そんなカエデのココロが届いたのか、クイーンは安らかな顔で目を閉じ、2人の意識はゆっくりと浮上していくのだった。
「というわけで、よろしく頼むわね、カエデ様」
「…どうしてこうなった」
クイーンとカエデは、クイーンの居城にて、しばらく過ごすことになり、今はカエデが豪華な玉座に腰かけ、その膝の上にクイーンが腰かけている。
「あのな…ここの主はお前じゃなかったっけ?」
「あら、敗者は勝者に従うものよ?」
と、クイーンがカエデにしなだれかかる。
「いや、かしら?」
「何時間でもこうしてていいぞ」
(上目づかいにかなう男はいないと思う)
大地を消し飛ばし、地形を変えたクイーン・ハロウィンと春風カエデの戦いは、春風カエデの勝利で幕を閉じた。
そして目覚めたクイーンはカエデに一緒に来てくれないかと告げたのだ。
「隣に、いてくれるんでしょう?」
そしてクイーンは自らのコミュニティのメンバーに告げたのだ。
私はこの方に敗れたのだ、と。
ただ、カエデはコミュニティをどうこうするつもりはないから、しばらくは客人として遇してほしいと。
――――が、クイーンがカエデにご執心なのはメンバーには筒抜けだったので、自らの主の可愛らしい姿を密かに見守るためのクイーンファンクラブができたとか、できなかったとか。
そして、カエデは数か月の時をそこで過ごした。
クイーンはもちろんのこと、女王騎士たちとも親交を深めた。
といっても、クイーンには振り回されてばかりだったのだが…その話は別の機会に。
その間に独自に情報を集め、自分が今いる世界があらゆる時間軸から隔絶された、時間軸上に遍在する世界であることを知った。しかも、正規の手順できたわけではないので、いつまでもいられないことも。
それを知った時のクイーンの怒り様は、かの白夜王でも顔をひきつらせるものであったとか。
そして、カエデがもといた世界へ帰るときが来た。
「じゃあ、俺行くわ。そろそろ扉がつながりにくくなってきてる。今日が限界だろう。あっちには家族残してきちまってるからなあ」
「……ずっと、隣にいるって言ったじゃない……」
「大丈夫だって。またすぐ会いにくる。今度は正規な方法でくるぜ。功績?をつめばいいんだろ?(もう世界一個救ってるはずなんだけどなぁ…)」
「…わかったわ。約束よ?破ったら世界の境界ごと消しにいくから。」
「…できるだけ早く来よう。んじゃ、これはおまじないってことで」
クイーンとカエデが結んだ小指に、わずかに光の環が現れる。
「じゃ、じゃあ次あったら――――してほしいわ。それで、許してあげる。」
「…わかった、約束だ。んじゃあな。また」
その日は10月31日。俗に、ハロウィンと呼ばれる日でもあった。
―――――――ホント、かわってねえな。
出会ったころが、昨日のことのようだ。
「この私をこんなに待たせて…ホントに世界の境界ごと消しちゃうわよ?」
……急がないと、本気でやりかねない。
「クイーン、目、閉じてろよ?」
そして空間跳躍で距離をつめると、
「っ…」
「ん……」
時間にして一分にも満たないが、クイーンのその唇に、キスをした。
「……待たせて、ごめん。『今度あったらキスをしてほしい』だったよな?」
「……ええ、そうよ。覚えていてくれたのね」
「これでゲームはクリア、だろ?」
そう、カエデが言った瞬間、
―――――――――――――――――――
ギフトゲーム”ハロウィンの魔法”
勝者 春風カエデ
――――――――――――――――――――
と書かれた紙がカエデのもとに現れた。
「ええ、これで私はカエデ様のモノになったのだけれど…」
「?…どうかしたか?というか、騎士様方の了解はとってあるんだろーな?」
「ええ、それは勿論。みんな、時々カエデ様と一緒に帰ってきてくれればそれでいいっていってくれたわ。けれど…」
「?」
すると、クイーンは泣きそうな顔でカエデの腕に抱き付き、
「…もう、いなくなったりしないわよね?ずっとずっと、一緒にいてくれる?」
「ああ。もう、どこにもいきやしねえよ。」
「ホント?一生そばにいてくれる?」
「もちろんだ。」
ゆっくりと、2人の唇が重なった。
そのころ白夜叉は、
「ハロウィンのやつめ、よさげな伴侶見つけおって…どこかによい相手はおらんものかの…」
と、密かに相手を探し始めたとか。
……どうして、こうなった……
ノリと勢いで書いてしまった6話でした。
割と書きたかった話なので、ノリノリで書いてたらこんなことに…
だが後悔はしていない( ̄▽ ̄)
はい、ノーネームにヤバい人(?)が加わりますね。
カエデとクイーンのやり取りはちょくちょくはさんでいきますので、クイーンのキャラこれでいいって人はぜひぜひ感想を!!
ではまた近いうちにお会いしましょう!