〔水の流出を確認。防衛プログラムを起動。空間保存を行います〕
その機械の声は辺り一帯に響いた。その前の隆起の轟音で静かになった戦場には良く響き、誰も彼もが怪訝に思った。
そしてそのビルのような沢山の直方体からエネルギー層が展開され、それが広がり始める。そのエネルギー層に触れた機体は時が止まったかのように動かなくなる。
『何が起こってやがる!!!』
『……研究所もここまでやると言うのかァ……』
『……総員撤退です!!もう作戦の継続は不可能と判断しました……!』
エルンストは作戦の中止の指示を出し、同盟軍は撤退を始めた。それはヨーマンも変わらず、ブースターを吹かし初めていた。
『……おい!!待ちやがれヨーマン!!!』
『何だァ……?アローォ……?』
『このままじゃああれにこの辺がのみ困れちまう……そうなったら関係ねえやつにまで影響がでちまう……それは避けねえといけねえ……だから……』
『だからァ……なんだと言うのだァ……?』
『……協力してくれねえか……!?』
『……それは妥当な末路というものだァ……アローォ……だがァ……私も気掛かりなことがあるゥ……協力してやろうォ……』
『……感謝するぜ……!!!』
<気になっていたのですが……アローとは何ですか?>
「……傭兵時代の名前だ。
<そう……なのですね>
〔防衛プログラム、第二段階へ移行。無人機「エキドナ」を解放します〕
その声は会話を待たずに響き渡る、殆どの同盟側の戦闘員が撤退を行っている時にであった。
エキドナ?どういうやつなんだ?
というかローザはなんの指示もださないのか?
『KCKK社、総員に告ぐ!!!、あの箱を止める!!』
『ヨーマン、あれを止めるらしいぜ』
『そうかァ……お前とこうやってもう一度肩を並べるとはなァ……?』
『へっ……足、引っ張んなよ!!』
二機ともブースターを吹かして丘の上から立ち去る。
彼らが向かったのは丘の下、エキドナとの戦闘が行われているところであった。
無人機「エキドナ」は足が増設され蛇のような下半身になっており上半身には複数の武装が載っかっていた
その装甲はエネルギー層と物理の複合型でありどの武装でも弱点をつけなかった。
つまりは無人機の特権を最大限活かしたものである
そしてそれらが計八個、KCKK社の部隊を襲っていた、
雑兵では太刀打ちできない見た目も相まって化け物の前にジョラス達の登場は正に英雄の登場が如きことであった
『アローォ……右側のは任せたぞォ……』
『ああ……!!』
ジョラスもヨーマンも高機動を活かして弾幕を回避してエキドナに接近し集中放火あるいはエネルギー刃で切りそれぞれがエキドナを止めていた。
またローザ隊長もセルヴァンも近くに投入されていたものを停止させていた。
しかしながら消耗は激しかった。先の同盟軍との戦闘、エキドナによる奇襲などにより護衛部隊は当初の4分の1程度まで減っていた。そしてまだエキドナは四つも稼働している。
そしてそれらもまた主戦力によって止められた。
だが、護衛部隊の数は更に減り、調査部隊は壊滅。当初の目的は達成は不可能であった。
が、しかし。今、問題は産まれているのだ。それは空間停止である。実際、空間停止に飲み込まれて護衛部隊の数は減っていた。
『どうしたものか……』
『ローザ隊長……ここはひとまず撤退するのが先決ようだよ』
『だがよ、セルヴァン。これを放置してたら周囲の住民に影響出る。無関係のな……それは避けてぇ……個人的なもんだけどよ』
皆が沈黙する、その懸念は誰もが目を背けていた。彼らにとって周辺の住民は考えるに値しなかったからだ、だが指摘されてしまえば考えるようになる
ローザ隊長が長い沈黙を破り発言する
『ヨーマンとかいったか、お前何か知らないか……?』
『……一つだけだがなァ……あれの真ん中に一つだけ高いやつがあるだろォ……それに空間系統のものが入っているらしいィ』
『……破壊するってことか』
『ジョラス君、それは無理だと思うよ。ここからその直方体まではかなりの長距離だ。でも私達の中には長距離用のものは誰も持っていないようだしね。しかもここにいるのは皆、近距離戦担当だ。』
なるほどなあ……
一つだけ思い当たるやつがいるけど……絶対帰ってるしなあ
私はライターズのNo.6ルイスだ。私はハンドの訓練を受けてその後アカンサスに入社した。私は今も新参者だ。だがその時はよりそのことが大きかった。
……その頃はまだ先輩達が居たからだろうからか
先の戦争で先輩達は心に大きな傷を負った。戦場にでれないほどに……
今の時代、兵士がハンド乗りが戦場から去るのは戦いたくなくなった時ぐらいだ。死なんて誰も考えてはいない。
借金に追われる……正気を失くした……トラウマになった……もっと安定したところに……教育に悪いから……
なんていう普通の職業みたいに辞めていく。
それでも……先輩が言っていたことが忘れられない
「戦争は戦争に過ぎない、昔から変わらないことだ」
先輩は何を思って言ったのだろうか……
私の働く理由が故に言ったのだろうか
私には妹がいる名前はアリス……可愛い妹だ。歳は六歳。親は……おらず、親族は私だけだ。だからここで働く。
アリスを守るために。
さっき聞こえてきた言葉が頭で繰り返す。その言葉はジョラスの言葉だった。周辺の住民に影響出ると
私はアカンサスの領域の中心ならばそう簡単には何か起こらないだろうと思っていた。それがたった一人の兵士によって覆され、更には研究所によって起こってしまった。
妹はこの近くの地下都市に住んでいる。なんとしても守らなくてはいけない……だが……
『ルイス!!!、帰還するのです!!』
上官に背いてしまえば私はライターズに居れるのだろうか?
……私には何もわからない
そもそも……私が出たところで何が変わるというのか……
ジョラスにも負け、それ以上の怪物達が何も出来ないこの異常な戦場で……
……いまなんと言ったのだ?
再び彼らが話し始める。その内容は狙撃によるあの直方体の破壊。私の得意分野だ。
だが……私には出来ない……私は……
……アリス……
そうだった、私は……アリスのために働くのだ。
そのなかで自分に出来ることがあるのならば……!!!!
ん、レーダーに敵機反応があるな。誰だこれ?
……No.6ルイス?
『は……話は聞いていた!!!しょっ……諸君!!』
『誰だ?ってルイスかよ……期待して損したぜ』
ジョラス、辛辣だな……
蹴り入れられたのがそんなに悔しかったのか?
『ルイスよ、帰った方が良い、貴君では何も出来ん』
『……私は……私はライターズのスナイパーだ。私ならばあの直方体程度当てれるだろう』
『……てめえの強さは良く知ってる。だから言うぜ、ホントに出来んのかよ?』
『……わからない……それでも私は……アレを止めて……被害を失くしたい……!アレが起動し続ければ世界は止まってしまう……その前に止めなければいけないのだ!!』
『No.6ルイス!!!貴様の意気込みを買おう!!あの直方体を撃って見せろ!!!』
『……』
『まあそのなんだ……ルイス君、此れはローザ隊長の悪癖でね、その場のノリで決めてしまうんだよ。だから……そんなに気負わないくて良いよ』
『随分と大役のようだなァルイスゥ?……だがァ……貴様はこう言う時は外さぬだろう?』
『ルイス、俺はてめえを下に見てた……だがな今日戦っててめえが成長してて焦った。お前は出来るやつだと俺は思う。だからな、お願いするぜ。外すなよ』
『ああ……了解した……!』
ルイスの機体に担がれるスナイパーライフルは戦っていた時に持っていたものではなかった。だれかが落としたものを拝借したのだろう。
だがその構えた姿は銃と機体が元々同じだったのではないかと錯覚する程に美しく、そしてその狙いは中心の直方体に向かっていた。
『……発射』
その声は囁きに等しく、誰にも聞こえないものであったのかもしれない、だがこの時だけはここにいた者全員が聞こえた。
そして放たれた弾丸は中心の直方体に着弾するが、何も起こらない。
『次弾発射……!』
次もさっきと同じように変わらない。
『次弾発射!』
次もそうだ。そして次も
そして次も……だがそれは積み重なり……
その直方体の真ん中で爆発が起き、エネルギー層が消える
〔……空間停止プログラム機能ビルの破壊を確認。再構築を開始します。一時的に空間停止プログラムは停止します〕