シンフォギア装者たちの奇妙な冒険 作:黄金の石
《ツヴァイウィング事件》。
そう言われるようになったあの日から一年が経とうとしていた。
リハビリも頑張って何とか退院することが出来た私を学校の友達は支えてくれた。
学校にはあの日に家族を亡くしたって人もいたけど、皆口をそろえてこう言っていた。
悪いのはツヴァイウィングだ。
悪いのは今の政治家たちだと。
私が退院するまでの間に、世間は会場内にいた恐竜が二人のせいだと、あれのせいでノイズが現れたと思い込んでいる。
真実は違うのに……それを怖くて言えない私は臆病者だった。
あの日のことは今でも覚えているけど、そのことは家族と親友以外に話してはいない。
お父さんたちはあれから続いたニュースでツヴァイウィングが嫌いになってしまったけど、私は今でも未来と一緒に二人の活動を追っている。
何を隠そう、私もあれからファンになってしまったんだ。
命を救われたのもあるだろうし……なにより、今でも奏さんの言葉が、あの時の光景が胸に残っている。
……そうすることで命を救ってくれた人たちへの謝罪なんて、嫌なことを考えてしまう時があっても。
「──ほっ!」
木の上にあった風船を取って泣いていた男の子に渡す。
未来の助けもあって少しは鍛えられてきた気がするけど、まだまだ届かない。
「また人助け?」
「あ、未来!」
今日はツヴァイウィングの新曲の発売日。
私たちはそれを買うためにこうして出かけている。
いつもの店に行っても、人は少ない。
「今日もいっぱい余ってるね」
「ファンとしては余り過ぎてるのも複雑な感情だよ……」
今回の特典付きのCDを手に取ろうとした時だった。
「ええい!誰が何を買おうがお前には関係ない話だろうが!!」
「よりによってそいつらのCDを買うかこのバカ!あいつに見つかったら何言われるか……」
「その程度であの女が何か言うものか。それが嫌なら現代のオススメの歌手かお前の歌でこの俺を惚れさせてみろ」
「誰が!」
静かな場所だったから余計に目立つ二つの声がツヴァイウィングのCDの前で言い争いながら近付いてきた。
一人は多分私たちと同じくらいの女の子で、もう一人は顔はよく見えないけど私が見たことないくらいの大きい男の人で、何というか少し怖い人に思えた。
ふと、男の人と私の目が合う。
……片方だけの眼鏡?それにこの人の顔、どこかで見たような……
「おっと、他にも人がいたか。邪魔になるから早く行くぞ」
「気付いてなかったのかよ……騒いで悪かったな」
でも思い出すことなくその人たちはCDを持ってレジへと向かっていった。
「す、凄い大きい人だったね。体も大きいし、スポーツ選手なのかな」
「分かんないけど……」
未来にも聞いてみようとしたところでまた大きな男の人が私たちの前に立った。
今度は顔がよく見えるけど……凄くかっこいい人だ。
まるでアイドルみたいで、顔も優しそうに見える。
「ん……!」
男の人は私を見て驚いた顔をしている。
……この顔、見たことないはずなのに、知っている気がするような……。
「……君、一年前のライブに来ていたやつか」
「へ?」
「………………ああ、すまん。入場口近くで友達が来なくなった可哀想なやつがいるなと印象に残っていたもんでな」
そのことを聞いてそういえば未来のことで怒っていたのを思い出す。
未来もそれをまた思い出してか、申し訳なさそうな顔で私を見た。
もう怒ってないし、こうして未来と同じものを好きになれたから問題ないって言っているのに。
「友達の付き添いで行くようなライブは退屈だろうなと思っていたが……楽しかったか?ライブは」
「……はい!」
「フッ……そこにいる君が彼女を呼んだ友達かい?」
「そうなんです!私の大事な友達です!」
「なら今度は二人揃って現地に行けるといいな。楽しさも一人の時とはまた違うぞ」
そういってその人は新曲を10枚も持ってレジに並んだ。
同じCDをあんなに買う人を初めて見たかもしれない。
しかも特典も数分貰って嬉しそうに帰っていった。
「いい人だったね」
「……うん」
……あの日の事は多くの人が悪いことのように扱うし、実際にはそれでツヴァイウィングのファンを辞めてしまったって人も多い。
でも、それが全部じゃない。
少なくとも私は奏さんの言葉が希望になったし、やりたいことも出来た。
「……決めた!やっぱり私、リディアンに行けるように頑張る!」
そしてツヴァイウィングの二人に伝えるんだ。
ありがとうって言葉を!
それから私は頑張って《私立リディアン音楽院》に入学した。
未来も一緒に来てくれることになって、同じ寮で生活することになったから不安もあまりない。
この頃になるとツヴァイウィングの悪い噂もテレビで聞くことがなくなり、二人の復帰ライブが近々行われるかもしれないなんて噂が流れ出していた。
そんな平和な毎日は、突然終わるとも知らずに。