ハリー・ポッターと龍の終焉   作:葵野原

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ダイアゴン横丁・下

 狭くてみすぼらしい店───オリバンダーの店は、まさしくそんな言葉が似合う外装だった。

 一行が中に入ると、どこか奥の方でチリンチリンとベルが鳴った。アサヒとヨヅキは天井近くまで整然と積み重ねられた何千という細長い箱───杖のうち、一部に親近感と征服感を感じた。それらはドラゴンを芯材にした杖だったが、双子にはあずかり知らぬことであった。

 

「随分時間がかかったわね?無事に服と本は買えた?」

 

 黒と金の髪を持つ美しい女性───先に杖を見ていたドラコ・マルフォイの母親、ナルシッサ・マルフォイが近づいてくる。

 

「ああ、無事に買えたとも。そうだ、二人を紹介しよう。アサヒ・ペンドラゴンと妹のヨヅキだ。ドラコの新しい友人だ」

「あら、もう新しい友人ができたのですか?それはなによりですわ。

私はナルシッサ・マルフォイ。ドラコの母親よ。息子をどうぞよろしくね」

「もちろんです、Ms.マルフォイ」

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 柔らかな声がした。無人と思われていた店内の、奥の方から老人が梯子に乗ってツーと出てくる。

 ドラコが飛び上がった。ルシウス・マルフォイも体を硬くした。ナルシッサ・マルフォイは落ち着いた動作で振り返った。アサヒは知っていたが、それでも驚いて肩を跳ねさせた。ヨヅキはただ、ぼうっと目の前の老人を見ていた。

 店の薄明かりのなかで、月のように輝く薄い色で2つの大きな目を持つ老人が、そこにいる。

 

「こんにちは」ドラコは驚いたのを誤魔化すように挨拶した。

 

「おお、そうじゃとも、そうじゃとも。あなたが来ると思ってましたとも、マルフォイさん。お父さんによく似ていらっしゃる。」

「君はニレの杖に気に入られたな。45センチの長さ───」

「Mr.オリバンダー。息子の杖を見てもらえるのはいつになりますかな?」

「そうじゃった。さて、それではマルフォイさん。どちらが杖腕ですかな?」

 

 ドラコの杖選びが順調に終わり、アサヒの番が来る。マルフォイ一家は双子の杖選びを見守ることにしたらしい。店の壁際に移動した。

 

「ふーむ…その目はペンドラゴンだが、他は…さらに強大な魔力を感じる。芯材の竜たちもやけに大人しい」

「西洋のドラゴンは魔法生物に過ぎないが、東洋の龍は人の手には負えないものですからね…格が違う」

 

 アサヒの声は事実をいうように淡々としていたが、そこには自信と傲慢さが透けていた。

 ドラコは、その声色を聞いて背筋が凍るような感じがした。なんだか、急に今まで話していた相手が自分とは異なる存在に見えてくる。ルシウスは、そんな息子の様子に寄り添うように肩に手を置いた。

 

「名前を聞いてもよろしいかな、東洋から来たる龍よ」

「俺の名前は…アサヒ。アサヒ・ペンドラゴン=ウンガ」

「ううむ…ペンドラゴンさんとお呼びするべきじゃろうな。───さて、それでは拝見しましょうか」

 

 オリバンダーは銀色の目盛りの入った長い巻き尺を取り出した。アサヒは何を言われる前に右腕を差し出す。

 

「腕を伸ばして。そう、そうじゃ」

 

 魔法の巻き尺は一人でにくるくるとアサヒの周りを飛び回り、測っていく。肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から脇の下、頭の周りに、胸囲を測ろうとしたところでオリバンダーが巻き尺を回収した。

 オリバンダーが杖を差し出す。

 

「ドラゴンの心臓の琴線を使ったものはあなたがたを選べないようだ。なので他2つの芯を使った杖になるでしょう。楓に一角獣のたてがみ。13.2インチ、少し硬い」

 

 振ってみると、ただでさえ薄暗い店の照明が消えた。オリバンダーが杖をパッと取り上げ、次の杖を渡す。ルシウスが明かりをつけなおす。

 

「柊に不死鳥の羽根、11インチ、良質でしなやか」

 

 アサヒが持った瞬間、ひったくられる。その後も何本か杖を振ったりひったくられたりし、オリバンダーのオンボロな店はぐちゃぐちゃになっていく。

 そして9本目。

 

「黒檀と不死鳥の尾羽根、15.9インチ、ややしなやか」

 

 アサヒが杖を持った瞬間、店内の空気が震えた。杖を降ると、杖選び中に割れた窓のガラス片が集まり、空を泳ぐ龍のように舞いながら窓枠に収まっていく。

 

「ブラボー!──実に素晴らしい。この杖は君の二面性を受け入れ、常に傍に居てくれるじゃろう」

「──さて、お次はお嬢さんじゃな。杖腕は?」

 

「右。でも───測る必要はない。私の杖は、既に私を呼んでいる」

 

 ヨヅキが杖が積み重なった棚の、ある一点に手を伸ばす。すると、数多ある細長い箱の、たった1つが静かに抜け出し、ヨヅキの手に収まった。

 オリバンダーがその箱を受け取り、開けた。

 

「柳にユニコーンのたてがみ、8.9インチ。非常にしなやか。静けさと変化を好む。」

 

 ヨヅキが杖を降る。アサヒの杖選びで散らかった杖箱は波が引くように元いた場所に戻り、店内を柔らかくひんやりした魔力が包む。

 

「ここまで杖が惹き寄せられるのを見るのは初めてじゃ」

 

 オリバンダーはどこか嬉しそうに言った。一行は杖代を支払うと店を後にする。ドラコは少し気まずさを感じながらも、いつも通り気取った感じでアサヒに杖の話やホグワーツのことで話しかけた。

 ヨヅキは巾着がないので手に杖を持ちながら、脳内の買い物リストに杖ホルダーを付け加えた。

 

 少し歩いたところで、ルシウスが言った。

 

「我々の買い物はもう終わったが、君たちはそうではないだろう。ここらで解散すべきではないか?」

「確かにその通りですね。ドラコ、会えてよかったよ。ホグワーツでまた会おう」

「え、ああ…ホグワーツで、また」

「またお会いできるときを心待ちにいたします、Mr、Ms。それでは失礼します」

 

 ドラコは名残惜しそうにしていたが、双子はルシウスの意向を汲み、あっさりと挨拶をしてマルフォイ一家から離れる。

 

「兄上と合流しないとな。俺は鍋屋に行くからお前は本屋に行ってくれ。その後は漏れ鍋で合流しよう」

 

───「その必要はない」

「「兄上(!)」」

「お前たちに必要なものは既にすべて買っておいた。教科書、学用品、ホグワーツ行きの切符。後はペットだけだ」

「し、シゴデキ…」

「私はペット要らない…動物はみんな、私を怖がる」

「怖がらないのもいるかも知れないだろ?」

「動物、臭い」

「あー、うん…」

「無理に飼う必要はない。アサヒ、お前はどうだ?」

「式神でよくない?俺たちが手紙送るの日本だし」

 

 海雄は微妙な顔で頷くと、二人にどこか寄って帰りたい場所はあるか尋ねたが、色々あって疲れた二人は、今日はこのまま帰りたいと応えた。

 海雄はさらに微妙な顔になったが、二人を暖炉が借りられる場所に案内し、煙突飛行粉での移動方法を教えた。

 

 二人は暖炉から出るとろくに荷物整理もしないままリビングの大きくてふわふわなカーペットに沈没した。海雄は双子に毛布を被せると、自身もまた、カーペットに身を沈めた。




この長さなら1話で書ききっておけばよかったと思いつつくっつけて投稿し直すのも分かりづらいし列車の話を付け加えると副題詐欺になるので勘弁願いやす

あなたがハーメルンを開く時間帯はだいたい何時ですか?(新規投稿からの読者層を増やしたいので参考にさせていただきたいです)

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