ハリー・ポッターと龍の終焉   作:葵野原

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新着作品から読者さんに見つけてもらうなら2日3日かけて長い話書いて投稿するよりも1日でそこそこ区切りいいところまで書いて投稿しちゃったほうが良いことに今更気づきました。


キングズ・クロス駅

 運命の日。九月一日、双子は一か月で随分と馴染んだ家を離れ、海雄に連れられてキングズ・クロス駅に向かっていた。

 この一か月で、アサヒは買った本や教科書を読み込み、大人の魔法使いがいるのをいいことに未成年魔法禁止法を無視して書いてある呪文を片っ端から試した。

 ヨヅキはアサヒの魔法の練習に付き合ったり、家や庭の手入れをしたり、海雄とともにイギリス魔法界をあちこち歩き回ったりした。

 

 閑話休題。とりあえず、おのおの充実した一か月を過ごしたわけであった。

 

「くあ…」

「昨日は何時に寝たの?」

「気づいたら太陽が顔を出してたよ…」

「汽車で仮眠をとっておけ。───さて、忘れ物はないだろうな?」

「多分ね。………あ、あれがキングズ・クロス駅?」

 

 巨大なレンガ造りの建物が姿を現した。ただの駅に過ぎないというのに、そこには荘厳さがあった。

 

 キングズ・クロス駅は、早朝にもかかわらずラッシュでごった返していた。

 マグルたちのざわめきと、魔法使いたちの気配が入り混じり、双子には二つの世界が重なって見えるように感じられた。

 双子は巾着に入り切らなかったいくつかの荷物を大きなスーツケースで転がしながら人波を進んでいく。気配はするのに、他の魔法使いの姿は見えなかった。

 

「ここが九番線と十番線の間かぁ」

「どっちから行くんだ?」

「俺から行く!」

 

 興奮を抑えられないアサヒが返事も聞かずに走り出す。柵にぶつかる────その瞬間、彼は濃密な魔力に包まれた。

 入口から少し離れ、周りを見渡す。

 魔法族でごった返すプラットフォーム、別れの挨拶を交わす家族、そして──線路に停車する、紅色の蒸気機関車。

 

 アサヒは息を呑んだ。

 

「すげえ……」 

 

 胸の奥が熱くなる。映画で何度も見た光景が、今、目の前にある。

 蒸気が白く立ちのぼり、朝日を受けて車体が輝いていた。少し遅れて壁を抜けてきたヨヅキも、静かに立ち止まった。

 

「……すごい」

 

 その声は小さかったが、確かに感情が乗っていた。

 海雄は二人の反応を見て、わずかに目を細める。泣きじゃくる子ども、励ます親、写真を撮る家族──そのどれもが、双子には新鮮だった。

 

「行くぞ。荷物を積んでしまえ」 

 

 アサヒは我に返り、汽車に歩いていく二人を呼び止めた。

 

「俺たちも三人で並んで写真を撮らない?」

 

 アサヒがダイアゴン横丁で買ったカメラを片手に提案する。異論はなかった。

 ヨヅキが汽車の前に直立する。その横に海雄が立ち、三脚代わりにカメラを浮かした。アサヒが二人を基準に画角を調整する。───アサヒは頷くと、タイマーを仕掛けてシャッターを押し、急いで海雄の横に行く。

 

「はい、チーズ!」

 

 パシャリ。ある種テンプレ的な音を立て、カメラが働く。アサヒがカメラに駆け寄って、写真を確認した。

 ────写真には、真顔でピースする少女、少女と少年の肩に手を置く男、弾けんばかりの笑顔でダブルピースする少年が写っていた。

 

 写真を撮り終え、アサヒはスーツケースを引きずりながら歩き出した。

 ヨヅキはその後ろを静かに追う。プラットフォームには、魔法使いの家族があちこちで別れを惜しんでいた。

 

「兄上、俺たちも……」

「……ああ。ここで別れだ」 

 

 海雄は二人の前に立ち、しばし言葉を選ぶように沈黙した。

 

「困ったら、必ず手紙を寄越せ。……いいな。どんなことでもだ」 

 

 アサヒは素直に頷いた。日本とイギリスは遠い。会いたくても、そう簡単には会えない。そう思うと、あんなにつまらなくて、息苦しかったあの家が、恋しくなってくる。

 

「うん。兄上も元気で」

 

 ヨヅキは少しだけ海雄の袖をつまんだ。彼女には寂しいがよく分からない。しかし、今までずっと傍にいた人と離れると思うと、何だか胸がズキンとした。

 

「……行ってきます」

 

 海雄は二人の手をそっと包み、微笑んだ。

 

「行ってこい。二人とも」

 

 汽笛が鳴る。

 蒸気が大きく吹き上がる。アサヒは振り返りながら列車に飛び乗った。

 ヨヅキは最後まで海雄を見つめ、静かに乗り込んだ。

 出発にはまでの時間は残り少ない。海雄を名残惜しく思いながらも、二人は空いてる席を探すべく汽車の中を進んでいった。

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