ハリー・ポッターと龍の終焉   作:葵野原

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映画版と小説版で違うところがかなりあるんですけど、この小説では両方を混ぜた感じになります。


ホグワーツ特急

「なんとか発車までに見つけれたな…」

 

 出発までもうそろそろという列車には、既に多くのホグワーツ生が乗っていた。どのコンパートメントにも先客がいて、扉を開けるのが憚られた。

 双子は幾つかの車両を渡り歩き、なんとか空いているコンパートメントを確保した。さっさと制服に着替えて、やっと一息つく事ができた。

 

 そのとき、コンパートメントにノック音が響いた。

 

「あの、久しぶり。ここ、まだ空いてる?」

 

 知り合いを見つけたハリー・ポッターだった。双子はハリーを迎え入れた。

 

「ありがとう、全然空いてるところを見つけられなくて…」

「構わないさ。お互い様ってやつだよ。今度俺が席を見つけられない時に隣を空けてくれればいいさ」

 

 アサヒの軽い調子に、ハリーはにっこり微笑んで頷いた。

 

 続いて、今度はコンパートメントの戸が開いて、赤毛の少年が顔を出す。

 

「ここ空いてる?」ハリーの向かい側の席を指さして尋ねた。

「他はどこもいっぱいなんだ」

「丁度君で定員四人が埋まったな」

 

 アサヒが言うと、ロンは言葉ニヤッと笑ってハリーの向かい側──ヨヅキの隣に座った。

 

「自己紹介をしようか。俺はアサヒ・ペンドラゴン。アジアの日本出身で、そこでも魔法学校に通ってたよ。これからよろしくね」

 

 それに新しく乗り込んできた二人が応えながら、ヨヅキも自己紹介する。

 

「ヨヅキ・ペンドラゴン。ヨヅキに同じく」

「…まあ、口下手な奴なんだ。気にしないでやってくれ」

 

 二人はヨヅキの簡素な自己紹介に戸惑ったが、アサヒのフォローも入り、「ああ、なるほど」と納得したように頷いた。。

 

「僕、ロン。ロナルド・ウィーズリー。みんなからはロン、て呼ばれてる。よろしく」

 

 自己紹介は穏やかなに進む。

 

「僕、ハリー。…ハリー・ポッター」

「ハリー・ポッター!?」

 

 ロンが思わず叫ぶが、それを予期していたアサヒが事前にマルリアートを唱えていたので、名前を聞きつけた人が押し寄せてくることはなかった。

 ロンが言いにくそうにしながら、ハリーの額を指さして「その…あるの?」と聞く。ハリーは前髪をかき上げて稲妻の傷跡を見せた。

 

「おっどろきー…」

「痛かったりするのか?」

「ううん、痛くはないよ。でも、あんまり見られるのは好きじゃないな…」

「どうして?」

「だって、僕、なんにも覚えてないんだ。なのにみんな、僕のことを英雄って言ってくる」

「うわー。そりゃ君からしたら変な感じか」

 

 ロンは頷いた。もし自分が出てもいないクィディッチ大会で“勝利の英雄”と称賛されたら──ちっとも嬉しくない。

 その気持ちが理解できた瞬間、ハリーへの羨ましさが少し薄れた。

 

 その後も四人は窓の外を眺めたり、授業の心配をしたり、兄妹の話をしたりして過ごした。

 

 十二時半頃、通路でガチャガチャ大きな音がして、おばさんがニコニコ顔で戸を開けた。

 

「車内販売はいかがですか?」

 

 ロンは恥ずかしそうにサンドイッチを取り出し、「これがあるから」と言い訳するように呟きながら、美味しそうなお菓子たちから目をそらした。

 ハリーは魔法界の色とりどりで個性的なお菓子に魅了され、逃すまいと全部を少しずつ買い込んだ。アサヒとヨヅキも買おうとしたが、ハリーが「一緒に食べようよ」と誘ってくれたので、車内販売は見送り、お菓子パーティーが始まった。なお、ロンのサンドイッチはヨヅキの腹に消えた。

 

「このカエルチョコって、まさか本物のカエルじゃないよね?」

 

 ハリーが開け口を探しながら問いかける。

 

「まさか。カエル型のチョコに魔法がかけられてるんだよ」

「本当にカエルみたいに動くから、逃げられないように気をつけな」

 

ロンとアサヒが同時に答える。忠告むなしく、ハリーの手から逃れたカエルチョコは床に跳ね落ち───る前に、ヨヅキが無言で捕まえ、そのままハリーの口に突っ込んだ。

 

「んむっ!?」

 

 ハリーが目を丸くする横で、アサヒが笑いながら言う。

 

「中ににカードが入ってるだろ?誰が出た?」

「えーっと…この人がダンブルドアなんだ!」

 

 ハリーがカードをまじまじと見つめる。

 ロンが身を乗り出して言った。

 

「ダンブルドアのことを知らなかったの?あ、僕にも一つくれる?アグリッパが当たるかもしれない…ありがとう…」

 

 ハリーはカードの裏を読み、また表に返してみる。

 だが──

 

「消えちゃったよ!」

「そりゃ、一日中そこに突っ立ってるわけないよ。──また帰ってくるよ。あ、ダメだ、また魔女モルガナだ」

 

 ロンが肩を落とす。

 コンパートメントにいる全員で、ロンのコレクションのためにカエルチョコを次々と開封した。 しかし途中から、ロンはカードよりもチョコに夢中になり、アサヒは甘い匂いに当てられてコーヒーが飲みたくなり、ヨヅキは器用にカードだけ取り出して、チョコは「また明日食べる」と言ってポケットにしまった。

 ハリーはカードから目が離せず、クリオドナが鼻の頭を掻くのを見届けてから、ようやく百味ビーンズの袋を開けた。アグリッパは出なかった。

 

「ウエー、芽キャベツだ」

「コーヒー味どれだ?」

「いちご」

「わ、胡椒味だ」

 

 四人がお菓子パーティーを楽しんでいるうちに、車窓の外には荒涼とした風景が広がり始めた。

 ロンドンの街並みはとうに遠ざかり、どこまでも続く草原と、灰色の雲が垂れ込める空。 汽車は北へ、北へと進んでいく。

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