今回も前作以上に人を選ぶ作品となっております。
前作は登場人物が3人しかいませんでしたが、今回は大人数なので、
会話劇が楽しくなりそうです。
前作を読んでないって?
じゃあ読みましょう。(宣伝)
宇宙世紀0087。
アーガマMSデッキ。
巨大な輸送コンテナが格納庫へ搬入される。
作業員たちが慌ただしく動き回り、アストナージは珍しく上機嫌だった。
「傷付けるなよ!その辺のMS十機より高いんだからな!」
コンテナの側面に刻まれた文字を見て、カツが目を見開く。
"S GUNDAM"
「Sガンダム!?」
格納庫がざわついた。
カミーユも思わず足を止める。
「本当に完成してたのか……」
「噂だけだと思ってたぜ」
アポリーが感心したように呟く。
その時だった。
格納庫にクワトロ・バジーナが姿を現す。
ブライト・ノアも後ろから歩いてきた。
「大尉」
「何だ」
「確認したい」
ブライトがコンテナを見る。
「配備先は誰だ?」
クワトロは即答した。
「彼女だ」
全員が固まる。
「彼女?」
エマが聞き返した。
クワトロは格納庫の隅を指差す。
そこには。
紅白の巫女装束を着た少女がいた。
コンテナの上に腰掛け、
湯呑みを持ってお茶を飲んでいる。
「……あの子?」
エマが聞く。
「そうだ」
「誰なんだ?」
今度はブライト。
「博麗霊夢」
「名前じゃない」
ブライトが即座に返した。
「何者なんだ」
「パイロットだ」
「軍歴は?」
「無い」
沈黙。
カツが最初に爆発した。
「何でですか!?」
レコアが霊夢を見る。
紅白の巫女。
コンテナの上。
お茶。
周囲の騒ぎを気にする様子もない。
レコアは小さく笑った。
「少なくとも度胸はありそうね」
「そんな問題じゃありませんよ!」
「そうかしら?」
エマが少し困った顔で言う。
「レコア少尉まで……」
「だって面白いじゃない」
カツがずかずか霊夢に近付いてくる。
「君!」
「何?」
「何でSガンダムなんだよ!」
霊夢は少し考えた。
本当に少しだけ。
「知らない」
「知らないって!」
「クワトロ大尉に聞けば?」
正論だった。
カツは余計に腹が立った。
その日の午後。
シミュレーター室。
「一度だけでいい」
クワトロは言った。
「乗ってみてくれ」
「面倒」
「頼む」
「面倒」
「頼む」
霊夢はため息を吐いた。
そしてシミュレーターへ入る。
扉が閉じる。
観察室。
ブライト。
エマ。
レコア。
アポリー。
カミーユ.
ファ。
カツ。
アストナージ。
全員集合。
「そこまでする理由があるんですか?」
カミーユが尋ねた。
クワトロは答えない。
ただモニターを見つめている。
シミュレーション開始。
五分後。
アポリーが眉をひそめた。
「……おい」
十分後。
誰も喋らない。
十五分後。
アストナージが頭を抱えた。
「何だこれ」
表示されている数値は異常だった。
回避率。
命中率。
反応速度。
全てが規格外。
カミーユが呟く。
「反応が速いとかそういうレベルじゃない……」
アポリーも青ざめている。
「俺なら五回は落とされてるぞ……」
ブライトがクワトロを見る。
「説明してくれ」
クワトロは静かに答えた。
「私にも分からん」
それが本音だった。
シミュレーターの扉が開く。
霊夢が出てくる。
「終わった?」
観察室は静まり返っていた。
本人だけが何も分かっていない。
クワトロが聞く。
「どうだった?」
「別に」
アストナージが崩れ落ちた。
レコアは思わず吹き出した。
「ふふっ」
エマが尋ねる。
「何がおかしいんですか?」
「だってこの子、自分が何したか全然分かってないもの」
霊夢。
不思議そうな顔。
「そうなの?」
「そうよ」
「ふーん」
夕方。
格納庫。
Sガンダムの前。
巨大な機体を見上げながら、霊夢は首を傾げた。
「大きいわね」
クワトロが言う。
「君の機体だ」
「そう」
あっさりした返事だった。
「気に入ったか?」
霊夢は機体を見上げる。
白。
青。
赤。
そしてやたら大きい。
感想は一つだった。
「別に」
格納庫の空気が止まった。
アストナージが叫ぶ。
「別にって何だよ!」
「動けば、なんだって同じじゃない?」
アストナージは頭を抱えた。
カツは信じられないものを見る目をしている。
エマは呆れ、
ブライトはため息を吐き、
クワトロだけは満足そうだった。
そしてカミーユは思った。
この少女は。
とんでもない腕を持っている。
だがそれ以上に。
とんでもなく変わった人間かもしれない。
Sガンダム(スペリオル・ガンダム)は、アナハイム・エレクトロニクス社が「究極のガンダム」を目指して開発した第4世代MSです。本来はZZガンダムとほぼ同時期に完成するのですが、この物語ではSガンダム最大の特徴である、人格を持つ人工知能「A.L.I.C.E.」と3機分離・合体機構が省略されているので、開発が早まったという設定です。