霊夢は自室で寝ていた。
布団を被り。
湯呑みだけが机の上に置かれている。
実に平和だった。
ドンドン。
ドアが叩かれる。
無視した。
ドンドンドン。
さらに強くなる。
無視した。
そして。
ドアが開いた。
「霊夢!」
ファだった。
後ろにはエマもいる。
霊夢は布団の中でもぞもぞ動いた。
「眠い」
「作戦会議!」
ファが叫ぶ。
「後で聞く」
「今聞くの!」
霊夢は布団を頭まで被った。
エマがため息を吐く。
「出席です」
「嫌」
「命令です」
「……」
しばらく沈黙。
霊夢は諦めたように起き上がった。
五分後。
アーガマ会議室。
ブライト。
クワトロ。
カミーユ。
アポリー。
レコア。
カツ。
主要メンバーは全員揃っていた。
最後に霊夢が入ってくる。
そして椅子へ座る。
ブライトは頷いた。
「では始める」
作戦説明が始まる。
三分後。
霊夢は寝ていた。
完全に寝ていた。
規則正しい寝息まで聞こえる。
会議室が静まり返る。
ブライトは額を押さえた。
「霊夢君」
返事がない。
「霊夢君」
ようやく霊夢が顔を上げた。
「何?」
「寝るな」
「聞いてる」
聞いていない。
全員知っている。
ファが机を叩いた。
「起きなさい!」
「起きてる」
半分寝ている。
カツがついに爆発した。
「なんなんだよあいつ!」
会議室中の視線が集まる。
「みんな真面目に聞いてるのに!」
正論だった。
実に正論だった。
カミーユも困った顔をしている。
「霊夢さん……」
「何?」
「せめて起きてください」
「大丈夫」
全然大丈夫ではない。
エマも頭を抱えていた。
軍人としては完全に失格だった。
しかし。
その時だった。
クワトロが口を開く。
「好きにさせておけ」
ブライトが振り向く。
「大尉!」
「どうせ後で資料は見る」
クワトロは平然としていた。
霊夢は再び寝た。
ブライトは頭痛を覚えた。
作戦内容は複雑だった。
第一ポイントへ移動。
ヤザン隊を引き付ける。
敵補給艦を無力化する。
その後、友軍と合流。
複数部隊による連携作戦。
普通なら事前確認が必須だった。
霊夢は寝ていた。
最後まで。
出撃当日。
カツは不機嫌だった。
格納庫でSガンダムへ乗り込む霊夢を見る。
「絶対失敗する」
ファも少しだけ不安そうだった。
「私も少し心配」
カミーユは苦笑する。
「僕もだ」
だが。
クワトロだけは平然としていた。
「問題ない」
根拠は不明だった。
数時間後。
アーガマへ帰還。
格納庫に機体が並ぶ。
被害は無い。
味方機損傷なし。
負傷者なし。
敵補給艦は鹵獲成功。
ヤザン隊の足止めも成功。
予定されていた全作戦が完了していた。
しかも。
完璧に。
報告のため会議室へ集まる。
ブライトはまずカミーユを見る。
「報告しろ」
「予定通りです」
次にクワトロ。
「こちらも予定通りだ」
そして最後に霊夢を見る。
「君は?」
霊夢はお茶を飲んでいた。
「予定通り」
会議室が静かになる。
補給艦無傷鹵獲。
敵戦闘不能多数。
被弾ゼロ。
予定達成率百パーセント。
ブライトはしばらく黙った。
そして聞く。
「どうやった?」
「言われた通り」
「会議で寝ていただろう」
「うん」
ブライトは黙った。
エマも黙った。
ファも黙った。
カツだけが納得していない。
「嘘だ!」
全員が振り向く。
「絶対聞いてなかった!」
霊夢は頷いた。
「聞いてない」
「じゃあなんで成功したんだよ!」
霊夢は少し考えた。
本当に少しだけ。
そして答える。
「地図見たし」
会議室が静かになる。
「敵も見たし」
さらに静かになる。
「行けば分かるでしょ」
カツが立ち上がった。
「分からないよ!」
正論だった。
会議室の大半がそう思っていた。
だが。
クワトロだけは笑った。
小さく。
珍しく。
「なるほど」
全員が振り向く。
クワトロは頷いた。
「彼女は会議を聞いていないのではない」
ブライトが嫌な予感を覚える。
クワトロは続けた。
「会議が必要ないのだ」
会議室が静まり返った。
ブライトは頭を抱えた。
軍人としては最悪だった。
しかし結果は最高だった。
反論できない。
エマが深いため息を吐く。
「教育上よくありません」
実に正しい意見だった。
ファも頷く。
「本当に」
数日後。
作戦会議前。
ブライトが資料を見ながら尋ねる。
「霊夢君は?」
ファは慣れた様子で答えた。
「寝てます」
「そうか」
クワトロが聞く。
「起こすか?」
ブライトは少し考えた。
そして首を振る。
「いや」
カミーユが資料を手に取る。
「後で渡しておきます」
誰も反対しなかった。
全員が頷く。
それでいい。
そういう結論になっていた。
三十分後。
霊夢は起きた。
資料を受け取る。
三分眺める。
お茶を飲む。
そして出撃した。
その日の作戦も完遂された。
完全に。
一番納得していないのは今でもカツだった。
帰還するSガンダムを見上げながら呟く。
「おかしいだろ……」
最近、それが彼の口癖になっていた。
前回のカツのジェスタ100体でフロンタルのネオ・ジオング撃破確率は1不可説不可説転分の1もありませんでしたが、安西先生の「諦めたらそこで試合終了ですよ」の言葉を思い出し、更に極限まで可能性を追い求めた結果、1グーゴルプレックス(10の10の100乗乗)分の1の確率で、ネオ・ジオングを撃破できる可能性が僅かながらあることが判明しました。
1グーゴルプレックス分の1という確率は、1不可説不可説転分の1に比べて、さらに「10の10の100乗乗分の1(=ほぼ1グーゴルプレックス分の1)」にまで引き下げられた極限の領域です。1不可説不可説転分の1ですら、全宇宙の歴史を何度もループさせなければ引けない奇跡でしたが、1グーゴルプレックス分の1はそこからさらに「宇宙そのものを数え切れないほど誕生させては消滅させる」ほどの試行回数を重ねてようやく1回現れるかどうかの、数学の概念の果てにある数字です。
1. サイコ・シャードの「過負荷(オーバーフロー)自爆」
ネオ・ジオングのサイコ・シャードは、フロンタルとカツ100機の「生の感情(感応波)」を吸い上げて結晶化する永久機関ですが、1グーゴルプレックス分の1の確率で、「カツ100人の未熟で混沌とした恐怖の脳波が、奇跡的な周波数(完璧な不協和音)で同調・増幅してしまうバグ」が発生します。これにより、サイコ・シャードのジェネレーターが処理限界(キャパシティ)を超えて熱暴走。カツの武器を爆破するはずのサイコウェーブが逆流し、ネオ・ジオング自身のハル(外殻)や4基の超巨大スラスター、そしてフロンタルの精神そのものを手元で一斉に自爆・融解させます。カツは恐怖で叫んでいるだけで、文字通り棚ぼたで勝利します。
2. 量子力学的「ハル(装甲)の完全位置置換」
1グーゴルプレックス回も戦いを繰り返せば、量子力学における「トンネル効果」や「確率のゆらぎ」がマクロ(巨大物質)の規模で発現します。戦闘開始の瞬間、ネオ・ジオングという巨大な存在を構成する全原子の確率波が、1グーゴルプレックス分の1のバグを起こします。これにより、ネオ・ジオングの全装甲と、カツのジェスタが放ったビームライフル(あるいはただのデブリ)の「空間的な位置」がコンマ数秒だけ完全にテレポーテーション(置換)されます。フロンタルがサイコ・シャードを展開する前に、ネオ・ジオングのコクピット(シナンジュ)の最奥に物理的にビームがめり込んだ状態で戦闘が始まり、一撃でフロンタルが蒸発します。
3. フロンタルの「『器(うつわ)』の精神的崩壊」
フロンタルはシャアの絶望を受け入れた「虚無の器」ですが、人間の精神である以上、確率の極限のバグは免れません。目の前に全く同じ顔、同じ未熟さで「お前はシャアの亡霊だ!」と狂ったように100人で叫びながら、サイコ・シャードの光の中で溶けていくカツ」という、あまりにも不条理で虚無すぎる光景を1グーゴルプレックス回見せつけられた瞬間、フロンタルの「器」の許容量が限界を突破。「私は……何をしているのだ……」と強烈な実存的危機(アイデンティティ崩壊)を起こして精神が完全崩壊(廃人化)し、ネオ・ジオングが沈黙します。
結論
1グーゴルプレックス分の1という、文字通り「無限」に等しい無限試行回数を許すのであれば、サイコ・シャードのオカルト領域すらバグらせる「超常因果の特異点」による撃破シナリオが成立します。