ここで疑問に思ったのが、なぜアクシズはティターンズと共にエゥーゴを攻撃していたのかという点です。
今回の物語は、アクシズがエゥーゴを攻撃した理由について、原作では描かれなかった部分を補完したものになります。
宇宙世紀0088年2月19日。
ジュピトリス。
艦橋。
「司令。」
副官がシロッコに声をかける。
「サラ曹長が帰還しました。」
「そうか。」
シロッコが顔を上げる。
暫くすると、艦橋の扉が開いた。
サラ・ザビアロフが入ってくる。
「サラ・ザビアロフ、帰還いたしました。」
「ご苦労だったな、サラ。」
シロッコが微笑む。
「お前の偵察のおかげで、エゥーゴとアクシズの動きを把握することができた。」
「はい。ありがとうございます。」
サラも嬉しそうに答えた。
「作戦開始まで休んでいろ。」
「はい。」
サラは敬礼する。
「失礼いたします。」
そして、艦橋から立ち去った。
シロッコはサラを見送ると、副官へ向き直った。
「艦隊の状況は?」
「全艦隊、指定された待機宙域にて停止中です。」
「コロニーレーザーの射線については?」
「サラ曹長からの偵察情報をもとに、解析を完了しています。」
「そうか。」
シロッコは戦況図を見る。
グリプス2。
エゥーゴ艦隊。
そして、ティターンズ艦隊の現在位置。
その外側には、接近しつつあるアクシズ艦隊の予想進路が表示されていた。
シロッコは立ち上がった。
「待機中の全艦隊に通達。」
副官が姿勢を正す。
「目標地点への進軍を再開する。」
「目標地点に到達次第、グリプス2への攻撃を開始する。」
「了解しました!」
副官が通信士に命令を伝える。
「全艦隊へ通達!」
「進軍再開!」
「指定された攻撃位置へ移動せよ!」
次々と命令が発信される。
停止していたティターンズ艦隊が、再び動き始めた。
シロッコは戦況図を見つめる。
「さて。」
小さく呟く。
「どう動く、ハマーン。」
アクシズ艦隊。
グワンバン。
会議室。
ハマーン・カーンを中心に、艦隊の主要幕僚たちが集まっていた。
正面の大型モニターには、グリプス2周辺宙域の戦況図が表示されている。
「ティターンズ艦隊の動きは?」
ハマーンが尋ねた。
参謀の一人が立ち上がる。
「現在の情報では、ティターンズ艦隊は全艦、グリプス2への進軍を停止しています。」
「そうか。」
ハマーンは腕を組む。
「我々の動きを掴んだのだろう。」
「はい。その可能性が高いと思われます。」
「となると。」
ハマーンは戦況図を見る。
「エゥーゴがグリプス2を奪取した時のように、艦隊を分散させて包囲する作戦は採らんだろうな。」
「はい。」
別の参謀が答える。
「ティターンズが戦力を分散させれば、我々に各個撃破されるのは目に見えています。」
ハマーンが頷く。
「だが。」
「艦隊を集中させれば、今度はコロニーレーザーの餌食になる危険を冒すことになる。」
会議室が静かになる。
グリプス2のコロニーレーザー。
その威力は、既に実証されている。
艦隊を一か所に集中させれば、たった一撃で壊滅的な損害を受けかねない。
しかし、艦隊を分散させれば、アクシズに各個撃破される。
ティターンズにとっては難しい選択だった。
「では。」
参謀の一人が口を開く。
「我々の介入は、ティターンズ艦隊の動きが判明してからということでしょうか?」
「そうなるな。」
ハマーンが答える。
「だが。」
「どのように動くかの予測はしておくべきだ。」
「はっ。」
ハマーンは椅子に深く腰掛ける。
「シロッコなら、我々の動きを確認するまで待機するなどという、悠長なことはせんだろう。」
「と、申されますと?」
「時間が経てば経つほど、エゥーゴの地球連邦政府内での立場を上げることになるからな。」
参謀たちが頷く。
現在、グリプス2を保持しているのはエゥーゴである。
ティターンズは、もはや政治的な正当性を失いつつある。
その状況でエゥーゴが軍事的な優位を維持すれば、地球連邦政府がエゥーゴを支持する可能性は高まる。
シロッコには時間がない。
「私がシロッコの立場なら。」
ハマーンが続ける。
「コロニーレーザーの射線から大きく外れた位置に艦隊を集結させる。」
戦況図の一角を指す。
「そして、グリプス2に総攻撃を仕掛ける。」
「なるほど。」
参謀が頷いた。
「コロニーレーザーによる一撃壊滅を避けつつ、一気に決着をつけるわけですね。」
「そうだ。」
ハマーンは頷く。
「では、我々は?」
ハマーンは答えた。
「その場合。」
「ティターンズ艦隊の攻撃に呼応して、エゥーゴ艦隊を攻撃する。」
参謀の一人が驚く。
「エゥーゴを?」
「そうだ。」
ハマーンは平然と答える。
「現状、最も政治的に有利な立場にいるのはエゥーゴだ。」
「故に。」
「これを機に、エゥーゴの戦力をすり潰す。」
参謀たちは黙って聞いている。
「我々が望むのは、エゥーゴとティターンズの共倒れだ。」
ハマーンは続けた。
「だが。」
「もしティターンズ艦隊がコロニーレーザーで壊滅し、エゥーゴが地球連邦の主導権を握ればどうなる?」
誰も答えない。
ハマーンが自ら答える。
「もはやアクシズは、エゥーゴに対抗できん。」
「地球連邦の軍事力と政治力を背景にしたエゥーゴを、我々だけで相手にすることになる。」
参謀の一人が頷いた。
「確かに、エゥーゴの戦力を削る必要があります。」
しかし。
別の参謀が口を開いた。
「ですが、ハマーン様。」
「何だ?」
「我々がエゥーゴ艦隊を攻撃すれば、ティターンズが有利になります。」
「その結果、ティターンズによるグリプス2の奪還を許してしまう可能性があります。」
「無論だ。」
ハマーンは即答した。
「それは承知している。」
そして。
戦況図の別の位置を指す。
「故に。」
「グワンバンのみ、戦場を迂回する。」
「グワンバンを?」
「そうだ。」
ハマーンの目が細くなる。
「ジュピトリスへ攻撃を仕掛ける。」
参謀たちの表情が変わる。
「ジュピトリスを……。」
「シロッコは必ず出てくる。」
「そこで、シロッコを始末する。」
会議室が静まり返った。
ハマーンは続ける。
「ティターンズ主力がエゥーゴとの戦闘に入れば、ジュピトリスの周囲に残る戦力も限られるだろう。」
「その隙を突く。」
「しかし、シロッコを討ったとしても、ティターンズ艦隊そのものは残ります。」
参謀が言う。
「構わん。」
ハマーンは答えた。
「ジャミトフは既に死んだ。」
「バスクも死んだ。」
「そしてシロッコまで失えば。」
「誰がティターンズを統率する?」
参謀は黙った。
「シロッコさえ始末すれば、ティターンズはもはや組織としての機能を失う。」
「グリプス2を奪還できたとしても、その維持など出来まい。」
「……なるほど。」
ハマーンは立ち上がった。
「二段構えだ。」
参謀たちが姿勢を正す。
「エゥーゴの戦力をすり潰す。」
「同時に。」
「シロッコを始末する。」
その声には迷いがなかった。
「これによって、エゥーゴにもティターンズにも、決定的な勝利を与えない。」
「我々は戦力を温存しながら、両者の力を削ぐ。」
参謀の一人が尋ねる。
「では、その方針で艦隊に作戦準備を命じますか?」
「待て。」
ハマーンが制した。
「無論、ティターンズ艦隊が私の予想通りに動くとは限らん。」
「シロッコが別の作戦を採る可能性もある。」
「また、エゥーゴがコロニーレーザーをどのように使うかも分からん。」
ハマーンは参謀たちを見渡した。
「あらゆる可能性を考えておく必要がある。」
「承知しました!」
参謀たちが一斉に答える。
グリプス2。
ティターンズ。
エゥーゴ。
そして。
アーガマ。
その艦には。
シャアがいる。
「……。」
ハマーンは小さく呟いた。
「さて。」
一拍。
「お前はどう出る?」
「シャア。」
アーガマ。
霊夢の和室。
静かな時間が流れていた。
畳の上。
クワトロが座っている。
その前には湯呑み。
霊夢は向かいに座り、自分のお茶を飲んでいた。
「……。」
クワトロは静かに湯呑みを持ち上げる。
一口。
お茶を飲む。
霊夢はその姿を眺めていた。
いつもの光景だった。
クワトロが来る。
霊夢がお茶を淹れる。
二人で飲む。
クワトロはあまり話さない。
霊夢も、無理に話しかけたりはしない。
ただ。
今日は少し違っていた。
霊夢は何度か口を開きかけていた。
しかし。
そのたびに言葉を飲み込んでいた。
クワトロは気づいていないのか。
それとも、気づいていて何も言わないのか。
相変わらず静かにお茶を飲んでいる。
霊夢はクワトロを見る。
以前、ブライトから聞いた話を思い出す。
一年戦争。
アムロ・レイ。
ララァという女性。
そして。
アポリーから聞いたアクシズ時代の話。
ハマーン。
ミネバ。
クワトロがアクシズを去った理由。
自分の知らないクワトロの過去。
まだ知らないことが沢山ある。
だが。
今は、それを聞きたいわけではなかった。
霊夢は湯呑みを置く。
少しだけ背筋を伸ばした。
「大尉。」
クワトロが顔を上げる。
「何だ?」
「……。」
霊夢はクワトロを見る。
何かを言おうとする。
しかし。
言葉が出てこなかった。
「……。」
クワトロは黙って待っている。
霊夢は視線を落とした。
暫くして。
「ごめん。」
小さく笑う。
「やっぱり何でもない。」
「そうか?」
クワトロは少し不思議そうにしたが、それ以上は尋ねなかった。
再び湯呑みを持つ。
お茶を飲む。
霊夢も自分の湯呑みを手に取った。
「……。」
部屋に静けさが戻る。
遠くから、艦内放送が聞こえてくる。
アーガマはグリプス2へ向かっている。
その先では。
ティターンズが待っている。
アクシズも来る。
そして。
ハマーンがいる。
霊夢は、クワトロがハマーンと向き合うことになるかもしれないと考えていた。
だが。
そのことを口にはしなかった。
クワトロも。
何も言わなかった。
やがて。
クワトロが湯呑みを置く。
「ごちそうさま。」
「……うん。」
「美味かった。」
「そうでしょ。」
霊夢は少しだけ笑った。
クワトロが立ち上がる。
「では、私はそろそろ戻る。」
「うん。」
クワトロが襖へ向かう。
その背中を見ながら。
霊夢は口を開いた。
「大尉。」
クワトロが振り返る。
「何だ?」
霊夢はクワトロを見つめた。
そして。
「また来てね。」
「ああ。」
クワトロが答える。
だが。
霊夢は続けた。
「私は。」
少し間を置く。
「いつでもここで、大尉を待ってる。」
「……。」
クワトロは何も言わなかった。
暫く。
霊夢を見つめる。
霊夢も視線を逸らさない。
そして。
クワトロが静かに答えた。
「ああ。」
一拍。
「また来る。」
霊夢は微笑んだ。
「うん。」
クワトロが襖を開ける。
廊下へ出る。
そして。
静かに襖が閉まった。
霊夢は暫く、その襖を眺めていた。
やがて。
クワトロが使っていた湯呑みへ視線を落とす。
もう空になっている。
霊夢はそれを手に取った。
「……。」
いつものように。
片付けようとする。
だが。
少しだけ手を止めた。
そして。
小さく呟く。
「……また来てね。」
部屋には誰もいない。
返事もない。
霊夢は静かに立ち上がった。
湯呑みを片付ける。
次にクワトロが来た時も。
またお茶を淹れればいい。
いつものように。
それだけだった。
宇宙世紀0088年2月19日。
グリプス2へ向けて。
ティターンズ艦隊が動き出していた。
アクシズ艦隊もまた。
その戦場へ向かっていた。
そして。
アーガマも。
同じ宙域へ向かっていた。
それぞれの思惑を抱えながら。
三つの勢力が。
グリプス2へ集まりつつあった。
以前、前作「辺境の惑星でリアル弾幕ごっこ」でカツが四人目のメンバーとして参加していた場合の脱出方法について検証しましたが、脱出成功確率0%を覆すことは出来ませんでした。
そこで今回は、カツ単独なら、惑星からの脱出は可能かについて検証しました。
結論から言います。
不可能です。ただし理由が「三人と一緒の場合」と根本的に異なります。
カツ単独の場合の最大の変化
三人と一緒の場合、カツの最大の問題は——
「恐慌乱射で味方を撃つ」「命令無視AIで前線に出る」「三人の優しさを消費する」
でした。
単独の場合、味方がいません。
恐慌乱射が発動しても撃つ対象がいない。
命令無視AIが発動しても止める人間がいない。
三人の優しさを消費することもない。
つまり「他者への害」というカツの最大の問題が消滅します。
残る問題の整理
問題1:戦闘力の絶望的な低さ
射撃5・格闘3——これで反応炉起動後の連続襲撃を一人で凌ぐことは不可能です。
霊夢・魔理沙・禰豆子という射撃20・格闘19・ビームマシンガンという戦力が揃っていて脱出成功率0.01%でした。射撃5一人では三人の1%以下の戦闘力しかない。
問題2:建設・研究の壊滅的な低さ
宇宙船建造には研究と建設が必要です。
研究スキル2——宇宙船基礎工学の研究に必要な時間が魔理沙の場合の何倍もかかります。
建設スキル2——宇宙船の船体骨格・エンジン・反応炉の建設に必要な時間が膨大になる。その間に襲撃が来て建設中の宇宙船が壊される。
問題3:食料の自給
料理スキル2——食中毒リスクが常に存在します。単独の場合、食中毒で行動不能になった瞬間に全てが止まる。誰も助けてくれません。
弱虫(痛みへの限界値-50%)と組み合わさると、食中毒の症状で即行動不能になります。
問題4:精神的弱さ+23%の単独環境
霊夢の「歓喜」特性による心情バフがありません。
一人きりの惑星で、腐乱死体・極寒・極暑・飢餓という環境の中で精神的弱さ+23%という数値は——
恐慌乱射が発動します。
単独なので味方を撃ちません。しかし自分の拠点の設備・宇宙船の建設中の部品・食料保管庫を乱射して破壊する可能性があります。
問題5:嫉妬特性の消滅というメリット
単独の場合、比較対象がいないため嫉妬は発動しません。これは唯一のプラス要因です。
最も現実的なシナリオ
Day1〜3
拠点建設開始。建設スキル2のため極めて遅い。最低限の壁と寝床を作るだけで数日かかる。
Day5前後
最初の小規模襲撃。射撃5のカツが応戦。不運特性で流れ弾に当たる。弱虫・貧弱な肉体で即行動不能。誰も助けに来ない。失血死または捕虜になる。
生存できた場合のDay10前後
研究スキル2のため宇宙船研究が全く進まない。食料が尽きて栄養不足デバフが蓄積。精神的弱さ+23%の環境で恐慌乱射発動。自分の設備を破壊する。
長期生存できた奇跡的な場合
反応炉起動まで辿り着けたとして——連続襲撃を射撃5一人で凌ぐことは物理的に不可能です。初日の襲撃で終わります。
唯一の希望
RimWorldには「友好的な商人・難民との出会い」というイベントがあります。
社交スキル2のカツが難民を仲間に引き入れ、コロニーを拡大する——理論上は可能です。
しかし社交スキル2という低さでは勧誘成功率が極めて低い。
そして仲間が増えた場合——
「僕だって戦えるんだ」という承認欲求を持つカツが、仲間への指示を誤り始める可能性があります。
最終結論
カツ単独での脱出は不可能です。
ただし「不可能の理由」が三人と一緒の場合と根本的に違います。
三人と一緒の場合——カツが三人の足を引っ張って全滅する
カツ単独の場合——カツ自身の能力不足で最初の襲撃で終わる
前者はカツの「存在が凶器」という問題でした。
後者はカツの「能力がない」という問題です。
Zガンダムでカツが最終的にデブリ衝突という形で散ったのは、カツが「せめて何かを証明しようとした」結果でした。
RimWorldの単独コロニーでも、カツは「せめて何かを証明しようとして」最初の襲撃に飛び出し、あっさり倒れる。
誰も見ていない惑星で、誰にも証明できないまま。
それがカツ単独シナリオの最も正直な結末になります。