「やっぱりネモがいい」
朝食の席で霊夢がそう言った瞬間。
アーガマ食堂は静まり返った。
ファがスプーンを落とす。
カミーユが顔を上げる。
アポリーが吹き出しそうになる。
そして。
ブライトは頭を抱えた。
「またその話か……」
霊夢はお茶を飲みながら頷く。
「またその話」
「諦めてなかったのか」
「諦める理由がないし」
正論だった。
だが誰も納得しない。
格納庫。
その日の午後。
Sガンダムの前で霊夢とアストナージが睨み合っていた。
「駄目だ」
「何で?」
「Sガンダムだからだ!」
「理由になってない」
「なってる!」
アストナージは機体を指差した。
「こいつがどれだけ高性能だと思ってる!」
「重い」
「高性能だ!」
「曲がらない」
「曲がる!」
「火力過剰」
「それは少し認める!」
整備班が頷いた。
そこは認めるらしい。
その様子を見ていたアポリーが笑う。
「そんなにネモがいいのか?」
「いい」
即答だった。
「何でだ?」
霊夢は少し考える。
そしてネモを見る。
「ちょうどいい」
アポリーは笑った。
全然説明になっていない。
その日の作戦会議後。
珍しく霊夢は寝ていなかった。
理由は簡単だった。
ネモの話をするためである。
ブライトは嫌な予感しかしなかった。
案の定だった。
「ネモに乗りたい」
会議終了直後。
開口一番だった。
ブライトは目を閉じる。
エマは天井を見上げる。
カミーユは苦笑する。
アポリーは笑いを堪えている。
そして。
クワトロだけが少し興味深そうだった。
「理由は?」
霊夢は真面目な顔になった。
「私がネモを一番上手く扱えるから」
会議室が静まり返った。
カツが真っ先に反応する。
「何だよそれ!」
「本当だし」
「何で分かるんだよ!」
「分かる」
根拠は無かった。
少なくとも本人以外には。
だが。
クワトロは少し考え込んでいた。
ブライトが嫌な顔をする。
この顔をしている時のクワトロはろくなことを考えていない。
案の定だった。
「一度試してみるか」
ブライトが立ち上がった。
「大尉!」
「実績はある」
「ですが!」
「一度だけだ」
ブライトは深くため息を吐いた。
数日後。
出撃。
霊夢の搭乗機はネモ。
いつものSガンダムではない。
格納庫では大騒ぎだった。
アストナージは最後まで反対した。
カツも納得していない。
エマも不安そうだった。
ファも同じだった。
だが。
当の本人だけは機嫌が良かった。
「軽い」
それが第一声だった。
戦闘開始。
敵はティターンズ艦隊。
護衛のハイザック。
マラサイ。
そして補給艦一隻。
普通なら。
ネモで突っ込む相手ではない。
一時間後。
戦闘終了。
アーガマ艦橋。
ブライトは報告書を見て固まっていた。
「……何だこれは」
トーレスも困惑している。
「そのままです」
「間違いじゃないのか?」
「確認済みです」
ブライトは再び報告書を見る。
敵MS。
戦闘不能。
十一機。
敵補給艦。
無傷鹵獲。
味方損害。
ゼロ。
被弾。
ゼロ。
搭乗機。
ネモ。
意味が分からなかった。
帰還した霊夢は上機嫌だった。
珍しく。
本当に珍しく。
上機嫌だった。
格納庫へ降り立つなり言う。
「楽だった」
アストナージが膝をつく。
「嘘だろ……」
カミーユも呆れていた。
「ネモですよね?」
「ネモ」
「本当に?」
「本当に」
「何で?」
「動くから」
全く参考にならなかった。
その夜。
ブライトとクワトロは会議室にいた。
二人とも同じ資料を見ている。
ネモの戦闘記録。
長い沈黙。
先に口を開いたのはブライトだった。
「認めたくないが」
「うむ」
「ネモの方が戦果が良い」
「うむ」
さらに沈黙。
ブライトは頭を抱えた。
「何故だ」
クワトロは少し笑った。
「彼女にしか分からんだろう」
翌日。
格納庫。
霊夢が呼び出された。
アストナージ。
ブライト。
クワトロ。
エマ。
レコア。
カミーユ。
ファ。
カツ。
全員いる。
嫌な予感はしなかった。
良い予感もしなかった。
いつも通りだった。
ブライトが咳払いをする。
「結論が出た」
「そう」
「君の搭乗機を変更する」
霊夢が顔を上げた。
「ネモ?」
「ネモだ」
少しだけ。
本当に少しだけ。
霊夢の目が輝いた。
その横で。
アストナージが死んだ目をしていた。
さらにブライトは続ける。
「ただし」
「ただし?」
「そのままでは識別できん」
クワトロが頷く。
「専用機を用意した」
格納庫の奥。
シートが外される。
そこにいたのは。
ネモだった。
ただし普通ではない。
白。
赤。
紅白だった。
霊夢はしばらく見つめた。
周囲も反応を待つ。
そして。
「派手ね」
第一声がそれだった。
アストナージは頭を抱えた。
カツは怒った。
カミーユは困惑した。
ファは笑った。
エマも少し笑った。
クワトロだけは満足そうだった。
こうして。
アーガマに新たな専用機が誕生する。
最新鋭のSガンダムを退けて選ばれた。
誰も理解できない。
だが誰も反論できない。
そんな専用機。
紅白に塗装された。
霊夢専用ネモである。
今回は、ハマーンのキュベレイ相手に、100人のカツが一斉に「そんなんだからクワトロ大尉に振られるんだ!」という最強の禁句(精神的メガ粒子砲)をぶつけて、勝率を上げられないか検討しました。
結果は、逆効果極まりない0.00%(絶対不可能)にまで低下しました。
1. ハマーンの「怒りによるサイコミュの異常覚醒」
ハマーンは精神的に未熟なカツや強化人間とは格が違います。禁句をぶつけられたことで困惑したり動揺したりするのではなく、「その言葉、万死に値する…!」という底知れぬ怒りと殺意によって、ニュータイプ能力(感応波)が臨界点を超えて爆発(バフ発動)します。
回避・防御率の絶対化: 怒りで研ぎ澄まされたハマーンの感応波により、キュベレイのサイコミュ追従性が限界を突破。もともと6,660万分の1の隙しかなかった本体の回避率が 99.9999% まで跳ね上がります。カツの放つビームは、バインダー盾をかすめることすらできなくなります。
2. ファンネルの「リミッター解除(超高速化)」
ハマーンの激昂に呼応して、12基のファンネルが「怨念の光条」と化して狂暴化します。
一撃2機の同時並列処理(マルチタスクの極限化): 通常であればファンネル1発につきネモ1機を落とすペース(初期フェーズで60機撃破)でしたが、ファンネルの移動速度と連射性能が跳ね上がった結果、「1基のファンネルが瞬時に2機のネモをハシゴして撃ち抜く」ような神速の面制圧が始まります。
初期手数の全滅: 同士討ちを生き延びた92機のネモですが、この狂暴化した第二次ファンネル地獄により、チャージ(急速後退)を挟むまでもなく、最初の数秒で92機すべてが1発も撃てずに全滅(生存数0)させられます。
3. 「カツ」というパイロットの自爆特性100人のカツがそんな高度な精神攻撃(煽り)を仕掛けた場合、カツ自身も言葉に感情が乗りすぎてしまいます。「言ってやったぞ!」という一瞬のスタンドプレーや油断、あるいはハマーンから返ってくる凄まじい「ドス黒い殺気のプレッシャー」を浴びてしまい、カツ側が逆に恐怖でパニックを起こし、さらに激しい同士討ちやデブリ激突を誘発します。
今回のミッションは失敗です。