Sガンダムは格納庫の奥に置かれていた。
使われていない。
傷一つない。
最新鋭機。
高性能機。
高額機。
だが乗る者がいない。
ウォン・リーはその光景を見るたびに血圧が上がっていた。
「もったいねえ……」
それが最近の口癖だった。
ある日。
ついにウォンが爆発した。
格納庫である。
シートを被ったSガンダムを見ながら叫んだ。
「遊ばせておくくらいなら誰でもいいから乗らせろ!」
整備員たちが顔を見合わせる。
アストナージは嫌な予感しかしなかった。
「誰でもはまずいでしょう」
「まずくねえ!」
ウォンは機体を叩く。
「こんな高いもん飾りにしてどうする!」
それは正論だった。
非常に正論だった。
その時だった。
後ろから声がする。
「じゃあ僕が乗る」
全員が振り向いた。
カツだった。
沈黙。
アストナージが頭を抱える。
エマも頭を抱える。
ファは露骨に嫌そうな顔をした。
カミーユは天井を見た。
誰も賛成しない。
ウォンだけが違った。
カツを見る。
しばらく見る。
そして頷いた。
「いい目してるじゃねえか」
全員嫌な顔になった。
ウォンは続ける。
「見所がある」
アストナージが即座に反論する。
「前に大破させましたよ!」
「若い頃の失敗だ!」
「数週間前です!」
だが。
スポンサーは強かった。
結局。
許可が出てしまう。
その日の夕方。
霊夢は食堂でお茶を飲んでいた。
ファが事情を説明する。
霊夢は聞き終わって一言。
「そう」
興味が無かった。
本当に無かった。
数日後。
敵襲警報。
アーガマが慌ただしく動き始める。
格納庫ではパイロットたちが搭乗準備を進めていた。
カツは興奮していた。
ついに。
ついにSガンダムに乗れる。
最新鋭機。
最強の機体。
今度こそ証明できる。
そう思っていた。
出撃。
霊夢専用ネモ。
Zガンダム。
百式。
そして。
Sガンダム。
カツは嬉しかった。
機体性能が違う。
加速も。
センサーも。
武装も。
全部違う。
「これなら!」
敵影捕捉。
ティターンズ部隊だった。
カツは笑う。
Sガンダムの武装は知っている。
ビームスマートガン。
ビームカノン
そして。
インコム。
「見せてやる!」
発射。
インコムが射出される。
その瞬間だった。
警報。
「え?」
インコムが暴れる。
制御信号異常。
機動不能。
「何だ!?」
カツは慌てる。
インコムは慌てない。
むしろ元気だった。
ぐるり。
Sガンダムの周囲を回る。
さらに回る。
もっと回る。
「待て!」
待たない。
そして。
発射。
ビーム。
一直線。
自機へ。
「え?」
次の瞬間。
Sガンダムをビームが貫いた。
爆発。
閃光。
轟音。
戦場が静まり返る。
敵も味方も固まった。
そこから。
ポン。
脱出ポッドが飛び出す。
コクピットだけである。
通信回線。
カツの悲鳴。
『うわああああああ!!』
アポリーが吹き出した。
『生きてるのか!?』
『生きてるよ!!』
『良かったな!』
『良くない!!』
戦場でそんな会話が流れる。
その頃。
霊夢は交戦中。
10分後。
「終わった」
敵MS。
全機頭部破壊。
補給艦。
鹵獲。
被弾。
ゼロ。
いつも通りだった。
帰還。
格納庫。
脱出ポッドから出てきたカツを見てファが駆け寄る。
「大丈夫!?」
「大丈夫じゃない!」
その後ろからウォンが現れる。
そして。
残骸を見る。
Sガンダム。
上半身消失。
胴体貫通。
無惨だった。
沈黙。
数秒後。
ウォンの怒声が格納庫を揺らした。
「何やってんだぁぁぁぁ!!」
カツは縮こまる。
「インコムが……」
「インコムのせいにするな!」
正論だった。
その後。
回収された残骸は格納庫へ運ばれた。
アストナージが確認する。
修理可能。
理論上は。
ただし。
莫大な予算。
莫大な時間。
そして。
乗る人間がいない。
全員が黙った。
霊夢はネモに乗る。
カミーユはZガンダム。
クワトロは百式。
カツは二度と許可が出ない。
結論は簡単だった。
修理中止。
数日後。
格納庫の奥。
Sガンダムにはシートが被せられていた。
静かだった。
ウォンがその前に立つ。
しばらく見上げる。
最新鋭機。
最高性能。
アナハイムの結晶。
その末路。
シートの隣には紅白ネモが停まっていた。
前線帰り。
無傷。
戦果多数。
ウォンは両方を見る。
Sガンダム。
紅白ネモ。
もう一度Sガンダム。
そして。
「何でこうなった……」
誰も答えなかった。
少なくとも。
霊夢だけは。
少し離れた場所でお茶を飲みながら、
「だからネモがいいって言ったのに」
としか思っていなかった。
今回は新コーナー、ガンダム界一の愛されキャラ、カツの恋愛成就確率を査定します。
第一回は、当然、本命のサラ・ザビアロフです。
結論から言うと、カツ・コバヤシがサラ・ザビアロフを口説いて正式な「恋人」になれる確率は 約 0.005%(約2万分の1) となり、奇跡レベルの低確率です。
これまでのモビルスーツ戦(数千万分の1)に比べればまだ現実的ですが、サラの「精神的依存度」とカツの「口説きの未熟さ」という人間関係のパラメータを考慮すると、極めて厳しい恋愛シミュレーションとなります。この「2万分の1の奇跡」の心理戦を、宇宙世紀の設定に基づいて解剖します。
1. サラ・ザビアロフの精神構造(最強のシロッコバリア)
サラの心は、パプテマス・シロッコという「絶対的な天才」によって完全に支配(マインドコントロール)されています。彼女にとってシロッコは、単なる上司ではなく「自分の存在価値を肯定してくれる神」です。カツがいくら生の感情でぶつかっても、サラの脳内では常に「パプテマス様ならそんな子供じみたことは仰らない」と自動的に拒絶(100%カウンター)されます。
2. カツの口説き方の致命的な「悪癖(デバフ)」
カツは劇中でもサラに対して何度もアプローチしていますが、そのやり方がことごとく女性心理を無視した「独りよがりの押し付け」になっています。
「君は騙されているんだ!」という否定: サラが信じるシロッコを真っ向から否定するため、サラの警戒心を跳ね上げます。
「僕が守る!」という根拠のない自信: サラの方がパイロットとしてもニュータイプとしても実力が上であるため、サラからすれば「未熟な子供が何を言っているのか」と冷めた目で見られる原因になります。
3. サラと恋人になれる「2万分の1の奇跡」のシナリオ
カツがサラの心を射止めるためには、シロッコの呪縛を完全に解き放つ「3つの奇跡的な乱数」が同時に重なる必要があります。
① シロッコ側の「完全な切り捨て(拒絶)」の発生
サラの神であるシロッコが、彼女の前で明確に「サラ、君はもう用済みだ。俗物は去れ」と冷酷に切り捨て、サラのアイデンティティを完全に粉砕する必要があります。サラの心が「完全な虚無(空っぽ)」にならなければ、カツの言葉が入る隙間(ハッチ)はありません。
② カツが「説教」をやめて「無条件の全肯定」にシフトする
カツがいつもの「シロッコは悪者だ!」という説教(正義感の押し付け)を100%封印し、傷ついたサラを「シロッコがダメでも、僕は君の全てを受け入れる」と、ただひたすら包み込む優しさ(大人の包容力)をコンマ数秒のバグレベルで発揮する必要があります(カツの性格上、これが一番の難所です)。
③ 「サラのために死にかける」という絶対的イベント
サラの目の前で、カツが「サラ、逃げろ!」と叫びながら、彼女の身代わりとなって敵のビーム(あるいはデブリ)を浴び、機体を大破させて生死の境をさまようほどの自己犠牲を見せる必要があります。「生の感情」の激しさに誰よりも敏感なサラは、カツが自分に命を懸けた瞬間、シロッコの冷徹な理性を超える「カツの魂の輝き」を脳内に直接受信し、一気に恋心が覚醒します。
最終恋愛評価
通常の原作通りのカツのアプローチ: 0.00% (ウザがられて終了)
シロッコの切り捨て+カツの説教封印+命がけの特攻が重なった確率: 約 0.005% (約2万分の1)
カツが100人集まって「サラ、僕の恋人になってくれ!」と一斉に口説いた場合(100倍の物量作戦)は、サラに「カツが100人も迫ってくるなんて、気持ち悪いどころの騒ぎではない……パプテマス様、助けてください!」と恐怖され、シロッコへの依存度をさらに10,000倍に高める最悪のバックファイアを招くため、あくまで「カツ1人の、本気の命がけのドラマ」でしかこの2万分の1は引けません。モビルスーツ戦を生き抜くよりも、サラの「シロッコバリア」を突破する方が、ある意味でカツにとっては人間的な大成長を求められる最難関ミッションである、という非常に宇宙世紀らしい恋愛の現実が確定しました。
とりあえず、また1不可説不可説転分の1とかならなくて、よかったです。