勿論、私の気分次第です。
だから人を選ぶと言ったでしょう。
ある日の昼食後だった。
食堂では珍しく全員が揃っていた。
ブライトは書類を読んでいる。
クワトロはコーヒーを飲んでいる。
カミーユとファは食後の休憩中。
カツは何やら不満そうな顔をしていた。
そして霊夢はお茶を飲んでいた。
いつも通りだった。
その時だった。
霊夢がふと思い出したように顔を上げる。
「ねえブライトさん」
ブライトは書類から目を離さない。
「なんだ?」
「給料」
ブライトの手が止まった。
「給料?」
「欲しい」
食堂が静まり返る。
ファが吹き出した。
「えっ?」
霊夢は真面目だった。
「欲しい」
ブライトは少し考えた。
軍人が給料を要求すること自体はおかしくない。
むしろ当然だった。
問題は。
今まで一度もそんな話をしなかった霊夢が突然言い出したことだ。
「何に使うんだ?」
霊夢は即答した。
「お茶菓子」
ファが再び吹き出した。
「そこなの!?」
霊夢は不思議そうな顔をする。
「大事」
さらに続けた。
「あとお風呂」
今度は食堂全体が静かになった。
ブライトはゆっくり顔を上げる。
「……風呂?」
「欲しい」
「アーガマにあるだろう」
「小さい」
霊夢は真顔だった。
「足が伸ばせない」
ブライトは頭を抱えた。
向かいの席ではカミーユが苦笑している。
「まあ……」
全員が振り向いた。
カミーユは肩をすくめる。
「確かに働いてますしね」
それは事実だった。
出撃率は低い。
だが戦果は最高。
被弾率は最低。
アーガマ最強戦力と言われても誰も反論できない。
だがカツは納得できない。
「なんでそんな要求なんだよ!」
霊夢はお茶を飲む。
「欲しいから」
「もっとあるだろ!」
「ない」
即答だった。
カツは頭を抱えた。
その様子を見ていたクワトロが面白そうに笑う。
「君は名誉には興味がないのだな」
霊夢は首を傾げた。
「食べられないし」
クワトロは数秒考えた。
そして頷いた。
「……そうか」
妙に納得していた。
話はそこで終わらなかった。
数日後。
技術会議室。
議題は一つだった。
『霊夢専用浴槽設置計画』
ブライトは議題を見て頭を抱えた。
「却下したい」
心からの本音だった。
技術班の一人が資料をめくる。
「しかし本人の希望です」
「宇宙艦だぞ」
「はい」
「ホテルじゃない」
「はい」
クワトロが言う。
「戦果を考えれば、安いものだろう」
「大尉……」
アストナージは図面を見た。
そして。
嫌そうな顔をした。
「出来なくはないな……」
全員が振り向く。
「出来るのか?」
「配管通せば」
「通るのか?」
「ギリギリ」
会議室は静かになった。
そして全員が同じことを考える。
ジェリド隊撃退。
ヤザン隊撃退。
補給艦鹵獲。
被弾ゼロ。
損失ゼロ。
戦果多数。
アストナージがため息を吐いた。
「……やるか」
ブライトが顔を覆った。
「君までか」
さらに数日後。
ウォン・リーがその話を聞いた。
「風呂!?」
格納庫に怒声が響く。
「最新鋭MSじゃなくて!?」
霊夢は頷く。
「うん」
「お茶菓子!?」
「うん」
ウォンはしばらく考えた。
そして呟く。
「安いなオイ……」
Sガンダム一機の維持費を考えれば。
本当に安かった。
結局。
話はまとまった。
給料支給。
お茶菓子購入許可。
個室改装。
小型浴槽設置。
全て承認された。
ブライトは最後まで納得していなかった。
一週間後。
カミーユが廊下を歩いていた。
ふと。
霊夢の部屋の前を通る。
湯気が出ている。
何となく扉が開いていた。
中を覗く。
そこには。
風呂。
お茶。
せんべい。
そして。
極めて満足そうな霊夢。
「極楽」
カミーユはしばらく黙った。
本当にしばらく黙った。
そして呟く。
「あなた本当にエースパイロットなんですか……」
その頃。
ブライトは経理報告を見ていた。
霊夢の給料。
お茶代。
浴槽改装費。
しばらく眺める。
そしてSガンダムの維持費を見る。
さらに眺める。
最後にため息を吐いた。
「Sガンダム一回の整備費の方が高いのか……」
複雑な気分だった。
今回は、カツがカミーユ一筋のファ・ユイリィを口説いて恋人関係になれる可能性を検証しました。
結論から言うと、カツ・コバヤシがファ・ユイリィを口説いて恋人関係になれる確率は、0.00%(完全なるゼロ・絶対不可能) です。
サラの時は「シロッコがサラを切り捨てる」という極小の隙(2万分の1)がありましたが、ファを口説く場合、その前に立ちはだかる「カミーユ・ビダン」という壁が強固すぎて、確率の入る余地が完全に遮断されています。ファとの恋愛ミッションが「完全な詰み(0%)」である戦術的・心理的な理由は以下の3点です。
1. 幼馴染という名の「絶対不落のサイコ・フィールド」
ファにとってカミーユは、単なる好きな人を超えた「家族」「人生の一部」「自分の世界の中心」です。カミーユがどれだけ破滅的で、情緒不安定で、他の女性(フォウやロザミア)に目を向けようとも、ファの「カミーユを支え、見届ける」という母性にも似た愛の意志は1ミリも揺らぎません。カツがどれだけ生の感情で口説こうとも、ファの心にあるカミーユの存在という強固な装甲にすべて弾き返されます。
2. ファから見た「カツ」への評価(ただの頼りない弟)
アーガマの艦内において、ファはカツの「指示を無視して勝手に出撃する」「感情を爆発させて周囲に迷惑をかける」といった未熟な悪癖をすべて特等席で見ています。ただでさえアーガマの日常業務でストレスがマックスのファにとって、カツは「男」として意識する対象ではなく、「またカツが勝手なことをしてブライト艦長に怒られている……」という、ただただ手のかかる「頼りない弟(あるいはそれ以下の問題児)」でしかありません。口説かれた時点で「カツ、いい加減にしなさい!」と一喝されて終了します。
3. 「カミーユの精神崩壊」という最悪の確定未来
『Zガンダム』の最終回において、カミーユはシロッコの精神攻撃によって廃人(精神崩壊)となります。普通の恋愛劇なら「ライバルが脱落したからカツにチャンス到来か?」となるはずですが、宇宙世紀においてはこれがトドメの絶望となります。カミーユの心が壊れた瞬間、ファの人生のすべては「一生をかけてカミーユを介護し、守り続けること」に100%ロックされます。『ガンダムZZ』の劇中でも描かれている通り、ファはカミーユの傍を片時も離れず、献身的に彼を支え続けます。この状態のファに対して、カツが「僕と付き合ってよ」などと言おうものなら、ファの逆鱗に触れて完全に絶縁されます。
最終恋愛評価:0%(奇跡すら起きない)
サラの時は「命がけでサラを庇って死にかければ、ワンチャンス心が動く」という物理的奇跡がありましたが、ファの場合、カツがファを庇って命を落としたとしても、ファは「カツが死んじゃった……カミーユ、やっぱり戦いは悲しいわね……」と、カツの死すらカミーユとの絆を深めるためのノスタルジーに昇華(回収)されてしまうため、カツが恋人になるルートは文字通り1ナノメートルも存在しません。
カツが100人集まって「ファ、僕と付き合って!」と一斉にスピーカーテロを仕掛けた場合は、ファのストレスが臨界点を突破し、「うるさいわねーっ!!」とZガンダムのハイパー・メガ・ランチャー並みの怒声とともに、ハロを100個同時に投げつけられて全員が脳震盪で気絶するという悲惨なオチがつくだけです。
怪物モビルスーツたちを相手にするよりも、幼馴染の絆で結ばれたファの心をカミーユから奪う方が、カツにとっては文字通り「一億光年遠い無理ゲー」であるという、あまりにも切ない現実が証明されてしまいました。