カミーユは一度、深く息を吸ってから口を開いた。
「弁護側として、発言します。」
その声は硬かったが、震えてはいなかった。
「エマ中尉の主張する事実関係――カツが拳銃を持ち出し、会談場所へ乱入し、シロッコへ発砲したこと。そして、その銃弾が霊夢さんに命中したこと。」
「これらについては争いません。」
室内がざわついた。
カツは驚いたように顔を上げ、カミーユを見た。
「カミーユ……。」
全面的に庇ってくれると思っていたのかもしれない。
しかし、カミーユはカツへ視線を向けることなく続けた。
「事実を認めた上で、僕は二点を主張します。」
「第一に、エマ中尉は発砲が会談中に行われたと主張していますが、カツが発砲した時点では、交渉はすでに決裂していました。」
「シロッコは提案を拒絶し、会談の席を離れようとしていました。」
「したがって、正式な会談相手を交渉中に襲撃した場合とは、状況が異なります。」
ブライトが軽く頷く。
「続けなさい。」
「第二に、エゥーゴ構成員としての資格剥奪と軍務からの永久追放、さらに終身収監という処分は、未成年であるカツに科す刑として、あまりに重すぎます。」
カミーユは一度カツを見た。
「僕を含め、カツもシロッコが非常に危険な男だという認識を持っていました。」
「会談が不成立に終わり、再び敵対関係に戻れば、シロッコはエゥーゴにとって大きな脅威になる。」
「カツは、シロッコを生きて帰すことで生じる危険の方が、彼を殺害してティターンズの報復を招く危険よりも大きいと、誤って判断したのだと考えます。」
クルーたちが黙って耳を傾ける。
「もちろん、それはカツの行動を正当化するものではありません。」
「軍の拳銃を許可なく持ち出し、会談の場へ乱入した行為は、明確な規律違反です。」
「結果として霊夢さんに重傷を負わせたことも、動かせない事実です。」
「僕は、それを免罪するつもりはありません。」
カツが俯く。
カミーユはそこで一度言葉を切り、正面のブライトを真っ直ぐに見た。
「しかし、永久追放と終身収監という処分は、未成年であるカツが危機感から起こした一度の過ちに対して科されるには、あまりに重すぎます。」
「カツは、自分の行為、特に霊夢さんを傷つけたことに苦しんでいます。」
「相応の処罰は必要です。ですが、残りの人生すべてを奪うことが、正しい処罰だとは思えません。」
カミーユは拳を握り締める。
「僕は、カツに相応の罰を与えると同時に、この過ちから学び、いつか社会の一員としてやり直す機会を残すべきだと考えます。」
深く一礼する。
「以上です。」
会議室は再びざわめきに包まれた。
カツは呆然とカミーユを見つめていた。
無罪を訴えたわけではない。
自分の行為を正面から認めた上で、それでも未来を残そうとしてくれた。
ブライトは書類を見つめたまま、しばらく沈黙していた。
やがて顔を上げる。
「弁護人の申し立ては聞いた。」
「これより、事実関係の確認に移る。」
室内の空気が再び張り詰める。
「証人、博麗霊夢少尉待遇。」
「前へ。」
霊夢はゆっくりと立ち上がった。
まだ本調子ではない身体をかばうように、ファが思わず腰を浮かせる。
「霊夢……大丈夫?」
「平気よ。」
霊夢は小さく頷いてみせると、証人席から一歩前へ出た。
その拍子に、わずかに顔をしかめる。
傷跡がまだ痛むのだろう。
見学席のクルーたちが息を呑んで見守った。
ブライトが静かに切り出す。
「博麗少尉待遇。」
「これより、宇宙世紀0088年1月18日の会談当日、君が見聞きしたことについて証言を求める。」
「体調が優れない場合は、いつでも申し出るように。」
「分かった。」
霊夢はカツの方を一度だけ見た。
カツは俯いたまま、その視線を受け止めることができなかった。
ブライトが尋問を始める。
「あの日、会談場所で何が起きたか。君が見た通りに述べなさい。」
霊夢は小さく息を吐き、記憶をたどるように話し始めた。
「私は会談の場に同席していた。」
「話が終わろうとしていた時、カツが少しずつシロッコさんとの距離を詰めていることに気が付いた。」
「そしたら銃を取り出して、シロッコさんに向けた。」
霊夢はそこで一瞬、言葉を止める。
ブライトが静かに促した。
「それで、君はどう行動した。」
「撃たせないように、二人の間に入った。」
その言葉に、カツの肩が大きく震えた。
初めて、はっきりと顔を上げる。
「霊夢さん……それは……。」
「黙っていなさい、被告人。」
ブライトが鋭く制する。
「発言は許可されていない。」
カツは口を噤んだ。
だが、その目は霊夢から離れなかった。
ブライトは霊夢へ視線を戻す。
「確認する。」
「君は、偶然被告の弾丸を受けたのではなく、被告とシロッコ大佐の間に、自らの意思で割って入ったということか。」
「そう。」
霊夢は迷わず答えた。
「カツを止めようとしたの。」
「あのままシロッコさんを撃たせたら、それこそ取り返しがつかないことになると思ったから。」
「君が割って入った後、何が起きた。」
「私が間に入ると同時に、カツが撃った。」
「銃弾は私に当たった。」
霊夢は静かにカツを見る。
「カツは私を狙ったわけじゃない。」
「私が間に入ったことで、結果として私に当たったの。」
会議室が静まり返る。
ブライトは霊夢の証言を書類へ記録しながら、さらに尋ねた。
「告発人、証人への質問はあるか。」
エマが立ち上がる。
「一つだけあります。」
ブライトが頷いた。
「許可する。」
エマは霊夢を見つめた。
「博麗少尉待遇。」
「あなたがカツを必要以上に追い詰めたくないと考えていることは理解しています。」
「ですが、もしあなたが間へ入らなければ、シロッコ大佐が撃たれていました。」
「その結果、エゥーゴの外交的信用は著しく失墜し、会談に参加した者だけでなく、本艦の全乗組員が報復を受けた可能性があります。」
「それでも、被告の行為は重く罰するべきではないと考えますか。」
霊夢は少し考えた後、首を横に振った。
「私は、軽く罰せられるべきだとは言っていないわ。」
「カツがやったことは危険だった。」
「それは重く罰せられるべきだと思う。」
エマは黙って続きを待つ。
「でも、終身刑は違う。」
霊夢ははっきりと告げた。
「一度の過ちで、この先の人生を全部奪う必要はないと思う。」
エマはしばらく霊夢を見つめた後、小さく一礼した。
「質問は以上です。」
ブライトは霊夢へ視線を戻した。
「では、最後に聞く。」
「被告の行為と、告発側が求める刑について、君の意見があれば述べなさい。」
霊夢はブライトへ向き直った。
「私も、カミーユと同じ意見。」
「罰は必要だけど、やり直す機会まで奪う必要はないわ。」
ブライトはしばらく無言で証言内容を見返した。
そして、静かに口を開く。
「証言、確認した。」
「着席してよい。」
「ええ。」
霊夢は一礼した。
戻ろうとした瞬間、身体がわずかによろめく。
ファがすぐに駆け寄り、その腕を支えた。
「無理しないで。」
「大丈夫だってば。」
霊夢はそう答えながら、ファに支えられて証人席へ戻った。
ブライトは室内を見渡す。
「次に、審判員クワトロ・バジーナ大尉の所見を求める。」
それまで沈黙を保っていたクワトロが、ゆっくりと立ち上がった。
新コーナー、前作「辺境の惑星でリアル弾幕ごっこ」でカツ・コバヤシが4人目のメンバーとして参加していた場合、無事脱出出来るのかを検証します。前作を読んでいないって?残念ながら、たこわさび劇場では、読者の都合はお構いなしがセオリーです。
まずはカツの能力の紹介から。
ステータス:射撃5、格闘3、他は全て2
特製:弱虫(痛みへの限界値-50% 痛みですぐショックダウンする。)
いくじなし(精神的弱さ+8%)
精神不安定(精神的弱さ+15%)
嫉妬(寝室が一番豪華でないと心情-8)
恐慌乱射(戦場の極度のストレスで取り乱し、銃を乱射してしまう傾向がある。
射撃-10、精神的弱さ+6%)
不運(戦闘で危険を避け損ねやすい)
浅慮(精神的弱さ-6%、政治力・外交力-10%)
貧弱な肉体(受けるダメージ×120%)
武器:霊夢のお下がりの軍用ライフル
結論から言います。
身も蓋もありませんが、カツがいたら全滅していました。確実に。
次回からは、何故全滅確定になるのか、その理由について解説していきます。