カツは、もし交渉が成功してシロッコがエゥーゴに参加すれば、サラも共にエゥーゴへ来るため、シロッコを撃つつもりはありませんでした。しかし、交渉が決裂してシロッコが敵のままであれば、「敵を殺すことに問題はない」という浅はかな考えから犯行に及びました。
カミーユは、カツの本当の目的がサラを奪い取るためと見抜いていました。それでも、カツを救うため、裁判では「シロッコの危険性を察知した結果の暴走だった」という解釈で弁護しています。
クワトロは静かにサングラスの位置を直した。
会議室全体を見渡すように視線を巡らせる。
その落ち着き払った声が、静寂を取り戻した室内に響いた。
「審判員として、所見を述べさせてもらおう。」
クワトロはまず正面に座るブライトを見て、次に中央のカツへ視線を向けた。
「告発人であるエマ中尉が指摘した通り、戦時下における独断専行、ならびに規律違反は、軍の統制を失わせる危険な行為だ。」
「カツ・コバヤシ協力要員が犯した過ちは、一歩間違えればアーガマの全乗組員を危険にさらし、さらにはエゥーゴの外交的信用をも失墜させかねないものであった。」
「その点において、厳格な処罰が必要であるという意見には、全面的に同意する。」
カツは息を詰まらせた。
弁護側に同意するために立ち上がったと思っていたクワトロが、最初にエマの主張を肯定したからだ。
しかし、クワトロはそこで話を終えなかった。
「だが――」
わずかに間を置く。
「弁護人であるカミーユ中尉待遇、ならびに被害者である博麗少尉待遇の言葉にも、傾聴すべき真実がある。」
クワトロは腕を組んだ。
「若さとは、時に大人の思惑や政治的駆け引きを飛び越え、直感的に悪を排除しようと走ってしまうものだ。」
「シロッコという存在の危険性を察知し、焦燥感に駆られた結果が、今回の暴挙であったことは否定できない。」
「それを個人の過剰な正義感による暴走として切り捨てるのは容易い。」
クワトロの声がわずかに低くなる。
「だが、若者を危険な戦場へ立たせておきながら、その未熟さから生じた過ちの全責任を、終身収監という形で未来永劫押し付けることは、我々大人の責任放棄ではないのかな?」
クルーたちの間から、低いどよめきが漏れた。
エマも表情を硬くしたまま、その言葉に耳を傾けている。
クワトロ自身、カミーユやカツのような若者を戦場へ立たせてきた一人だった。
その言葉はカツだけでなく、自分自身へ向けられているようにも聞こえた。
「処分とは、単に見せしめの裁きを下すことではない。」
「過ちを犯した者に自らの罪の重さを自覚させ、いかにしてそれを贖わせるかを示すものでなければならない。」
クワトロは一度言葉を切り、ブライトを見つめた。
「したがって、私は告発側が求める永久追放および終身収監は、妥当性を欠くと判断する。」
「審判員としての私の意見は以上だ。」
「裁判長、最終的な判断を委ねる。」
クワトロは静かに一礼し、再び席へ腰を下ろした。
その時、証人席の霊夢と目が合う。
霊夢は何も言わず、軽く片目を閉じてみせた。
クワトロは一瞬だけ意表を突かれたような顔をした後、小さく苦笑した。
会議室の空気は、明確に変わっていた。
カツの行為を許すべきだという空気ではない。
しかし、終身刑によって未来を奪うのではなく、どのような罰を与え、いかに償わせるべきか。
審議の焦点は、厳罰から更生と相応の処罰へと移りつつあった。
裁判長であるブライトは、机上の資料へ目を落とした。
告発側の起訴状。
カミーユの弁護。
霊夢の証言。
そして、クワトロの所見。
それらを確認した後、会議室にいる者たちの顔を一人ずつ見渡す。
最後に、中央で両手を拘束されているカツへ視線を止めた。
ブライトは深く、重い息を吐き出した。
指先で机を軽く叩く。
その小さな音だけで、会議室からすべてのざわめきが消えた。
「全関係者の主張、証言、ならびに所見を確認した。」
厳格な声が響き渡る。
「これより、本臨時軍法会議における最高責任者として、被告カツ・コバヤシに対する判決を言い渡す。」
カツの両肩が大きく跳ね上がった。
カミーユも、霊夢も息を呑み、ブライトの言葉を待つ。
エマは背筋を伸ばしたまま、裁判長席を見つめている。
ブライトは判決書を手に取った。
「被告人、前へ。」
カツは震える足で一歩前へ出た。
拘束具が小さな金属音を立てる。
ブライトはカツを真っ直ぐに見据えた。
「判決を言い渡す。」
「被告カツ・コバヤシ。」
「お前に対し、パイロット資格の無期限停止、重謹慎三十日、ならびに一年間の艦内奉仕作業を科す。」
誰も言葉を発しなかった。
終身収監ではない。
エゥーゴからの永久追放でもない。
しかし、その判決が決して軽いものではないことを、アーガマのクルーたちは理解していた。
特に、パイロット資格の無期限停止。
モビルスーツに乗り、戦果を挙げ、大人たちから認められることを望み続けてきたカツにとって、それは兵士としての未来を絶たれるに等しい処分だった。
ブライトは続ける。
「告発側の求めた、エゥーゴ構成員資格の剥奪、軍務からの永久追放、ならびに終身収監は適用しない。」
カツが顔を上げた。
その瞳に、わずかな光が戻りかける。
だが、ブライトは容赦なく言葉を重ねた。
「勘違いするな。」
カツの身体が再び強張る。
「お前が許されたわけではない。」
「お前が危険にさらしたのは、味方の命と、この艦に乗る全員の安全だ。」
ブライトの視線が、一瞬だけ霊夢へ向けられる。
「この判決は、お前を救うためのものではない。」
「お前にもう一度、人として責任を果たさせるための判決だ。」
ブライトは判決書を机へ置いた。
「お前には今後、銃を持つことも、モビルスーツに乗ることも許さん。」
「アーガマの最前線ではなく、最も泥にまみれる場所で働け。」
「逃げることなく、己の犯した罪と、その重さを背負い続けろ。」
ブライトの声が会議室全体を震わせる。
「以上だ!」
判決を突きつけられた瞬間、カツの両足から力が抜け、張り詰めていた糸が切れたように、その場へ崩れ落ちそうになる。
両手の拘束具が激しく鳴った。
警備兵が咄嗟に身体を支える。
「艦長……。」
カツの声が震える。
「カミーユ……霊夢さん……。」
大粒の涙が次々と頬を伝った。
「すみませんでした……!」
「僕……僕は……本当に……!」
言葉にならない嗚咽が喉を塞ぐ。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、カツは何度も頭を下げた。
パイロット資格の無期限停止。
ガンダムに乗って戦いたい。
大人たちに認められたい。
そう焦り続けてきたカツにとって、兵士としての未来を奪われたことは、自分の存在理由を否定されたに等しい衝撃だった。
それでも、終身刑にはならなかった。
アーガマから追放もされなかった。
罪を背負ったままではあっても、ここに残り、やり直す機会だけは与えられた。
目の前には、自分を庇って銃弾を受け、今も傷の痛みに耐えている霊夢がいる。
その隣には、自分の行為を無理に正当化することなく、未来を残すために弁護してくれたカミーユがいる。
自分が犯した罪の重さと、それでも差し伸べられた手の温かさ。
その二つに打ちのめされ、カツはただ泣き続けた。
ファは胸に手を当て、安堵の息を吐いた。
カミーユは唇を噛み締める。
泣き崩れるカツをじっと見つめながら、静かに拳を握り直した。
霊夢は怒りも、哀れみも浮かべていなかった。
ただ、どこか澄んだ目でカツを見つめていた。
「立ち上がれ、カツ!」
ブライトの鋭い声が飛ぶ。
カツがびくりと身体を震わせる。
「泣いて罪が消えるわけではない!」
「本日より三十日間の重謹慎を執行する。」
「警備兵、被告人を独房へ戻せ。謹慎期間が明け次第、整備班の作業に就かせろ!」
「はっ!」
警備兵がカツの両腕を抱え、引き上げる。
カツは自分の足で立とうとしたが、膝はまだ震えていた。
引きずられるようにして扉へ向かう。
退室する直前、カツは足を止めた。
涙でかすむ目で、カミーユと霊夢を見る。
それから深く頭を下げた。
警備兵に促され、再び歩き出そうとする。
「カツ。」
背後から霊夢の声がした。
カツが振り向く。
霊夢は証人席に座ったまま、真っ直ぐにカツを見ていた。
「私にこれだけ痛い思いをさせたんだから――」
霊夢は自分の傷口の辺りへ軽く手を添えた。
「しっかり反省して、戻って来なさい。」
カツは目を見開いた。
何かを答えようと口を開いたが、声にならなかった。
やがて何度も強く頷く。
警備兵に両腕を支えられたまま、カツは会議室を後にした。
扉が閉じる。
重い金属音が、静まり返った会議室に響いた。
前作「辺境の惑星でリアル弾幕ごっこ」でカツが4人目のメンバーとして参加していた場合、脱出には成功せず、間違いなく全滅するという残念な結論となりました。以下、その理由について説明します。
まず前提:元の3人は「ギリギリで噛み合っていた」
霊夢:指揮と精密射撃
魔理沙:高火力による面制圧
禰豆子:前線維持と不屈の継戦力
この3人が1人でも欠けたら崩れる形で成立していました。
しかも終盤は、防衛設備が壊れた状態で、腐乱死体・心情悪化・連戦疲労に耐えながら戦う局面です。つまり必要なのは「4人目の追加火力」より、壊れない4人目です。
カツ・コバヤシの総合評価
前半は足を引っ張り、中盤以降は事故要因、終盤は致命的リスク寄り。
カツのプラス要素
公平に言うと、まったくの0点ではないです。
1. 人数が1人増える
RimWorldでは人数が増えるだけで、
運搬
掃除
修理補助
資材運び
負傷者搬送
簡単な射撃支援
などの雑務負担の分散ができます。
「他全部2」でも、何もしないよりはマシです。
2. 軍用ライフルを持てる
射撃5は高くないですが、完全な素人でもない。
平時や軽い襲撃相手なら、後方からの補助射撃には一応使えます。
3. もし前線に出さなければ“置物以上”にはなる
壁修理、物資運び、死体処理の補助など、
危険の少ない裏方限定なら一定の価値はあります。
ただし、これは「平時なら」です。
カツの致命的マイナス要素
ここからが本題です。
このカツ、終盤のリアル弾幕ごっこと相性が悪すぎます。
1. 弱虫+貧弱な肉体+不運
これは最悪の組み合わせです。
弱虫:痛みで即ダウンしやすい
貧弱な肉体:被ダメージ1.2倍
不運:危険回避に失敗しやすい
つまり、被弾した瞬間に他キャラより先に崩れる可能性が高い。
終盤のメカノイド戦みたいな「一発が重い」「流れ弾が飛ぶ」「遮蔽物が壊れる」環境では、前線どころか後方でも危ないです。
実戦でどうなるか
ちょっと被弾してショックダウン
搬送が必要になる
霊夢か魔理沙の手が取られる
禰豆子が守りに回る
本来の3人の役割分担が崩れる
この時点でかなり危険です。
2. 精神耐性の壊滅的な低さ
作中では、終盤は腐敗臭・死体・連続襲撃で心情が削られ、3人は精神崩壊寸前まで追い詰められていました。
そこへ、下記特性を持つカツが加わります。
いくじなし:精神的弱さ+8%
精神不安定:精神的弱さ+15%
恐慌乱射:精神的弱さ+6%
浅慮:精神的弱さ-6%(焼け石に水)
嫉妬:寝室が一番豪華でないと心情-8
合計:精神的弱さ+23%、心情-8
一方、霊夢たち3人は下記特性により精神崩壊を抑え込んでいました。
霊夢:「信念の人+あっけらかん」精神的弱さ-9%、心情+12
魔理沙:「能天気」精神的弱さ-6%、心情+5
禰豆子:「鉄の意志+忍耐強い」精神的弱さ-23%
カツはその真逆——終盤のデバフ合計マイナス100近い地獄での精神的弱さ+23%、心情-8は、即精神崩壊が確定する数値です。
具体的に何が起きるか
死体や汚れで心情悪化
自室が豪華でないので常時不満(嫉妬)
仲間3人が主力で、自分が脇役になってさらに不満(カツ特有の承認要求)
襲撃連打で限界
精神崩壊
その結果、戦線放棄か恐慌乱射
この流れがかなり自然です。
3. 恐慌乱射が致命傷
これが一番危険です。
作中でも終盤は、禰豆子が前に張り付き、霊夢が精密射撃し、魔理沙が弾幕を撒くという、味方同士の距離がかなり近い危険な戦い方をしています。
味方への誤射が起こりやすい状況です。
そこにカツの
恐慌乱射
実質的な射撃精度低下
精神弱さ上昇
が入ると、それが全滅の直接原因になります。
最悪ケース
ムカデを抱えている禰豆子に誤射。
ムカデは接近されると砲撃出来なくなるので、禰豆子はムカデに単身飛び乗り押さえつけるという戦い方を繰り返しています。その禰豆子にカツがパニックになって乱射した弾が命中し、禰豆子が崩れ落ちる。
これは“4人目の火力”ではなく“4人目の事故源”になりかねません。
4. ステータスが低すぎて、欠点を補えない
射撃5、格闘3、他全部2。
これ、平穏なコロニーなら「雑務要員」としては成立します。
でもリアル弾幕ごっこの終盤は、平均的な人員では足りない地獄です。
元の3人は、
霊夢:高精度の決定打
魔理沙:高火力による面制圧
禰豆子:人外級の前衛耐久
という明確な強みがありました。
カツは逆に、役割の柱になる長所がないのに、短所だけが大きい。
これが痛いです。
まだまだ続きます。