「こんな展開にしてしまって、この後どうするんですか?」と、たこわさび先生に尋ねたところ、「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになるでしょう。」との回答が返ってきたので、「要するに行き当たりばったりじゃないですか!」と突っ込んだところ、たこわさび先生が転換性ヒステリーを起こして倒れてしまいました。
この展開を正式な本編にすると、以後の物語はほぼ執筆不能となるので、度々申し訳ありませんが、前話はなかったことにして下さい。
それでは、引き続き本編をお楽しみ下さい。
「ハマーン!」
宇宙に響いたその声に、キュベレイのモニター越しのハマーンが反応した。
「シャアか!……違う、誰だ?」
次の瞬間、巨大なデブリの陰から白い機体が姿を現す。
Ζガンダム。
カミーユは迷わずハイパー・メガ・ランチャーの引き金を引いた。
極太のビームが一直線にキュベレイへと走る。
「甘い!」
ハマーンは機体をひねってビームを回避すると、即座にハンド・ビーム・ガンで反撃した。
放たれたビームはΖガンダムではなく、その背後のデブリへ命中する。
轟音とともに岩塊が粉々に砕け散る。
その中から二機の機体が飛び出した。
Gディフェンサー。
そしてメタス。
「カツ! カミーユから敵を引き離すわよ!」
ファの声が通信に響く。
「分かってるよ!」
二機は一直線に護衛のガザC部隊へ突っ込んでいった。
ハマーンは目を細める。
「私を見ていたのは、お前か!」
ファンネルが一斉に展開される。
ビームが幾筋もΖガンダムへ降り注いだ。
カミーユは機体を激しく翻しながら回避し、避けきれない攻撃をシールドで受け止める。
爆煙が視界を覆う。
だが、その煙を切り裂くようにΖガンダムが飛び出した。
ビームサーベルを抜き放ち、そのまま一直線にキュベレイへ斬りかかる。
「何故だ!」
サーベル同士が激しくぶつかり合う。
「何故、あんなものをグラナダへ落とそうとする!」
「約定を破った報いだ!」
「だからって!」
カミーユは押し返す。
「だからって、それで大勢の人を死なせるなんて間違っている!」
ハマーンの瞳が鋭く細められた。
「俗物が知った風なことを!」
その瞬間だった。
二人の機体から眩い光が広がる。
宇宙そのものが震えるような巨大なサイコウェーブ。
その波動は戦場全体へ広がった。
百式のコクピットでクワトロが息を呑む。
「……この感覚は。」
離れた位置で戦うエマも思わず動きを止める。
「何……この感じ?」
ニュータイプではない霊夢でさえ、胸の奥を締め付けられるような感覚を覚えていた。
「エマさん!」
霊夢は思わず叫ぶ。
「カミーユが……ハマーンさんと戦ってる!」
「カミーユ……何が起こっているの?」
霊夢はただ宇宙を見つめ、小さく呟いた。
「カミーユ……ハマーンさん……。」
その頃。
カミーユとハマーンの意識は完全に重なっていた。
互いの心の最も深い場所。
誰にも見せたことのない傷へと入り込んでいく。
ハマーンが見たのは、カミーユの記憶だった。
フォウ。
ロザミア。
サラ。
レコア。
救いたくても救えなかった女性たち。
その悲しみを抱え込み続ける少年の苦しみが、ハマーンの胸へ流れ込む。
一方、カミーユの前には少女時代のハマーンが立っていた。
柔らかな笑みを浮かべながら、シャアの肩へ両手を添えている。
その微笑みは戦場で見る冷徹なハマーンとはまるで別人だった。
「これは……。」
カミーユは息を呑む。
「ハマーンの記憶……。」
「そして苦しみなのか……。」
ハマーンは静かに呟く。
「これが……分かり合うということか。」
カミーユは頷いた。
「そうだ。」
「僕たちは……分かり合えるかもしれない。」
しかし、その共振は突然途切れた。
ハマーンの表情が怒りに染まる。
「よくも人の心へずけずけと!」
「恥を知れ、俗物!」
シャアへの想い。
誰にも知られたくなかった心の奥底。
それを見られた羞恥が怒りとなって噴き出す。
「やめろ!」
カミーユは叫ぶ。
「僕たちは分かり合える!」
「貴様は優れた素質を持っているようだ。」
ハマーンは冷たく言い放つ。
「だが、その無礼を許すわけにはいかん!」
キュベレイのビームサーベルが怒涛の勢いで襲い掛かる。
Ζガンダムは防戦一方となった。
そして、ついにハマーンが勝負を決める一撃を振り下ろす。
「死ねっ!」
その瞬間。
横から二本のビームが走った。
ハマーンが振り返る。
「何!?」
Gディフェンサーとメタスが突撃してくる。
「ネズミどもが!」
ファンネルが一斉に飛び出した。
「止めろ!ハマーン!」
カミーユが叫ぶ。
だが、カミーユの声を無視して、無数のビームが二機を飲み込む。
「うああああっ!」
カツの悲鳴が響く。
「カミーユ!」
ファの叫びとともにメタスも激しく爆散し、二機はたちまち半壊した。
その光景を見たカミーユの瞳から迷いが消える。
「分かった。」
静かな声だった。
「やはり、お前とは分かり合うことはできない。」
「ここで決着をつける!」
「いつまでも貴様に構っている暇はない!」
ハマーンがビーム・ガンを構える。
その瞬間、カミーユは手にしていた銃剣ビームライフルを投げつけた。
思わずキュベレイはそれを払い落とす。
ほんの一瞬。
動きが止まる。
「今だ!」
Ζガンダムの腕部からワイヤー付きグレネードランチャーが射出された。
ワイヤーはキュベレイの腕へ巻き付く。
「何だと!」
カミーユは一気にワイヤーを巻き上げる。
キュベレイが引き寄せられた。
ビームサーベルが一直線に胴体へ振り下ろされる。
その刹那。
カミーユの心へ、微かな思念が流れ込んだ。
――人は、分かり合えるんでしょ。
「ハマーン……!」
一瞬、手が止まる。
サーベルの軌道がわずかに逸れた。
閃光。
キュベレイの肩部バインダーだけが大きく切り裂かれ、宇宙へと吹き飛ぶ。
ハマーンは強引にワイヤーを振りほどいた。
「Ζめ!」
傷ついたキュベレイは急速に後退し、そのまま戦場を離脱していく。
カミーユは追わなかった。
ただ、遠ざかる白い機体を呆然と見つめ続ける。
その背後では、半壊したGディフェンサーとメタスが静かに漂っていた。
決着はつかなかった。
だが二人は確かに互いの心に触れた。
それは戦いの終わりではなく、さらに大きな運命の始まりに過ぎなかった。
今回は、後書き担当のたこわさび先生が転換性ヒステリーで倒れてしまったので、カツは伝説の木の下で告白を受けられるかシリーズは休載させていただきます。