【本編完結】炎上論点スタンプラリー【TOZ】   作:Moa

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アリーシャが神依できるようになったのは何故か

リメイクでアリーシャが神依できるようになったのは何故か。

それは、単なるファンサービスだけではない。

 

結論から言うと、アリーシャが天族の器になったからだ。

スレイと別行動している間のアリーシャには、このような物語があった。

 

穢れに飲み込まれかけた天族の少女が、逃げ込むようにアリーシャを器とした。

それはアリーシャが望んで始まったことではない。だが事情を知った後も少女を追い出さず、その負担ごと受け入れ続けることを選んだ。

 

その結果、天族の少女は、穢れなき人間であるアリーシャを器とすることで、穢れの侵食を免れた。

 

結果として、アリーシャ自身の霊応力も高まっていた。

 

もちろん、アリーシャが天族の少女の器であり続けることを選んだという出来事自体は、リメイクで新たに描かれたものだ。

しかし、そこで彼女の霊応力が高まった仕組みは、リメイクの都合で新しく作られたものではない。

 

『ベルセリア』の設定資料集では、エレノアが聖隷(せいれい)ライフィセットの器として旅を続けたことで霊応力を高め、世界全体の霊応力が元に戻った後も、聖隷――のちに天族と呼ばれる存在――を認識し続けることができたと語られている。

 

つまりアリーシャもまた、スレイたちと別れていた間、天族の器として戦い続けることで霊応力を高めていたのである。

 

最終的に、少女が穢れに侵されず安定して宿ることのできる、清浄な器が見つかった。

少女はアリーシャに感謝し、別れを告げた。

 

 

その後、スレイたちとの再会イベントが発生する。

 

ちょうど原作での一時加入イベントのタイミングで正式に加入するという形だ。

 

 

ミクリオが、誰に聞かせるでもなく小声で言う。

 

「以前より顔色は良さそうだな」

 

すると、アリーシャがごく自然に振り返った。

 

「ご心配をおかけしました、ミクリオ様」

 

ミクリオが目を見開く。

 

「……僕の声が聞こえるのか?」

 

その反応を見て、今度はアリーシャの方がわずかに驚いた。

 

それから、確かめるようにミクリオを見る。

 

「はい。以前よりも、ずっと明瞭に」

 

視線も合っている。

 

声が聞こえるだけではない。アリーシャは、確かにミクリオの姿を見ていた。

 

エドナがアリーシャの目の前で、試すように軽く手を振る。

 

アリーシャの視線が、その動きを正確に追った。

 

「本当に見えてるみたいね」

 

「はい。エドナ様も、ライラ様も。それから……」

「俺様はザビーダ。気軽にザビーダくんって呼んでいいからな」

「それは恐れ多いです、ザビーダ様」

 

ザビーダは軽く笑ったが、ミクリオはまだ納得できない様子だった。

 

「従士契約は、もう切れているはずだ」

 

「はい。今は、スレイの霊応力を介しているわけではありません」

 

スレイも戸惑いながらアリーシャを見る。

 

以前のアリーシャは、スレイを介さなければ天族の声を明瞭に聞き取ることができなかった。

 

それが今は、誰の助けも借りずにミクリオたちを認識している。

 

ユトは、アリーシャの様子をしばらく観察していた。

 

「一時的な霊応力の上昇ではありませんね」

 

「何かわかるのか?」

 

スレイに問われ、ユトは少し考えてから答えた。

 

「継続的に天族の器となっていた可能性があります」

 

アリーシャの表情が変わる。

 

「ユト様には、わかるのですか?」

 

「なんとなく、ですが」

 

ユトはわずかに視線を伏せた。

 

「私も、そうでしたので」

 

その場に短い沈黙が落ちた。

 

アリーシャは、ユトの言葉を急かすことなく待っていた。

 

しかしユトは、それ以上自分のことを説明しようとはしなかった。

 

代わりに、アリーシャへ問い返す。

 

「どれほどの期間、器になっていたのですか」

 

「正確にはわかりません。ですが、数か月ほどは」

 

「体調への影響は?」

 

「発熱と倦怠感がありました。ひどい時には、起き上がることも難しかった」

 

スレイが息を呑む。

 

「そんな状態で、ずっと?」

 

「はい」

 

アリーシャは静かに頷いた。

 

***

 

『ごめんなさい』

 

誰かの声がした。

耳から聞こえたわけではなかった。

自分の胸の奥で、かすかな声が震えていた。

 

『勝手に入ってきて、ごめんなさい。すぐに出ます』

 

「待ってください」

 

アリーシャは、姿の見えない相手へ呼びかけた。

 

「外へ出れば、あなたは?」

 

少女はしばらく答えなかった。

 

『……また、穢れに触れます』

 

「憑魔になる可能性は?」

 

『あります』

 

「今は出なくて構いません」

 

『でも、あなたが苦しい』

 

「苦しいことと、あなたを追い出すことは別の問題です」

 

アリーシャは熱に浮かされながら、それでも言葉を続けた。

 

「安全な器が見つかるまで、ここにいてください」

 

***

 

「最初は、数日だけのつもりでした」

 

アリーシャは言う。

 

「安全な場所を見つけるまで。新しい器となってくださる方が見つかるまで。それまで、私が耐えればよいと思っていました」

 

「数日では済まなかったのですね」

 

「はい」

 

新しい器は、簡単には見つからなかった。

 

穢れに苦しむ天族を受け入れることには危険が伴う。

 

事情を説明しても恐れられ、拒絶されることもあった。

 

アリーシャ自身も、日に日に体調を崩していった。

 

それでも、少女を自分の中から追い出すことはしなかった。

 

「外へ出せば、あの方は再び穢れに晒されます」

 

「だから、ご自身の体調が悪化しても受け入れ続けたのですか」

 

ユトが尋ねる。

 

「はい」

 

「死ぬ可能性もあったはずです」

 

「承知していました」

 

迷いのない返答だった。

 

ユトは何かを言おうとして、口を閉じた。

 

最終的に、少女を受け入れてくれる新たな器が見つかった。

 

アリーシャは彼女と別れた。

 

天族を宿していた期間は終わった。

 

それでも、そこで高められた霊応力は失われなかった。

 

ミクリオが、納得したように呟く。

 

「器であった経験が、アリーシャ自身に残ったのか」

 

「その可能性が高いでしょう」

 

ユトが答える。

 

「天族が離れたからといって、器であった期間まで消えるわけではありません」

 

アリーシャは自分の手のひらを見る。

 

「私は、あの方を守りたかっただけです」

 

「それで充分だと思う」

 

スレイは言った。

 

アリーシャが顔を上げる。

 

「アリーシャが守ったものがあって、そのために得た力なら、それはアリーシャ自身の力だ」

 

ここで初めて、アリーシャは少しだけ笑った。

 

「ありがとう、スレイ」

 

この時点では、まだ神依できるとは誰も知らない。

 

アリーシャ自身も知らない。

 

ただ、スレイと別れていた時間が、何もなかった空白ではないことだけが明かされる。

 

彼女には彼女の戦いがあった。

 

そして、その戦いの結果が、後の神依へと繋がっていくのである。

 

***

 

ハイランド王国の市民が危険にさらされていると聞いて、アリーシャは真っ先に飛び出していった。スレイ達も慌てて後を追う。

そこには、今まさに憑魔に襲われそうになった少女がいた。

アリーシャは一切のためらいもなく少女の前に立つ。

 

「スレイ、もう一度、私と従士契約を結んでくれないか?」

 

スレイは頷く。

 

契約の光が収まる。

 

画面の右側は、暗くならなかった。

 

「スレイ、右目は?」

 

ミクリオが真っ先に尋ねる。

 

スレイは何度か瞬きをして、アリーシャを見る。

 

「大丈夫だ。ちゃんと見える」

 

アリーシャの霊応力が、かつてとは比較にならないほど高まっている証拠だった。

 

契約を終えると、アリーシャの槍から浄化の光が噴き出す。

憑魔を薙ぎ払い、少女を救い出す。

 

だが、続いて巨大憑魔がアリーシャたちの前に立ちふさがった。

ゴーレム型の巨大憑魔だった。岩塊に宿った穢れが自律し、巨体を形作っている。

 

3メートルほどの巨体にも、アリーシャは臆せず突っ込んでいく。

 

エドナが術で援護する。

「ロックランス!」

ゴーレムは足止めされ、その先にアリーシャの槍が突き刺さる。

 

しかし決定打には至らない。

 

 

ライラが「今のアリーシャさんなら、あるいは」と言った。

 

「今の私には?」

 

「神依であれば、立ち向かえる可能性があります」

「私にできるのでしょうか」

 

「……信じています」

 

「行きましょう、ライラ様!」

 

「はい!」

 

二人は同時に真名を唱える。

 

「「フォエス=メイマ!」」

 

力が流れ込んでくる。

 

神々しい装束が姿を現す。

 

そして同時に、ライラの声が、これまでよりもずっと近い場所から聞こえた。

 

『アリーシャさん。私の炎を、あなたにお預けします』

 

『共に参りましょう』

 

「行きます!」

 

 

アリーシャは、誰かに神依を与えられたのではない。

 

彼女自身が、そこへ辿り着いたのだ。

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