ユトとエドナの初対面は、この上なく変だった。
霊峰レイフォルク。
山頂付近には、人の住む町も、旅人が休める宿もない。吹きつける風と、雲を突き抜ける岩肌。そして、山そのものを縄張りとする一体のドラゴンだけがいる。
エドナは、そのドラゴンの傍を離れなかった。
誰かが兄を討ちに来るかもしれない。
兄が誰かを殺すかもしれない。
どちらも止められないと知りながら、それでも見張り続けていた。
そんな場所へ、ザビーダが見知らぬ人間を連れてきた。
灰味を帯びた髪の、妙に落ち着いた青年だった。山道を登ってきたはずなのに息を乱した様子もない。手には武器ではなく書類の束を抱えている。
少なくとも、兄を殺しに来た戦士には見えなかった。
だからといって、信用できる理由にもならない。
エドナが傘を肩へ預けたまま眺めていると、その青年、ユトは挨拶もそこそこに言った。
「アイゼンさんが、これ以上人を殺さずに済む方法を考えてきました」
エドナは眉を寄せた。
耳障りのよい言葉だった。
こういう言い方をする者ほど、結局は兄を殺せと言う。これまでにも何度か聞いた。危険だから。被害が出るから。もう元には戻らないから。
「殺すの?」
だから、先に聞いた。
「殺します」
ユトは即答した。
「帰って」
「説明が完了していません」
「いらない」
エドナは傘の先で山道を示した。
話は終わりだった。
少なくとも、エドナの中では。
だがユトは帰ろうとしなかった。怒るでも、取り繕うでもなく、ただ予定していた説明が途中で遮られたことを問題視している顔だった。
「殺害直後、即座に転生させることによって、アイゼンさんの魂を保持します」
「は?」
エドナの動きが止まった。
傘の先がわずかに下がる。
今、何と言ったのか。
聞き間違いかと思った。だがユトの表情には、冗談を口にした者の気配が一切なかった。
「そのための術式は、既に実用段階へ入っています。絶対に可能とは言い切れませんが、八割程度の確率で、その場に天族として再転生可能です」
「本気で言ってるの?」
「はい」
また即答だった。
迷いがない。
自信に満ちているというより、質問に対して事実を返しただけの声だった。
エドナはユトを見つめた。
人間が天族の転生を扱う。
それだけでも異常だった。まして、ドラゴンとなった兄を一度殺し、その魂を即座に天族として生まれ直させるという。
荒唐無稽だ。
普通なら、そう切り捨てていた。
だが、ザビーダが止めない。
隣で面白そうに眺めているだけで、この人間を嘘つきとも、狂人とも呼ばなかった。
「……それを先に言いなさいよ」
ようやく絞り出すと、ユトはわずかに首を傾げた。
「先に『殺さない』と伝えるのは、事実と異なります」
「ザビーダ」
エドナは視線だけを横へ向けた。
「この人間、おかしいの?」
「変な奴ではあるぜ」
ザビーダは否定しなかった。
ユトが少し不服そうな顔をする。
ほんのわずかな変化だったが、エドナには見えた。
「まあ、悪いことは考えちゃいねえよ。俺が保証する」
「まともだとは保証しないのね」
「そこまで言うと嘘になるからな」
ユトはますます不服そうになったが、反論はしなかった。
代わりに抱えていた紙束から、数枚を抜き出す。
「ただし、この術式の実施について、アイゼンさん本人の同意は得られません」
その言葉で、エドナの意識が再び引き戻された。
「今のお兄ちゃんとは話せないもの」
「はい。意思疎通は不可能です。そのため、ドラゴン化以前の意思、ザビーダさんとの約束、エドナさんの希望を、どの程度判断材料にできるか検討する必要があります」
救えるかもしれない。
そう言って押し切るのではない。
本人が答えられないことを、ユトは最初から問題として扱っていた。
ザビーダが腕を組む。
「俺は、あいつを殺すと約束した」
「はい」
ユトは頷いた。
「そのため、この方法を実施しても、ザビーダさんがアイゼンさんとの約束を破ったことにはなりません」
「どういう理屈だ?」
「ザビーダさんは、ドラゴンとなったアイゼンさんを殺します」
ユトは淡々と説明を続ける。
「その後、私がアイゼンさんの魂を転生させます」
「抜け道じゃねえか」
「約束の履行と救命措置は別件です」
「殺した後に救命措置って言う奴は初めて見たぜ」
「生命の断絶を最小限に抑える処置ですから」
「やっぱり変な奴だな」
エドナは黙って二人を見ていた。
ザビーダは呆れている。
だが、怒ってはいない。
アイゼンとの約束を軽んじられたとは感じていないらしい。むしろ、どうしようもない約束を守ったまま、結末だけ変えようとするユトの理屈を、半ば面白がっているようにも見えた。
ユトは抱えていた書類を両手で差し出した。
「こちらが詳細になります。決定は今すぐでなくて構いませんので、受け取っていただけますか」
エドナは紙束を見下ろした。
「分厚すぎない?」
片手で持つには少し重そうだった。
「生命にまつわる問題を、簡略化するわけにはいきません」
「何が書いてあるの?」
「術式の原理、成功率の算出根拠、想定される失敗例、魂の損傷が確認された場合の停止条件、再転生後に記憶や人格が保持されない可能性についてです」
「まだあるの?」
「はい。術式実施に対する代理同意の妥当性、アイゼンさんの過去の意思を現在の意思として扱える範囲、実施後に本人が転生を望んでいなかったと判明した場合の責任についても記載しています」
「……本当に分厚いわね」
「不足があれば追記します」
「増やす気なの?」
「必要であれば」
エドナはため息をついた。
受け取るべきではないと思った。
こんな突拍子もない話を信じる理由などない。八割という数字も、この人間の研究も、エドナには確かめようがなかった。
けれど。
この紙束の中に、兄を救う可能性があるかもしれない。
一度は死なせなければならないとしても、その先があるかもしれない。
そう思ってしまえば、無視することはできなかった。
「そう。じゃあ、貰っておくわ」
差し出された書類を受け取る。
見た目以上に重かった。
「ありがとうございます」
ユトは深く頭を下げた。
提案を受け入れられたわけでもないのに、どこかほっとしたように見えた。
「勘違いしないで。まだやるとは言ってないから」
「承知しています。読んだ上で、拒否していただいても構いません」
「その時は?」
「別の方法を探します」
「まだ探すのね」
「アイゼンさんが人を殺し続ける状態を、放置することはできませんから」
あまりにも真っ直ぐに言われ、エドナは返す言葉を失った。
兄を危険なドラゴンとして処分したいのではない。
兄がこれ以上、誰かを殺さずに済むようにしたい。
最初に言った通りなのだ。
ただし、そのために一度殺す。
やはり意味が分からなかった。
用件を終えると、ユトはザビーダと共に山を下り始めた。
来た時と同じように、余計なことは言わなかった。エドナに希望を持てとも、信じろとも言わない。ただ選択肢と、その危険性を書いた紙束だけを置いていった。
二人の背中が山道の向こうへ小さくなっていく。
エドナは腕の中の書類へ目を落とした。
兄を殺すための計画書。
兄を救うための計画書。
その両方が、同じ紙束に収められている。
「これだから人間は嫌いなのよ」
誰に聞かせるでもなく呟いた。
いや、さっきの一例を人間全体へ適用するのは、さすがに無理があると思うが。
***
レイフォルクを下る山道は、登ってきた時よりも風が強かった。
背後を振り返っても、エドナの姿はもう見えない。岩肌と雲に遮られ、山頂付近は白く霞んでいた。
「受け取ってもらえてよかったな」
先を歩くザビーダが言った。
「受領と同意は別です」
ユトは即座に訂正した。
「分かってるよ。だが、最初の一言で追い返されかけた割には上出来だろ」
「虚偽の説明をするわけにはいきません」
「もう少し言い方ってもんがあると思うがねえ」
「アイゼンさんを殺害する工程が含まれる以上、先に救えるとだけ伝えるのは不正確です」
「はいはい。お前さんがそういう奴なのは分かったよ」
ザビーダは肩をすくめた。
ユトは、エドナが受け取った書類の控えを確認しながら歩いていた。術式の原理、成功率、失敗時の対応。説明漏れがなかったかを、頭の中でもう一度確かめているらしい。
「で」
ザビーダが振り返った。
「エドナちゃんが承知したとして。どうやってアイゼンを殺す?」
ユトの手が止まる。
「私とザビーダさんの二名で、アイゼンさんに勝てそうでしょうか」
「さてな」
ザビーダは軽く答えたが、その目は笑っていなかった。
「俺一人でどうにかできるなら、とっくにやってる。お前さん、導師なんだろ。神依はできるのか?」
「試しましたが、ユイ以外とは不可能でした」
本来の未来では第二秘奥義の一瞬しか成立しなかった。今回は、幼少期からユイと連携を重ねたことで、限定的ながら任意発動まで安定している。
「そいつは、お前さんの中にいる天族だったか」
「はい」
「なるほどな」
ザビーダは顎へ手を添えた。
「ユイとの神依で、ドラゴン相手にどこまでやれる?」
「不明です。対人、対憑魔戦での記録はありますが、ドラゴンとの実戦経験はありません」
「つまり、ぶっつけ本番か」
「事前に可能な限り模擬戦を行います」
「ドラゴンの模擬戦相手なんざ、どこで用意するんだよ」
「それも検討中です」
「検討中が多いねえ」
「成功を保証できない以上、未確定事項として扱うべきです」
ザビーダはしばらく黙って歩いた。
山道の先で、風に煽られた枯れ草が波のように倒れていく。
「スレイに協力を頼むのは?」
何気ない口調だった。
だが、最も自然な候補だった。
導師としての霊応力。神依を自在に使いこなす。複数属性の天族と契約できる。憑魔を浄化する力。アイゼンを相手にしても、戦力として不足する理由はない。
ユトはすぐには答えなかった。
「今のスレイさんが人を殺せば、精神的に大きく消耗するでしょう」
「相手はドラゴンだぜ」
「アイゼンさんです」
ユトは前を向いたまま答えた。
「術式が成功すれば再転生します。しかし、戦闘中のスレイさんには、確実に成功するという保証はありません。自分の攻撃でアイゼンさんを殺したという認識は残ります」
「それで穢れると?」
「可能性はあります。最悪の場合、導師本人が穢れ、契約している天族にも影響が及びます」
「だが、これから先も殺さなきゃならねえ場面はあるかもしれねえ」
「はい」
「なら、いつかは覚悟を決める必要があるんじゃないか?」
ユトの足が、ほんのわずかに遅れた。
正しい指摘だった。
前の歴史のスレイは、救えない者と向き合った。浄化だけでは終わらない現実を知り、殺すことと救うことを考え続けた。
今のスレイには、その経験がない。
ユトが起こる前に取り除いてきたからだ。
「私は、スレイさんから殺す覚悟を奪ってきた」
声は、風に紛れるほど小さかった。
「ん?」
ザビーダが振り返る。
「今、何か言ったか?」
「いいえ。なんでもありません」
ユトは歩調を戻した。
「ただ、将来必要になる可能性があるからといって、今回その経験を与える理由にはなりません」
「経験を与える、ねえ」
「スレイさんを成長させるために、アイゼンさんの殺害を利用するべきではありません」
「そりゃそうだ」
「ですから、スレイさんには頼みません」
断言だった。
ザビーダはユトの横顔をしばらく眺めたが、それ以上は追及しなかった。
「となると、あと一人か二人は欲しいところだな」
「はい。天族を視認できること。ドラゴンの穢れに耐えられること。アイゼンさんと戦えるほどの実力があること。そして、殺害を伴う作戦内容を理解した上で、自発的に同意できること」
「条件を並べると、ますます見つからなそうだな」
「戦える者と、戦わせてよい者は別です」
「お前さん、自分は後者に入ってるつもりか?」
ユトは一瞬だけ黙った。
「私は術式の実施者です。除外できません」
「質問に答えてねえぞ」
「作戦を成立させるために必要です」
「やっぱり答えてねえな」
ザビーダはため息をついた。
やがて、何かを思い出したように顔を上げる。
「サイモンは?」
ユトも足を止めた。
「確かに」
他者の知覚すら支配する幻術。ヘルダルフの領域下でも動けるほどの力。ドラゴンを直接倒す火力が不足していても、攪乱や拘束ができれば戦況は大きく変わる。
「彼女ほどの能力者であれば、不足はないでしょう」
「だろ?」
「相談してみます」
ユトは頷いた。
***
ユトは、サイモンの元を訪れ、アイゼン殺害再転生計画に協力してもらえないか尋ねた。
「私は人を殺さないという誓約を負っている。協力はできない」
「アイゼンさんは現在ドラゴンです」
「言葉の分類で抜け道を探すな。あれは天族だった者だ」
「……分かりました」
次に一般の天族にも頼もうとした。
「ドラゴンの穢れに近づけば、私まで呑まれるかもしれない」
「防護術式は用意します」
「絶対に防げるのか?」
「保証はできません」
「なら、無理だ」
「……はい」
ユトは、ひとりの女性を思い出した。
ロゼ。
傭兵団として戦闘経験がある。
前の歴史では殺す覚悟もあった。
霊応力も非常に高い。
デゼルを通して天族との連携にも慣れている。
条件だけなら、ものすごく適任だった。
「ロゼさんなら、戦力上は問題ありません」
「なら声をかけるか?」
「……」
「何だよ」
「ロゼさんに、また人を殺させることになります」
「また?」
「……『前』の話です」
「相手はドラゴンだぜ」
「それでも、アイゼンさんです」
それでも、ユトとザビーダは決めていた。
……あと1人戦力が見つかったら。エドナの同意が得られたら。それでもう、作戦を実行に移せると。
***
「あと一人いりゃあ、だいぶ楽になるんだがな」
ザビーダが両手を頭の後ろで組み、空を見上げる。
「条件が厳しすぎます」
「ドラゴンが見える。近づいても穢れに呑まれねえ。そんでもって、アイゼンと殴り合えるくらい強い奴」
「加えて、殺害行為を理解した上で、自発的に協力していただく必要があります」
「そいつが一番難しいんじゃねえか?」
「はい」
ユトは否定しなかった。
「戦える者を探すことと、戦わせてよい者を探すことは別です」
「相変わらず面倒くせえな、お前さんは」
「生命に関する判断を簡略化するつもりはありません」
「知ってるよ」
ザビーダが苦笑した、その時だった。
「何の話だ」
低い声が背後から届く。
二人が振り返ると、道の脇にデゼルが立っていた。
偶然通りかかったというには、視線が真っ直ぐすぎた。おそらく途中から話を聞いていたのだろう。
「よう、デゼル」
ザビーダが軽く片手を上げる。
「ドラゴンと戦える奴を探してるところだ」
「俺では不足か」
あまりにも迷いのない返答だった。
ザビーダの表情から、わずかに軽さが消えた。
「いいや」
デゼルの実力を疑う理由はない。
風の傭兵団を長く見守り、数え切れない戦場を越えてきた天族だ。ドラゴンを相手にしても、少なくとも足手まといにはならない。
「凄く助かるぜ」
そこで言葉を切り、ザビーダはデゼルを見据えた。
「……だが、いいのか?」
「何がだ」
「アイゼンを殺すことになる」
風が街道を抜けた。
「聞いている」
「殺した直後、ユトが再転生させる。そういう作戦だ」
「それも聞いた」
ユトが一歩前へ出た。
「成功率は、現時点の推定で約8割です」
デゼルの目がユトへ向く。
「術式に成功した場合、アイゼンさんの魂をその場で天族として再転生させます。しかし失敗した場合、アイゼンさんはそのまま死亡します」
「分かっている」
「デゼルさん自身にも危険があります。ドラゴンの穢れに長時間接触すれば、貴方が憑魔化する可能性も否定できません」
「防ぐ方法はないのか」
「私を器にしてください。ただし、完全に遮断できる保証はありません」
「分かった」
返答が早い。
だからこそ、ユトは確認を止めなかった。
「アイゼンさんを殺害する行為については」
「必要なんだろう」
「必要であることと、貴方が引き受けなければならないことは同義ではありません」
デゼルがわずかに眉を寄せた。
「俺では不足なんじゃない。そう言ったな」
「実力は不足していません」
「なら、何が問題だ」
「貴方が恩義を理由に、自分の生命や意思を軽く扱う可能性です」
沈黙が落ちた。
ザビーダがユトを横目で見る。
「そこまで言うかね」
「必要な確認です」
デゼルはしばらくユトを見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
「恩を返す、いい機会だと思ったのは事実だ」
ユトの表情がわずかに硬くなる。
「恩を理由に、生命の危険を伴う作戦へ参加する必要はありません」
「なら、俺自身が望んでいると言えばいいか」
「理由を確認させてください」
「面倒な奴だな」
「はい」
即答され、デゼルは一瞬だけ言葉を失った。
ザビーダが堪えきれずに笑う。
「自分で認めるんだな」
「事実ですから」
デゼルはユトから視線を外し、遠くにそびえるレイフォルクの山影を見た。
「俺は、ロゼたちを見守ることしかできなかった」
静かな声だった。
「前の俺がどうなったのかは知らない。だが、お前は俺が死ぬ未来を知っていて、それを変えたんだろう」
ユトは答えなかった。
否定できることではなかった。
「生き残った時間をどう使うかは、俺が決める」
デゼルはユトへ向き直った。
「アイゼンを救える可能性があるなら、俺は戦う」
「失敗する可能性があります」
「ああ」
「デゼルさん自身が穢れる可能性もあります」
「それでもだ」
「ロゼさんや他の方々への義務ではなく、貴方自身の意思ですか」
「ああ」
迷いはなかった。
ユトは数秒間、デゼルの表情を確認した。
嘘を見抜けるわけではない。それでも、言葉を省略して戦力に数えることはできなかった。
「……分かりました」
ユトは深く頭を下げた。
「協力をお願いします」
「最初からそう言っている」
「ありがとうございます」
デゼルは頷き、それから短く言った。
「俺を使え」
「使いません」
ユトはすぐに訂正した。
「協力をお願いします」
「同じだろう」
「違います」
強い語調ではなかった。
だが、譲るつもりがないことだけは分かった。
デゼルはしばらく黙り込み、やがて視線を逸らした。
「……そうか」
「はい」
ザビーダが二人を交互に見て、肩をすくめる。
「ったく。面倒くせえのが二人に増えやがった」
「お前に言われたくない」
「そいつは手厳しいねえ」
軽口を交わす二人を見ながら、ユトはわずかに目を伏せた。
前の歴史において、デゼルはここにはいなかった。
復讐を誓った。アイゼンを救うために戦うことはなかった。
「ユト」
ザビーダに呼ばれ、ユトは顔を上げた。
「これで三人だ。勝てそうか?」
「戦術を再計算します」
「景気のいいこと言えねえのかよ」
「勝率を算出する前に断言することはできません」
「はいはい」
ザビーダが歩き出し、デゼルもその隣へ並ぶ。
ユトは二人の背中を見てから、後を追った。
そこにデゼルがいること自体が、十六年かけて変えた歴史の答えだった。