ザビーダ加入前のイベントで、好きなセリフがある。
ユト「ザビーダさんはライラさんやエドナさんと比べると、ロゼさんに声をかける頻度が少ないように感じます」
への返答。
ザビーダ「弟子の惚れた女取るほど落ちぶれちゃいねえよ」
彼は何かを確認するかのような態度を取る。
少し間を空けて、
ザビーダ「……なんでもねえ、忘れろ」
と撤回する。
この「間」が、後から効いてくる。
いや、これってまさか……。
炎上してない論点まで燃やすのやめてもらっていいですか?
ユトはその後続ける。
ユト「この中の誰かがザビーダさんの弟子ということですか?」
デゼル「俺は知らん」
ユト「デゼルさんは面識がないのですね。となると他の誰かということになりますが……」
ユト、俺お前が怖いよ。
ユト「私もあのような半裸の師匠を持った覚えはありませんし……スレイさんとミクリオさんはどうですか?」
ミクリオ「僕は知らないぞ」
スレイ「オレも。ジイジのことは師匠って言えるかもしれないけど」
ザビーダの過去を匂わせるはずだった台詞が、ユトの手にかかると一瞬で容疑者リスト作成イベントになる。
急に人狼ゲームを始めるのをやめろ。
ユトは続ける。
ユト「ではライラさんかエドナさんでしょうか? 異性間と比較して件数は多くありませんが、同性間で恋愛感情が芽生えることもあります」
同性愛に偏見のない価値観。それはいいけど今じゃないだろ。このタイミングで多様性を発揮されても困るんだよ。
ロゼ「いや、別に女の子が女の子好きでもいいけど、今その確認いる?」
ライラ「わ、私ですか!?」
エドナ「言っておくけどワタシは違うわよ。巻き込まないで」
ザビーダ「おいおい、話が妙な方向に飛んでるぜ」
デゼル「……知らん」
ミクリオ「君は本当に知らないんだな……」
知らない男は止まらない。
ユト「では、ザビーダさんの弟子はこの中にいないという結論になりますが……。ロゼさんは、この場にいるかどうかに関わらず、自身がこの人から好意を持たれていると思う方はいますか?」
ロゼ「知らないよ」
知らないよ。
そうだよ。
ロゼは知らないんだよ。
恋愛感情をヒアリング項目に落とし込むな。
人の心を調査票にするな。
ザビーダ「坊主、女の子にそういうこと聞くもんじゃねえぜ」
ユト「では、男性に聞くべきでしたか?」
ザビーダ「そういう意味じゃねえよ」
ミクリオ「ユト、もういい」
ユト「しかし、ザビーダさんの発言と現在確認できる人間関係に齟齬があります」
ミクリオ「齟齬があっても今はいい」
ユト「未確認情報を放置するのですか?」
ミクリオ「放置するんだ」
ロゼ「ミクリオが常識人してる……」
エドナ「だいたいこいつのせいでね」
ちなみにユトを同行者指定するとこんな事を言う。
ユト「ザビーダさんの『惚れた女』発言が嘘だと仮定しても、何故わざわざ嘘を発言したのかがわかりません。……他の誰かが嘘をついている?」
TOZ-Rは推理ゲームではない。戻ってこい。
***
一方デゼル視点、この時点ではこうなる。
ザビーダには弟子がいるらしい。
その弟子はロゼに惚れているらしい。
だが俺は知らない。
つまり、俺の知らない男がロゼに惚れている。
「別にロゼが誰に好かれようと関係ない」
「だが、そいつがロゼに近づくなら警戒する必要がある」
「ザビーダの弟子なら腕は立つのか」
「そいつは信用できるのか」
「……なぜ俺はこんなことを考えている」
ユトとデゼルの会話も、やはり論点を燃やしに来る。
ユト「デゼルさんは、ロゼさんに恋愛感情を持つ人物を警戒しているのですね」
デゼル「違う」
ユト「では、ロゼさんに接近する不審者を警戒している、という理解でよろしいですか」
デゼル「そうだ」
ユト「しかし、現時点でその人物が不審者である根拠は、ロゼさんに好意を持っている可能性があることのみです」
デゼル「……」
ユト「つまり、恋愛感情を持つ人物であること自体を警戒対象としているように見えます」
ライラ「ユトさん、そのくらいにしておいてあげてください」
ユト「……わかりました」
次にザビーダに会った時はこうなった。
デゼル「その弟子とやらを俺に紹介しろ」
ザビーダ「そいつは無理だな」
ユト「その人物は存命ですか?」
ザビーダ「さあな」
アキネーターもやめろ。なんで一人だけ別のゲームをやってるんだ。
これはアクションRPGですか? ユト「部分的にそう」違うわ。確実に「はい」だわ。お前が勝手に会話パートを推理ゲームにしているだけだ。
デゼルは真実を知らない。ユトも知らない。
いや、ザビーダ以外の誰も知らない。エドナやライラは察しているかもしれないが。
同行者台詞ではユトはこう言う。
ユト「ザビーダさんの弟子ですか。興味があります。いつかお会いしてみたいですね」
***
そしてデゼルは、死の間際に全てを思い出す。
ザビーダに命を救われ、憧れていたこと。
その影響で戦い方を真似していたこと。
最期に、この帽子はザビーダに渡してくれ、とスレイ達に託す。
俺の師匠だった、と言う。
デゼルのロゼへの感情が本当に恋愛だったのかは明らかにされない。
だが、ザビーダが師匠であることだけは認めた。
この論点についても、やはりユトは遅効性だったのだ。
だが、発火した時には遅すぎた。
「いつかお会いしてみたいですね」
相手はすぐそばにいた。本人が、全てを忘れていただけで。
***
後で振り返ると、ザビーダはあの軽口でデゼルの反応を確認していたのかもしれない。
「弟子の惚れた女取るほど落ちぶれちゃいねえよ」
何でもよかった。
「誰が弟子だ」でも、「惚れてねえ」でも、「黙れ」でもよかった。
だが、デゼルの反応は無だった。
覚えていない。
自分が弟子だったことも。
自分が誰に何を向けていたのかも。
だからザビーダは撤回した。
「なんでもねえ、忘れろ」と言った。
忘れろも何も、デゼルは最初から覚えていなかった。
そう考えると、あれは切ないシーンだった。
ただしその場にユトがいたせいで、初見時の印象はほぼ人狼ゲームである。
これはデゼルとロゼの話であり、デゼルとザビーダの話でもある。
自分の感情を知らない男。
自分の師匠を忘れていた男。
それでも最期には、帽子を託す相手の名前を思い出した男。
いい話だ。
間違いなくいい話である。
ただし、その途中でユトが弟子候補を洗い出し、同性間恋愛可能性を検討し、ロゼ本人に好意認識アンケートを実施している。
だから困る。