百合好き男子高校生   作:人間だもの。み◯お

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月島まりな Ⅰ

♀×♀

ライブハウス『CiRCLE』 キッチン

 

 

 

 ここはライブハウスCiRCLE。ガールズバンドを組んでいる女の子達が主に利用している場所。日曜日になると利用客は多くなり忙しくなるが、ピークが過ぎるとつい気が緩んでしまう時間帯だ。

 

「斎藤くんっていつも休憩中に勉強してますよね?」

 

 そばにいる女性スタッフから、バイトスタッフの少年の名前を聞いた月島まりなは、カフェモカを淹れる手を止めず声だけで答えた。

 

「今度資格試験あるから大変なんだーって言ってたよ」

「へー、真面目…やっぱ普段から仕事ができる人って、あんな風に努力してるもんなんですね」

「少なくとも彼の場合はそうなんじゃない? わからないことがあったらちゃんと聞いてくるもんね」

 

 話題に挙がっているのは最近入ってきた学生バイト。女性が多かったこのライブハウスにとって、男子が入るのは初めての試みであったが、男手があるだけで作業効率が段違いだ。しかも勉強熱心な性格であり、機材の扱い方について一通り説明したら、一週間後には楽器のチューニングまですべて覚えるほどの真面目さと熱心さを兼ね備えている。

 

 

「…でもあぁいう真面目な性格って損じゃないですか?」

「えー?なんで?」

「このまえなんか、私とまりなさんが雑談してたとき、緊急の用事だったのにわざわざ話が終わるまで待ってたんですよ?」

「あー…機材トラブルのときかー…」

 

 そんな彼は、真面目だけではなく謙虚な部分もみられる。まりなとスタッフが話しているときには割り込みをせず、終わるまで待っている。

 それこそ、雑談をしていたとしても、嫌な顔ひとつせずいつもの笑顔でいた。

 

「ととっ…そろそろ私も休憩入らなきゃ、じゃあとはお願いね」

 

 

♀×♀

 

 

プロローグ「久々の小説投稿は腕が鳴る」

 

 

♀×♂️

 

 

「お疲れさま!」

 

 月島まりなは、事務所でメモ帳に向かっている少年に話しかけた。少年はいきなり声をかけられたことに驚きながら、まりなの顔を見るとすぐに微笑んだ。

 

「お疲れ様です!まりなさん」

「最近は毎日勉強してるね?」

 

彼、斎藤幸太郎は、いつもそうだった。

目の下のクマとタレ目。

メモ帳を開いている時はいつも鋭く、まるでヘビのよう。これで16歳だと言うのだから疑ってしまう。それで見られるとヒエって感じてしまう。

 

「試験が近くなってきましたからねー」

「頑張ってね!合格したらお祝いするよ〜!」

「…ITパスポートなんだけどなぁ…」

 

ーー嘘だ

 

「あ、まーた隈がひどくなってる!」

 

彼女は予想していた。

大方、元の世界に戻る方法を探しているんだろうと。

 

 彼の目の下を親指で優しく拭うと、彼はヒエっと言いながら顔が赤くなる。

 

「うぉっ…ちょまま!!」

 

 入って一週間で業務を一通り覚えるほどの人間離れしているイメージはあれどーーー

 

「もぉ~この子ったら~!」

「ちょ…自分受けは地雷なんです!」

 

 この反応を見ると、普通の男の子のような一面もある。そこが初々しく思い、頭を乱雑に撫でる。

 

「…ねぇ」

 

 頭を撫でる手を止め、彼女はぽつりと呟いた。

 

「やっぱり帰りたいって思う?」

「当たり前じゃないですか。昨日遅くまで起きてしまったので帰って寝たいんですよ」

「いやそうじゃなくて!」

「? どういうことすか?」

 

 まりなから見て、彼は社会性が高いと思っていた。彼はここ数ヵ月で、この施設を通し色んなバンドと仲良くなったからだ。

 

「こっちの世界で色んな子と友達になれたじゃない?あのロゼリアやパスパレみたいな芸能人とか…」

 

 彼女は言ってないが、親密度でいえばAfterglowやポピパ、ハロハピなどほかにも多種多様に交流の幅は広い。

 

「元の世界じゃこんな経験出来ないよね?」

「できませんね」

 

 キッパリとまりなの目を見て告げる。今までの出会いを一期一会として大切にしていると思う。実際に働いている姿を見ると、色々と優しくしてくれる女の子達ばかりだ。これほど恵まれたものは今後絶対に訪れないだろう。

 なら、とまりなが口を開こうとしたらピシャリと遮られた。

 

「でもね、まりなさん」

 

 少年は手元のメモ帳に目線を落とす。

 

「僕の帰りを待ってる人がいるんです」

 

 その目は、何かを懐かしむようだった。

 一瞬、まりなの表情が暗くなったが、少年の視線を感じるといつもの優しい顔に戻る。

 

「そっか〜そうだよね〜ごめんね!変なこと言っちゃって!」

ーーでもさ

「ご家族とか心配だよね?」

ーーあの子達は

「はい…それに友達も心配ですし」

 

 

ーーあなたを元の世界に返す気はないみたいだけど

 

「じゃあそろそろ休憩あがりますね」

 

ーーそれは言わないほうがいいかもな

 

 

「…はーい、お願いね」

 

 

 

 建物の外では雨が降り始めていた。

 休憩室の扉を出て右手に進むと、すぐに受付カウンターがある。そこで待機している女性スタッフに交代を知らせると、このあとの予約など簡単な引き継ぎを終え、ひとり受付業務に徹していた。

 

ーー危なかった

 

 先程のメモ帳は鍵つきのロッカーの中にしまってある。休憩中にまりなが休憩室に入ってきたのを気付けなかった。もし、こちらの手元を見られていたら確実にバレる距離だったのだ。

 

ーー見られなくて本当に良かった

 

 少年は転生者である。この世界に来る前は普通に高校生として青春を謳歌し、ひとつの趣味に没頭する毎日を送っていた。そんな少年がメモ帳に向かって書いていたもの。

 それはーーー

 

ーーまりなさんは一見受けだけど攻めな一面もありますな

 

 百合、百合、百合。見渡す限りの百合、女性同士で恋愛をする描写が文章や絵でうめつくされている。

 現在、百合とは少年がハマっている沼ジャンルだ。個人で本にするほどのめりこんでいる。

 

ーーにしても、女性スタッフの何人かと付き合ってるな

ーーありゃやり手だわグヘヘヘ

 

 思い出しているのは、先程まりなが彼の頭を乱雑に撫でたとき。あの流れるようなナデナデは間違いなく何度もこなして、いろんな女を口説き落としてるに違いない。彼が彼女たちの会話を見ているのは、それに百合の鼓動を感じているからだ。

 以前、この施設の利用者が

『キラキラドキドキして星の鼓動を感じたんだ~!』

 と話を聞いたときはつい

『奇遇だね、僕も普段君たちからキラキラした百合の鼓動でドキドキしてるのさ☆』

 と言いたくなった。言わなかったけど。

 

 

 

♀×♂️

カウンター

 

 

 

「ありさ~!!」

「ちょっ…くっつくんじゃねーよ歩きづらいだろーが!」

「りみ、チョココロネ食べる?」

「ほんと?めっちゃうれしい!」

「さーや、アタシにもちょうだい」

 

 遠くからこちらへ向かってくる声が聞こえてくる。

 

「こんにちは、ポピパの皆さん。今日は早いね」

 

 こういった彼女らのやりとりで何度『あー!!尊いです!困りますお客様!!』と心の中で叫んだか覚えてない。しかし、それでも少年は顔に出さず、いつもの調子でバイトとして接する。百合の間にモブ男はギルティー。アリサん家の蔵の壁になり、蔵練をのぞいてみたい。

 しかし、バッドエンドを回避するために奔走することはあった。しかし、最低限仕事のときにしか話しかけないのが原則。カップルで話してるとき、彼は木の役に徹する。

 少年は、心のそこから百合を愛しているのだった。

 

 

「あ~り~さ~!」

「どさくさに紛れて変なとこ触るんじゃねー!」

「わー!ごめん!そんなつもりじゃ…」

「たく…次から気を付けろよな…」

「ごめんね〜アリサ!」

「コータロー、ボーッとしてる?」

「おっふ…いや昼御飯食べそびえただけだよ」

「じゃあ…はい、これあげるから食べて!」

「あ、焼きそばパンだ!ありがとう!これすきなんだよね!」

「沙綾ちゃんちのパンはチョココロネもおすすめだよ」

 

 くれたものをわざわざ返すようなマネはしない。他人の優しさを好意として受けとる。それが彼だった。

 

「ふぁーやのあいひょーをふぁんひるよ」

「アハハ! 飲み込んでから話なよ!」

 

 沙綾からもらった一口サイズの焼きそばパンを、まりなさん達にバレないうちに口に放り込む。すぐ食べれるようにしてるのはありがたいものだ。

 りみがカウンターに両手を置き、そういえばと確認する。

 

「あたしたちって今日は六時までで予約してたよね?」

「そうだよ。珍しいね、いつもは七時なのに」

 

 バインダーを確認しながら答える彼に、今度はおたえが。

 

「今日さーやがおうちの手伝いがあるんだって」

「なるほど」

 

 ちなみに余談だが、パンを貰った辺りから沙綾達の話を半分聞いていない。その理由は言わずもがな、ポピパの最推しの熱い展開(意味深)である。返答に不自然にならない程度に相づちを打っている彼の十八番。それは、この世界に来てから培ったものだ。

 

「こっちの生活には慣れた?」

「おかげさまで、一人で受付任されるくらいには慣れたよ」

 

 今は、目線を下に向けボールペンを動かしながらも、アリサが赤面しながら『まったくもう…』という態度で香澄に接してところを確認していた。薄い本がまた厚く(二重の意味で)な~る。彼の技術は達人の域に達していると言っていいだろう。

 

「はい、じゃあ部屋は三番です!ごゆっくり」

「ありがとう…あれーーー」

 

 これならきっとバレることもないだろう。少年はそう確信していた。

 

「ーーー幸太郎くん?鼻血がめっちゃでてる!!」

「おぶっふ…」

「大変!まりなさーーん!!」

 

 しかし、いつかその日がくるのは案外遠くないのかもしれない。

 

 

音声ファイル

『お疲れ様〜!!初日だから色々覚えることだらけで大変だったでしょー?』

『お疲れ様でっす…疲れた〜…お客さんは女子高生ばかりなんですね』

『こんな狭い所に女子高生がこんなにいると…なんかドキドキしちゃうよね…?』

『…すいません、成人女性がそれはちょっと引きます』

『こらこら!冗談だよー!?それじゃ私まだ作業あるから先家帰っててね〜』

『はーい』

 

『びっくりした、まりなさんて意外とそっち系の人なのかと思った…』

 

 

 

 

♂オリ主 斎藤幸太郎

転生者な男子高校生。百合が好きなことを皆に教えていない。なぜかって?幻滅されてネタが出なくなったら困るからさ。

『その代わり混ぜてよ、女同士でヤってるところさ』なんて言う男がいるものなら、たとえ総理大臣が相手でも富士の樹海でデットバイ○イライトごっこだ!お前サバイバーな!

月島まりなに名前を聞かれ、咄嗟に斎藤幸太郎と名乗り、彼女の家に転がりこんだ。ちゃんとした本名なので気にしないで読んで欲しい。なお、彼女に恋人(♀)がいないことを確認した上での判断らしい。

 

♀月島まりな

年齢不詳。かつては自身も仲間と共にバンドを組みプロを目指していたが、なかなか日の目を見ることはなくチームは解散(担当はギターだったらしい)。CiRCLEでは音楽をやっている子たちを誰かに見つけてもらうためのサポートを考えて働いている。

(某ニコニコサイトより抜粋)

本人はノーマルである。

オリ主の転生時の一部始終を見届けたおもしれー女。少年が鏡から出たときは気絶しかけた。彼と接するうちに『弟ってこんな感じなのかな…』と思いきって下宿を提案。が、独り暮らしである彼女にとって

『年下の男の子…』

『わっ今おへそ見えた…』

『寝顔は子供だぁ…』

『…ゴクリ』

と時々テンションが上がる。

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