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弦巻家に向かう途中の道路
百合好き男子にとって、一番不味いことってなんだろうか。カップリングを想像すること??一般人と付き合う上で色々弁えるべきことはいっぱいあるだろう。しかし、もっとも恐れていることはある。
「斎藤くんって、こころが好きなんだ」
「ひぇッッッ(呼吸停止)」
ハローハッピーワールドの作戦会議に呼ばれた彼は、つい先程駅前であった奥沢美咲と歩きながら話すと、最悪な展開に直面していた。
「いやいやいやいや違いますけどぉ!?」
「動揺しすぎ、好きでしょ絶対」
そう、モブが
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第一話 「百合好きとしてはある意味クライマックス」
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ハロー、ハッピーワールドのこころと美咲。それは、彼にとって、チームのなかでは最も推している二人組。ちなみに二番目は花音とはぐみである。
しかも、少年にとって『百合の間に挟まる男』は地雷のひとつ。二人の仲を促進させる存在になれればいいのだが。自分自身が『地雷』になってしまった事実に衝撃を受けてしまったからか、冷静を取り戻すには時間がかかってしまいそうだ。
ライブハウス『CiRCLE』を利用している顧客は女性が多く、その勢いはネットで『男子禁制じゃないの?』と言われるほどだからである。いつか誤解されのでは思っていたものの、いざ来てしまうと心の余裕がなくなるものだ。
「な、なんだろう。そういう証拠でもあるんですか?」
「この前こころにラブレター送ってたじゃん」
ーーーあ、そういや送ったわ。手紙を
「あ、あれは彼女に相談したいことがあっただけで…」
弦巻こころの家は企業グループを束ねている。IT系からアミューズメント業界までまで幅広く扱っているため、その彼女が『できなかった』と言うと次の日にはできてたりするらしい。やっぱ意味わからんわ。
おかしいな、こころには確か『CiRCLEの裏に一人で来てください』と書いた手紙をこころに送ったのに、なんで美咲が知ってるんだろう?
「あの時こころが手紙を持って顔真っ赤にしてたから、つい気になって付いていった」
「その話詳しく」
え?詳しくって言ってもそのまんま?またまた、真っ赤になるこころちゃんにモヤモヤしてついていったのでしょう?安心してください。モブ男はすみっこが一番落ち着くんです。暮らしてますので。
その代わり頂戴頂戴!!もっと頂戴そういうの!!
「とにかく!奥沢さんが思ってるようなことはなにもないから!!」
「ふーん…ま、そういうことにしといてあげる」
ジト目で見られてることに動揺しながら必死に弁明するが、美咲は信じていないように見える。
「にしても意外だなーって、普段はそういう風にみえなかったから」
カチン、と頭の中でなにかが弾け飛ぶ。百合を否定されてた昔を思い出してしまうが、落ち着いて冷静さを取り戻し彼女に向かった。
「じゃあなんすか?もし仮にそうだとして好きになっちゃいけないってことすか」
少し意地悪な言い方をしてしまったと思う。けれども、こうしないと彼女の本心を聞き出せない。
「いや別に、いいんじゃない?好きでも」
現に、彼女の表情、声、返答へのスピードから彼の経験則を元に察するにーーー
「…ごめん誤解してた。つい極端に受け取ってしまうのは僕の悪い癖なんだ。許して」
美咲のことを誤解してしまった。彼女に悪意なんてものはない、あるのは純粋に『意外』だと思ったたけだ。
「仕方ないよ、好きだって気持ちをつつかれたら。つい警戒しちゃうもんでしょ」
「奥沢さん…」
彼女の瞳は、涙をこらえているようにも見えた。こちらを見つめ、意を決したように口を開く。
「…ちなみにどういうところが好きなの?」
「え、なんだろ」
少年は思い出す。自分はなぜ、『百合』が好きなのか。同姓同士の恋愛を好むようになったのかを。
「うん、やっぱり笑顔かな」
「…笑顔?」
「悩んでる時にあの笑顔を見ると…こう疲れが吹っ飛ぶんだよね」
「そっか…そうかもしんないね」
なんか噛み合ってないような気がする。
「きっといつか、今じゃなくてもその笑顔が曇る時があるからさ」
ーーー
ーーー
ーーー
「だから、その時は僕が笑顔にするんだよ」
ーーー
「なにそれ、ベタぼれじゃん」
ポツリと呟いた彼女の一言は、彼には届かない。
「あ、ごめん。なんか言った?」
「なんでもなーい。あーあー、さっきの
とたんにヒヤリと背中に汗が流れる。
「わ、わ、ごめんって!」
「ほんとに思ってる~?『なんすか、好きになっちゃいけないんすか』ってコワカッタナ~」
「おねがいします!なんでもしますから!」
「ん?今なんでもするって言った?」
「あっ(絶句)」
歩きながらサラリ告げる。
「じゃあさ、アタシと付き合ってよ」
一泊置いて告げた彼女の顔はこちらからは見えない。どんな表情をしているか、彼にはわからなかった。
「いいよ、荷物持ちなら任せなさい!で、どこに行く?」
「…そこまで露骨だと腹がたつなー」
「ん?」
「いい、やっぱ変更」
「えー…あんま高価じゃないものでオナシャス!神様仏様奥沢様!」
「それ、やめて」
一瞬、崇められるのを止めてほしいと思っていたが、続けられる言葉で、真意を知る。
「美咲って呼んでよ。
アタシも名前で呼ぶからさ。
珍しく顔を赤くしこちらを覗いてくる彼女に、少年はつい見惚れてしまう。彼の反応に気づいてか、気づいていないのか。奥沢美咲はきょとんとするとーーやがて、声をあげて笑った。
「あはは、何その顔。ウケる」
♀×♂️×♀
弦巻邸
「ねぇ幸太郎」
この一瞬で彼女は変わった。それは、お互い名前で呼び合う関係になったから。というだけではない。
「な、なに?奥沢…美咲」
「アタシ、フルネームじゃないよ」
先程からこの会話ばかり続けられている。今まで名字で呼んでいた慣習でつい名字で呼んでしまい、彼女がそれを訂正する。いつまで続けるのかと聞かれたら、彼が慣れるまで、と彼女は答えるだろう。
「み…美咲」
「よろしい」
イチャイチャ?してたところに二人の名を呼ぶ声が目の前から聞こえてきた。
「あら!美咲ー!幸太郎ー!おはよう!今日もいい天気ね!」
弦巻こころ。幸太郎が手紙を送った相手である。
「はいはいおはよー」
「あ、こころ。おはよう」
「‥‥そういえばさぁ、こころのことは名前呼びだね?」
ぼそりと呟きながら隣で鋭い目線を送ってくる彼女を、彼は全力で聞こえないフリをし、こころとハイタッチする。視線がもっと鋭くなった気がした。
「幸太郎、元気がないわね?そんなときはハグが一番よ!」
「うぉっ!自分受けは地雷です待ってください!」
ぴょーんと彼のからだにしがみつき、足を絡めると、隣から冷ややかなものが加えられた気がした。
「ふーん…」
ーーあぁっ感じる!地雷の予感!
完全に百合の間に挟まってしまうモブ男、斎藤幸太郎。今回は彼の敗けである。
音声ファイル
『もーほんと、勘弁してほしい』
『今日のコ……鶴巻さんも良~い暴れっぷりだったね』
『いいよ、普通に呼べば?』
『……こころちゃんとはほら、初対面で名前でいいわよ!って言われたからさ』
『……許さん』
『Oh...』
CAST
♂️斎藤幸太郎
百合が好きな転生者。『僕はね、皆が笑顔になれるヒーローになりたかったんだ』とハロハピに話したら見事気に入られた。彼としては、百合が笑顔になる方法という意味合いだった。ハロハピカプは美咲×こころが最推。
『女の子同士の恋愛が好き?きもっ』なんて言う輩がいようものものなら、特に言い返すこともなく普通に日常を過ごした後、夜ベッドに入り静かに涙を流す。『ま、そう思う人もいるよね』とか言いながら内心めっちゃ傷ついている。他人の考えを否定しない人。
♀奥沢美咲
自称しない系サバサバ女子。性格、スタイル、ダウン系な話し方や声など全てが作者にとって性癖ど真ん中。ハロハピは最初無理矢理入れられたが、なんやかんや馴染んでいる。
ハロハピに協力的な主人公に対し警戒はしていたものの、美咲の意見を聞き、こころ達とコミュニケーションを取ってくれるので完全に心を許した。そのため、弦巻邸で作戦会議がある時は、必ず彼に声をかけるようにしている。
たまに愚痴を聞いてもらううちに気の会う友人から好感度カンストを引き起こしてしまったようだ。
美咲「どういうところが好きなの?(こころの)」
幸太郎「笑顔かな(百合の)」
この通りすれ違っているし、お互いにそれを気づいていない。
次回 2026/07/14投稿予定