自分が住む山の大国『シナノ地方』は、沿岸部に
シナノ地方の『ジョウダシティ』に定住する自分は、生涯を仕事に捧げる覚悟で日常を送っていた。生まれた時から当たり前のように存在する生き物『ポケットモンスター』、縮めてポケモンと触れ合う機会もなく、自分は人間と関わり、人間と暮らす生活を当然のように思っていた。
そんな人生に転機が訪れたのは、少し前の事だった。仕事の帰り道で野生のリオルが倒れているのを発見し、自分は“彼女”を抱えてポケモンセンターへと駆け込んだ。夜遅くの帰り道、それも雨降りの状況。約20kgの生物を両腕で抱え込み、傘も差さず必死の思いで歩き続けた。どうしてリオルを助けようと思ったのか、それは自分にも分からなかった。ただ、そこに困っている誰かがいるのなら、自分が助けになりたかった。その一心だった。
お姫様抱っこされたリオルは、弱々しくもこちらを見上げていた。原因は栄養失調だった。戦闘の後だったのか、傷も負っていた。だからこそ、自分の胸を打ち付けたのかもしれない。とにかく自分は人生で数回しか訪れたことのなかった無縁のポケモンセンターに駆け込んで、野生のリオルを預けて、その日は帰宅した。そして数日と経過したある日にポケモンセンターから着信を受け、リオルの回復を聞かされた自分が顔を覗かせたことで、前回のような流れに至った。
回復したリオルは、ポケモンセンターの計らいで育て屋に預けられた。その間にも自分はポケモントレーナーの免許証を取るべく、トレーナーズスクールに通い始めた。時折と育て屋を覗き、その度に駆け寄ってくるリオルに抱き付かれ、歓迎された。身近にいたことから今まで知った気になっていたポケモンという存在が、この期間中にも不思議な生き物であることを散々と思い知らされた。
リオルとの邂逅から二か月ほどが経過した頃になって、自分は念願の免許証を手に入れた。トレーナーズスクールから記念のモンスターボールを貰い、それを持って育て屋へと顔を覗かせると、何かを悟ったリオルは期待する眼差しを向けながら、興奮を抑え切れないといった様子でこちらの前に立ち塞がったものだ。
「待たせてごめんね。これで正式に君を迎えられる。もう、寂しい思いはさせないから」
モンスターボールをリオルの頭部に優しく当て、開いたそれに“彼女”は吸い込まれる。そして数回の揺らぎを介した後にボールはカチッと音を立て、全てを受け入れるよう静止した。
自分はモンスターボールを開き、リオルを繰り出した。現れた彼女が我慢の限界と言わんばかりに飛び掛かり、抱き付いてくる。勢いで横に回転しながらリオルを受け止めた自分は、その頭を撫でながら言葉を投げ掛けた。
「実は俺、仕事を辞めたんだ」
リオルが不思議そうな顔で見遣ってくる。
「免許を取る勉強の途中で、自分の人生設計を考え直したんだ。この際だから、ちょっと本気でポケモントレーナーをやってみようと思ってさ。貯金を切り崩して、シナノ地方のアカデミーにも入学する予定だよ。これは俺にとっての挑戦でもあるんだ。だからさ、リオル。もしよかったら、俺の大冒険に付き合ってくれないかな?」
ポケモンという生き物は、人間の言葉を理解できるのだろうか。それとも、リオルというポケモンだから理解できるのだろうか。彼女はワクワクした様相を浮かべ、赤い瞳をキラキラと輝かせていた。その反応を見て、自分は心なしか安堵した。不安の一つが無くなった気がして、希望が芽生えたように感じられた。
リオルという相棒を迎え、自分は新たな人生への一歩を踏み出した。この時を以てして、ポケモンと俺の物語が始まる。