ポケモンと俺   作:祐。

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ひとになれてるニューラ

 メーがプロトーガを捕獲し、大満足の収穫でハクバビレッジに引き返してきた一同。快晴の天気という観光日和を受け、連峰を一望できるテラス席で食事をすることに決めた自分達が行き付けのカフェに入店する。

 

 連峰までの往復で疲労した身体を休めるべく、皆が席についた。自分とラミア、メーが椅子に座り、リオルとキラーメ、ミズゴロウ。と、見知らぬもう一匹のポケモンがデッキの上で落ち着く……。

 

 ……白色の体表に、紫色のかぎ爪を持つ二足歩行のポケモン。その個体は平然とした様子でラミアの傍についていて、彼女から一向に離れようとしない。警戒心とか無いのだろうか。野生とは思えないあまりにも無防備なその様子に、自分達はずっと困惑していた。

 

 直にも、戸惑うメーが言葉を口にしてくる。

 

「ね~、ラミア。この子、結局ハクバビレッジまでついてきちゃったけど、どうすんの? マジで」

 

「ウチに言われましても……。まず、どーしてこんなコトになったんでしたっけ??」

 

「アタシがプロトーガを捕まえて、そこの湖でちょっと会話をしていたらこの子が近付いてきたんだよね? で、アタシらがハクバビレッジに帰ろうとしたら、なんか後ろをついてきて、ここまで来ちゃった……みたいな?」

 

 自分も戸惑いはしながらも話に加わっていく。

 

「近くにトレーナーはいなかったもんね。ということは、このポケモンは野生であると考えるべきだと思う」

 

「野生でもさ~、なんかこう、野生じゃない雰囲気しない? 誰かに飼われていたような、人に慣れてる感じっていうの? う~ん、アタシにはよく分かんない」

 

「少なくとも、俺達に明確な敵意は無さそうだよね。そんな目をしていないというか、半分は何も考えてなさそうな……」

 

 ケロッとしたツリ目で平然とした様相で佇むポケモンは、ラミアのことをじっと見つめていた。彼女はやりにくそうに視線を逸らしていく中で、スマホロトムで検索をかけ始めた。どうやらこのポケモンの正体を知るためらしい。

 

 ラミアは発見されているポケモンの一覧をずらりずらりと流し読みしていくものの、このポケモンの正体は分からずにいた。そんな最中、メーもスマホロトムで調べてすぐ、目についたページを皆に見せながら訊ね掛けてきた。

 

「ねぇさ~、見て。なんか“ニューラ”ってポケモンに似てなくない?」

 

「確かに、姿や雰囲気はニューラに似てるね。リージョンフォームってやつなのかな。同じ種族でも、地方の自然環境に適応するために独自の進化を遂げたポケモンの通称としてそんな呼び方があったよね」

 

「じゃあなに? ハクバビレッジの環境に適応したニューラってこと? でもニューラって雪山が生息地じゃね? じゃあ、わざわざ連峰の環境でリージョンフォームする意味は無いんじゃないかな~?」

 

 自分とメーが談議をしていると、何かを発見したラミアはふと目つきを変えてスマホロトムに見入った。それからラミアは端末の画面をこちらに見せてくると、そこに映っていた画像のニューラに自分達は注目したものだ。

 

 “ヒスイ地方”と呼ばれる大昔の時代に生息していたとされるニューラ。そんな説明文が添えられた記事に目を通してみると、その外見的な特徴から生息地といった生態系まで、知れば知るほど今も傍にいるニューラの特徴と一致していたことが判明したのだ。

 

「つまり俺達についてきたニューラは、“ヒスイ”のニューラってこと? もしかしてこの子も、時空の歪みに……」

 

 と、そこまで言い掛けたところで自分は昨日のやり取りを思い出した。

 

 時空の歪みが発生した現場へ向かう道中、カイムがこのようなことを説明してくれていた。

 

『例えば、ヒスイ地方は知っているかな? アップルアカデミーの生徒であれば、その名は耳にしたことがあるだろう。ヒスイ地方は遥か昔のシンオウ地方であり、我々には知る由もない古き時代だ。その時代のポケモンがハクバビレッジの連峰に住み着いていると言われたら、君達はどう思うかな?』

 

『答えはイエスだ』

 

『この山には、ヒスイ地方からやってきた数匹のポケモンが密かに住み着いている。少し前にも時空の歪みがここハクバビレッジで発生してね、その時にヒスイの時代から飛んできてしまったらしいんだ。所謂、タイムトラベルというやつだな』

 

 その話を思い出したメーが、「あ~……」と半分忘れてた具合に相槌を打った後、言葉を口にしてくる。

 

「え~、じゃあなに、カイムさんが言ってたヒスイ時代からやってきた数匹のポケモンの内の一匹が今、アタシ達についてきて今もこうして自然に混ざってるってこと? なんか、昔の時代を生きていた野生ポケモンにしては無警戒すぎるっていうか~……人懐っこすぎるっていうか~……?」

 

「もしかしたら、時空の歪みで飛ばされてくる前の場所で、誰かに飼われていたのかもしれない。それで人間に慣れている可能性はあると思う」

 

「カンキくんの考察がそれっぽそ~。じゃあ、あれだよね。全く知らない時代に飛ばされてきた先で人間を見つけたら、そりゃあ興味から寄ってくるか~。いやだからって、寄ってくるだけじゃなくて、ついてくるだなんて思わなかったけどさ……」

 

 自分とメーが「う~~~ん」と頭を悩ませていく中、ラミアはヒスイニューラと目を合わせていた。お互いがジーーーッと見つめ合い、沈黙が流れていく。淡泊な視線を向けるラミアと、警戒なんて言葉を知らないとばかりにケロッとした眼差しを向けるニューラ。両者がまじまじと見つめ続けること数分。ふとラミアはニューラに対して、突拍子もなくそんなことを訊ね掛けていったのだ。

 

「ウチと一緒に来ます??」

 

 自分とメーが顔を上げていく。ラミアもニューラと見つめ合い、直視していく。

 

 間もなくして、ニューラは鳴き声と共にこくりと頷いた。それからモンスターボールをぶつけられるべくじっと佇み続けた様子から、どうやらボールという文化を知る個体であることも分かった。

 

 ラミアはモンスターボールを取り出した。ニューラは無警戒な眼差しでラミアをじっと見つめていく。本当に今から捕獲されることを理解していないんじゃないのか。そう思わせるほどの、警戒心が無さ過ぎてふわふわとしてるニューラが平然としたサマで待ち望むものだから、ラミアはモンスターボールをその額にコツンと当て、パカッとフタを開いてボールの中にニューラを吸い込んでいった。

 

 ラミアの手の平で揺ら揺らと左右に揺れるボール。皆が未だ拭えない困惑の眼差しで見守る中、それはカチッと音を立てて静止した。

 

 自分とメーが目を合わせて唖然とする。ラミアはボールを投げてニューラを繰り出すと、それはケロッとしたサマで立ち尽くしながらラミアのことをじっと見つめていった。

 

 人懐っこくついてきたから、捕まえた。野生ポケモンの捕獲にしてはユーモラスな経緯を経て、ラミアの手持ちには新たなどくタイプのポケモンが加わった。

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