ポケモンと俺   作:祐。

22 / 22
アドバイス

 学園の昼休憩。昼食を終えた自分とラミア、メーはバトルコートでポケモンバトルを行っていた。

 

 メーのミズゴロウと戦闘する自分のリオル。リオルはミズゴロウのみずでっぽうをでんこうせっかで避けながら接近し、その衝突でミズゴロウをよろめかせた後にメタルクローを繰り出した。

 

 こうかはいまひとつだが、鋼鉄の切り裂きは攻撃の勢いをつけるのに十分な出だしだった。自分は続けて技を指示していく。

 

「はっけい!」

 

 リオルの攻勢は止まらない。即座に距離を詰めて左手を構えると、ミズゴロウに向かって波動を込めた右手の一撃が繰り出される。前方に拡散する衝撃が相手を捉えると、ミズゴロウはそのまま吹き飛んでK.O.された。

 

 目をぐるぐるにして倒れたミズゴロウ。メーは頭を抱えながら悔しさで唸り、しかしどこか納得した様子でため息をついてから言葉を掛けてきた。

 

「あーーー、もう! 今日もダメかぁ。カンキくんのリオルには全然勝てないなぁ~……」

 

「逆にリオルが勝てない相手に、メーのミズゴロウは勝ったりしてるからさ。タイプとかではない個人的な相性とかはあるんじゃないかな」

 

「なんだろう、攻め込まれちゃうと一気にキツくなるんだよね~。ミズゴロウもそれを対策して流れを断ち切るまもるとか入れてるのに……あああ~~~~クソ、上手くいかね~~~」

 

 自分達はバトルコートの中心に集まっていく。メーは渋い表情をしながら反省を行う一方で、観戦していたラミアとキラーメは無言でこちらと合流してきた。

 

 と、バトルの感想を交わす自分らの下へ投げ掛けられた声。その主は艶やかな調子で歩み寄りながらそれを口にしてくる。

 

「ジムリーダーを兼ねている教師の目から見ても、二人は良い動きをしていたわよ~? 入学当初よりもだいぶ見違えたんじゃないかしらぁ?」

 

「あ! レダ(せん)!」

 

 メーが指を差しながら呼び掛けるそれに対して、レダは余裕のある様子で手を振りながら応えていく。

 

 レダがフィールドに現れると、周囲の人々……特に男性陣が続々と視線を向け始めた。皆が「レダ(せん)だ……」「うおっすっげ……」などの言々(げんげん)を各所で口にする中、レダは聞こえてくる言葉を周知したかのような流し目で周りを見遣り、再びこちらと向かい合ってから喋り出してくる。

 

「はぁ~い、レダ(せん)です。カイムが一目置くだけはあるかしらねぇ。あなた達の特徴はその成長スピードと言えるのかもしれない。どんどんとステップアップしていく様子は、傍から見ていて気持ちが良いもの。ポケモンバトルに前向きな姿勢も評価高いわね~。積極的な姿はポジティブなイメージを連想させるから、カイムにしても、オキクルミにしても、周囲があなた達に注目する理由が分かったような気がするわね~」

 

 自分は後者の名に反応する。

 

「オキクルミ、ですか?」

 

「銀嶺会のオキクルミ、覚えているでしょう? 知っての通り彼らは問題児だし、よくわたしへ絡みに来るわ。その中でもオキクルミは際立った存在ねぇ。何故なら、わたしに興味が無いから。彼は仁義とポケモンバトルが好きで、それを両立した人間が特に好きみたい。例えば、カンキくんの事とか」

 

「え、俺ですか」

 

「そう。そしてわたしも、あなたの事が好きよ? 授業を一番真面目に受けてくれる生徒としても、容姿や内面といった個人的な好みとしても、ね?」

 

 レダの誘惑するような(なま)めかしい眼差しを前に、自分は生唾をごくりと飲んでいく。この様子に足元のリオルは慌ててレダの前に立ち塞がると、非常に緊張した様子で相手を威嚇したものだ。リオルの健気なけん制にレダは愉悦の微笑を零していくと、次にも自分達へそのような提案を行ってきた。

 

「そういう決まり事はないけれど、ここの教師の多くは平等に生徒達と関わる心掛けを徹底しているわ。お気に入りの生徒だけに色々と教える教師は全然いないもの。でも、わたしは違う。わたしはどんどん贔屓(ひいき)するタイプの人間だから、気に入った生徒には個人レッスンをしてあげてるわ。無論、カンキくん。あなたはわたしのお気に入りだから、強くなるためのアドバイスをしてあげる。ついでだから、カンキくんのお友達にも手ほどきしましょうか」

 

 

 

 レダは所持していた分厚いファイルを開いていく。そこから生徒のページを開いて眺めると、まずはラミアへと振り向きながらアドバイスを始めた。

 

「あなたのキラーメは、特性がふしょくなのねぇ。覚えているわざは、アシッドボム、げんしのちから、まもる、かたくなる。キラーメの特徴としては、高いとくこう種族値と特有の特性にある。ただ、高いとくこう種族値と特有の特性にこれといったシナジーはないわ。まずは立ち回りの方向性を固める必要が出てくるでしょうねぇ」

 

「特性、ですかー。言われてみれば、あまり気にしたコトがありませんでしたねー」

 

「ふしょくは、どくタイプとはがねタイプをどく状態にさせることができる特性ね。誰でもどく状態にできる個性を活かして、耐久する方面で立ち回ってみてもいいかもしれないわ。戦法は至って単純よ。どくどくというわざを覚えさせて、それで相手をもうどく状態にしてからひたすら耐え凌ぐだけ。まもるやかたくなるは有用的に働くでしょうし、隙を見てアシッドボムで相手を弱体させてから、げんしのちからで一気に押し切るというスイッチングもできる」

 

「どくどくは盲点でしたねー。変化技という(から)め手は強いと思えなかったので」

 

「もうどく状態は相手に心理的な負荷を押し付けることができる。早く倒さなければ。そんな切羽詰まった状態で耐久されてしまうと、相手は一層と困るでしょうからオススメするわよ」

 

 そう言い、レダは「次は~……」と口にしながらこちらへ振り向いてくる。

 

「カンキくんのリオルは、特性がせいしんりょく。覚えているわざは、でんこうせっか、フェイント、カウンター、メタルクロー、はっけい。“わざは6つまで覚えられる”から、もう一個わざを増やしておくと手段が豊富になって便利でしょうねぇ。その上で考察していくと、リオルは俊敏な機動力を持つ好戦的なポケモンで、低耐久が目立つからそこのカバーが必須と言えるかしら。現時点でも非常に強力な攻めのわざ構成をしていて、リオルの俊敏性でこれらを押し付ける立ち回りがあなた達の勝ちパターンになっているんじゃないかしら?」

 

「勝つ時の勢いは凄まじいですね。一気に距離を詰めて、そこからズガガガガって感じで」

 

「それ故に、受けに回った時が儚いほど脆いわ。今のリオルに必要なのは継戦能力。そこでオススメなのが、みきりかしらねぇ。以前までは遺伝でしか確認されなかったわざだけれども、今はトレーニングで習得できるから便利な時代になったわよね~。みきりは相手の流れを断ち切ったりできるし、様子見としても使える万能なわざだから、6つ目のわざとして最も採用価値のあるわざだと思うわ」

 

「なるほど……! ありがとうございます!」

 

 それからレダは「最後に~」と言い、メーの方へと振り向いていく。

 

「あなたのミズゴロウの特性はげきりゅう。覚えているわざは、みずでっぽう、マッドショット、いわくだき、まもる。まずあなたのミズゴロウだけど、非常に高水準な個体のように見受けられるわ。わざ構成も攻守ともに優れていて、バランスがいい。わざの使い方もバトル中の立ち回りも見ている感じ、普段からバトルを研究している人間のそれだとわたしは一目で感じたわねぇ」

 

「マジっすかレダ(せん)! えへへ、やっぱり分かる人には分かるんすかねぇ~!」

 

「その上で指摘するならば、バトル中のあなたは机上論ばかりを見ていてミズゴロウと向かい合えてないように感じるわ」

 

「そ、それってどういうことっすか……?」

 

「練られたプランは上出来だけれども、それをミズゴロウが再現できるかどうかは別の話。あなたが戦っているのは相手じゃなくて、完璧を追い求める自分自身。もっと言えば、今のあなたは脳内シミュレーションで思い描いた理想を、ミズゴロウという相棒を利用して再現しようとしているだけ」

 

「あの……もしかしてこれ、ガチめの説教だったりします?」

 

「誤解を与えたならごめんなさいねぇ。ポケモンバトルは良くも悪くもトレーナーの思考に左右されるわ。今のあなたに必要なものは、ポケモンバトルという仕組みを理解すること。ポケモンバトルには、相手がいることを忘れないように。相手の思考、心理、目的を些細な情報から読み取り、技という限られた手段で最適な方法を下しながら勝利を目指す競技。それがポケモンバトルよ。話が逸れてしまったようだけれど、現状のミズゴロウに目立った欠点は無いわ。最適なわざも、あなたなら自分で判断して習得させるでしょうから。引き続き励みなさい」

 

「あ、あざっす!」

 

 レダはファイルを閉じていく。それから艶やかに微笑みながら次にもこのようなセリフを口にしてきたのだ。

 

「お昼休みの時間はまだあるから、良ければわたしが直々にトレーニングしましょうか? キラーメのどくどくは自主的な特訓で習得できるでしょうから、今回はカンキくんのリオルがみきりを覚えるための実践的なトレーニングをしましょう。位置について、カンキくん。わたしとのマンツーマンレッスン、存分に楽しみましょ?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ポケモントレーナーの日常?(作者:ポケモン全般(今はas)やってる人)(原作:ポケットモンスター)

ポケモンの世界に生まれた転生者が旅に出る話▼(世界線がゲームかアニポケかも分からないしエンジョイクソボケなので何をやらかすか分からない)▼アニポケ時空になりました。▼タグは随時追加予定です。▼アンケを投げています。▼基本最速10票を採用していますが見逃しなどあり複数が10票越えしていた場合は1番多い票数の案を採用する予定です。よろしければ適当でもええのでポチ…


総合評価:4747/評価:8.57/連載:12話/更新日時:2026年06月25日(木) 04:20 小説情報

オオタチですか(作者:メガオオタチ)(原作:ポケットモンスター)

スグリ君のオオタチ(オタチ)に転生した奴の話▼なお、スカーレット・ヴァイオレットを含む、それ以降のポケモン知識はないものとする。▼優しい感想をくれるとコイキングのように跳ねて喜びます。


総合評価:1523/評価:8.54/連載:25話/更新日時:2026年06月26日(金) 21:27 小説情報

サトシ君(転生者)の目指せ、ポケモンマスター!!(作者:DestinyImpulse)(原作:ポケットモンスター)

▼ 転生したのはオリ主でもモブでもなく紛れもなく主人公。▼ 定期的に世界を救わなくてはならない大役を背負いながらも、ポケモンとの出会いと冒険に胸を躍らせる。▼ ▼「通りすがりのポケモントレーナーだ、覚えておけ!ピカチュウ、君に決めた!!」▼「ピカチュウ!!」▼ コレはアニポケ主人公のサトシに転生した少年が、時にポケモンと絆を深め、時に女の子とのフラグを作り、…


総合評価:7727/評価:8.62/連載:60話/更新日時:2026年07月03日(金) 19:35 小説情報

BRAVE STEP ―小さなお菓子屋さんを夢見て―(作者:クレナイハルハ)(原作:ポケットモンスター)

ポケモンが大好きだった私は、気付けばポケモンの世界に転生していた。▼バトルが苦手な私だけど、強くなることよりも大切な夢がある。▼ガラル地方ハロンタウンに住む少女、シアン。▼彼女の夢は、ポケモンもトレーナーも笑顔になれる。▼そんな『小さなお菓子屋さん』を開くこと。▼予想外な出来事から始まる、小さな一歩。▼相棒のアブソルと共に、ポケモンと一緒に食べられるお菓子を…


総合評価:1514/評価:8.18/連載:48話/更新日時:2026年06月04日(木) 00:49 小説情報

うちの庭めっちゃ猫くる。(作者:じゅに)(原作:ポケットモンスター)

シンオウ地方きってのド田舎カンナギタウンで毎日をぼーっと過ごすわたしの家には、でかい庭がある。最近、見慣れないポケモンがくるようになった。


総合評価:4514/評価:8.45/完結:9話/更新日時:2026年04月16日(木) 11:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>