ポケモンと俺   作:祐。

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トリプルバトル

 放課後のアップルアカデミー。校舎の中にある庭園をラミア、メーの二人と共に歩き進めている時のことだった。

 

 背後から聞こえてくる、燃え盛る炎が噴射する音。それに自分達が振り返ろうとした瞬間、自分が所持していたモンスターボールからヨーギラスが飛び出してくる。赤いマントを靡かせた隻眼の彼が次にもがんせきふうじを繰り出すと、今にも差し迫るほのおタイプの攻撃やきつくすを無数の岩石で打ち消したのだ。

 

 ヨーギラスによる防衛が無ければ、自分はやきつくすで火炙りにされていた。自分らが動揺しながら先を見遣ると、視線の向こうには三名の不良集団。内の一人が所有しているのだろうバオップが口から炎を零し、トレーナーである男は悔しそうな様子で怒鳴り出す。

 

「クソ!! 邪魔しやがって!! いちいち(しゃく)(さわ)る野郎だな!!」

 

 ヨーギラスは冷徹な眼差しで彼らと対峙していた。自分もまた強面(こわもて)の男達へと言葉を投げ掛ける。

 

「あんた達は銀嶺会か? 今のは意図的な攻撃だったと、そう見なしていいんだな?」

 

「カンキ!! お前は痛い目を見るべきなんだ!! オキクルミの兄貴にも、レダ(せん)にも気に入られている!! 何でも手に入ると思ったら大間違いだ!! 調子に乗るなよ!! 幸せを味わった分、不幸になれ!! じゃないと不平等だ!!」

 

「私的な理由か。迎え撃つしかない」

 

 自分がヨーギラスと共に立ち向かうと、相手方の残る二名もまたモンスターボールを手に取ってポケモンを繰り出してきた。

 

 姿を現したのは、マッギョとドードー。バオップと立ち並ぶ彼らがこちらを目の敵にする一方で、自分の両サイドにはラミアとメーが並び立つ。

 

「一対三なんて不公平じゃないですか」

 

「アタシ達の事も頼ってよ、カンキくん」

 

「ラミア、メー。ありがとう」

 

 彼女達もまた、モンスターボールを取り出して投げ付けた。現れたのはヒスイニューラとプロトーガ。ヨーギラスを加え、ハクバビレッジの連峰で入手した面子がこの場に出揃う。

 

 唐突と始まったポケモンバトルに、周囲の生徒達が何事かと集まり出してくる。中にはスマホロトムをかざして撮影までし始めた輩も見受けられる光景の中、校舎の庭園にて戦いの火蓋が落とされた。

 

「バオップ! やきつくす!」

 

「マッギョ! でんきショック!」

 

「ドードー! でんこうせっか!」

 

 バオップとマッギョが特殊技を放ち、それよりも先んじてドードーが飛び出してくる。先手の行動を鑑みた上で自分らもまた迎え撃つべく指示を送り始めた。

 

「ヨーギラス! がんせきふうじで特殊技を食い止めろ!」

 

「プロトーガはアクアジェットで突撃!」

 

「ニューラ!! どくびしで相手を妨害してください!!」

 

 ヨーギラスがいわタイプのわざエネルギーで無数の岩石を生成し、浮かび上がらせたそれを上空から投げ付けるように落としていく。ヨーギラスの岩石の下をくぐり抜けるように高速で突っ込んだのはメーのプロトーガ。相手のやきつくすとでんきショックと通り抜けると、バオップとマッギョの手前まで急接近を果たした。

 

 ヨーギラスのがんせきふうじが、やきつくすとでんきショックを防いでいく。その傍らでヒスイニューラは相手から背を向け、ラミアのことをただただ見つめ続けていた。まるで戦闘には興味が無いと言わんばかりに、ニューラはケロッとした瞳でラミアと目を合わせている。

 

 微動だにしないニューラの様子に、ラミアは前方へ指を差しながら必死に指示を送り続けた。

 

「ニューラ!! どくびしです!! ウチのコトはイイですから!! どくびししてください!!」

 

 それでもニューラは動かない。直にもでんこうせっかを繰り出したドードーがニューラに接近してきた。迫る攻撃にラミアが呼び掛けていくと、間近まで近付いた脅威にニューラは振り返っていく。

 

 振り向きざまのきりさく攻撃。タイミングが完璧である迎撃はドードーの急所を捉え、後方へと吹き飛ばしていく。その光景にラミアが呆然とする最中、ニューラは再び彼女へと振り向いて見つめ続けた。

 

 場面は移り、バオップとマッギョは接近してきたプロトーガへとヘイトを向けていく。

 

「バオップ! ニトロチャージ!」

 

「マッギョ! マッドショット!」

 

 同時に迫る両者の攻撃。未だ陸地に不慣れなプロトーガが移動に苦戦する最中、メーは勝気な調子で指示を繰り出していく。

 

「からにこもる!」

 

 メーの指示に従い、プロトーガは頑丈な殻に身を隠した。強固な防御はバオップのニトロチャージを物ともせず、マッギョのマッドショットを浴びて後方へ流されながらもメーはこちらへ合図を送ってくる。

 

「アタシが攻撃を引き受けている内に、ヨーギラスで攻撃して!」

 

「ありがとう! ヨーギラス、あなをほるでマッギョを狙うんだ!」

 

 手薄になったヨーギラスが穴に潜り、地中からマッギョを打ち上げた。隣の様子にバオップが注意を逸らした隙に、メーが再び指示を送り出す。

 

「アクアジェット!」

 

 殻から出てきたプロトーガは、全身に水を纏いながら高速の突撃でバオップに攻撃した。相手の二匹が後方に退く様子を受けて、空中に滞在するヨーギラスとプロトーガが同時にわざを繰り出していく。

 

「がんせきふうじ!」

 

「いわなだれ!」

 

 両者が生み出した岩石が、バオップとマッギョに降り注いだ。がんせきふうじによる横殴りの攻撃と、いわなだれによる頭上からの攻撃。大量の岩が庭園にゴロゴロと転がり落ちると、バオップとマッギョはそれに埋もれて戦闘不能になった。

 

 残るはドードー。ドードーもまた再度とニューラに接近するのだが、迫る気配にニューラは振り返ると、エスパータイプのわざエネルギーによる牡丹(ぼたん)色のオーラを身に纏いながらこうそくいどうを繰り出し、それから地を蹴り出すや否や、上昇した素早さによって目にも留まらぬどくづきの一閃をドードーに食らわせた。

 

 その場で崩れ落ちるドードーは、音も無く倒れ込む。その様子をニューラは見届けるまでもなくこうそくいどうでラミアの下へ戻ってくると、再び彼女のことを見つめ出した。

 

 

 

 バトル終了。銀嶺会の不良達は頭を抱えて狼狽(うろた)えた。自分とラミア、メーはグータッチで勝利の甘美を分かち合う。

 

 その喜びも束の間、次にもアラマキの大声が響き渡ってきた。

 

「おいオマエら!!! 校舎ン中で何やってる!!! 危ないだろうが!!!」

 

 彼の怒鳴り声を聞いた不良達は、ポケモンをモンスターボールに戻してそそくさと逃げ出した。集まっていた野次馬も急いで引き上げていく最中、自分らも他人事ではなくビクッとしながら声の方向へと振り向くと、直にも駆け寄ってきた担任の教師は意外そうな調子でこちらに言葉を掛けてきたものだった。

 

「おっと、カンキちゃんにラミアちゃん、メーちゃんのいつメントリオじゃねぇか。バトルコート以外でのポケモンバトルは禁止だぜ。危ないからよ。だがまァ、このメンツが校則を破るワケねぇモンな。取り敢えず、教員室に来てくれや。良ければ話でも聞かせてくれ」

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