ポケモンと俺   作:祐。

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ジムチャレンジ前夜

 第三回目の課外授業を迎えた当日の朝。ナガノシティでラミアとメー、そしてオキクルミの三人と合流すると、一同は様々な交通手段を介してハクバビレッジに向かった。

 

 正午になって到着したハクバビレッジに降り立つと、相棒のシビルドンを連れたオキクルミが背伸びしながら浪花の調子で喋り出してくる。

 

「かぁ~~~!! ひっさびさのハクバビレッジやぁ!!! ジムの挑戦で来たのが懐かしく感じるわぁ!」

 

 ラミアとキラーメ、メーとミズゴロウも続々と歩いてくる最中、リオルを連れた自分はオキクルミへと訊ね掛けていく。

 

「確かオキクルミはバッジを四つ持ってるんだっけ?」

 

「せやでぇ! 何やったら、ここのバッジも持っとる。ワシはでんきタイプしか使わんからな、ひこうタイプは相性ええから真っ先にバッジ貰うてきたわ!」

 

「もしかして、一回目のジムがここだったりするの?」

 

「大当たりぃ! せやから、ジムに関する実体験を含めた情報をワシはたくさん持っとる。本来ならタダで譲らへん情報やけど、カンキには部下の不始末で借りがあるからな。特別に無料で教えたるさかい、これで部下の件はチャラにしたってや」

 

「それなら、苦労した甲斐があったってものだよ。すごく頼りになる。ありがとう」

 

「感謝されるようなコトはしとらんわ! どんだけ優男(やさお)やねん!」

 

 オキクルミは片手でビシッとツッコミを入れてくる。それからラミアやメーの方へと振り返ると、彼はおどけた調子で提案を行ってきた。

 

「ほんで、昼メシはどないする? 特に決まってないんなら、ワシがオススメするチーズフォンデュの飯屋に連れてったる!」

 

「マ!? ラミア、チーズフォンデュだって! めっちゃヤバない!? チョー映えそ~! ミズゴロウも行きたいよね!」

 

「まー、イイんじゃないですか?? 情報通のオキクルミさんに任せれば基本的にハズレはなさそーですから」

 

「お嬢さん方はよぉ分かっとる! ささっ、飯屋に案内したるさかい、ワシについてきぃ。ワシの情報は絶対や。後悔はさせへんで!」

 

 そう言って、シビルドンと共に進み始めたオキクルミ。彼の案内にラミアとメーが和気藹々としながらついていく様子を眺めながら、自分も歩き出したものだ。

 

 オキクルミの案内によって、自分達は色々な発見をした。彼が勧めてくれたチーズフォンデュは絶品で、特に女子ウケが良かった。彼女らが喜ぶ様子に、彼もまた気分を良くしていた。

 

 昼食を終えると、オキクルミはハクバビレッジジムに案内してくれた。どうやらこの時間帯は自分やメーと同じ程度の実力者が挑戦するスケジュールらしく、敵情視察という目的で連れてきてくれたらしい。そこで観客席についた自分達は、ハクバビレッジジムの緊迫とした空気に触れながらも試合を観戦した。切り札であるエアームドの活躍で試合は終わると、その間際にもフィールドに立っていたカイムがこちらに振り向いてきたのだ。

 

 無感情な黒い瞳が、観客席に座る自分を見つめてくる。その瞳に呑み込まれそうな気分を覚えると、隣に座っていたオキクルミが愉快な調子で声を掛けてきた。

 

「なんやジブン、しっかり目ぇ付けられとるやないか。何処に行っても注目の的やなぁ。よっ、人気者!」

 

「いやいや、そんなことは……」

 

 ジムの観戦が終わると、その足でジムチャレンジの手続きを行った。受付カウンターで必要な事項を記入すると、担当の人間とバリヤードが諸々の手配を済ませ、エントリーを完了していく。自分とメーの挑戦は数日後に決まり、二人は意気込みながらジムを後にした。

 

 夕方になると、オキクルミは気晴らしとして絶景スポットに案内してくれた。ロープウェイに乗って安全な連峰に移動すると、天を穿(うが)つよう(そび)え立つ雄大な山脈を見渡せる展望台に連れてきてくれた。夕暮れの黄昏で輝かしくも陰りを落とした雲が、山脈の上部を覆い隠す絶景。それを目の当たりにした自分らはジム挑戦前の記念写真を撮り、再び村に戻ってきた。

 

 ホテルもオキクルミが勧める場所を取り、そこでディナーを頂いた。今まで利用していたハクバビレッジのホテルよりも整備された環境は、数日後に控えた大一番で緊張するこちらの神経を癒してくれたものだ。部屋もシングルで、リオルとヨーギラスの二匹と束の間のひと時を過ごしていく。二匹とも非常に張り切っているようで、とても頼もしく映っていた。

 

 翌日からは、オキクルミを交えた四人で実践と対策を行った。オキクルミの手筈でハクバビレッジのバトルコートにいたひこうタイプ使いのトレーナーにも手伝ってもらい、この数日間は有意義な時間を送ることができた。

 

 ジム挑戦の前夜。ホテルのエントランスにあるテーブルにて、作戦会議が行われる。オキクルミが用意した紙の資料が乱雑に置かれたテーブル越しに、彼はおどけながらも真剣な声音で言葉を口にしてきた。

 

「遂に明日やな。ほな、簡単に話をまとめとくで。まず、ジムバッジ一個目、及び二個目のチャレンジャーの場合、使用できる手持ちポケモンは二匹までのルールが適用される。試合中のポケモンの交代は、チャレンジャーもジムリーダーもお互いに一回まで。勝敗は、先に相手の手持ちポケモンを全て戦闘不能にした方が勝利っちゅうルールや。ここでひとつ注意やけど、使用するポケモンの種族やタイプに制限はあらへん。それはジムリーダーも同様。つまり、ハクバビレッジジムはひこうタイプのプロフェッショナルやからといって、必ずしもひこうタイプを繰り出してくるとは限らんっちゅうワケや。こいつを踏まえた上で、話を進めるで」

 

 オキクルミは滞空させていたスマホロトムをテーブルの上に移動させ、その画面に写真を映し出しながら話を続けていく。

 

「ハクバビレッジのジムリーダー・カイムの切り札は、何と言ってもあのエアームドや。ヤツは絶対に二番手、つまりトリで登場するとワシは断言する。ヤツは場に残り続けるステルスロックを活用したスリップダメージでじわじわと相手を消耗させ、隙を見てはがねのつばさで接近し、残りの体力を刈り取ってくる長期的な戦法を得意としとる。ヤツとは正々堂々と向かい合うだけ無駄や、コチラがジリ貧になる。ここで重要になるんは、このステルスロックの対処法やな」

 

 オキクルミはテーブルの上の紙を手で退けながら言葉を続けてくる。

 

「ヤツは今んとこ、ステルスロックを主軸とした戦い方をしとる。つまり、そのステルスロックを対策さえすれば、お相手さんのプランニングが崩壊するワケや。ステルスロックの対処法は主に、その領域から脱出するか、除去するか。除去に関しては、こうそくスピンといった技が必要になるんやけど、カンキとメーの手持ちやと、除去は現実的やあらへんな。となると、如何にステルスロックの領域から脱出するかを常に意識した方がええコトになる。まぁ、その辺は既にすり合わせておるからええよな?」

 

「俺の場合だと、リオルのでんこうせっかでステルスロックの領域からすぐに脱出する……だったよな?」

 

「せやで、除去できひん技と素直に向かい合う必要はあらへんからな。どないに強力な戦法を用意してようとも、体力がゼロになればコチラの負けや。ポケモンバトルで重要なんは、機転が利くアドリブ力やない。用意された問題を解くための、事前の対策や。バトル中はな、ジブンこれ解けますか? ほな次のこれは解けますか? と、ありとあらゆる問題が、相手からお出しされる。そのひとつひとつの問題を解くための、事前の準備が大事やねん。その問題を解くために必要なんは、知識と情報や。ポケモンバトルっちゅうのは、要は学校のテストなんや。お出しされた問題に、用意してきた回答をぶつけ合う戦い。それが、ポケモンバトルの核やとワシは思うとる」

 

 オキクルミは散らばった紙を集めていく。それらをまとめてトントンと揃えていくと、彼は紙の束で(あお)ぎながら話をしめた。

 

「事前にできることは全てやった。あとは学園生活と課外授業で学んできた勉強の成果、連峰で散々お世話んなったジムリーダーにぶつけたろうやないかい! もし今回がダメやったとしても、まだまだやり直しは利く。それだけ伸びしろがあるっちゅうコトやからな! ジブンらの戦い、ワシらが見守ったる。明日はドカンとぶちかましたれ!!」

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