ポケモンと俺   作:祐。

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ハクバビレッジジム vsジムリーダー・カイム

 粉雪が舞い散るハクバビレッジの朝。天候は清々しいほどの晴れ模様で、吹雪の心配もない。

 

 ハクバビレッジジムの前に訪れた自分は、連れ歩いているリオルと共にその施設へ進入した。エントランスの受付カウンターでエントリーを済ませると、スタッフの人間とアシスタントのニョロゾに案内されて控室へと移動していく。

 

 ポケモン用の簡易的なトレーニング器具などが用意された部屋。自分とリオル以外に誰もいない空間の中、自分は緊張を紛らわせるようにリオルの頭を撫でていた。

 

 彼女はとても心地良さそうにしていた。これからジムチャレンジの本番を迎えているリオルだが、初めての挑戦とは思えないほどにリラックスしていたものだ。

 

 きっと、モンスターボールの中にいるヨーギラスも冷静な様子で出番を待ち侘びているだろう。トレーナーである自分が落ち着くべく呼吸を整えていると、直にもスタッフの人間に入場を促された。

 

 リオルをモンスターボールに戻し、案内の下で入場口に移動する。光が差す前方にはバトルコートが広がっており、今にも開幕するジムチャレンジの本番を改めて実感した。

 

 会場ではアナウンスが流れる。選手とジムリーダーの紹介や、来場した観客への注意喚起といった事務的なお知らせが繰り返されていく。その間も自分は深呼吸を行いながら待機していると、間もなくして後方でスタンバイしていたスタッフが進行を促し、自分はそれに従って歩き出した。

 

 段々と迫る広大なフィールド。入場口の天井が無くなり、視界が開けていく。

 ガラ空きである観客席に囲まれた空間の中、向かい側の入場口からはハクバビレッジジムのジムリーダー・カイムが歩いてくる。無感情な瞳はこちらを真っ直ぐと見つめ、一切と逸らさない。その眼差しは真剣で、たとえジム初挑戦のチャレンジャーであろうと妥協しない姿勢を感じさせた。

 

 自分が今もコートの中央を目指して歩みを進める最中、客席の方からラミアとメーの声援が響き渡ってきた。

 

「カンキさーん!! 頑張ってくださーい!!」

 

「カンキくん、ファイトーーー!!! イケるよーーー!!!」

 

 彼女らの隣には、腕と脚を組んだオキクルミが座っている。二人の声援と、余裕綽々な彼の様子に感化された自分は前を向くと、直にもコートの中央でカイムと向かい合った。

 

 二人で立ち止まり、礼をする。それからカイムの方から、一定のトーンを保つ独特な声音で喋り出してきたものだった。

 

「どうやら私は、君の挑戦を心から待ち侘びていたらしい。久しいな、この高揚感は。多くの挑戦者を見届けてきたものだが、チャレンジャーの姿を見てこんなにも魂を揺さぶられた経験はこれが初めてかもしれないな」

 

「ご期待に沿えるよう、全力を尽くします。前回お会いした時よりも成長した自分達を、カイムさんにお披露目できればと思っております」

 

「その心意気や良し。では、始めるとしようか。君の究極が、私の究極に届くかどうか。この目で見極めるとしよう」

 

 自分とカイムは踵を返し、背を向けて配置につく。互いに準備を整えると、共にボールを取り出して身構えた。

 

 モンスターボールを手に持つ自分と、スーパーボールを手に持つカイム。構える双方が待機する傍らで、審判が配置につく。そしてお互いの様子を目視で確認すると、間もなくしてゴーサインを出した。

 

 自分とカイムがボールを投げ付ける。両者のボールからは一番手のポケモンが姿を現し、堂々とフィールドに降り立った。

 

 こちらの一番手はヨーギラス。対するカイムの一番手が披露されると、客席のオキクルミが身を乗り出しながら声を出してくる。

 

「ケララッパや! ワシの情報にあらへんポケモンを出しおった! さてはお相手さん、カンキの挑戦に相当気合い入れとるで!」

 

 鮮やかなクチバシを持つ鳥ポケモンは、羽ばたきながらフィールドに現れる。準備は万全といった具合に唸り声をあげると、両者のポケモンを確認した審判は開戦を合図した。

 

 

 

 開幕したハクバビレッジジムの戦いは、カイムの先手から始まる。

 

「ケララッパ! タネマシンガン!」

 

 指示を受けたケララッパがくさタイプのわざエネルギーを身に纏うと、構えると同時に口元から植物の弾丸を生み出してヨーギラスに射出する。その(おびただ)しい量を見た自分は面を食らうものの、後れを取らないようヨーギラスに指示を繰り出した。

 

「てっぺき! タネマシンガンを弾きながら、とっしんで距離を詰めるんだ!」

 

 ヨーギラスははがねタイプのわざエネルギーで鋼鉄を纏うと、直撃したタネマシンガンの弾丸を受けながら前進し始める。一撃の威力が控えめな分、てっぺきは相手の攻撃を容易く跳ね除けていた。だが、ヨーギラス自身は若干と苦悶の表情を浮かべながら一直線に突き進んでいたものだ。

 

 その様子を見ていたオキクルミが、冷ややかな声音で呟いていく。

 

「アカンで、カンキ。初動は最悪や。確かにてっぺきでタネマシンガンは防げるやろうけど、ヨーギラス自体がくさタイプ超抜群やねん。ましてや、あの様子から見るにケララッパの特性はスキルリンク。複数回と連続で攻撃するタネマシンガンを最大限に活かせる構成となっとる。接近すれば有利は取れるかもしれへんけど、せやからこそ、余裕を持ち越して二番手に臨みたい盤面やったと思うで」

 

 オキクルミの呟きに、ラミアとメーが不安げな様相を浮かべて戦況を見遣る。

 

 ヨーギラスの接近には成功した。だが既にヨーギラスは息を切らしており、思った以上に消耗が激しい。自分が焦燥を抱きながらもヨーギラスに次なる指示を送った。

 

「がんせきふうじ!」

 

「ロックブラスト!」

 

 ヨーギラスは生み出した岩石を至近距離からケララッパに放出するが、対するケララッパもまたいわタイプのわざエネルギーを纏うと、口元から岩の弾丸を次々と繰り出すことでがんせきふうじを相殺していく。

 

 ヨーギラスの攻撃は、あっという間に打ち消されてしまった。それどころかケララッパのロックブラストはとどまることを知らず、余った岩の弾丸は勢いのままヨーギラスへと差し向けられる。

 

「ヨーギラス! あなをほるで回避するんだ!」

 

 咄嗟の判断は功を奏した。ヨーギラスが地中に潜ることでロックブラストを回避し、それどころか攻撃が止まらないケララッパへの接近に成功する。

 

 地中から飛び出してきたヨーギラスの攻撃を、ケララッパは本能からか避けていく。この様子にオキクルミはニヤけるように口角を吊り上げながらそれを呟いた。

 

「ええで! ひこうタイプのケララッパにあなをほるは効果あらへんけど、スキルリンクの連続攻撃が長引く性質を利用して地中から近付きおった! これは初動を覆す爆アドや!」

 

 飛び出したヨーギラスは、こちらが指示を出すまでもなくがんせきふうじを繰り出していく。生成された無数の岩石がケララッパに降り注ぐと、至近距離のそれを受けて相手もまた対抗策を繰り出した。

 

「みがわり!」

 

「ヨーギラス! とっしん!」

 

 ケララッパが生み出したみがわりの人形は、がんせきふうじに埋もれて消え去った。それを盾にして後方へと引き下がったケララッパだが、ヨーギラスはこちらが指示したとっしんを繰り出したことで再びケララッパとの距離を詰めていく。

 

 この立ち回りを見たオキクルミが、身を乗り出しながら声を出した。

 

「上手い! レダ(せん)のクレッフィで身をもって体験しとるから、対策はバッチリや! イケるでカンキ! 一気にゴリ押せ!」

 

 みがわりの対策を目の当たりにしたカイムは、予想外といった表情で少し見開いていた。その様相は感心という言葉が適切かもしれない。

 

 ヨーギラスのとっしんは、ケララッパに直撃した。突撃した反動で浮き上がったヨーギラスは再びがんせきふうじを繰り出していく。

 

 生み出された岩石が、ケララッパに降り注いだ。既にみがわりも突破されている以上、更なる手段を講じる必要がある。カイムは戦況を見極める鋭い眼差しを向けながら、ケララッパに指示を繰り出した。

 

「それをとぶ!」

 

 上空へと飛翔したケララッパは、がんせきふうじを回避していく。遥か上空へと舞い上がったケララッパは旋回しながら次なる攻撃を行った。

 

「タネマシンガン!」

 

「がんせきふうじを盾にするんだ!」

 

 上空からのタネマシンガンに対して、ヨーギラスはがんせきふうじを盾にするよう手前に撃ち込んだ。生成された岩石が障壁となってヨーギラスの身を隠し、降り掛かるタネマシンガンを防いでいく。だが、続々と繰り出されるタネマシンガンの勢いに負け、がんせきふうじの防壁は粉々に破壊されてしまった。

 

 突破した障壁にチャンスを見出すケララッパ。だが、次にも目撃した光景に思わず息を呑み込んでいく。

 

 ヨーギラスの姿が、忽然と消えていた。崩落したがんせきふうじの防壁には砕け散った岩の破片と、地面に空いた一つの穴――

 

「あなをほる!」

 

 地中から飛び出してきたヨーギラスが、その勢いで上空のケララッパに急接近した。死角から現れたヨーギラスに驚いたケララッパが怯んでいく手前、ヨーギラスは好機を逃すまいと攻撃をたたみかける。

 

「がんせきふうじ!」

 

 ヨーギラスのがんせきふうじが、ケララッパに命中した。無数の岩石が飛翔するケララッパに直撃し、相手は吹き飛ばされながら敢え無く撃ち落とされた。

 

 ヨーギラスの連携を見た観客席のラミアとオキクルミが、興奮した様子で言葉を口にする。

 

「やりましたねー!! この数日間で編み出した戦法、役に立ってますよ!!」

 

「ええやん、ええやん! ワシがタダで譲った情報が本番で活きとるで! その調子や!」

 

 砂埃を撒き上げながら地面に転がり込むケララッパ。その後に着地したヨーギラスが静観する中、直にも目をグルグルにしたケララッパの姿が伺えた。

 

 審判がケララッパの戦闘不能を確認し、それを合図した。先鋒はチャレンジャーである自分が勝利し、有利をとっていく。

 

 一方で、カイムは不敵に笑みを浮かべていた。抑え切れない高揚感が、彼の闘争心に一層もの火を点けたのかもしれない。カイムはケララッパをスーパーボールに戻していくと、次にも取り出したスーパーボールを振り払うような投擲で軽やかに投げ付けた。

 

 そこから現れたのは、光沢を帯びた鎧が如き体表を身に纏うポケモン、エアームド。二体目にして最後の一体と相対した自分は、緊張を帯びながらヨーギラスと共に対峙した。

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