ポケモンと俺   作:祐。

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策略を掻い潜って

 晴れ渡る青空の下、熱気を帯びたハクバビレッジジム。フィールドに立つ自分とヨーギラスが投げ掛ける視線の先には、カイムの切り札であるエアームドが悠然と羽ばたいていた。

 

 審判がエアームドを確認し、試合開始を合図する。その開幕からカイムは指示を繰り出すと、エアームドもまた即座に反応して先手を打ってきた。

 

「エアームド! ステルスロック!」

 

 オキクルミの情報通りだった。エアームドは指示を受けるなり、滞空する尖った岩をフィールド上にばら撒いてきた。

 

 触れると身体に突き刺さり、スリップダメージを与えてくる障害物。それがフィールドの中央を陣取るように散りばめられ、行動が制限される。

 

 自分もまた、ヨーギラスに指示を繰り出す。だが、こちらの出方を観察するようにカイムは無感情な瞳を向けていたものだ。

 

「がんせきふうじ!」

 

「まきびし」

 

 ヨーギラスががんせきふうじで岩を飛ばしていくが、それが届く前にエアームドは飛翔して難なく避けていく。それどころか上空に移動すると、エアームドはまきびしを繰り出すことでヨーギラスの周辺に棘をばら撒いた。

 

 エアームドの技を見たオキクルミが、目を見開きながら言葉を口にした。

 

「まきびしまで覚えさせとったか! あの技、事前の情報になかったで。ワシらの挑戦に備えて、ギリギリまで秘匿しとったな!」

 

 降り掛かるまきびしを浴びたヨーギラスが、即座に場所を移動する。だが、その移動先にステルスロックが浮遊していたことで、ヨーギラスは回避を躊躇ってしまった。今もまきびしを踏んづけてダメージを食らっていく最中、自分はヨーギラスに技を指示する。

 

「あなをほる!」

 

 ヨーギラスは地中に移動し、ステルスロックとまきびしから逃れた。目指すべくは、ステルスロックとまきびしの両方が設置されていない場所。カイムの前方に広がる空間がその条件を満たしており、自分とヨーギラスはそこから出ることを決めていた。

 

 だが、上空に滞在していたエアームドが直にも動き出す。まるでこちらの行動を予測していたかのように、ステルスロックとまきびしが無いその空間へと一直線に向かいながら――

 

「アカンで! 誘導されとる! 敢えて安全地帯を作り出して、そこにおびき寄せる作戦や!」

 

 オキクルミの忠告も虚しく、ヨーギラスが地中から出てきた瞬間を狙われてしまった。

 

「はがねのつばさ」

 

 カイムの指示通り、エアームドははがねタイプのわざエネルギーを纏った翼をヨーギラスに直撃させた。鋼鉄の一撃は効果が抜群であり、手痛い被弾となる。

 

 ヨーギラスが宙を舞い、力無く地面に打ち付けられた。そこには目をグルグルにして仰向けになるヨーギラスの姿。

 

 自分は呆気に取られて、理解が追い付かなかった。鮮やかな手際だった。相手の心理を逆手に取った手段だ。術中に嵌ったショックで困惑する最中、自分はヨーギラスをモンスターボールに戻してから「ありがとう」と健闘を讃えた。

 

 ステルスロックとまきびしが設置された視界不良のフィールド。そこにモンスターボールを投げ込むと、中からリオルが現れる。強敵を前にして、彼女のやる気は十分だ。障害物を物ともせず健気に準備運動を行うリオルは、エアームドと対峙して赤い瞳を輝かせた。

 

 審判から、試合の再開を合図される。直後、自分は先手必勝と言わんばかりにリオルへと指示を繰り出した。

 

「リオル! でんこうせっか!」

 

 こちらの指示に従い、リオルはでんこうせっかでフィールド上を突っ切った。ステルスロックとまきびしを意に介さず真正面から迫る彼女に対し、カイムもまた指示を行っていく。

 

「そらをとぶ」

 

 エアームドはリオルとの殴り合いに付き合わない。その場から飛び立つと上空へと移動し、リオルのでんこうせっかを回避した。

 

 大空を旋回するエアームドは、朝日の日差しを受けて光沢を輝かせていた。鎧のような体表は頑丈であり、どんな小細工をも見極めるするどいめが地上のリオルを捉えている。

 

「エアームド、ステルスロック」

 

 エアームドは上空という安全地帯から、ステルスロックをばら撒いてきた。滞空する尖った岩がリオルの周辺に振り撒かれる一方で、自分らは自分らで行動を繰り出していく。

 

「リオル! でんこうせっか!」

 

「ふきとばし」

 

 リオルがでんこうせっかで接近を図るものの、エアームドから放たれた根こそぎ吹き飛ばす変化技で彼女は呆気なく後方へ押し退けられていく。

 

 それどころか、ステルスロックの中へと押し込まれた。突き刺さる尖った岩に表情を歪ませるリオル。そこに向かってエアームドは更なる追い打ちを仕掛けていった。

 

「エアームド、まきびしだ」

 

 エアームドは上空からまきびしを振り撒く。リオルがいるエリアに降り注いだ棘は、地面に転がり落ちて彼女の体力を奪い去る。

 

 苦戦するこちらの様子を見て、オキクルミは顎に手を添えた真剣な姿勢で言葉を口にした。

 

「ステルスロックとまきびしで整えた盤面に、外からのふきとばしで強引に中へ押し込む戦法や。実質的な拘束状態は正に鳥かご。どないな方向へ抜け出そうとも、飛行できるエアームドが先回りしてふきとばしをする。対策なしじゃ突破できひん初見殺しの作戦やな。ハクバビレッジジムのジムリーダーも大人げないなぁ~。こないな戦い、ジムバッジ一つ目のチャレンジャーにやるもんやあらへん。お相手さん、本気で心を挫きにかかっとるで」

 

 ステルスロックとまきびしに囲まれたリオルが、痛々しい様相で鬱陶しそうにする。自分も自分で苦境に立たされた絶望に打ちひしがれながらも、リオルの技を脳内で整理してから次の指示を繰り出していった。

 

「でんこうせっかで抜け出すんだ!」

 

 再度とでんこうせっかを繰り出し、脱出を図っていく。だが、エアームドが先回りするように旋回すると、ある意味で予測通りの行動をとってきた。

 

「ふきとばし」

 

「みきり!」

 

 エアームドのふきとばしを、リオルは高跳びの要領で回避してみせた。全神経を集中させた彼女の技にカイムが眉を上げて反応を示していく最中、リオルは空中で回転しながら次なる攻撃に移行する。

 

「はっけい!」

 

 エアームドの正面に飛び掛かったリオルは、左手を構えてから右手を突き出した。波動の青色が飛散する衝撃波を受け、エアームドは後方へ飛ばされながらも滞空し続ける。

 

 手応えは十分だった。エアームドの身体が痺れ始めていたからだ。微かな電撃が全身に迸らせるその様子から、どうやらはっけいの追加効果であるまひ状態を発症したらしい。

 

 羽ばたくエアームドの身体が、徐々に高度を下げていく。絶好のチャンスを逃すまいと自分はリオルに追撃を命令した。

 

「でんこうせっか!」

 

「はがねのつばさ!」

 

 高速で迫るリオルへと、エアームドは迎撃を行う。だが、急接近するリオルの運動が眼前で急停止すると、驚くエアームドへと自分らは更なる戦法を披露した。

 

「フェイント!」

 

 でんこうせっかをキャンセルし、フェイントを下方へ繰り出していく。その技の勢いでエアームドの懐へ潜り込むと、その腹部へ再びはっけいをかますことでエアームドを上空に打ち上げた。

 

 猛攻の手を止めず、自分らは一気に攻め立てた。でんこうせっかを命じた自分に呼応し、リオルも一直線にエアームドへと距離を詰める。だが相手もまた体勢を立て直すと、迎え撃つようにリオルを見据えながら次なる攻撃を繰り出してきた。

 

「エアスラッシュ!」

 

 効果は抜群の技が放たれたことにより、自分は咄嗟にみきりを命じていく。リオルは鮮やかな翻りでエアスラッシュを避けていくのだが、滞空するエアームドは回避先を読んで振り向くと、翼に鋼鉄を纏いながらその薙ぎ払いを行ってきた。

 

「はがねのつばさ!」

 

 まひ状態のエアームドは、非常に鈍った動作ではがねのつばさを繰り出してくる。その先端が掠ったことでリオルは横に回転しながら落下すると、エアームドは鎮座するようその場に居座りながら再度と変化技を行ってきた。

 

「エアームド! ステルスロック!」

 

 地上へとばら撒かれる尖った岩。リオルの落下地点へとそれらが降り掛かると、彼女はよろけながらも即座に移動を開始してステルスロックの雨をくぐり抜けていく。

 

 決死の進行だ。リオルはこの接近に全てを賭けている。彼女の覚悟を受け取った自分もまた腹をくくると、エアームドとの決着をつけるべく技を指示していった。

 

「リオル! でんこうせっか!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 リオルの突撃を見越したカイムもまた、エアームドに迎撃を命令する。その行動を受けて自分は再度と回避を命じた。

 

「みきり!」

 

 リオルはでんこうせっかの勢いに乗せた全集中の翻りで、前方から迫り来るエアスラッシュを避けていく。ここでみきりを消費させたカイムは手を振り払うような仕草を見せながらエアームドに攻撃を命令した。

 

「はがねのつばさ!」

 

「リオル!! カウンター!!」

 

 今まで隠してきた渾身の反撃が、ここにきて炸裂する。迎撃を予感していた自分はエアームドの物理攻撃に合わせてカウンターを指示すると、リオルはかくとうタイプのわざエネルギーを身に纏いながらエアームドへと急接近。そこから相手の攻撃に重ねるよう右アッパーを浴びせ、エアームドを吹き飛ばした。

 

 勝利は目に見えてきた。空中で体勢を立て直したエアームドは、全身を蝕むまひ状態に苦戦しながらも次なる対応を遂行する。

 

「エアームド! ふきとばし! リオルを近付けてはいけない!」

 

 エアームドは痺れる翼で全力のふきとばしを繰り出してくる。それを受けたリオルが宙で後方に吹き飛ばされるや否や、エアームドは防御壁を周囲に生み出した。

 

「ステルスロックでリオルの進行を阻止しろ!」

 

 ばら撒かれたステルスロックは、エアームドの周辺に漂い始める。リオルの接近を許さない防壁を前に、自分はリオルへとひたすらに接近を命令した。

 

「でんこうせっか!!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 落下したリオルが大地を蹴って飛び出していくと、エアームドもまた進行を拒む特殊技を放ってくる。でんこうせっかの高速がそれを容易く避けてみせるのだが、その大回りの隙にエアームドは更なる防壁を生み出してくる。

 

「エアームド!! ステルスロックだ!!」

 

 エアームドの周辺に二重と張り巡らされた絶対防壁。今も空中にて漂う尖った岩の密度は、ほんの僅かな隙間しか見つからない。

 

 いや、隙間は存在するのだ。それをくぐり抜ければ、エアームドの下に辿り着ける――

 

「行け!!! リオル!!!」

 

 リオルはステルスロックの防壁へと突っ込んだ。全身に突き刺さる岩のダメージに耐えながら、彼女は決死の形相で僅かな隙間を突き進んでいく。

 

 尖った岩を足場にして、リオルはステルスロックの防壁を通り抜けた。その奥で待ち伏せていたエアームドが、痺れる全身で迎撃を繰り出してくる。

 

「エアスラッシュ!!」

 

「みきり!!!」

 

 大気を切り裂く斬撃は、リオルの全集中による軽やかな回避によって空を切っていく。避けられた特殊技と迫る挑戦者(チャレンジャー)を前に、カイムは更なる策を施行するが――

 

「ッ! はがねのつばさ!!」

 

「カウンター!!!」

 

 軽やかな回避の勢いでエアームドへと接近するリオル。眼前から放たれた物理攻撃に対してカウンターを繰り出すことで迎撃をも許さない。

 

 リオルのカウンターを食らい、空中でよろめくエアームド。その隙にリオルはステルスロックの防壁を蹴り出していくと、でんこうせっかを繰り出して高速の接近を果たす。そしてエアームドの頭上へと移動すると、彼女は左手を構えた姿勢でこちらの指示を伺った。

 

「はっけい!!!」

 

 突き出された右手から、波動が衝撃波となって放たれる。エアームドの急所を捉えた一撃はその相手を直下に吹き飛ばすと、ステルスロックの防壁を突き破った相手は一直線を描きながら地面に打ち付けられた。

 

 ……目をグルグルにしてうつ伏せとなったエアームド。その様子を、リオルは傷だらけの全身でゆっくりと落下しながら見下ろしていた。

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