ポケモンと俺   作:祐。

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二章
絶世の美女


 三回目の課外授業が終わり、ナガノシティに戻ってきた一同。特に自分は謎の人物からポケモンのタマゴを譲り受けたことで、それをアップルアカデミーの中にあるポケモン研究所へ預けに行ったものだ。

 

 孵化までにはしばらく時間がかかりそうということで、自分は本分である学園生活に戻っていく。本日も晴れ晴れとした天気の下、ラミアとメーの三人で昼休憩を過ごしていた時のことだった。

 

 皆が相棒のポケモンを連れながら、校舎の中にある庭園を歩き進めていく。昼食を終えた一同がバトルコートに向かっているその途中、ふと視界に入った女性へと意識を投げ掛ける。

 

 その人物は、絶世の美女と呼ぶに相応しい存在だった。179cm程の身長を誇る長身は黄金比のシルエットを形成し、膝丈あたりまで伸ばした乳白色の長髪を分厚く束ねたポニーテールが揺らめいている。健康的な色白の肌とシャープな顔つき、大人の落ち着きを体現する黒色の瞳に、左目の泣きぼくろ、そして長いまつ毛に端整な顔立ちは優れた美貌を演出する。服装は、黒色のライダースジャケットとボタンを二つ外した赤色のブラウス、黒色のバイクパンツに膝丈まである黒色のロングブーツというものだった。

 

 女性が話し掛けていた二人の女子生徒は、終始と彼女に見惚れていた。彼女達だけじゃない。周囲の人々やポケモンが彼女の美貌に注目し、何者だとざわついていた。自分も例に漏れず、彼女の容姿に強く惹かれるものを覚えたのだ。いつもはこちらの感情に敏感なリオルでさえ、その美貌を前に赤色の瞳を光らせながら見つめている。

 

 ラミアとメーも小声で噂をする中、女性は無意識にこちらへ振り向いてきた。たまたま視界に入ったのだろうこちらの団体に歩み寄ってくると、その靴音をコツコツ鳴らしながら凛々しい声音で話し掛けてくる。

 

「少しいいかしら」

 

「は、はい……! なんでしょうか……?」

 

 彼女はこちらを真っ直ぐ見つめてくる。他意を感じさせない、純粋で無関心な眼だ。老若男女に限らずポケモンまでをも魅了するその美貌を以てして、彼女は表情を一切と変えない冷静沈着な様子で言葉を続けていく。

 

「アラマキという男性を知っているかしら」

 

「あ、はい! 俺達の担任ですけど……」

 

「そう。なら、これを彼に渡してちょうだい」

 

 こちらの返答を耳にするなり、女性は手に持っていたファイルをこちらに手渡してきた。何かの資料と思われる分厚いそれを自分が受け取ると、彼女は踵を返して歩き出す。

 

 かと思えば、足を止めて頭だけ振り向きながら追加の一言を告げてきた。

 

「“ユノ”と言えば、彼に通じるでしょう。後はお願いするわ」

 

「はい……分かりました」

 

 自分の了解を聞き、ユノと名乗る女性は歩き去った。その歩調に迷いはなく、視線も前を見据えている。周囲からの注目を一切と意に介さない彼女の背中からは、何かを背負う意思の強さを感じさせた。

 

 

 

 ユノに委ねられたファイルを持って、自分達は職員室へと赴いた。そこでは昼食を済ませたアラマキが欠伸(あくび)をしながらイスの背もたれに寄り掛かっており、不意に姿を現した生徒に彼は声を出して驚きながらも陽気な調子で向かい合ってくる。

 

「よーぅ! カンキちゃん、ラミアちゃん、メーちゃん! いつメンちゃんが揃いも揃って、一体どうした? バトルはいいのかい? せっかくの休み時間だぞ?」

 

「先生に用事があって、こちらに伺いました。その、これを渡してほしいと頼まれまして……」

 

 そう言って、自分はファイルをアラマキに渡していく。受け取った彼が眉をひそめながら表と裏を眺めると、直にも合点がいったように頷きながら反応を示してきた。

 

「お! こいつぁ!」

 

「ユノさんという女性から、そちらを渡されまして」

 

「あぁ! ありがとよ! にしても、ユノちゃんなぁ。オレちゃんと会うのがそんなに恥ずかしいのかねぇ」

 

「お知り合いですか?」

 

 こちらの問い掛けに、アラマキはサングラスをキラリと光らせながら答えてくる。

 

「おう! 前職で一緒に働いていてな。その関係で、ユノちゃんの事を知ってんのさ。ユノちゃんは今もその仕事を続けている。詳しくは言えないけどな」

 

「そうだったんですね」

 

「ユノちゃんなぁ。オレちゃんがどんなに口説き続けても、一切と(なび)かないのなんの。こんなに魅力的なオレちゃんなのに、一体どこが気に入らなかったのかねぇ」

 

「多分ですけど、アプローチのし過ぎで避けられていたという可能性が……」

 

「おっなんか急に刺されたような気がするが、んまァ大体そういうこったな! 正直なトコロもカンキちゃんの魅力だぜ! とにかく、こいつは預かっとく! ありがとよ!」

 

 アラマキの感謝を受けて、自分達は踵を返した。用事を済ませて教室へと向かい始めたその直後、ふとアラマキからそのような言葉を投げ掛けられたものだ。

 

「ついでなんだが、“林檎(りんご)探偵倶楽部(クラブ)”って知ってるかい?」

 

「林檎探偵倶楽部?」

 

 皆で振り返り、ラミアとメーの二人と目を合わせていく。全員が知らない様子でアイコンタクトをとっていると、アラマキはイスの背もたれをキィキィ鳴らしながら言葉を続けてきた。

 

「アップルアカデミーの中にあるサークルさ。サークルと言っても、メンバーは今んトコ二人だけっつー話だったかな。名前から察する通り、林檎探偵倶楽部は主に学園内の困り事を調査して解決する活動に力を入れている組織だ。競合相手は、あの銀嶺会。連中も情報通だから、お互いに目の敵にしてるらしいぜ」

 

「なるほど……?」

 

「良かったら覗いてみるといいぜ。サークルメンバーも募集してるだろうよ。見学も歓迎してくれるさ。如何せん、林檎探偵俱楽部はあのユノちゃんが外部指導員を務めてる」

 

「え?」

 

「こいつに関しては、ここだけの話な? ユノちゃんがあまりにも美人過ぎて、サークルのメンバーが探偵の活動に支障を来すだろうからな。話はそれだけだ。引き留めて悪かった。ファイル、サンキューな!」

 

 そう言って、アラマキはデスクに向き直った。自分達は職員室を出た後にも、サークルを覗きに行くかどうか話し合ったものだ。

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