ポケモンと俺   作:祐。

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調査

 林檎探偵俱楽部の見学に来たはずが、メンバーの一人として依頼に対応することとなってしまった。

 

 相談に来た女子生徒をイスまで案内し、シュラがテーブルを挟んだ向かい側でメモを取っていく。左利きの彼女は手に持つペンを高速回転させながら聴取をしていくと、直にも今回の件について依頼主へと確認を行った。

 

「数週間に渡って学園から私物が消えよるんやな。先生や友達に相談しても解決に至らず、せやけど親御さんには心配かけたくあらへんから話すこともできず、ましてや銀嶺会に頼るワケにもいかんくて、ココに来たワケや。もう大丈夫やで!! ウチらに任せとき!! ほな早速、友人関係から洗っていこか」

 

 シュラは依頼主とスマホロトムを見合わせながら、メモを取り続ける。現在の交友関係からSNSのアカウント、最近の印象的な出来事から、課外授業で何処に向かったのかなど、事細かに聴取した彼女は納得したように頷いてからそれを口にした。

 

「辛い思いで押し潰されそうな心情の中、話を詳しく聞かせてくれてほんまにありがと!! 目星はつけたさかい、あとはウチらが原因を解明したる!! ほな、行くで見習い探偵!! 林檎探偵俱楽部、出動や!!」

 

 

 

 一同は部室を後に、校舎の中庭を歩き進めていく。その道中、先頭を往くシュラがこちらに問い掛けてきた。

 

「そういえばやけど、ジブンらの名前を聞いとらんかったわ」

 

「俺はカンキ。よろしく」

 

「ウチはラミアです」

 

「メーで~す。よろ~」

 

 三人の返答を聞いたシュラは、「ほーん」と反応する。それから少し思考を巡らせた後、彼女は活発的な調子で一人ずつそれを伝えていった。

 

「せやったら、ジブンは真面目なニーチャンでええな??」

 

「え?」

 

「ほんで、ジブンは可愛らしいネーチャン」

 

「ウチですか??」

 

「しまいに、ジブンはギャルなネーチャンで決まりやな」

 

「うぇーい。ピースピース」

 

「ウチはヒトを名前で呼ばへんって決めとるからな。後ろからついてきとるジョーチャンのこともそう。せやさかい、自己紹介はジブンでしたってや~」

 

 シュラの言葉を聞き、自分とラミア、メーは後ろを振り返る。

 

 そこでは、林檎探偵俱楽部の部員である女子高生が気だるげな様子で視線を合わせてきた。ブレザーに片手を突っ込み、スマホロトムに向けていた視線をこちらに投げ掛けてくる。嫌悪や敵意ではなく、不愛想と呼べるドライな目つきが冷ややかに向けられる中、少女はだるそうにため息をつきながら喋り出した。

 

「……別に、あたしの事は気にしなくていいから」

 

「ジョーチャンはな、アップルアカデミーの中にある通信制の高校に通いながらこの学園で勉強しとる。せやけど学校はよくサボっとって、サークルにだけは顔を出しに来とる単位ギリギリのお茶目な子やな」

 

「ねぇ、勝手に喋んないでよ」

 

「ジョーチャンが喋らんから、ウチが代わりに紹介しとるんやろ。留年したら、大好きなオネーチャンにどやされるで~」

 

「う、うるさいな! あんたには関係ないでしょ……!」

 

「ウチは部長として、部員の行く末を心配しとるだけやで~??」

 

「チッ……」

 

 少女は舌打ちをすると、不機嫌な様子でスマホロトムに視線を落としていった。その様子を横目にシュラは活発な調子でこちらに説明し始める。

 

「しゃあないから、ウチから紹介するわ。そのジョーチャンは“ナコ”言うて、顧問のネーチャンの知り合いや」

 

「顧問というと、ユノさん?」

 

「せやで、顧問のネーチャンが林檎探偵俱楽部の外部指導員やっとるから、そのよしみでココにおるようなモンやな。アップルアカデミーには在籍しとるけど、ぶっちゃけポケモンには興味あらへん子や。この学園におるのも、血の繋がっとるオネーチャンがジムリーダーやから――」

 

 シュラが説明する横で、少女ナコが「もういいでしょ」と半ギレで突っ込んでくる。その言葉を聞いたシュラは左手をひらひらさせながら「ったく、気難しくて大変やわ~」とわざとらしくぼやいていくと、動かしていた左手でそのまま前方を指差しながら話題を切り替えてきた。

 

「っちゅうワケで、目的地に到着したで。ここが依頼主の通ってる教室前の校舎や」

 

「今回の相談は、私物の盗難に関する内容だったっけ?」

 

「せやな。ここ数週間で、依頼主の所有物が教室から消失しとる。クラスメートや担任の教師は知らぬ存ぜぬでまともに対応してくれへんみたいやけど、ウチら林檎探偵俱楽部はちゃうで。迷える子羊を希望に導いたる。ほな、調査に取り掛かろか!!」

 

「具体的には何をするの?」

 

 いざ何をするか言われてもいまいちピンと来ない。そういうわけで自分がシュラに訊ね掛けると、次にも彼女は活発的な調子でそれを言い切ったものだ。

 

「そんなん、決まっとるやろ。張り込みや!!」

 

 

 

 教室の反対側にある校舎の陰に隠れてから、三時間以上は経過したことだろう。完全に陽が落ちて夜を迎えたその時刻に、自分とラミア、メーは疲労を表情に滲ませる。

 

 リオル、キラーメ、ミズゴロウも退屈を極めていた。だが、シュラとベイリーフ、ナコは平然とした様子で張り込みを続けている。今もシュラが向かいの様子をこっそり伺いながら覗き込んでいく最中、自分は彼女へと問いを投げ掛けた。

 

「ねぇ、シュラ。この張り込みってまだ続けるの……?」

 

「当たり前やろ?? 探偵は忍耐が重要なんや。地道な成果を足で稼いでいく。それが探偵の本分やで??」

 

「俺はてっきり、現場の証拠から犯人を推理して突き止めるのが探偵だと思ってたんだけど……」

 

「そないなワケないやろ、漫画やアニメやあらへんし。推理云々はエンターテイメント向けに脚色された演出や。探偵っちゅうのは、証拠を押さえて依頼主に届けるだけのお仕事やで。なにも事件に関わる必要とかないねん。根本的な問題の解決は警察のお仕事やからな。特定の出来事に関する調査を行って、その記録を依頼主に報告する専門職。それが探偵やねん」

 

「なるほど……」

 

「まぁ、ウチら林檎探偵俱楽部はその解決まで請け負うんやけどな。警察が介入できひん学園内の民事事件を解消する。それがウチらの役目やと思うとる。要は、正義執行人やな!!」

 

 シュラが力説する横で、ベイリーフが彼女の袖を口で咥えてきた。何かを促す訴え掛けにシュラは教室の方へと振り向くと、そこでは校舎に起こる怪奇的な異変を目撃した。

 

 ひとりでに開かれた教室の扉。そこから浮遊する教科書が数冊と出てくると、それらは列を成して校舎の廊下を移動し始める。

 

 目にした現象に、ラミアとメーが悲鳴を上げそうになった。それをシュラが慌てて口を押さえて止めていく最中、ベイリーフとナコが教科書の行方を目で追い掛けていく。

 

 自分とリオルも気配を消しながら静観していると、直にもシュラはパーカーのポケットをゴソゴソしながら喋り出した。

 

「ええで、狙い通りや。依頼主から聴取しとる時点で、作為的な思惑を予感させとった。あとはその尻尾を掴んで、犯人の正体を暴いたるさかい。ゴールは目前やで!!」

 

 そう言って、シュラはポケットから双眼鏡を取り出した。彼女はその道具を使用しながら言葉を続けてくる。

 

「探偵の必需品、シルフスコープや!! ジョウト出身のウチが、わざわざカントーまで出向いて入手してきた最上級の一品!! これで怪奇現象の本体も素っ裸や!! ……視えたで!! あれはゴーストやな!! わざわざ透明化して教科書を運んどる様子から、確実に誰かさんの指示で動いとる!! 見失うワケにはいかへん、追い掛けるで!!」

 

 シルフスコープを構えたシュラが、音を立てないよう細心の注意を払いながら駆け出していく。彼女に続いて自分らも飛び出すと、一同による大掛かりな尾行が始まった。

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