ポケモンと俺   作:祐。

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正義執行

 照明に囲まれた夜のアップルアカデミー。居残りでポケモンバトルや研究などを行う生徒達が所々に見受けられる空間の中、一同は気配を消しながら校舎の中庭を突き進んでいた。

 

 先頭を往くシュラは、シルフスコープを覗き込みながら俊敏に物陰から別の物陰へと移動していく。ベイリーフとナコも廊下でひとりでに浮遊する無数の教科書を目で追いながら追跡する傍ら、自分とラミア、メーは少々と遅れを取りつつも彼女らに同行したものだ。

 

 開けた中庭に差し迫った頃、シュラは植物園の大きなプランターに身を隠した。続けて彼女が小声で「こっちや!!」と促すものだから、自分らは急ぎ合流して、全員でプランターの陰に収まった。各々が上や横から顔を出して様子を伺う中、前方の中庭ではひとつの光景を目の当たりにする。

 

 それは、実体化したゴーストが無数の教科書を不良の連中に受け渡している場面だった。四名の不良が性根悪そうな笑みを浮かべていく様子に、シュラは不機嫌な調子で言葉を口にする。

 

「やっぱり、犯人は銀嶺会やった。何が学園の均衡を保つ調停者や。一部の上澄みが理念に忠実なだけで、下っ端はどいつもこいつも銀嶺会の看板で好き勝手しとるだけやないか。――しゃあない。依頼主の私物を取り返すためにも、いっちょウチらが一肌脱いだろか」

 

「シュラ、これから何をするつもりなの?」

 

 うずうずするシュラの様子に、自分は問い掛けていく。それを聞いた彼女は即座に振り返ってくると、活発的な調子でガッツポーズしながら返答した。

 

「決まっとるで。正義執行や!!」

 

 瞬間、シュラとベイリーフは勢いよく飛び出した。彼女らに気付いた銀嶺会の不良達が呆気に取られた顔を見せていく間、自分達もまたシュラの後に続いて姿を現した。

 

 シュラは仁王立ちして、ビシッと左手の人差し指を向けながら連中に言葉をぶつけていく。

 

「林檎探偵俱楽部や!! 盗難の現場は押さえたで!! 言い逃れはできひんよって、これまでの悪行を白状せい!!」

 

「げっ! 林檎探偵俱楽部! いちいち付き纏うんじゃねぇぞ小賢しい! プライバシーの侵害で通報するぞ!」

 

「ジブンらが窃盗罪でしょっぴかれるんやで!! 大人しくお縄につかんかい!!」

 

「元はと言えば、こいつの持ち主が悪いんだ! いつも校則が~校則が~言っててうるせぇんだよ! ああいう独りよがりの優等生気取りは、痛い目に合わせねぇと調子に乗り続けるからな!」

 

「注意されとるジブンらが悪いんやろ!! まともに社会貢献もできひん存在自体が障害物なジブンらのことを、ちゃんと対等に扱ってくれとる依頼主って実はほんまの神なんやで??」

 

「はい人権侵害~。言葉の暴力って重罪なんだぜ?」

 

「意味も知らんっちゅうのに、そのお粗末な脳みそで捻り出した覚えたての言葉をよう振りかざせるなぁ?? 勘違いしとるみたいやけど、ジブンらのような下等生物に人権なんて元からあらへんから、個人の尊厳が侵害されたとかジブンらは気にせんでもええんやで??」

 

「なめるなよクソ女! ぶっ潰してやる!」

 

 不良の一人がゴーストを差し向けると、シュラのベイリーフもまた前に飛び出してきて身構えていく。その横で別の不良がコノハナを繰り出すと、自分は対抗するようリオルを向かわせた。

 

 こちらを見た不良の連中は、シュラに向けていた威嚇とは異なる私怨を交えて喋り出してくる。

 

「お前がカンキだな? オキクルミの兄貴やレダ(せん)にえらく気に入られてるみたいじゃねぇか。そんなお前をこの手でぶちのめせばよぉ~、兄貴やレダ(せん)の興味は俺に向かうだろうなぁ~?」

 

「悪い事をして注目を集めるんじゃなくて、良い事をして注目を集めた方が好印象だと思うよ。それはそれとして、あんた達の悪事をここで見逃すわけにはいかないな」

 

「その余裕が癪に障るんだよなぁ~! あ~! 早くぶちのめしてぇ!」

 

 不良と会話するこちらに対し、隣に立つシュラは「なんや真面目なニーチャン、銀嶺会からえらく気に入られとるなぁ」と口を挟んでくる。自分は「成り行きで、ちょっとね」と答えると、彼女は「興味そそられるわぁ~!! 後で話、聞かせたってや!!」と言って身構えた。

 

 

 

 バトル開始。先手を取ったのは不良の二人だ。

 

「ゴースト! たたりめ!」

 

「コノハナ! ねこだまし!」

 

 ゴーストはベイリーフへとたたりめを繰り出す。一方でコノハナは飛び出すや否や一瞬にしてリオルの下へ到達し、相手を怯ませる一撃で動きを止めてきた。

 

 だが、リオルは怯まない。せいしんりょくの特性で赤い瞳を逸らさずに見つめ続けると、次は後手の自分達が指示を繰り出していく。

 

「リオル! はっけい!」

 

「ベイリーフ!! やどりぎのタネ!!」

 

 リオルはその場ではっけいをコノハナに直撃させた。効果は抜群の反撃に、相手は後方へと吹き飛ばされていく。

 

 シュラのベイリーフは、ゴーストのたたりめを食らうのと引き換えにやどりぎのタネを命中させた。発射したタネがゴーストの身体に触れると、そのタネからトゲ付きのツタが全身に絡みつき、ゴーストを拘束する。

 

「ゴースト! あくのはどう!」

 

「ベイリーフ!! ひかりのかべ!!」

 

 ゴーストの両手から、エネルギーを帯びたドス黒い波動攻撃が放たれる。それはベイリーフへと向かって一直線に伸びていくのだが、ベイリーフはシュラが指示したひかりのかべを貼り出したことで眼前の特殊技を余裕で耐え切ってみせた。

 

 それどころか、ゴーストの全身に絡みつくやどりぎのタネによって相手が体力を消耗していく。その技を介して体力を回復し続けるベイリーフは、余力十分といった具合にどっしりと身構えていた。

 

 戦場に復帰したコノハナは、その場から跳躍しながらリオル方面へと攻撃を繰り出してくる。

 

「コノハナ! エアカッター!」

 

「でんこうせっか!」

 

 コノハナから放たれる円状の斬撃は弾幕となり、リオルに降り掛かる。だが彼女はでんこうせっかの勢いで飛び出していくと、相手の攻撃をしっかりと見極めることで冷静に回避しながら確実に距離を詰めたものだ。

 

「コノハナ! はっぱカッター!」

 

「メタルクロー!」

 

 続けて放たれたはっぱカッターに対しても、リオルはメタルクローで弾き返しながら接近する。間もなくコノハナの下に到達してはっけいを食らわせられるだろう。戦況の様子からだいぶ有利を取っていた自分は次の指示を送ろうとしたその時、思わぬ出来事が起こった。

 

「イトマル! いとをはく!」

 

 リオルの横から放たれた粘り気の糸。それがコノハナに飛び掛かる彼女の身体に巻き付いて、身動きを制限してきたのだ。

 

 三人目の不良が不意に繰り出した攻撃。リオルも想定外といった様子で見開いていく中、コノハナはチャンスと見なして襲い掛かる。

 

 だが、そこに更なる想定外が巻き起こった。

 

「キラーメ!! げんしのちから!!」

 

 リオルの後方から、不自由となった彼女を援護する形で降り注ぐ無数の岩石。それがコノハナやイトマルを遠ざけていく傍ら、四人目の不良がモンスターボールを投げ付けながら命令していく。

 

「コロモリ! ねんりき!」

 

「ミズゴロウ! みずでっぽう!」

 

 現れたコロモリがねんりきでリオルを狙い撃ちにするも、彼女を拘束していた糸がみずでっぽうによって洗い流されていく。これを受けてリオルは即座に飛び立つと、ねんりきを跳躍で回避しながらこちら側に戻ってきた。

 

 気付けば、場は混沌と化していた。シュラとベイリーフ、自分とリオル、ラミアとキラーメ、メーとミズゴロウが並び立ち、相手側もまたゴースト、コノハナ、イトマル、コロモリが立ち並んで対峙する。

 

 総員が一気に相まみえた4対4のポケモンバトル。ここからは技が入り乱れる大乱闘へと発展する。

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