ポケモンと俺   作:祐。

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大乱闘

 夜のアップルアカデミー校舎で勃発したポケモンバトル。4対4で対峙する一同は一瞬の静寂で睨み合った後、次にも一斉に指示を繰り出した。

 

「ゴースト! たたりめ!」

 

「ベイリーフ!! リフレクターや!!」

 

「コノハナ! エアカッター!」

 

「リオル! メタルクロー!」

 

「イトマル! イカサマ!」

 

「キラーメ!! げんしのちから!!」

 

「コロモリ! エアスラッシュ!」

 

「ミズゴロウ! みずでっぽう!」

 

 開幕した大乱闘は、お互いの技が飛び交う混沌状態だった。リオルはコノハナのエアカッターをメタルクローで弾き返しながら接近するものの、コロモリ方面から飛んできたエアスラッシュに直撃して吹き飛ばされてしまう。だが、ベイリーフが事前に貼ってくれていたひかりのかべがダメージを抑えたため、彼女は直ぐにも体勢を立て直して再び接近を図り出す。

 

 キラーメの方からは、イトマルがイカサマで一直線に突っ込んできた。だが、ミズゴロウのみずでっぽうがそれを押し流して拒んでいくと、キラーメは浮遊させた無数の岩をイトマルとコロモリの方へと発射した。迫る岩に二匹は巻き込まれ、共に効果は抜群で痛手を負いながらも立ち上がってくる。

 

 ゴーストのたたりめはベイリーフに直撃した。しかしベイリーフはリフレクターを繰り出すことで自身と味方に防御壁を貼り出していく。共にしてゴーストに命中させていたやどりぎのタネを介して体力を回復すると、続けてシュラは技を命令した。

 

「しんぴのまもり!!」

 

 ベイリーフが目を閉じて集中すると、自身と味方に透明なベールを纏わせた。状態異常を無効化する援護を受けたリオルは、コノハナ方面へ速攻を仕掛けるべく大地を蹴り出していく。

 

「でんこうせっか!」

 

「はっぱカッター!」

 

 コノハナのはっぱカッターを高速でくぐり抜けたリオル。だがイトマルが動き出すとそれは跳躍しながらこちらの陣営に技を繰り出してきたものだ。

 

「ねばねばネット!」

 

 イトマルが地面に撃ち込んだ粘着性の罠は、突撃するリオルの機動力を削いだ。一気に速度を落としたリオルが苦戦する表情を浮かべていく最中、チャンスと見なしたコロモリが仕掛けてくる。

 

「ねんりき!」

 

「キラーメ!! まもる!!」

 

 コロモリがねんりきをリオルに直撃させるその瞬間、遮るように飛び出してきたキラーメが身を挺して相手の攻撃を防いでいく。そうして隙だらけとなったコロモリ方面へとミズゴロウが飛び出すと、ねばねばネットを踏まない遠距離から攻撃を繰り出した。

 

「みずでっぽう!」

 

 ミズゴロウのみずでっぽうがコロモリに直撃する。隣の仲間が吹き飛ばされたイトマルはすぐさまミズゴロウへと狙いを定めるが、まもるをしていたキラーメが固定砲台の如くその場で構えながら岩石を生成し始めた。

 

「げんしのちから!!」

 

「コノハナ! ふいうち!」

 

 キラーメがイトマルへと攻撃を放つ直前、コノハナが高速でキラーメに突っ込んできた。飛び蹴りの要領で横から突撃してきたコノハナによって、キラーメは吹き飛ばされた後に地面を転がっていく。

 

 幸いにも、ベイリーフのリフレクターがこちらのダメージを軽微に抑えてくれていた。即座に体勢を立て直すキラーメを横目に、リオルはねばねばネットを踏み付けながらコノハナへと近付く。

 

「フェイント!」

 

「ふいうち!」

 

 コノハナが再び先制攻撃を繰り出すが、技の性質上こちらが上回った。ふいうちをすかされたコノハナがコケるような仕草で体勢を崩していく手前、リオルは真正面からフェイントの一撃を加えて相手を仰け反らせる。そこから懐に潜り込むと、彼女は左手を構えてから右手を突き出した。

 

「はっけい!」

 

「ゴースト! コノハナを庇え!」

 

 はっけいが繰り出される直前、ゴーストが幽霊の身体を活かして透き通るように割り込んできた。放たれたはっけいはゴーストが肩代わりし、タイプ相性によってはっけいを無効化する。

 

 攻撃後の隙を晒したリオルへと、ゴーストは絶好のチャンスと言わんばかりに舌を出しながら仕掛けてきた。

 

「シャドーパンチ!」

 

「キラーメ!! どくどく!!」

 

 ゴーストが身構えた瞬間、横から自身を蝕むもうどく状態が飛んできた。どくタイプである自身がもうどく状態になった違和感からゴーストが振り向くと、そこには特性ふしょくのキラーメが存在していた。

 

「ベイリーフ!! とっしんや!!」

 

 すかさず飛び出してきたのはベイリーフ。とっしんを繰り出したベイリーフはタイプ相性の関係でゴーストの身体をすり抜けると、その先にいたコノハナへと突っ込んで吹っ飛ばしていく。

 

 タイプ相性を逆手にとった戦法。思わぬ一撃を食らったコノハナは苦悶の表情を浮かべながら後方に引き下がり、膝をついていく。

 

 同時にして、ゴーストに絡みつくやどりぎのタネが相手の体力を奪い去る。加えてキラーメのどくどくによってもうどく状態も発症したため、直にもゴーストはゆっくりと沈むようにその場で戦闘不能になった。

 

 仲間の二人が継戦困難となり、不利を背負った相手方が動揺を見せていく。その隙にミズゴロウがコロモリへと攻撃を仕掛け始めた。

 

「みずでっぽう!」

 

「イトマル! かげうち!」

 

 ミズゴロウの攻撃を止めるべく、イトマルが影を地面に忍ばせる。だが、先制攻撃に対して更なる先制攻撃を自分は指示していった。

 

「でんこうせっか!」

 

 ねばねばネットから脱出したリオルが、即座に飛び出していく。イトマルを上回る素早さで彼女は瞬時に相手へ接近すると、その突撃をかましたことで相手のかげうちは強制的に中断させられた。

 

 手薄となったコロモリも、ミズゴロウを対象にねんりきを放つことで反撃の一手を講じていく。しかし、でんこうせっかの勢いを纏うリオルがそのままコロモリへと接近すると、相手は意識が分散してあたふたと狙いを定められずにいたものだ。

 

 リオルがフェイントの要領で、でんこうせっかを維持したままコロモリの視界を横切っていく。そうして横切った彼女の奥からミズゴロウのみずでっぽうが迫り来て、回避もままならないまま直撃することでコロモリは戦闘不能になった。

 

 大乱闘の結果は、もはや目に見えていた。ギリギリで耐え切ったコノハナとイトマルも、今では戦意を喪失している。銀嶺会の不良達はボロボロになったポケモン達を必死に起こそうとして呼び掛けていたが、数的有利をとった自分達とそのポケモン達が立ち並ぶことによって圧をかけていく。

 

 相手方は非常に混乱していた。この窮地を乗り切る方法。そのひとつとしてキズぐすりを引っ張り出してきたり、次のポケモンを繰り出すべくモンスターボールを取り出した者もいた。だが、その勝敗が歴然となった次の時にも、校舎の明かりがパッと点くなると同時に教師の怒号が響き渡ってきたのだ。

 

「コラァーーーー!!! そこで何をやってるんだお前達はーーーー!!!!」

 

 場外で見守っていたナコも含め、みんなでビクッとしながら周囲を見渡していく。気付けば複数名の教師と警備員がこちらを取り囲み、半ばうんざりした様子で見遣っていた。

 

 怒りで歪ませた男性教師がズカズカと歩いてくる中、シュラは銀嶺会の不良達を指差しながらここぞとばかりに主張し始める。

 

「先生ぇ~!! ええところで来てくれはった!! なぁ聴いてくれやぁ~!! あの不良共が夜の校舎で盗みを働いとってな!! ウチらはそれを取り戻すために、しゃあなしにバトルしとったんや~!!」

 

 男性教師が「なに?」と言って、不良達を見遣る。それに対して不良は手に持つ教科書を見せながら反論してきた。

 

「ち、違う違う! 言い分が逆だ! こいつらが盗みをしていたから、おれ達が取り返してやったんだ!」

 

 不良の主張に、シュラは呆れたように眉をひそめながら言い返す。

 

「なぁ~に言うとるんやこのアホ!! 往生際が悪くて見苦しいわ!!」

 

「じゃあ証拠を出してみろよ! おれ達が盗んだ証拠だよ!」

 

「んなモン、あるに決まっとるやろ!!」

 

「ほら、あるんじゃねぇか!! …………ん? ある?」

 

 不良が見上げると、そこからはスマホロトムが下りてきた。端末はシュラの下に近付くと、次にもその画面に上空から撮影した映像を流し始める。

 

 そこには、盗難の一部始終が収められていた。男性教師や警備の人間が映像を確認する最中、不良達は慌てた様子で言葉を口にしてくる。

 

「い、いつの間にそんなもんを!」

 

「探偵たるもの、証拠は逃さんで。ジブンらの悪行はバッチリ記録しとるさかい、観念するんやな」

 

「くそ!」

 

 不良達は急ぎで逃げ出した。だが教師や警備の人間、見張りのエレザードやニョロトノが彼らを呆気なく拘束すると、不良達の恨み言を耳にしながらその連行される様子を見届けたものだった。

 

 

 

 数日後、昼休みのアップルアカデミー。昼食を終えた自分達がバトルコートに向かう道中の中庭にて、偶然とすれ違ったシュラに呼び止められていく。

 

「お!! 見習い探偵トリオやん!!」

 

「やぁ、シュラ。この間はどうも」

 

「ちょい聞いて!! あの事件な、無事に解決したで!! 盗まれとった依頼主の私物も全部見つかったさかい、これで一件落着や!!」

 

「それなら良かった」

 

「ありがとなぁ!! 見習い探偵トリオ!! また気ぃ向いたら部室に顔出して!! 入部はいつでも歓迎やからな~?? ほな、また!!」

 

 そう言って、シュラは活発的に駆け出していった。颯爽と走る彼女の風を受けて、林檎探偵俱楽部の余韻をその身に感じたものだった。

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