ポケモンと俺   作:祐。

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同行者の募集

 次の課外授業が迫りつつある現在、アップルアカデミーのクラス内には一種の浮ついた空気感が流れていた。

 

 志を共にする仲間同士、次回の冒険が楽しみだと思う高揚に共感する。自分もまた感化されるようウキウキしていると、隣にあるラミアの机に腰を掛けていたメーが、ふとそんなことを切り出してきたのだ。

 

「カンキくんはさ~、次の課外授業は新しい場所に行くよね?」

 

「そうだね。ジム巡りのために次のポケモンジムを目指すつもりだよ」

 

「アタシは前回のジムに負けちゃったからさ~、リベンジのためにもう一回ハクバビレッジに行くつもりなんよね~。ラミアもハクバビレッジジムに挑戦するっていうから、アタシ達はハクバビレッジを目指すけど」

 

「じゃあ、次回は別行動になるかな?」

 

「そういうことになるかな~?」

 

 ラミアが淡泊な面持ちで話を聞く中、メーはこちらに対して悪戯な笑みを浮かべてくる。

 

「アタシ達が一緒じゃなくて寂しい?」

 

「それはまぁ、そうではあるけど……」

 

「へぇ、寂しいんだ?」

 

「な、なに……?」

 

「ん~? なにも~?」

 

 メーの揶揄(からか)いに困惑するこちらの様子を、彼女は面白げに眺めていたものだ。勝気な表情でニタニタ微笑するメーを傍らに、次はラミアが提案するように喋り出してくる。

 

「カンキさん、次はお一人で行動されるんですか??」

 

「どうしようかな。次も二人と行動するつもりだったから、何も考えてなかったよ」

 

「でしたら、シュラさんとか誘ってみたらどーです??」

 

「シュラ?」

 

「シュラさんもアップルアカデミーの生徒ですから、課外授業で冒険に出られると思いますし。この際ですからご一緒されてみては??」

 

 自分は少し思考した。ラミアとメーが一時的に離脱する以上、新たな同行者を迎えた旅についてその本人と話し合ってみようと思えたからだ。

 

 

 

 放課後のアップルアカデミー。自分はジムチャレンジに備えたラミアとメーの二人と別れ、リオルと共に林檎探偵俱楽部の部室に顔を出した。

 

 扉をノックすると、中からドタドタ音を立てながら迎えてくれたシュラ。ベイリーフも顔を覗き込ませてくる傍らで、彼女は活発的な調子で喋り出してくる。

 

「お~!! 真面目なニーチャンやないか!! もしかして、入部の相談!?」

 

「えっと、次の課外授業について話があって」

 

「なんや、別件かいな。まぁええわ、せっかく来てくれたさかい、寄っていき~」

 

「ありがとう。失礼します」

 

 途端に興味を失ったシュラがこちらに扉を委ね、代わりに自分が閉めていく。その最中、リオルもベイリーフに案内されてひょこひょこと歩を進めていくのだが、ふと足を止めるなり何かに注目し始めたため、自分もその視線を追い掛けるように前方を確認した。

 

 部室のイスに腰を掛けていたその人物。乳白色のポニーテールを垂らし、絶世の美貌を持て余した凛々しき女性。彼女は長い脚を組み、腕も軽く組んだ姿勢でこちらを悠然と見遣ると、次にも落ち着きのある声音で言葉を投げ掛けてきた。

 

「こんにちは」

 

「ど、どうも。ユノさん、でしたっけ」

 

「えぇ、そうよ。先日は世話になったみたいね。外部指導員として、礼を言いましょうか。ありがとう」

 

「そんな、皆さんの力があってこその結果でしたから!」

 

「謙遜しないでちょうだい。貴方も同行してくれたからこその結果だった。その事実に変わりはない」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「立ち話もなんでしょうから、好きな席に座ってもらって構わないわ」

 

「では、失礼します……」

 

 自分が緊張気味に返答する中、ユノに密着する形で隣に座っていたナコがこちらをジッと見つめていた。どこかけん制してくる視線に一層ものプレッシャーを感じながらも席に腰を下ろすと、リオルがこちらの膝の上に乗り掛かってきては収まり、続けてシュラが隣の席にドカッと座りながら喋り出してくる。

 

「ほんで、課外授業がどないしたん??」

 

「次の課外授業なんだけど、シュラ、良かったら俺と一緒に来ない?」

 

「なんでウチが真面目なニーチャンと課外授業に行かなあかんの??」

 

「それは、ほら……仲間達が居た方が楽しいと思うから」

 

「せやったら、あのネーチャン達と行けばええやろ」

 

「あぁ、ラミアとメーは――」

 

 自分は一連の流れを簡潔に説明した。それを聞いたシュラは半ばどうでもよさそうに肘をつきながら聞いていたものだ。

 

「ほんで、いつも一緒に冒険しとったネーチャンらがおらんから、代わりにウチと冒険したいと??」

 

「そういうこと」

 

「パスや。ウチは都合のええオンナやないで」

 

「ごめん、そういう意味で言ったわけじゃないんだけど……」

 

 気まずい雰囲気になってしまい、自分は一刻でも早く部室から立ち去りたいと思っていた。だが、次にもユノがこの沈黙を破ってくる。

 

「ならば、カンキくん。代わりにナコちゃんを連れて行ってくれないかしら?」

 

 この提案に誰よりも反応したのは、ユノの隣でスマホロトムを操作していたナコだった。ギョッとした様子で思わず振り返ると、少女は戸惑いながら口を出してくる。

 

「な、なんであたしが……!?」

 

「ナコちゃん。貴女のお姉さんであるヒイロは、課外授業を何よりも楽しみにしていたわ。この学園に通う唯一のモチベーションとも言えたでしょう。彼女は広い世界を見て、沢山の経験を積み重ねてきた。破天荒である彼女は誰よりも失敗を繰り返してきたけれど、その挑戦の数々がジムリーダーである今の彼女を形成したと、私はそう断言することができる」

 

「そりゃあ、ユノさんはお姉ちゃんの事をずっと隣で見守ってくれていたけれど……」

 

「お姉さんのようになりたい。貴女はその信念を持ってこの学園に入ったと私は認識しているけれど、違うのかしら」

 

「それは……っ」

 

「お姉さんが見てきた景色を、ナコちゃんにも見てもらいたい。それが、彼女の友人である私の願いよ」

 

「うぅ……っ」

 

 ナコは葛藤に苛まれていた。理想と現状の狭間に揉まれ、すぐには判断できない迷いを抱えている。

 

 そんなユノの提案に真っ先と食い付いてきたのは、シュラの方だった。

 

「顧問のネーチャン!! いくらなんでも、女子高生を男と二人きりにするのはアカンとちゃうか!?」

 

「なら、シュラ。貴女も彼の冒険に付き添えば、その問題は解決するでしょう」

 

「そんなん、けったいな話やろ!!」

 

「貴女は部活動に力を入れ過ぎて、課外授業が疎かになっている節があるわ。いつもレポートに困っていることを、私にもボヤいている。彼の冒険に同行したら、その悩みからも解放されるでしょう」

 

「せやけど、ウチには助けを求める人達が……!!」

 

「貴女の人助けは、旅先でも可能よ。むしろ、その方が好都合でしょう。貴女の活動が、外部の人間にも周知される。その口コミが地方全体に広まれば、結果として貴女を頼る人々は増えるでしょうね」

 

「それは……そうかもしれへんなぁ!!」

 

 シュラは思い直したように顔を上げてくる。それから隣にいるこちらの手を掴むと、先程の無関心な様子とは真逆の眩い光を瞳に宿らせながら言葉を口にしてきたものだ。

 

「せやったら、話は決まりやな!! 次の課外授業は林檎探偵俱楽部の布教活動に力を入れるで!! な!! 見習い探偵!!」

 

「え? あ、そうだね……? 一応、俺のジム巡りという目的も兼ねてだけど……」

 

「ええやん、ええやん!! なんか、やる気が出てきたわ!! ジョーチャンもそれでええな!?」

 

 シュラに話を振られたナコは、未だに判断できない心理状態で戸惑いながら振り向いてくる。

 

「でも、あたしは高校生で課外授業とか関係ないから……っ」

 

「課外授業の期間中はな、高校生でもレポートを提出すれば出席扱いになるんやで?? アップルアカデミーと提携しとる通信制の高校やからな。融通が利くねん」

 

「そうなの? でもあたしが課外授業に行っても……っ」

 

「んなもん、行ってみなきゃ分からんやろ!! 林檎探偵俱楽部の布教で出向くのに部員がおらんかったら示しがつかんしな。せやから、ジョーチャンも同行で決まり!! これは部長命令や!!」

 

「ええええぇぇ」

 

 ナコは困り顔でドン引きした。乗り気になれない部員を差し置いて、シュラは活発的な調子でリオルに「よろしくな~!!」と言いながら握手をしたりなどやりたい放題。その様子を、ユノは微笑ましい面持ちで眺めていたものだ。

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