ポケモンと俺   作:祐。

36 / 41
ショウホンシティ

 課外授業の当日を迎え、自分とリオルは支度を終えてナガノシティのターミナルステーションに向かった。連れ歩きで彼女と共に駅前へ訪れると、待ち合わせの場所にシュラとナコの姿が見えたものだ。

 

 シュラはベイリーフを連れて、こちらに手を振ってくる。その横で制服姿のナコは不機嫌そうな顔をしながら佇んでおり、こちらをジッと見遣っていた。直にも二人と合流した自分は、駆け寄りながら話し掛けていく。

 

「おまたせ!」

 

「お~!! 集合時間ピッタリやな~!! さすがは真面目なニーチャンやで!!」

 

「シュラとナコちゃんこそ、到着が早くてビックリしたよ!」

 

「探偵たるもの、時間前行動は当たり前やからな。張り込みで鍛えられた行動力、ナメたらアカンで!!」

 

 自分らが会話をする傍らで、リオルはベイリーフと戯れていく。とても仲が良さそうな二匹を横目にして、自分はナコへと声を掛けていった。

 

「ナコちゃんは制服なんだね」

 

「なに? 悪い?」

 

「いやいや! とても似合ってるよ!」

 

「別に、着たくて着てるわけじゃないし。高校生が課外授業に参加する時は、制服を着て行くんだって。何なの、この決まり。バカじゃないの」

 

「まぁまぁ、その方が分かりやすいからじゃないかな」

 

「適当なこと言わないで」

 

「ごめん……」

 

 こちらのやり取りを聞いていたシュラが、「年頃の娘やから、気難しいで~??」と揶揄い気味に助け舟を出してくる。これを聞いたナコがいじけるように「みんな、好き勝手ばっかり言う」と言いながら視線を逸らしていくものだから、自分は話題を変えるように行き先を切り出した。

 

「それで、今日の出発先についてなんだけど」

 

「せや、真面目なニーチャンのジム巡りも兼ねたウチらの布教活動は、“ショウホンシティ”でやろうと思うとるんや。ショウホンシティはナガノシティから南西にある地域で、シナノ地方で一番大きな街をこしらえとる。天守閣や城下町といった古風な雰囲気を売りにしとってな、シナノ地方の観光地としてとびっきり有名な場所ちゃうかな」

 

「なるほど、じゃあショウホンシティを目指していこうか」

 

「ショウホンシティに向かうんなら、交通手段は~」

 

 シュラが一通りと調べてくれていたため、自分らはスムーズにショウホンシティへ向かうことができた。とはいえ、距離はハクバビレッジと同等か、それ以上。半日をかけた長旅はナコの体力を大きく消耗させたため、自分らは休みを挟みながら目的地に赴いたものだ。

 

 陽が沈みかけてきた頃合いに、自分達はショウホンシティに到着する。

 駅から出るなり目にした光景。それは、瓦葺(かわらぶ)きの建物が立ち並ぶ和風の街並みだった。そう遠くない所には、大きな湖とその中央に建設された天守閣という空間が設けられており、周囲の陸地を繋ぎ止める木の橋であったり、水車や丸木舟といった代物も見受けられる。駅の周辺は和風都市となっており、伝統的な風景が広がっていた。

 

 新天地に降り立った自分らは、思わず感嘆の声を漏らしていった。特にナコは未知の世界を目にした感動で、静かにその瞳を輝かせていた。一方、隣にいたシュラは背伸びをしてストレッチしながら歩き出し、こちらへ言葉を投げ掛けてくる。

 

「ショウホンシティに到着や!! ほな、ホテルにチェックインするで!! 迅速な行動は探偵の基本やからな!! はよせんと夜になるで~!!」

 

「確かにそうだね。ナコちゃん、体調とか大丈夫?」

 

 こちらの呼び掛けに、ナコは視線を合わせずムスッとしながらこくりと頷く。その反応を見てから自分はリオルやベイリーフを気に掛けていくと、皆の調子を確認次第にシュラの案内でホテルに赴いた。

 

 彼女の手筈で、本日は問題なく宿泊できそうだった。部屋を取り、荷物を置いてからエントランスのソファでシュラと合流する。だが、そこにナコの姿が無かったため、自分は彼女に問い掛けてみた。

 

「ナコちゃんは?」

 

「ジョーチャンは相当疲れが溜まっとるからな。今日は休ませようと思うて部屋に残したで」

 

「それがいいや。慣れない課外授業で早速この長旅だったもん」

 

「せやで、無理はさせられんわ。これで学園生活がイヤになって退部されたら、部長のウチが困るさかい」

 

「ナコちゃんの事を気に掛けてくれてるんだね」

 

「当たり前やろ。乙女なら、複雑な年頃は誰にでもある。ウチもジョーチャンの気持ちが分かるさかい、年上として支えてあげようって思うわけや。な~?? ベイリーフもリオルも、乙女の気持ち分かるやろ?? 真面目なニーチャンには分からへん繊細な事情を、ウチらは抱えとるっちゅうことや」

 

 シュラの言葉に、リオルとベイリーフはしみじみとした頷きを返していった。しかもリオルに関しては、意味深な瞳をこちらに向けて誰よりも大きく頷いていたものだ。彼女らには彼女らの苦悩があるのだろう。自分が置いてけぼりを食らいながらも呆気に取られている間にも、シュラはソファに寄り掛かりながら語るように言葉を続けてくる。

 

「ジョーチャンのこと、嫌いにならんといてや。あれでも本人なりに考えとんねん。素直になれへんこと、本人ももどかしく思うとるやろうしな。なんちゅうか、この世の全てがイヤになるけれど、その全てにイヤとは言えへんっちゅうんかな。天邪鬼とはまた違う感覚っちゅうか、要は板挟み状態やねん。イヤな気分の中にある(かす)かな希望を、心のどこかでは求めてるんや。どうしても諦めきれへん、自分が望む明るい希望を。それを自分勝手と言われたら、まぁそれまでやけどな。でも、ジョーチャンは理想と現実のギャップに苦しんどるんや。せやから、今は温かい目でジョーチャンのことを見守ってくれへんか??」

 

「俺の知らないところで何か悩んでいるんだなって、そんな印象を受けたよ。大丈夫、俺が支えになれるかは分からないけれど、その手助けになれるよう、俺なりに頑張ってみるから」

 

「ありがとな、真面目なニーチャン。ジブン、優しいな。なんや、ウチが惚れてまうわ」

 

「周りの人間やポケモンに支えられてきたからね。だからこそ、俺も誰かを支えられるような、そんな人間になりたいんだ」

 

「それ、狙って言っとるんか?? もし無意識やったらジブン、相当な女たらしやで??」

 

「え?」

 

 自分が聞き返すと、シュラは呆れたように手を振りながら「なんでもあらへん。気にせんといて~」と言ってきた。その様子とは裏腹に、彼女の表情からは含み笑いが伺えたものだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。