課外授業の当日を迎え、自分とリオルは支度を終えてナガノシティのターミナルステーションに向かった。連れ歩きで彼女と共に駅前へ訪れると、待ち合わせの場所にシュラとナコの姿が見えたものだ。
シュラはベイリーフを連れて、こちらに手を振ってくる。その横で制服姿のナコは不機嫌そうな顔をしながら佇んでおり、こちらをジッと見遣っていた。直にも二人と合流した自分は、駆け寄りながら話し掛けていく。
「おまたせ!」
「お~!! 集合時間ピッタリやな~!! さすがは真面目なニーチャンやで!!」
「シュラとナコちゃんこそ、到着が早くてビックリしたよ!」
「探偵たるもの、時間前行動は当たり前やからな。張り込みで鍛えられた行動力、ナメたらアカンで!!」
自分らが会話をする傍らで、リオルはベイリーフと戯れていく。とても仲が良さそうな二匹を横目にして、自分はナコへと声を掛けていった。
「ナコちゃんは制服なんだね」
「なに? 悪い?」
「いやいや! とても似合ってるよ!」
「別に、着たくて着てるわけじゃないし。高校生が課外授業に参加する時は、制服を着て行くんだって。何なの、この決まり。バカじゃないの」
「まぁまぁ、その方が分かりやすいからじゃないかな」
「適当なこと言わないで」
「ごめん……」
こちらのやり取りを聞いていたシュラが、「年頃の娘やから、気難しいで~??」と揶揄い気味に助け舟を出してくる。これを聞いたナコがいじけるように「みんな、好き勝手ばっかり言う」と言いながら視線を逸らしていくものだから、自分は話題を変えるように行き先を切り出した。
「それで、今日の出発先についてなんだけど」
「せや、真面目なニーチャンのジム巡りも兼ねたウチらの布教活動は、“ショウホンシティ”でやろうと思うとるんや。ショウホンシティはナガノシティから南西にある地域で、シナノ地方で一番大きな街をこしらえとる。天守閣や城下町といった古風な雰囲気を売りにしとってな、シナノ地方の観光地としてとびっきり有名な場所ちゃうかな」
「なるほど、じゃあショウホンシティを目指していこうか」
「ショウホンシティに向かうんなら、交通手段は~」
シュラが一通りと調べてくれていたため、自分らはスムーズにショウホンシティへ向かうことができた。とはいえ、距離はハクバビレッジと同等か、それ以上。半日をかけた長旅はナコの体力を大きく消耗させたため、自分らは休みを挟みながら目的地に赴いたものだ。
陽が沈みかけてきた頃合いに、自分達はショウホンシティに到着する。
駅から出るなり目にした光景。それは、
新天地に降り立った自分らは、思わず感嘆の声を漏らしていった。特にナコは未知の世界を目にした感動で、静かにその瞳を輝かせていた。一方、隣にいたシュラは背伸びをしてストレッチしながら歩き出し、こちらへ言葉を投げ掛けてくる。
「ショウホンシティに到着や!! ほな、ホテルにチェックインするで!! 迅速な行動は探偵の基本やからな!! はよせんと夜になるで~!!」
「確かにそうだね。ナコちゃん、体調とか大丈夫?」
こちらの呼び掛けに、ナコは視線を合わせずムスッとしながらこくりと頷く。その反応を見てから自分はリオルやベイリーフを気に掛けていくと、皆の調子を確認次第にシュラの案内でホテルに赴いた。
彼女の手筈で、本日は問題なく宿泊できそうだった。部屋を取り、荷物を置いてからエントランスのソファでシュラと合流する。だが、そこにナコの姿が無かったため、自分は彼女に問い掛けてみた。
「ナコちゃんは?」
「ジョーチャンは相当疲れが溜まっとるからな。今日は休ませようと思うて部屋に残したで」
「それがいいや。慣れない課外授業で早速この長旅だったもん」
「せやで、無理はさせられんわ。これで学園生活がイヤになって退部されたら、部長のウチが困るさかい」
「ナコちゃんの事を気に掛けてくれてるんだね」
「当たり前やろ。乙女なら、複雑な年頃は誰にでもある。ウチもジョーチャンの気持ちが分かるさかい、年上として支えてあげようって思うわけや。な~?? ベイリーフもリオルも、乙女の気持ち分かるやろ?? 真面目なニーチャンには分からへん繊細な事情を、ウチらは抱えとるっちゅうことや」
シュラの言葉に、リオルとベイリーフはしみじみとした頷きを返していった。しかもリオルに関しては、意味深な瞳をこちらに向けて誰よりも大きく頷いていたものだ。彼女らには彼女らの苦悩があるのだろう。自分が置いてけぼりを食らいながらも呆気に取られている間にも、シュラはソファに寄り掛かりながら語るように言葉を続けてくる。
「ジョーチャンのこと、嫌いにならんといてや。あれでも本人なりに考えとんねん。素直になれへんこと、本人ももどかしく思うとるやろうしな。なんちゅうか、この世の全てがイヤになるけれど、その全てにイヤとは言えへんっちゅうんかな。天邪鬼とはまた違う感覚っちゅうか、要は板挟み状態やねん。イヤな気分の中にある
「俺の知らないところで何か悩んでいるんだなって、そんな印象を受けたよ。大丈夫、俺が支えになれるかは分からないけれど、その手助けになれるよう、俺なりに頑張ってみるから」
「ありがとな、真面目なニーチャン。ジブン、優しいな。なんや、ウチが惚れてまうわ」
「周りの人間やポケモンに支えられてきたからね。だからこそ、俺も誰かを支えられるような、そんな人間になりたいんだ」
「それ、狙って言っとるんか?? もし無意識やったらジブン、相当な女たらしやで??」
「え?」
自分が聞き返すと、シュラは呆れたように手を振りながら「なんでもあらへん。気にせんといて~」と言ってきた。その様子とは裏腹に、彼女の表情からは含み笑いが伺えたものだ。