ショウホンシティで迎えた朝は、
そこでスマホロトムを操作しながら少々と待機していると、間もなくしてシュラとナコが姿を現した。ベイリーフを連れたシュラがこちらに合流すると、活発的な調子で喋り出してくる。
「おはようさん!! 真面目なニーチャンらはしっかり休めたみたいやな~!!」
「おはよう、シュラ、ナコちゃん。あとベイリーフも。そっちはどう? 疲れとか残ってない?」
「ウチはピンピンしとるで!! せやけどジョーチャンが完全に回復しとらんから、ちょいちょい気遣ぉてあげたって」
シュラの言葉に対して、ナコは不機嫌な様子で「そんなこと、言わなくていいから」と呟いていく。それを受けて自分は軽く頷く仕草を交えてから、二人へと提案を投げ掛けた。
「それじゃあ、まずはショウホンシティのポケモンジムを覗いてみてもいいかな」
「ええで~!! ウチは道中で困っとる人々を探すさかい、仕事が来るまでは真面目なニーチャンの好きに動いたって!!」
「分かった。ジムの場所は調べてあるから、ついてきてくれるかな」
自分はスマホロトムに映し出したナビを参考にしながら歩き出した。その後ろからリオル、シュラ、ベイリーフ、ナコがついてくる。道中は朝から活気づくショウホンシティの雰囲気を堪能した。所々と生えている松の木が
天守閣がシンボルである大きな湖には、ドジョッチやナマズンがのびのびと泳いでいる。その脇を通過して街の中を歩き進めると、直にもドーム状の建物が見えてきた。
ショウホンシティのポケモンジム、ショウホンジム。自分は次に挑むジムの前で足を止め、建物を見上げながら気持ちを高めていく。リオルも感化されるように真っ直ぐな眼差しを向けてジムを見つめる最中、シュラもまた左手を腰に当てた佇まいで喋り出してきた。
「ショウホンジム。ここは“ほのおタイプ”の調教師がジムリーダーを務めとるっちゅう話題を学園でも聞くなぁ。ジムリーダーのネーチャンはほんわか系やのに、扱っとるほのおタイプのポケモンは豪快に振る舞うっちゅうもんやから、そのギャップが激しくて突破が難関とされとるな。どないする?? 試合の観戦でもしとく??」
「観戦はしたいけれど、なんだか静かだな。まだバトルやってないのかな?」
既にジムチャレンジが始まっていてもおかしくない時刻であったため、自分は不思議に思いながら遠目で様子を伺っていく。すると、自分らの来た道から一人の女性が駆け寄ってくる姿と共にして、彼女の大らかな声がこだまするようにこちらへ呼び掛けてきたものだ。
「おーーーーーい!!! そこの団体さーーーーーん!!! 私の声が聞こえますかーーーーー!!!」
十分に聞こえてくる声を耳にして、一同が振り返っていく。そこから駆け寄ってくる女性は164cmほどの背丈であり、オレンジ色でふんわりとした緩いサイドポニーテールと同色の純粋な瞳、そして小動物に似た温和なオーラという特徴を伴っていた。服装は前開きにしたベージュ色のトレンチコートと赤色のニットシャツ、青色のスキニーパンツに赤色のハイヒールというもの。
急ぎでやってくる彼女だが、途中で盛大にコケてしまう。悲鳴を上げながら転倒した様子に全員が痛々しい顔を見せていくのだが、それでも女性は立ち上がって再び走り始めると、全力疾走で息を切らしながらこちらの下に辿り着き、ゼェゼェハァハァと両膝に手をつきながら柔和な調子で喋り出してきた。
「良かったぁぁぁぁぁ、追い付いたぁぁぁぁ! あはは、こんなみっともない姿を見せてごめんなさい。もう歳かなぁ。やだぁぁぁ、このままじゃおばさんになっちゃうよ~」
冗談めかしたように微笑む女性は、汗だくになりながら姿勢を正してくる。その様子を伺いながらも自分は心配するように声を掛けていった。
「あの、大丈夫ですか……?」
「大丈夫! こんな私を心配してくれたの? 優し~~! ありがと! キミ、名前は?」
「俺はカンキといいます。こちらは相棒のリオル。隣にいらしているのが、旅の同行者であるシュラとベイリーフ、そしてナコちゃん」
「カンキ君とリオル、シュラちゃんとベイリーフに、ナコちゃんね! よし、覚えた! 体力はもうダメダメだけど、記憶力はまだ衰えてないから安心してね!」
女性は指をピンと立てながら、天真爛漫に笑みを浮かべていく。それから彼女はニットシャツをハタハタさせながら息を整え、ふぅっと落ち着いてからハキハキとした柔和な調子で喋り出してきた。
「私の名前は“ハオマ”といいます! このショウホンジムのオーナーを担当している、バリバリ現役のジムリーダーです! ほのおタイプの調教師もやっていて、私に任せてくれたら最高のほのおタイプのポケモンを育ててあげられる自信があるよ! フフン!」
ハオマと名乗るショウホンジムのジムリーダーは、得意げに鼻を鳴らしてからこちらを見遣ってくる。
「それでそれで、キミ達はジムに挑戦するつもりだったのかな?」
「はい、まだ視察の段階ですけど、いずれは俺がこちらにチャレンジャーとして挑もうかと」
「じゃあ! ちょっとだけ……いや、数日は待ってもらえるかな!? 実はショウホンシティの中で事件が起きちゃって、その対応で私が出払っちゃっててさ!」
「事件やと!?」
ハオマのセリフに、誰よりも先に反応を示したのがシュラだった。目を輝かせ、即座にメモ帳を取り出してスマホロトムを構えていくと、彼女はハオマへとガン詰めするように接近しながら詳細の説明を促し始めた。
「ウチら、アップルアカデミーで探偵活動をしとる林檎探偵俱楽部っちゅうもんなんや!!」
「探偵!? すごいね! じゃあ、私が抱えている問題事も解決してくれるかな?」
「このシュラにばっちりお任せや!! どんな難解な事件でも、林檎探偵俱楽部の名において見事、解決に導いたる!!」
「すごい! 探偵の人達と居合わせるなんて思ってなかったよ! じゃあ皆にも手伝ってもらっちゃおうかなぁ? 重傷者がいたりして関係者以外は立ち入り禁止になってる極悪事件なんだけど、あなた達が良かったら私の調査のお手伝いをしてくれないかな!?」
「任せとき!! ほな、そうと決まれば出番やで!! 部員のジョーチャンと、相棒のベイリーフ!! そして、見習い探偵の真面目なニーチャンとリオルのコンビ!! 世界の難解な事件がウチらを呼んどるで!! さぁ行くで!! 林檎探偵俱楽部、出動や!!」
「わー! 決めゼリフすごくカッコいい! ……ハッ!? 今ならなんでも解決できそうな気がする! じゃあこの事件が終わったら、また別件で相談したいことがあるんだけど~!」
「なんや、ショウホンシティに到着して早々、大忙しや~!! 課外授業で真面目なニーチャンについてきた甲斐があったっちゅうわけやな!! よっしゃ!! 気張るで全員!! どないな相談も、アップルアカデミーの林檎探偵俱楽部が華麗に解決したるからな~!!」
話の勢いに呑み込まれ、自分は半ば強制的に林檎探偵俱楽部の活動に参加させられた。それどころかハオマもノリノリであり、本当に理解しているのか分からないほんわかな空気感の中でシュラとの会話を進めていたものだ。
えいえい、おー! シュラとハオマの掛け声が聞こえてくると同時にして、ハオマが事件の現場へ案内し始める。それをシュラが先陣を切って突き進み始めたものだから、取り残された自分達も置いていかれないよう歩調を速めて彼女らの後をついていった。