ポケモンと俺   作:祐。

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銃創と黒いオーラ

 ハオマの案内を受けて、自分らはショウホンシティの中を突き進んでいく。早足で暫しと街中を歩くと、直にも救急車のサイレンと共に事件現場と思われる広場にやってきた。

 

 そこには人だかりができており、何事かとざわめいている。ハオマは関係者として警察や救急隊と言葉を交わしていくと、自分らを連れて現場に進入した。今も警察のゼニガメや救急隊のゴーリキーが現場を行き交う中、自分らは被害に遭ったのだろう横たわる男性とブイゼルを確認する。

 

 彼らはひどく流血していた。脚や腹部を押さえて苦しんでいる様子から、思わず身震いを感じたほどだ。特にシュラは目に見えて動揺しており、先程までの乗り気なテンションから一転、過呼吸で今にも倒れてしまいそうな心理状態だった。そのため自分は彼女の肩を軽く叩きながら呼び掛けたものだ。

 

「シュラ! シュラ!」

 

「ハッ!! へ、平気や。大丈夫。思うとったより事態が深刻で、ちょっとビックリしただけやから……」

 

 ナコやリオル、ベイリーフも不安げな様相を浮かべながら被害者と対面していく中で、ハオマは冷静な面持ちでこちらに説明をし始める。

 

「事件が起きたのは少し前のこと。目撃者の証言によると、ブイゼルを連れている被害者の男性が、二人組の男性達と口論をしていたらしいの。そこでポケモンバトルになったみたいなんだけど、すると突然、銃声が聞こえてきたって」

 

「銃声って……ッ」

 

「彼らから、銃創が確認されたんだよ。二人組の男性は現場から逃走して、今はその行方を追っているところ。近頃ね、シナノ地方ではポケモンを狙った傷害事件が増えているんだ。犠牲になったポケモン達を、私も何度か見てきた。とても可哀想な状態で発見されて、そのほとんどが助からなかったの……」

 

「なんて痛ましい……」

 

 自分は被害者の男性とブイゼルを見遣っていく。両者は担架で運ばれている最中であり、間もなくして救急車で搬送された。それを見送った後、ハオマはこちらに振り返りながら言葉を掛けてくる。

 

「お願い! 探偵の力で犯人達を捜してくれないかな! シナノ地方の平和を守るためにも、キミ達の力が必要なの!」

 

 ハオマは手を合わせ、頭を下げながら頼み込んできた。それに対してシュラは大きなプレッシャーで冷や汗を流しながらも、若干と震える声音で返答していく。

 

「の、望むところやないか……!! アップルアカデミーの林檎探偵俱楽部に相応しい事件やと思うで……!! ジムリーダーのネーチャン、後はウチらに任せとき……っ!!」

 

「本当に!? ありがとう!! やっぱり探偵ってすごいんだね! 憧れちゃうな!」

 

「せ、せやろ!! …………ほな、ウチらは情報収集に取り掛かるさかい、作戦会議でちょっと失礼するで」

 

「うんうん! 何か進展があったら教えてね! 待ってるから!」

 

 ハオマは純粋な喜びを笑顔で表現しながら、軽く手を振ってみせた。あまりにもピュアな様子にシュラはどっと責任感を追いながらも、一同を輪になるよう集めてから小声で喋り出してくる。

 

「……えらいことになったで。些細な民事事件やなくて、ゴリゴリの刑事事件を扱うことになった。こんなん、想定しとらんかったわ……!! どないする、ジブンら。ぶっちゃけ、荷が重いで。あないに期待されとったら、成果を上げる他あらへんやん」

 

 極度の動揺から、シュラはだいぶ弱気になっていた。ナコも返答に困る中、自分が言葉を返していく。

 

「任された以上は、やれるだけやってみよう。ここは、今までの経験を活かす場になってくると思う。重要なのは、これまで通りの活動を全うすること。シュラ、学園で事件が起こった時って、最初はどうしてるの?」

 

「最初言うたら……まずは聞き込みやな」

 

「じゃあ、周辺の人達に聞き込みをしていこう。これほどの騒ぎだから、誰かしらは情報を持っているかもしれない」

 

「せやな……!! 恩に着るで、真面目なニーチャン……!! っちゅうことで、各自で分担しながら聞き込みにあたるで。情報はスマホロトムで逐一共有するように!! 重大な手掛かりは全員で話を聞く!! これを徹底すること!! ほな、行くで!! 林檎探偵俱楽部、行動開始や!!」

 

 シュラの宣言を受け、自分らは散らばるように動き出した。シュラとベイリーフが活発的な調子でフレンドリーに話しかけ、ナコは女子高生という立場を利用して主に年上の男性を頼っていく。そして自分はリオルを連れながら誠実な対応で事件に関する話を訊ね、各々は短い時間でスマホロトムに情報をまとめていった。

 

 聞き込みで得られた情報は主に、加害者である男性二人組はポケモンを連れていた。男性と揉めている様子も確認されており、その雰囲気はひと波乱を感じさせた。ポケモンバトルが始まると、二人組の男性はマグマッグを繰り出した。そのバトルの最中に銃声が響き渡り、気付けば男性と戦闘中のブイゼルが地面に倒れ込んだ。この隙に二人組の男性は現場から逃走し、今に至る。二人組の男性の特徴や、逃走した方角などの情報も得られると、直にしてナコの方からひとつの連絡が届いた。

 

『みんな来られる? 情報提供者が動画を撮ってたんだけど』

 

 自分達は直ぐにもナコの下へと集まった。そこではサラリーマンの男性がスマホロトムをナコに見せている状況であり、少女はこちらに気付くと手招きして呼び寄せる。シュラと共に男性のスマホロトムを覗き込むと、そこには二人組の男性がマグマッグでポケモンバトルをしている当時の映像が残されていたのだ。

 

 どうやら、ひと悶着を察知してスマホロトムで撮影し始めていたらしい。この映像はハオマに提供できる。手に入れた情報源に自分は希望を見出しながら映像を眺めていたのだが、そこでナコが“不自然な事象”について口にしてきたのだ。

 

「ねぇ、変じゃない? このマグマッグ」

 

「変って、どこが?」

 

 自分が訊ね、シュラも不可解な面持ちでナコを見遣る。その様子に少女は一層と渋い顔を見せると、映像を指差しながらそれを口にし始める。

 

「だって、このマグマッグ……“黒いオーラ”を放っているから」

 

 自分とシュラは目を凝らして覗き込んだ。しかし、映像に映るマグマッグは正常だ。

 

 何にも見えない。二人で首を傾げていく様子を受けて、ナコは必死に訴え掛けてくる。

 

「ホントだって! ウソついてないから! マグマッグから黒いオーラが出てるの、見えないの?」

 

「ナコちゃん、ありがとう。俺とシュラは確認できなかったけれど、その情報もハオマさんに提供してみよう。大丈夫、疑っているわけじゃないから。ナコちゃんの言い分も、しっかりと刑事さんの参考になるよ」

 

「でも、これで誰も黒いオーラが見えないっていったら、あたし、嘘つきになっちゃう……っ」

 

「貴重な情報は、いずれ役に立つ。大丈夫、自信を持って」

 

 ナコは心配げに身を縮めていた。正直な話、彼女の言い分はまともに取り合ってもらえないだろう。だからこそ、自分は信じたいと思っていた。おそらく、“彼女だけに見えている現象”なのだと、そう心のどこかで確信していたものだから。

 

 こうして得られた一連の情報を、ハオマに提供してみることにした。一同はハオマがいる現場へと引き返していく。

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