聞き取り調査を終えた自分らは、未だ現場に残るハオマの下へと戻ってきた。一同が彼女と合流するタイミングで、一匹のポケモンがハオマへと駆け寄ってくる。
立派なたてがみを持つ、獣王が如き勇猛なるポケモンだ。灼熱を保つたてがみが周辺の大気を沸騰させ、湯気を漂わせている。四足で俊敏なそれはハオマに近付くと、咥えていた一足の靴を彼女に届けるなり頭部を撫でられていた。たてがみに触れたら、きっと軽傷では済まないだろう。ほのおタイプの調教師という呼び名に相応しく、彼女は触れ合いの方法を心得ながらお礼を告げていく。
「ありがとう! カエンジシ! いつも私のために頑張ってくれるね。カンジシのこと、いっぱい感謝してるから!」
ハオマが純粋な笑みを浮かべていく傍ら、自分達は様子を伺うように歩み寄っていく。その存在にカエンジシが鋭い眼差しを向けてくるのだが、ハオマはそれをなだめてから取り合ってきた。
「探偵のみんな! 調査の方はどうだったかな……?」
「はい、気になる証言を得られましたので、そちらを共有したいと思いたく参りました」
「本当に!? どんなこと!?」
ハオマに二人組の男性についての証言を伝え、それからサラリーマンの撮影した動画のコピーをスマホロトムで見せた。警察の関係者も数人と加わって拝見したその動画に、ハオマは手を合わせながら柔和に微笑んでくる。
「すごい! こんな短時間で、これだけの証拠を見つけてくれたんだ! さすがは探偵! 仕事が早いね!」
「せ、せやろ!! 林檎探偵俱楽部の手に掛かれば、お茶の子さいさいやで!!」
シュラが慌てて胸を張っていき、ハオマが純粋な微笑みで拍手を送っていく。それを横目に警察の関係者から聴取を受けた自分は聞き込みで得た情報を口頭で伝え、犯人の容姿や逃走した方角を伝えると、部隊は一斉にそちらへと進行した。
もうひとつ増えた手掛かりとして、先程カエンジシが持ってきた靴も重要な証拠となり得た。というのも、その靴は動画に映っていた二人組の男性が履いていたものと一致しており、おそらくは逃走中に脱げてしまったものと思われるからだ。
手掛かりは十分。警察の関係者がこちらにお礼を告げ、現場から離れるよう指示を受けた。林檎探偵俱楽部としての活動に、ひとまずの区切りがついた。自分は安心したように息をつき、リオルも胸をなでおろすように安堵する。ナコは黒いオーラについて未だ引っ掛かる様子で不可解な表情を浮かべていく中、シュラは左腕で額の汗を拭いながら達成感と安心感で活発的に喋り出してきた。
「任務は完了やな……ッ!! えらいことやで。ウチら、事件解決の要になったんとちゃうか……!? 犯人が逮捕されたら、ウチら表彰されちゃったりしてな~!! そないなことになったら、林檎探偵俱楽部の株が急上昇してまうわ~!! 部活動が今よりも忙しくなるで~!!」
シュラは左腕を回して張り切るものの、その勢いが次第と落ち着くと彼女は俯きながら神妙な調子で言葉を続けてくる。
「…………アカンな。他人の不幸で浮かれとる自分が恥ずかしいわ。ウチは学園におる間、毎日のように事件が起こればええって思うとった。けど、事件なんか起こらん方がええに決まっとる。ジブンらも見たな?? 被害者のニーチャンとブイゼル、すごく苦しそうにしとったわ。ウチな、それを見て一瞬だけ後悔したんや。課外授業でここに来たこと、事件に顔を突っ込んだこと、探偵やからって調子に乗っとったこと。全部、ウチが間違っとった」
「間違ってないよ、シュラ」
自分は彼女へと言葉を掛けていく。
「日頃の活動で培った経験を、今回の件で発揮した。シュラは間違いなく、社会に貢献しているよ。もちろん、思うところは色々とあるのかもしれない。ただ、それは昨日までの自分に対する戒めとして考えればいいんじゃないかな。シュラがやってきたことは間違いなんかじゃない。前回の盗難事件がそうだったように、シュラの活動に助けられた人がいることを俺は知っているから」
「真面目なニーチャン……。なんや、真っ直ぐな目でそないなこと言われたら、真剣に惚れてまうやろ」
「思ったことを言っただけだよ」
「せやから、そういうところやで?? この女たらし」
シュラが頬を赤らめ、柔らかな笑みを浮かべて落ち着きを取り戻していく。自分も安堵するように微笑みかけながら頷いて反応する中、足元のリオルはこちらに対して複雑そうな顔を向けていたものだ。