アップルアカデミーの昼休み。昼食を終えた自分とラミア、メーの三人が校庭のバトルコートに赴くのだが、そこでひと波乱が起こる。
ひとつだけ空いていたバトルコートに、自分達は「ツイてる」と言いながら歩み寄る。しかし、ふと横から数名の不良が狙いすましたかのように割り込んでくると、あくどい笑みを浮かべながら道を塞いできたのだ。
彼らの後ろでは、空いていたバトルコートを占領するように数名の不良が敷地に踏み込んでいく。その光景と行く手を邪魔されたメーは、ムッとした様子で強気に喋り出していった。
「ちょっと、何なの? 見るからに嫌がらせなんだけど?」
「ん~? 何のことかなぁ? 言い掛かりはよしてくれよ。何でもかんでも人を疑ってかかるクセは周りの迷惑になるから、早く直した方がいいぜ?」
「アンタ達、銀嶺会でしょ? 普段の行いが悪いから、こうして疑われることに気付かないの?」
「そもそも学校のバトルコートは誰でも自由に使っていい場所だぜ? それを横から取られてキレ散らかしてんじゃねぇよ。器の小ささは脳みその小ささ。足りない知能でよく考えるこったな」
「今ここで自己紹介されても困るんだけど~? 幹部のオキクルミくんとは違って、下っ端のアンタ達は誰にも相手にされない出来損ないってカンジ。もう子供じゃないんだから、そんなカッコ悪いことしてないで誰かの役に立ったら?」
「銀嶺会は存在してるだけで役に立つんだよ! そして、俺らがいるから銀嶺会が成り立つ! あまりナメたクチ利かねぇ方がいいぞ。銀嶺会を敵に回したらどうなるか。病院送りで済めばいいな?」
「言っておくけどさ~、アンタ達と違って、アタシ達はオキクルミくんと課外授業に行ったことがあるくらい仲が良いんだけど~? そんな幹部のご友人に手を出したら、アンタ達の方がタダで済まないんじゃないかなぁ~?」
「この野郎、調子に乗りやがって……! だから何だってんだよ! 兄貴の名前ばかり出しやがって! 銀嶺会のメンバーでもないくせに、自分が特別だと思っていたら大間違いだぞ!」
そう言い、不良はこちらへ指を差しながら言葉を続けてくる。
「おいカンキ!! てめぇ、レダ
自分がどうしたものかと頭を掻いていく傍らで、不良の主張を聞いていたラミアが呆れ気味にため息をつきながら言葉を口にしてくる。
「妬みで理性を失ってますねー。まー、カレらのよーな生き物には元々理性なんてありませんけど。で、このまま言い合いを続けても時間がムダですから、教室にでも引き返しましょーか??」
「オンナ、俺達がこのまま無事に返すと思うんじゃねぇぞ。カンキに思い知らせてやらねぇといけないからな。自分が関わると、周りが碌な目に遭わねぇってことを。自分が不幸の存在であることを今ここで証明してやらなきゃいけねぇ。銀嶺会を敵に回した恐ろしさ、今ここで叩き込んでやる!」
「アナタ達が勝手に敵意を向けてるだけじゃないですか。カンキさん、無視でイイですよ。カレらと関わるだけ頭がワルくなります。あとでオキクルミさんにチクっておけば、それで解決です」
ラミアとメーは呆れるような表情で踵を返していく。だが自分はモンスターボールを取り出すと、彼女達は振り返りながらも不思議そうに言葉を投げ掛けてきた。
「カンキさん??」
「カンキくん?」
「いや、せっかくの機会だから試してみたくて。新しいわざを覚えたヨーギラスが、どれくらい強くなったのかを」
モンスターボールを取り出す動作に、不良達は乗り気な反応を見せてきた。共にして、彼らもまた同様にモンスターボールを取り出しながら怒り気味に返答してくる。
「面白ぇ! 自分からぶちのめされに来るなんてな! こいつはお前から売ってきたケンカだ。カンキ、お前は男らしく一人で来い! 俺達がいたぶってやるぜ!」
バトルコートに立った自分は、フィールドにヨーギラスを繰り出した。対する不良三人組はフィールドにズバット、ハスブレロ、コマタナを繰り出すと、審判も不在である“喧嘩”が合図も無しに勃発した。
「ズバット! あやしいひかり!」
「ハスブレロ! バブルこうせん!」
「コマタナ! つじぎり!」
先手は不良三人組だった。ズバットとハスブレロがそれぞれ遠方からわざを撃ち込んでくると、自分はヨーギラスへと防御手段を命じていく。
「がんせきふうじ!」
ヨーギラスは自身のがんせきふうじを盾にすることで、遠方からの攻撃を防いでいった。このままあなをほるで身を隠しても良かったが、つじぎりで突撃してきたコマタナががんせきふうじの岩を突破してきたため、次なる対策を行使する。
「てっぺき!」
ヨーギラスはコマタナの攻撃に合わせて鋼鉄を身に纏い、パリィの要領で弾き返した。金属音と共に火花が飛び散り、コマタナが仰け反りながら隙を晒していく。
「とっしん!」
ヨーギラスのとっしんがコマタナに直撃し、効果は今一つながら退いていく。その間にヨーギラスは着地し、自分は攻めに転じてわざを命令した。
「あなをほる!」
ヨーギラスが地中に潜り、身を隠していく。一体どこから来るのか。誰を狙ってくるのか。特に効果は抜群であるコマタナが注意深く警戒する最中、ハスブレロの足元が膨れ上がると直後、ヨーギラスが飛び出して相手を打ち上げた。
出てきたヨーギラスが宙に浮かび上がると、付近にいたズバットが動き出す。
「ズバット! ちょうおんぱ!」
「ヨーギラス! バークアウト!」
ズバットがちょうおんぱでこんらんを引き起こそうとするが、ヨーギラスが放ったバークアウトが相手の音波を相殺し、更にはズバットを吹き飛ばしてダメージを与えた。そうして交戦している間にコマタナがヨーギラスの背後から接近し、攻撃を仕掛けてくる。
「コマタナ! メタルクロー!」
「ヨーギラス! てっぺき!」
コマタナのメタルクローを、ヨーギラスはてっぺきで防いでいく。効果は抜群で多少のダメージは受けたが、てっぺきの防御上昇で耐え凌いだヨーギラスがコマタナを後方へ弾き返すと、次にも自分はヨーギラスに反撃の一手を命じていった。
「りゅうのまい!」
ヨーギラスは赤黒いオーラを身に纏い、悲痛めいた金切声の雄叫びを上げていく。攻撃性能と俊敏性の上昇でヨーギラスは隻眼を細めると、湧き上がる活力で跳躍しながら攻撃を繰り出した。
「がんせきふうじ!」
ヨーギラスのがんせきふうじは一層もの強固と速度を以てして、ズバットに襲い掛かった。ズバットは慌てふためきながらも回避しようとするが、降り掛かるがんせきふうじは怒涛の勢いでズバットを巻き込んでいき、直にも戦闘不能にさせた。
あなをほるを食らっていたハスブレロも、強化されたヨーギラスの変貌に怖気づきながらも反撃を行っていく。
「ハスブレロ! メガドレイン!」
「ヨーギラス! バークアウト!」
ハスブレロから飛び出したツルが、ヨーギラスへと差し迫る。それに対してヨーギラスはバークアウトを行うことで跳ね返し、相手の攻撃を拒否した。続けてコマタナが負けじと接近を試みるが、ヨーギラスは隻眼で睨み付けるようコマタナを見据えると、その気迫に相手はゾッとした様子で足を止めてしまう。
不良が必死に相棒へ呼び掛けを行っていく最中、ヨーギラスはいわタイプのわざエネルギーを纏いながらこちらの指示を待ち続けた。
「ヨーギラス! がんせきふうじ!」
ヨーギラスの頭上に広がったのは、無数もの岩が横に回転しながら入り乱れる光景。りゅうのまいで威力と速度を増した岩石はミキサーのように回り続けると、直にもヨーギラスは頭上の岩石をコマタナとハスブレロ目掛けてひとつひとつ発出し始めた。
直撃した二匹は吹き飛ばされ、地面に転がっていく。だが、その先で更に発出されたがんせきふうじを直撃させられたことで、まるで跳ね飛ばされるように二匹は数回とがんせきふうじを食らい続けていった。
間もなくしてハスブレロは戦闘不能になり、コマタナも戦意喪失といった具合に膝をつく。それでも尚ヨーギラスは頭上にがんせきふうじを生み続け、次の発射に備えていたものだから、不良達はモンスターボールを手に持ちながら慌てて声を投げ掛けてきたものだった。
「も、もういい! もういい!! このままじゃポケモンが死んじまう! 分かったから! 降参だ!」
戦闘終了。不良達の降参を受けて、ヨーギラスは未だ闘志を宿す隻眼のまま、がんせきふうじをゆっくりと消滅させてから背を向けた。