ポケモンと俺   作:祐。

47 / 49
マサクル団

 ショウホンシティの雑木林にて対峙した、二人のマサクル団構成員。左手にはモンスターボールを持ち、天に掲げた右手の指で鉄砲の形を作った独特のポージングを決めた男達は、次にもモンスターボールを投げてポケモンを繰り出してくる。

 

 現れたのは、マグマッグとカチコール。だが二匹の様子は明らかにおかしく、その目には殺意を宿すかのように攻撃的だった。

 

 特にマグマッグは、傷害事件の時に撮影された動画に映っていた個体と同一であることを確信した。自分とシュラは目を合わせ、彼らが犯人だという確証を得ていく。それから相棒達を繰り出してマサクル団と向かい合った。

 

 ベイリーフとリオルが並び立ち、バトルが開始される。まず先手を取ってきたのは相手の方だ。

 

「マグマッグ! やきつくす!」

 

「カチコール! こごえるかぜ!」

 

 両者が広範囲の特殊技を繰り出し、盤面は一気に混沌と化す。それぞれ炎と氷が入り乱れる波状攻撃を前にして、自分とシュラも戦況を見極めるよう指示を行った。

 

「リオル! みきり!」

 

「ベイリーフ!! ひかりのかべ!!」

 

 リオルは大地を蹴り出しながら、全集中した意識で軽やかに攻撃を避けていく。ベイリーフはひかりのかべを自身とリオルに貼り出し、効果抜群の攻撃を直で受けながらも持ち堪えるように佇んでいた。

 

 リオルが相手の攻撃を掻い潜っていくと、カチコールの手前に降り立つなり得意の接近戦に持ち込んで仕掛け始めた。

 

「はっけい!」

 

「カチコール! すてみタックル!」

 

 リオルのはっけいに合わせて、カチコールは殺伐としたオーラを放ちながらすてみタックルを繰り出してくる。両者の攻撃は、リオルのはっけいをカチコールのすてみタックルが打ち消す形で相殺され、攻撃を繰り出したことによる一瞬もの硬直時間が双方に睨み合いを発生させた。

 

 その隙を見て、マグマッグはリオルへと攻撃を仕掛けていく。

 

「マグマッグ! のしかかり!」

 

「ベイリーフ!! リフレクター!!」

 

 マグマッグがリオルにのしかかりを食らわせる直前、ベイリーフのリフレクターがリオルに貼り出される。そのおかげもあり、マグマッグはリフレクターに押し出される形で攻撃を空振りした。眼前で地面にのしかかりを放ったマグマッグへと、リオルは続けざまに行動を起こすのだが……。

 

「リオル! はっけい!」

 

 リオルの攻撃がマグマッグに直撃し、相手は波動の衝撃波を受けて後方へと吹き飛んでいく。しかし同時にしてリオルはやけどを負い、彼女は苦悶の様子で表情を歪ませていた。

 

 マグマッグの特性、ほのおのからだ。状態異常になったリオルの調子に自分が焦りを抱いていく中、チャンスと見たカチコールがリオルへと攻撃を仕掛ける。

 

「カチコール! こうそくスピン!」

 

「ベイリーフ!! マジカルリーフ!!」

 

 カチコールのこうそくスピンがリオルに襲い掛かるが、外部から飛来してきた七色の葉っぱが無数とカチコールに接触することで、相手は回転した状態で弾かれるように彼方へと飛んでいく。

 

 その隙に体勢を立て直したマグマッグが再びやきつくすを選択し、リオルとベイリーフ目掛けて広範囲の攻撃を行ってきた。だがリオルはみきりでそれを跳躍しながら避け、ベイリーフはひかりのかべを盾にして攻撃を耐えながら、反撃の一手を講じた。

 

「やどりぎのタネ!!」

 

 やきつくすの中に佇むベイリーフが、やどりぎのタネを山なりに投擲してマグマッグに直撃させていく。相手の身体に茨が絡み出すと、途端にしてマグマッグは体力を吸われ始めた。この状況にマグマッグが当惑してやきつくすが中断されると、リオルは安全になった地上へと降り立つなりカチコールへと攻め立てた。

 

「リオル! でんこうせっか!」

 

「カチコール! てっぺき!」

 

 リオルのでんこうせっかは、カチコールのてっぺきによって完全に防がれる。だが接近できたアドバンテージを活かすべく、自分はリオルに続けて指示を送り出した。

 

「メタルクロー!」

 

「かみくだく!」

 

 リオルのメタルクローに、カチコールはかみくだくで対抗した。鋼鉄を纏った彼女の右腕をカチコールは口で受け止めると、それを歯でがっちり挟んで離さなかった。リオルはもう片方の左腕を振りかざして攻撃するのだが、やけど状態の関係で接触技は本来の威力を発揮できず、カチコールを遠ざけることができなかった。

 

「リオル! はっけい!」

 

 ならばと思い、リオルは左手をかざして波動の衝撃波を放った。これにはカチコールも堪らず口を離し、後方へと吹き飛ばされていく。それからリオルは地面を転がるカチコールへと一気に距離を詰め、再度のメタルクローでカチコールをノックアウトした。

 

 一対一を制したリオルがベイリーフの方へと振り向くと、あちらもまたマグマッグを下して振り返ってきた。両壁とやどりぎのタネを併せた耐久戦法で凌ぎ切り、相性不利にも関わらず勝利してみせたベイリーフ。リオルとベイリーフが安堵して目を合わせたその刹那、思わぬ事態が起こった。

 

「マサクル団の理想を否定するか。ならば、止むを得ん」

 

 マサクル団構成員の一人が胸元に手を忍ばせると、そこから拳銃を取り出してくる。そして銃口をリオルに向けていくと、何の躊躇いもなく発砲したのだ。

 

 自分が叫ぶように呼び掛けると、彼女は波動で殺意を汲み取ると同時に跳躍して銃弾を避けていく。数発と放たれたそれが地面に撃ち込まれる中、男は苛立つように舌打ちをしながら言葉を口にした。

 

「穢れた生き物は浄化するに限る。人類は何故、それを理解できない? 脅威を孕んだ忌々しき生命体との共存に、一体何の意味がある? この世界はポケモンに支配されている。未来を掌握されている。今や我々人類は、ポケモンの傀儡(かいらい)に過ぎない。故に我々は、自由を取り戻すために戦うべきなのだ。そして――」

 

 銃口はシュラに向けられた。彼女は恐怖で息を呑み、ゾッと青ざめて全身を震わせる。

 

「ポケモンに同調する人間もまた、我々人類の敵だ。この手で粛清し、輪廻転生を経て清らかな人間に生まれ変わるといい。我々はその手引きとして、救いを与えよう――」

 

 引き金が引かれ、数発の銃弾が放たれた。ベイリーフが急ぎ駆け付けようとするものの、距離が遠くシュラの下に辿り着けない。

 

 リオルも回避した直後で、咄嗟に駆け出すことができなかった。シュラは恐怖のあまりに身動きが取れず、立ち尽くしてしまう。

 

 その場で動けたのは、自分だけだった。真横にいるシュラへと飛び掛かった自分は、彼女を庇うように覆い被さっていく。途中、放たれた銃弾の一発がこちらの背中に直撃すると、自分は絶叫を上げながらシュラと共に地面へと倒れ込んだ。

 

 肉を貫かれ、神経をぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような激痛。想像を絶する痛みに呻き声しか上げられない中、マサクル団構成員は拳銃を構えながらこちらに歩み寄ってくる。

 

「愚かな生き物だ。ポケモンに洗脳された人間の、成れの果てとも言えよう。しかし、案ずるな。今、この手で楽にしてやる」

 

 男が引き金を引く直前、リオルがでんこうせっかで男に接近した。真横から迫る気配に男が向き直る最中にも、リオルは怒りに満ちた決死の突撃でその拳銃を払い落としていく。

 

 それを受けて、脇にいたもう一人の構成員も咄嗟に拳銃を取り出した。狙いをリオルにつけ、発砲する瞬間。事態は更なる想定外を迎えていく。

 

 男が向けていた拳銃が、突如と宙に舞った。同時にして起こったのは、構成員の悲鳴。どこからともなく放たれたエレキボールが男の手に直撃し、その衝撃で拳銃を手放したようだった。

 

 次に現れたのが、青い帽子を被ったピカチュウの姿。それに続くようにぞろぞろと現れた人間の団体が、引き連れたデンチュラやワナイダーと共に大声を上げていく。

 

「警察だ!! 両手を上げて地面に伏せろ!! 抵抗するならば容赦はしない!! 直ちに降伏しろ!!」

 

 この時になって自分は、雑木林に入る前に警察へ通報していたことを思い出した。今も流血して倒れるこちらへとシュラが泣きながら呼び掛けてくる中、薄れてきた意識で皆の無事に安心しながらも、自分はそっと瞼を閉じていく。

 

 最後に見えた視界には、悲痛で表情を歪ませたリオルの姿が映っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。