ポケモンと俺   作:祐。

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ポケモンバトル

 ラミアとメーの二人と共に、校内の食堂に移動した自分とリオル。そこで昼食を注文してテラス席に移ると、ラミアとキラーメ、メーとミズゴロウの面々と食事をした。学食はポケモン専用のポロックやサンドイッチなども販売されており、自分はリオルにハンバーガーを食べさせた。

 

 アップルアカデミーの広大な敷地を一望できる景観。自然と人工物が織り成す生命の活力に、人々とポケモンの営みが広がっている。女性陣に対するリオルの警戒は未だに解けていないが、彼女達のポケモンと共にするランチは楽しめているらしかった。

 

 そんな最中、クロワッサンを頬張るメーがこちらに対して言葉を投げ掛けてきた。

 

「んねー、カンキくんのリオルって強いん?」

 

「強いかどうかって、バトルの話だよね?」

 

「当ったり前じゃん! んで、どうなん?」

 

「どうなんだろう……? 免許を取る時にバトル関連の勉強はしたけれど、リオルを戦わせたことは一回も無いからなぁ」

 

「え!? バトルしたことないの!? 相棒がいるのに、そんなことある!?」

 

 驚愕するメーの傍らで、淡々とした様子でストロベリーアイスを食べていたラミアが会話に参加してくる。

 

「メーさんがバトル好きなだけで、別にポケモンはバトルだけが全てじゃないですから。バトルをしないポケモンだって当然いますよ」

 

「それは、そうだけどさ~?」

 

「でも、アップルアカデミーでポケモントレーナーのお勉強をしていく以上は、ポケモンバトルは避けて通れない道でしょーからねー」

 

「そうだそうだー! てことで、カンキくん。このあとバトルやんね!?」

 

「え!? いきなり!? 待って、俺、リオルがどんな技を覚えているかとか分からないから……」

 

「えー、逆に今まで何してたん? んまぁいいや。じゃあ本格的にバトルする前に、まずはあたしらのバトルでも見とく?」

 

「メーと、ラミアの?」

 

「そ! っつーことでラミア、このあとよろた~ん」

 

「しれっとウチを巻き込んできましたね。まーイイですけど、今日こそリベンジさせてもらいますから」

 

「その意気や良し~。ミズゴロウ、食後の運動でかっ飛ばそ!」

 

「キラーメ、タイプ相性を覆して今日こそ勝ちましょーか」

 

 二人の会話を聞いていた二匹は、とてもやる気に満ちていた。同時にしてリオルも落ち着かない様子を見せていて、なんだか彼女達に混じりたいような、もどかしそうな眼差しを向けていたものだ。

 

 昼食を終えた一同は、ポケモンバトルを行える校庭のフィールドに移動した。ちょうどスペースが空いたらしく、撤退していく他の団体を横目にラミアとメーは対峙する形で位置についた。自分はリオルと共に観戦できるサイド側に回り、そこに用意されていたベンチに腰を掛けていく。

 

 先程までの日常的な一幕から転じて、ラミアとメーの双方から本気の闘志が溢れ出す。両者、指示を出して相棒をフィールドに送り出すと、バトル前の挨拶を交わした後に早速と開戦した。

 

「ミズゴロウ! みずでっぽう!」

 

「キラーメ!! げんしのちから!!」

 

 これまでの会話で聞いたことのなかった、気迫に満ちた彼女達の声。それらに呼応するかの如くミズゴロウとキラーメは戦闘態勢に入り、双方の特殊技がぶつかり合う。

 

 開幕はミズゴロウが優勢した。みずでっぽうがげんしのちからを一方的に打ち破り、キラーメの下へと到達させたからだ。キラーメは余裕を持って攻撃を避けたが、回避の移動中にもミズゴロウが接近して技を繰り出してくる。

 

「いわくだき!」

 

「まもる!!」

 

 その小さな身体からは想像もできない力強さがミズゴロウに宿る。橙色のオーラを纏ったミズゴロウはキラーメに一撃を繰り出すものの、キラーメは前方に透明な絶対防壁を展開してミズゴロウの攻撃を防いだ。

 

 だが、キラーメの行動にメーはニヤりと口角を吊り上げる。

 

「マッドショット!」

 

 まもるの衝撃で身体ごと弾かれたミズゴロウが、その回転を活かして空中で体勢を立て直す。同時にして口から大量の泥を噴き出すと、キラーメは相手の攻撃に反応できずマッドショットが直撃した。

 

 黄土色のエネルギーが周囲に飛び散り、キラーメは泥に(まみ)れながら苦悶の表情を見せていく。あからさまに効いている様子と共に、ラミアが悔しそうな表情を浮かべていった。

 

「まもるを使わせてからチョーバツグンを狙うのズルいです!!」

 

「へーん! バトルにズルいなんて無いも~ん! これが戦術ってもんよ!」

 

「みずでっぽうもバツグンなんですよ!? 明らかにキラーメが不利じゃないですか!!」

 

「その不利を覆してこその勝利でしょ~?」

 

「ムムム……キラーメ、アシッドボム!!」

 

 キラーメが負けじと顔を上げ、紫色のオーラを纏うと同時に毒の球体を放った。だがミズゴロウは攻撃を見切って避けると、すぐさま駆け出して仕掛けていく。

 

「いわくだき!」

 

「げんしのちからで迎え撃ってください!!」

 

 キラーメが特殊な岩を数発と放つものの、ミズゴロウは橙色のオーラを纏いながらそれらを敢え無く打ち砕いてみせた。いわくだきの名に恥じぬ猛進がキラーメ本体に襲い掛かるが、ラミアは次なる策を指示する。

 

「かたくなる!!」

 

 キラーメに光沢が走り、一瞬にして硬化する。だがミズゴロウの攻撃を受け止めるとキラーメはよろめき、弱化した。

 

「いわくだきで防御を下げるから、かたくなるは無意味だかんね!」

 

「じゃー、ウチは何もできないじゃないですか!!」

 

「相手の嫌がることを押し付けるのがバトルってもんよ! みずでっぽう!」

 

「ま、まもる!!」

 

 戦況は常にメーのミズゴロウに傾いていた。キラーメが力を振り絞って防壁を展開するが、みずでっぽうの後に控えていた次なる技が更なる絶望をもたらしていく。

 

「マッドショット!」

 

 ミズゴロウの口から噴出する泥のビームを、キラーメは受け入れざるを得なかった。

 マッドショットが直撃したキラーメは泥に押し退けられ、目を×(バツ)にしながらフィールドに倒れた。ラミアがやり切れない複雑な表情を見せていく一方で、メーはガッツポーズをしながら駆け寄ってくるミズゴロウを抱え込んだ。

 

 なるほど、これがポケモンバトル……。

 自分はポケモントレーナーになってから、初めてポケモンバトルを本格的に観戦した。これまでの人生で感じたことのなかった一種の興奮を覚え、なんだか居ても立っても居られない気持ちが駆られていく。

 

 そして、隣に座っていたリオルもまた同じ感情を抱いていたのかもしれない。彼女はこちらを見上げ、うずうずしていた。

 

「リオルもバトル、やってみる?」

 

 この問い掛けに、リオルはパァッと表情を明るくした。今も前方ではラミアがキラーメをモンスターボールに戻していく最中、メーは勝気な様子でこちらに声を掛けてくる。

 

「お? このままやっちゃう? バトっちゃう?」

 

「リオルがバトルをしたいみたいなんだ。メー、相手してくれないかな?」

 

「もち! 初心者だからって手加減しないかんな~? ポケモントレーナーの洗礼を味わうがいい~」

 

 自分は立ち上がり、一足先にフィールドへ移っていたリオルを追うように移動する。ラミアと入れ替わるそのすれ違い様にも、自分は彼女に「お疲れ様」と声を掛けた。ラミアは淡泊な調子で「どーも」と口にしたが、どこか不服そうな様子から先のバトルで彼女にも思うところがあったのかもしれない。

 

 自分はフィールドに立ち、初めてのポケモンバトルと向かい合う。いざ自分がその舞台に立つと、途端に緊張が巡ってきた。尤も、目の前のリオルは健気に準備体操をしていて気にも留めていない様子だったことから、トレーナーの自分がしっかりしなきゃと思い気を引き締めたものだ。

 

 メーは再びミズゴロウを繰り出し、準備を整えていく。その際にメーから「たいよろ~!」と声を掛けられ、自分も「よろしく!」と返した。挨拶を交えてお互いのポケモンが身構えたその瞬間、バトル未経験の自分でも開戦の瞬間を不思議と悟ったものだった。

 

「ミズゴロウ! みずでっぽう!」

 

 先手はメー。ミズゴロウが青色のオーラを纏うと共に、大量の水をリオルに向かって噴射した。自分はリオルに指示を出そうにも覚えている技が分からなかったので、取り敢えずそれを呼び掛けてみたものだ。

 

「俺のことは気にしなくていいから、リオルの思うように戦ってみて! このバトルを楽しんでいこう!」

 

 リオルはこちらへ振り返り、心なしか頬を赤らめながら明るい表情で頷いた。

 

 と、次の瞬間にも彼女は姿を消した。あまりにも急な出来事すぎて自分の頭が真っ白になっていくその最中、メーが咄嗟にそれを口にする。

 

「でんこうせっか!」

 

 ミズゴロウのみずでっぽうが空を切る中、リオルはミズゴロウの付近に姿を現した。視覚では捉え切れない高速の一撃がミズゴロウに直撃する。

 

 吹き飛ばされたミズゴロウは体勢を立て直す。だが、その間にもリオルはダッシュで一気に距離を詰めると、瞬く間にミズゴロウへと追い付いた。

 

 今まで見てきたリオルとは全く異なる、眼前の闘争に魂を(たぎ)らせた真剣の形相。乙女の一面を覗かせていた健気な姿は何処へ。今目の前にいるリオルは、眼光に闘魂を宿した戦乙女(ヴァルキリー)へと変貌を遂げていた。

 

「ミズゴロウ! いわくだき!」

 

 ミズゴロウが橙色のオーラを纏い、リオルを迎え撃たんとする。だが、ミズゴロウがいわくだきを繰り出した直後、リオルもまた橙色のオーラを纏うと刹那、右手による一閃を食らわせてミズゴロウを吹き飛ばした。

 

 一体、何が起こっているんだ。自分が困惑する最中にもメーが動揺する様子で言葉を口にする。

 

「カウンター!? なら……ミズゴロウ、マッドショット!」

 

 ミズゴロウはすぐさまリオルへと向き直り、黄土色のオーラを纏う泥の噴射を繰り出した。距離的にリオルの回避は間に合わない。自分もさすがに不味いと思ったその時、リオルは右腕を硬化させると共にマッドショットへと突き出し、眼前の攻撃を片腕で受け止めた後にそのままマッドショットを引き裂きながら前進を始めた。この光景を前にして、メーは目を丸くしながら声を上げる。

 

「メタルクローで強引に突破しようってこと!? 無茶苦茶すぎない!?」

 

 リオルのメタルクローは、ミズゴロウのマッドショットを完全に引き裂いた。ミズゴロウの下に到達したリオルが闘魂を宿す眼光で相手を睨み付けていく中、ミズゴロウは焦りと共にトレーナーの次なる指示に従っていく。

 

「さすがにまもる! まもるで様子見!」

 

 メーの指示を受け、ミズゴロウは絶対的な防壁を展開した。接近を許したものの、一時しのぎとして仕切り直しを可能とする防御策。これにメーとミズゴロウが一息を入れたのも束の間、リオルは瞬間的に残像を生み出すや否や拳を突き出し、まもるを展開していたミズゴロウにその攻撃を届かせた。

 

 自分が唖然としながら棒立ちしていく手前、メーは頭を傾げながら焦燥を浮かべた。

 

「フェイント!? まもるのもダメってこと!? 物理はカウンター、防御はフェイント、特殊は強行突破してくるし、先制攻撃技も持っていて、あまりにも隙が無さ過ぎるんだけど……! なら、ミズゴロウ! マッドショットをリオルの足元に撃って!」

 

 メーの次なる戦術が飛び出す。ミズゴロウはマッドショットを地面に振り撒くことでリオルの機動力を削いだ。泥の足場にリオルも動きづらそうな様子こそ見せたものの、その眼差しは揺らぎなく相手へと向けられている。

 

「みずでっぽう!」

 

 リオルへと放たれた水の噴射。足元の泥土が自由を奪い、この攻撃は避けられない。これに対してリオルは右腕を硬化させていくと、次にもメタルクローを足元の地面に打ち付け、その衝撃で宙に浮き上がってからでんこうせっかを繰り出した。

 

 直下の先制攻撃を食らい、ミズゴロウが技を中断する。その隙にリオルは相手の懐へ潜り込むと、両腕を硬化させると共に、でんこうせっかの高速を伴いながらメタルクローの連撃を食らわせた。

 

 小柄な体格から繰り出される怒涛のラッシュ。〆に右腕のアッパーを食らわせると、ミズゴロウは宙を舞った後に敢え無く地面に落下した。

 

 ……戦闘不能。目を×(バツ)にして倒れ込むミズゴロウの脇には、風に吹かれるリオルが凛々しいサマで佇んでいた。

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