ポケモンと俺   作:祐。

50 / 50
リハビリタイマンバトル

 ショウホンシティの病院を出て、アップルアカデミーに復帰してから数日が経過した日のことだった。

 

 昼食終わりにポケモンバトルを行うべく、ラミアとメーの二人と共に校庭のバトルコートを目指していく自分ら。リオルやキラーメ、ミズゴロウもやる気満々な様子で張り切っていると、不意に他所から声を掛けられた。

 

 浪花(なにわ)の調子で喋る野生的な青年。複数の部下を後ろに連れながら、おどけるようにこちらへ言葉を口にしてくる。

 

「よぉ! カンキぃ! カンキやないかぁ!」

 

「オキクルミ!」

 

 今もこちらへと歩み寄るオキクルミの傍には、相棒のシビルドンが浮遊していた。知った仲である自分らは気楽な面持ちで向かい合っていく最中、オキクルミはケラケラとした笑みを浮かべながら喋り出してきたものだ。

 

「見たでぇ! ネット記事! オタクとリオルの嬢ちゃん、立派に映っとったわぁ! せやけど、銃撃を受けたっちゅうのが衝撃的やったわ。ほんで、どこ撃たれたん? ワシ、ハジキの生傷を見てみたくてしゃあないわ!」

 

「いやいや……見せるとしても撃たれたのは背中だから、ここじゃあ服脱げないよ」

 

「せやったら、今度二人で銭湯にでも行こ! 積もる話もあるさかい、男同士で語らおうや」

 

「是非とも」

 

 自分が前向きに受け答えをしていく中で、ふとオキクルミは眼光をギラつかせながら話題を変えてくる。

 

「こうして顔ぉ合わせるのが久しく感じるわ。ワシのおらん場所で過激派組織ともカチ合って、命懸けの修羅場も潜り抜けた。ほんま、大した男やで。こないな漢気を見せ付けられたらワシ、もっとオタクのファンになってまうわ。やけど、入院が続いてその身体……ナマっとるんちゃうか? 次はショウホンジムに挑むんやろ? ポケモンのコンディションが整ってても、トレーナーが不調やったらポケモンの全力引き出せんやろ。んなことになったら、ポケモンが可哀想や。せっかくの大一番で、実力を発揮できないんやからな」

 

 オキクルミは八重歯を剥き出しにしながらこちらに近付いてきた。ギラギラに輝かせた眼光をかっぴらいて、今にも目の前の獲物に齧り付かんとする気迫を纏いながら、彼は挑発するような眼差しを向けて言葉を続けてくる。

 

「ツラ、貸してもらうで。カンキの腕が鈍っとらんか、ワシが見定めたる」

 

「むしろ、願ったり叶ったりだよ。新しいエースでオキクルミ相手にどこまでやれるか、試してみたかったんだ」

 

 

 

 校庭のバトルコートに移動すると、自分はオキクルミと対峙するよう配置についた。

 

 審判は銀嶺会の不良生徒。オキクルミはクイックボールを取り出しながら、向かい側にいるこちらへと言葉を投げ掛けてくる。

 

「ルールは一対一のガチタイマン!! 交代も道具も無し!! 先に相手のポケモンを倒した方が勝ちや!! 前の時と同じルールさかい、これ以上の説明は要らんやろ」

 

 そう言い、オキクルミは期待による高揚感で野生的な笑みを浮かべてきた。

 

「カンキとのタイマン勝負はうずうずしてしゃあない! 今もボールん中におるワシのポケモンが、我慢できずに早く出せぇと訴え掛けとる! ワシも同じ気持ちやでぇ! のぉ、カンキぃ。ワレとのバトルは、ワシの闘志を強く呼び覚ますんや。もう収まらんで、この昂りは。――全力で来ぃや!!! ほんで、ワシを納得させんかい!!!」

 

 オキクルミは勢いよくクイックボールを投げ付け、ポケモンを繰り出した。

 

 登場したのは、ルクシオだ。コリンクの進化系で、前回の個体が成長した姿であることが伺える。

 

 成長を続けているのは自分だけではない。自分がその一歩を踏みしめている間にも、周囲のライバル達もまた前進を続けているのだ。自分はそれを強く実感しながらモンスターボールを取り出すと、ショウホンジムでエースの大役を任せる相棒を繰り出した。

 

 現れたヨーギラスは、赤いマントを靡かせながら隻眼を前方に向けていく。一方で、ルクシオのいかくは彼にとって若干のプレッシャーとなったようだ。僅かな萎縮は攻撃力にも影響が出てくるだろう。

 

 互いのポケモンが出揃うと、審判の不良は双方を確認した後に開戦を合図した。

 先手はオキクルミ。不利対面であるにも関わらず彼は果敢な調子でルクシオに命令を出していく。

 

「ルクシオ! とおぼえ! ガンガン行くための下ごしらえや!」

 

「ならば、ヨーギラス! りゅうのまい!」

 

 最初の一手は、お互いに自己強化に努めた。ヨーギラスは赤黒いオーラを纏って攻撃性と俊敏性を高め、ルクシオは己の士気を高める一声で強気を高めていく。

 

 それからルクシオは身構えると、オキクルミの指示と共に威勢よく攻撃を仕掛け始めた。

 

「ルクシオ! くさわけ!」

 

「ヨーギラス! バークアウト!」

 

 くさタイプのわざエネルギーを足元に放ちながら接近を試みるルクシオに対して、迎撃のバークアウトを繰り出すヨーギラス。だが、くさわけによる素早さ上昇でルクシオは速度を上げると、バークアウトを飛び越える形で跳躍しながらヨーギラスとの距離を詰めてきた。

 

「あなをほる!」

 

 咄嗟の判断にヨーギラスは応え、あなをほることでルクシオの突撃を回避する。くさわけは低下力でありながらも相性的に超抜群であるため、油断はできない。

 

 地中に移動したヨーギラスは、すぐさまルクシオの真下から飛び出した。しかしオキクルミ、正攻法は決して通さない。

 

「ルクシオ! みがわりや!」

 

 ヨーギラスが突撃したルクシオは、宙に浮き上がるや否やみるみると人形に変貌していく。みがわりを繰り出すことでその場から引き下がったルクシオは、高めた攻撃と素早さでヨーギラスに攻め立てる。

 

「こおりのキバや!」

 

 完璧なプランだった。ルクシオはみがわりを攻撃したヨーギラスに向けてこおりのキバを直撃させた。痛手を食らったヨーギラスは回転しながら吹き飛ぶものの、なんとか着地をしてから反撃へと転じていく。

 

「がんせきふうじ!」

 

「ルクシオ! スパークでがんせきふうじを破壊しながら接近や!」

 

 ヨーギラスががんせきふうじを繰り出していくが、放たれた岩石に向かってルクシオはスパークを纏いながら飛び出すと、降り掛かるそれらを破壊しながらヨーギラスに向かって一直線に突き進んでくる。

 

 その勢いのまま、オキクルミは攻めの一手を命令した。

 

「こおりのキバ!」

 

「ヨーギラス! てっぺき!」

 

 ルクシオがこおりのキバを伴って噛み付いてくるものの、ヨーギラスは鋼鉄を纏うことで相手の攻撃を完全に弾き返した。ヨーギラスも弱点を突かれて多少のダメージは食らったが、ルクシオもまた鋼の守りを突破できずに止む無く引き下がる。

 

 オキクルミは俄然と眼光をかっぴらき、目前のバトルにのめり込んでいた。口角を吊り上げた野性的な笑みを浮かべて一層と前のめりになる彼は、戦況を見極める冷静さと共に次なる一手を繰り出してくる。

 

「ルクシオ! 焦らんでええ! じっくり行くで! まずはほえるでヨーギラスを遠のけるんや!」

 

 オキクルミの指示に従い、ルクシオはほえるを行うことでヨーギラスを遥か後方へ吹き飛ばす。無傷であるそれを受けたヨーギラスが砂埃を舞い上げながら押し退けられていく手前、距離を空けたルクシオは再び自己強化へと努め始めた。

 

「とおぼえや! どんどんテンション上げてくでぇ!!」

 

「ヨーギラス! あなをほるでルクシオに接近するんだ!」

 

 こちらの命令にヨーギラスも即座と行動に移していく。地中の移動にルクシオが警戒を強めながら様子を伺っていく中、次にも地面を突き破るよう、相手の背後から“それ”が飛び出してきた。

 

「ルクシオ! みがわりや!」

 

 オキクルミの命令に従い、ルクシオは再びみがわりを繰り出すことで後方に引き下がる。だが、そうして引き下がったルクシオの足元が膨れ上がると、直後にもヨーギラスが飛び出してきて攻撃が直撃した。

 

 一体、何が起こったのか。オキクルミが咄嗟に先程の“それ”を見遣る。

 ルクシオの背後から飛び出してきたのは、がんせきふうじの岩だった。ヨーギラスが出てきたと勘違いさせるブラフに、オキクルミは瞳孔をかっぴらいた満面の笑みで言葉を口にする。

 

「カンキのやつ、がんせきふうじの岩をヨーギラスに見立ててワシらの行動を釣りよった!!! これぞまさしく、みがわりってか!!? ほんま、オタクら最高やなッ!!!」

 

 吹き飛ばされたルクシオが地面に落ち、体勢を立て直していく。この隙を逃さないためにも自分はヨーギラスへと猛攻を指示した。

 

「ヨーギラス! がんせきふうじ!」

 

「ルクシオ! 正念場や! 気張るで! くさわけで攻撃を回避しながら直進や!」

 

 ヨーギラスのがんせきふうじが降り掛かる中、ルクシオは素早さ上昇を伴いながら前進を始める。がんせきふうじを次々と避けながら確実に距離を詰めてくる相手を前にして、自分もまたヨーギラスに迎撃を命令した。

 

「ヨーギラス! とっしん!」

 

 ヨーギラスのとっしんが、迫るルクシオのくさわけとかち合った。両者が衝撃で後方に吹っ飛ばされていく最中、自分はそこで生じた僅かな隙に勝機を見出していく。

 

「ヨーギラス! りゅうのまい!」

 

 ヨーギラスは超抜群の攻撃を受けて苦悶の表情を見せながら、赤黒いオーラを纏って勝負を決めにいく。オキクルミもまた決着を予感すると、期待に胸を膨らませた野生的な笑みと共にルクシオへと命令を下していった。

 

「漢気勝負やで! これに打ち勝った者が、勝負を制する! ルクシオ! スパークや!」

 

 数度のくさわけで俊敏性が飛躍的に上昇したルクシオ。その気合いを込めた雄叫びと共に一直線と駆け出すと、自分もまたヨーギラスへと命令を繰り出した。

 

「がんせきふうじ!!」

 

 ヨーギラスは頭上に無数の岩を浮かび上がらせる。そこから、りゅうのまいで威力が上がった攻撃を一発ずつ発出することで、前進を続けるルクシオの往く手を遮った。

 

 一発ずつと発出されるがんせきふうじを、ルクシオは力を込めながら打ち砕いていく。しかし、りゅうのまいで強化されたがんせきふうじは先のように容易く破壊することができなかったため、ルクシオは折を見て脇に逸れることで軌道から逃れようとした。

 

 だが、そこに来てヨーギラスは頭上の岩を一気に真下へ落とした。ヨーギラスの姿はがんせきふうじで遮られ、様子が伺えない。

 

 ルクシオは、岩で身を隠した状態からのあなをほるに警戒して足を止めた。

 

 その瞬間だった――

 

「バークアウト!!」

 

 ヨーギラスのバークアウトによって、一つの岩がルクシオ目掛けて押し出された。疑似的に発出された岩は、警戒によって足を止めていたルクシオに命中する。

 

 真正面から岩を食らって後ずさりしたルクシオは、すぐに前方へと意識を向けた。だが、そこにはヨーギラスの姿が無く……。

 

「あなをほる!!」

 

 膨れ上がる足元。ルクシオが異変に気付いた直後にも、飛び出してきたヨーギラスの突撃を受けて相手は宙を舞うように吹っ飛んだ。

 

 着地するヨーギラスが、確信と共に佇んでいく。少ししてルクシオがバトルコートに落下すると、相手は戦闘不能となって力無く転がっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ポケモントレーナーの日常?(作者:ポケモン全般(今はas)やってる人)(原作:ポケットモンスター)

ポケモンの世界に生まれた転生者が旅に出る話▼(世界線がゲームかアニポケかも分からないしエンジョイクソボケなので何をやらかすか分からない)▼アニポケ時空になりました。▼タグは随時追加予定です。▼アンケを投げています。▼基本最速10票を採用していますが見逃しなどあり複数が10票越えしていた場合は1番多い票数の案を採用する予定です。よろしければ適当でもええのでポチ…


総合評価:5184/評価:8.56/連載:13話/更新日時:2026年07月26日(日) 07:38 小説情報

ポケモン語の理解はぶっちゃけデバフ(作者:ポケモン全般(今はas)やってる人)(原作:ポケットモンスター)

転生をしたらポケモンの世界でポケモンの言葉を理解できてしまった引きこもり(ポケモントレーナーになるかも?)の話。別の作品を書いてるのですがアニポケなのでこっちはゲームベースで書きたいと思い勢いに任せました。あと途中でギャグコメになると思います。▼タグは随時追加予定です。▼基本アンケで先を決めようと思っているのでできればポチってくれると嬉しいです。基本最速10…


総合評価:4313/評価:8.24/連載:5話/更新日時:2026年07月10日(金) 21:25 小説情報

主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録(作者:時緒)(原作:ポケットモンスター)

死んだら異世界転生した。転生先はカントー地方マサラタウン。性別は女。▼とはいえスーパーマサラ人ほどの身体能力は無いし、ポケモンの言葉が分かるわけでもないし、超能力者でも高貴な一族の末裔でも勇者の生まれ変わりでもない。何より肝心のポケモン知識がお粗末すぎて、転生ものでお約束の俺TUEEE展開なんてものは夢のまた夢。▼せめて主人公達と同い年だったら特別感も出ると…


総合評価:1659/評価:8.53/連載:25話/更新日時:2026年07月26日(日) 07:00 小説情報

俺を倒して旅に出ろと言った親父が強すぎる(作者:山雅将暉)(原作:ポケットモンスター)

 思い上がりまくった主人公ホウセンが父親にわからせられ、悔しさのあまり「親父に勝つまで旅に出ない」と宣言してしまう。果たしてホウセンは父親に勝って旅に出れるのか?


総合評価:1269/評価:7.87/連載:17話/更新日時:2026年07月09日(木) 17:42 小説情報

転生サトシの旅路(作者:ナノブ)(原作:ポケットモンスター)

これは、アニポケのサトシが一生を終えた記憶と、アニポケを見ていた人の記憶両方を持った転生者サトシが、波導と呼ばれるチートを駆使して行く旅路を記したもの。▼サトシ至上主義が書くポケモン小説です。▼作者はポケモンライト勢であり、にわかです。


総合評価:3905/評価:9.17/連載:36話/更新日時:2026年06月27日(土) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>