ポケモンと俺   作:祐。

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課外授業

「俺、ジム巡りをしようと思ってるんだ」

 

 クラス内で何気無く切り出した話題。隣の席であるラミアが淡泊な視線を向けてくる中で、彼女の机に腰を掛けていたメーが身を乗り出しながら反応を示してきた。

 

「マ!? え、じゃあ一緒にジム巡りやんね!? てかやろうよ! 行こ行こ!」

 

「あ、ありがとう。ただ、通学とジム巡りは両立できるのかなってちょっと疑問に感じてて」

 

「別にジム巡りは“課外授業”の時にやればよくない?」

 

「課外授業……?」

 

 自分が首を傾げていくと、話を聞いていたラミアが淡々と説明を始めた。

 

「授業時間を使って、学園の外へ冒険に出る課題ですよー。テーマは『自分探し』で、ポケモントレーナーとして必要な体力、知識、経験を実際の冒険で積み重ねていく実習ですねー。『何処へ行き、誰と出会い、何を成すのか』。学園からの補助を受けながら、各々が理想と掲げるポケモントレーナー像を目指すコトができる自由な課題ですよ」

 

「そういえば、課外授業の存在を完全に忘れてたよ……。課外授業っていつから始まるのかな?」

 

「課外授業はですねー、えーと」

 

 ラミアがスケジュール表を開き、確認していく。自分とメーもそれを覗き込むようにしていく中で、ラミアは淡泊な調子でセリフを口にしたものだった。

 

「…………明日から、ですねー」

 

 

 

 快晴の天気を迎えた翌日の朝。全校生徒が集められた校庭で形式上の講話が進行していく。一通りのプログラムが終わると、各担任は受け持っているクラスの生徒達に呼び掛けを行ってきた。

 

 アラマキもまた、片手にクリップボードを持ちながら陽気な調子で声高々と言葉を掛けてくる。

 

「さて、今日は待ちに待った課外授業の日だ! テーマは『自分探し』! それぞれが思い浮かべるポケモントレーナー像に一歩でも近付くべく、実際にシナノ地方を冒険して、この広い世界を肌身で感じ取ってくれ! 基本的に自由行動だが、くれぐれも怪我や病気、そしてポケモンに気を付けるように! 詳しいルールは各自で確認してくれ! 自分で調べることも勉強の内だぜ! あとは、指定の日時までには学園に戻ってくるように! スケジュール管理もトレーナーの仕事だからな! 話はそんなモンかね。ワクワクが疼いているところを呼び止めちまってすまねェな! じゃァ、ここからはお待ちかねの冒険タイムだ! 数日後に再会した諸君らの成長を、オレちゃんは楽しみにしてるぜ! んじゃ、また数日後! いってらっしゃい!」

 

 アラマキの言葉が終わると、クラスのポケモントレーナーと相棒のポケモン達が一斉に踵を返して出発した。自分も足元にいるリオルと目を合わせ、赤い瞳を輝かせる彼女と共に歩き出す。

 

 その途中、すぐにもラミアとキラーメ、メーとミズゴロウの団体と合流した。全員が長期の旅に備えたバッグを携える中で、メーがデコレーションしたスマホロトムを宙に留まらせながら喋り出してくる。

 

「来た来た来た来た! 課外授業、ホンットに楽しみだったんだよね~! これがあるから、アップルアカデミーに入ったようなもんだし! 行きたいトコは沢山あるけどさ~、やっぱりまずは、このメンツでご飯食べに行かね? そこでなんか食べながらさ、今回の課外授業は何処に行くか決めようぜ~」

 

 自分とラミアが肯定していくと、一同はナガノシティに繰り出した。山脈が連なる雄大な景色を背景にして、近未来的に発達した街中を歩き進めていく。

 

 道中、メーがオススメするお洒落なカフェに立ち寄った。テラス席を選び、注文をしながら適当に駄弁る自分達。その間、キラーメとミズゴロウは仲睦まじげにじゃれ合い、リオルはこちらの膝に乗っかることでそこに収まっていた。

 

 オーダーしたサンドイッチを食べながら、三人のスマホロトムを宙に並べて今回の冒険について話し合った。その進行に一切もの滞りはなく、円滑な会話ですぐにも冒険の方向性が定まった。というのも、ラミアは基本的に自分とメーについていくと主張しており、自分とメーはジム巡りをしたいという目的が既に決まっていたからだ。

 

 ただ、今回の課外授業ではジムに挑まず、下見だけをしようという話に落ち着いた。現状の実力では、1つ目のジムバッジですら入手困難だという結論に至ったからだ。では、何処のジムから巡るかという話題になった時、メーはそのようなことを切り出してくる。

 

「はいはい! じゃあアタシ、“ハクバビレッジ”に行きたい!」

 

「ハクバビレッジ?」

 

 自分が聞き返していく傍らで、ラミアがササッとスマホロトムを操作して地図を出していく。

 

 シナノ地方最大の巨大都市ナガノシティ。ハクバビレッジはその西側に隣接する地域であり、常に雪が降り積もっている連峰だ。年中とスキーが行える雪原が特徴的である他に、麓のリゾート地は雄大な山脈の景色を間近で拝める避暑地として人気を博している。ハクバビレッジ自体の標高が高く、環境は非常に過酷。一歩でもリゾート地からはみ出れば、猛吹雪や歴戦の野生ポケモンに襲われること必至の場所だ。

 

 ラミアはハクバビレッジの詳細を画面に出しながら、メーへと訊ね掛ける。

 

「どーしてハクバビレッジなんですか?? 確かにハクバビレッジにはジムがありますけど、ジムの下見だけなら別に、ココから一番近いジョウダシティでもイイじゃないですか」

 

「えー、だってジョウダシティのジムリーダーってアタシらの担任っしょ? なんか気まずくね?」

 

「そこを気にしてどーするんですか」

 

「てのは半分冗談。ハクバビレッジの環境は、アタシとミズゴロウのレベルアップにちょうどいいと思うんだよね~」

 

「と、言いますと??」

 

「過酷な環境で、過酷な特訓! これが強くなる最短ルートじゃね?」

 

「メーさんのコトですから、安直な理由で納得しました」

 

「なんかバカにされてる気がするのは気のせいかな~?」

 

「どーでしょーねー。カンキさんはどーですか?? わざわざハクバビレッジに行きたい理由とかあります??」

 

 ラミアとメーが振り向いてきたので、自分は少しだけ考えてから返答した。

 

「俺としても、一つの経験としてハクバビレッジまで行ってみたい気持ちはあるかな。純粋に未知の世界だから、個人的に気になる。せっかくの冒険なんだから、今までできなかったことをやってみたい。あと、ハクバビレッジの環境で育った野生ポケモンを仲間にできたらとても心強いと思えるし、リゾート地としても有名な場所だから観光地の活力を浴びてみたいな。俺個人だけじゃなくて、リオルにも広い世界を見て、知ってもらいたい。俺達が出会ったジョウダシティや学園があるナガノシティだけに留まらず、シナノ地方を巡る冒険で一緒にレベルアップしていきたいんだ」

 

 自分が膝上のリオルを抱き締めると、彼女はビクッとして頬を赤らめながら硬直した。ドキドキと胸打つ心拍がこちらにも響いてくる。

 

 理由に聞き入っていたラミアとメーは、「お~」と語尾の長い相槌を打った。それからラミアが淡泊に喋り出してくる。

 

「やっぱりカンキさんの考え方は、単純な考え方のメーさんとは違いますねー」

 

「あ、アタシだって大体はそう思ってたし!? ただ、アタシが言いたかったことをカンキくんが完璧に言語化してくれただけで!」

 

「ハイハイ、そーですかー。じゃー、そーいうコトですから今回の課外授業はハクバビレッジに向かってみましょーか」

 

 ラミアの言葉に、自分とメーが賛同した。旅先が決まり、シナノ地方を巡る大冒険が幕を開ける。

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