ポケモンと俺   作:祐。

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ハクバビレッジ

 ナガノシティ発の新幹線に乗ること数時間。到着した駅から更にバスで移動し、時刻は正午を過ぎる。

 

 陽が傾き始めた昼下がり。ようやくと辿り着いた集落は雪景色に囲まれていた。遥々と遠くに感じた連峰は目と鼻の先に存在しており、黄色を基調とした建物が並んでいる。踏みしめた雪には足跡が刻まれ、見上げると雲が近い天上と、海のように深い青色の空、吹き抜ける粉雪が肌に触れて溶けていく。

 

 地面は舗装されておらず、目立った建造物も観光向けの施設がほとんどだ。ホテルやロープウェイ、展望台や気球などが見受けられる景観は、最低限に抑えられた人工物によって大自然との共生を想起させた。

 

 故に、アクセスが非常に不便なのが玉に(きず)か。自分は凝り固まった両肩を(ほぐ)すように背伸びして、到着した目的地”ハクバビレッジ”の空気を深呼吸した。鼻から通り、肺の中をリフレッシュする清らかな空気が疲れを癒す。同じく旅を共にしたラミアとメーもハクバビレッジの光景に圧倒され、感嘆の声を出していたものだ。

 

 観光地とされているだけに、他地方からの観光客と思われる人間やポケモン達の姿も伺えた。異文化に触れ、世界の広さを実感していくその最中、ラミアとメーはそのような会話を交わしていく。

 

「とりま、予約したホテルに行って荷物下ろそうよ~。それから観光して~、美味しいもの食べて~、映える景色を写真に撮って~、優雅な夜のひと時を過ごしながら良い夢を見よ~!」

 

「過酷な環境で過酷な特訓をする、強くなる最短ルートは何処に行ったんですか」

 

「まぁまぁ、細かい事を気にしたってしょうがないじゃん? 臨機応変に切り替えていく。冒険ってそういうもんじゃない?」

 

「メーさんの場合は、臨機応変じゃなくて気分が変わりやすいだけじゃないですか。まー、今日は長旅で疲れも溜まってますから、温泉に入るなりして身体を休めた方が効率の面で理に適ってるとは思いますけど」

 

「でしょ~? てなわけで、早くホテルに行こ~。ほら、カンキくんも早く早く!」

 

 自分達は道中で予約したホテルに向かい、チェックインする。ラミアとメーは同室で、自分だけは1人部屋だ。そこでリオルを出し、バッグを下ろした後に外で彼女達と合流した。二人もキラーメとミズゴロウを出していて、一同は昼下がりのハクバビレッジを軽く散策する。

 

 今も粉雪がちらつく空間の中、自分達は目的地であるポケモンジムへと赴いた。広大な敷地の中央に佇むその建物は吹き抜けのスタジアムになっており、現在もバトルが行われているのか、激しいわざエネルギーのぶつかり合いが聞こえてくる。施設の出入りは自由であり、いつでも観戦することが可能だ。ジムバトルの様子は常に配信されており、スマホロトムを使用した動画サイトで観覧することができる。

 

 せっかくなので、ポケモンジムへ立ち寄ることにした。団体でポケモンジムに入り、エントランスから観客席に繋がる通路を辿って進んでいく。吹き抜けの競技場に出てくると、バトルによる地鳴りを体感しながら適当な席に座り、眼前で行われている一戦を観戦したものだった。

 

 ジムリーダーと思われる男性が、一匹のポケモンを繰り出していく。そのポケモンは鎧のような鋼のボディと翼を持ち、シャープな造形で佇まいが凛々しい。間もなくしてバトルが始まると、隣で観戦しているメーがバトルに目を向けながらこちらへ話し掛けてきた。

 

「ハクバビレッジのジムリーダーは“ひこうタイプ”のプロフェッショナルらしいんだよね。今もフィールドに出ているエアームドは切り札みたいで、このポケモンジムの番人みたいなポジションなんだって」

 

「ひこうタイプか……。リオルとの相性は不利だな」

 

「リオルだけじゃ厳しいだろうね~。ここを攻略するなら、もう一匹は欲しいかも」

 

「メーはどう? ここは攻略できそう?」

 

「アタシもミズゴロウだけじゃ大変かも。一つ目と二つ目のジムバッジは使用ポケモンが二匹までって決められているから、まずは頭数を揃えないとだね~」

 

「メーなら、どんなポケモンを捕まえる?」

 

「そりゃあ、ここを攻略するならひこうタイプに強いポケモンっしょ。例えば~……」

 

 メーが悩んでいると、彼女を挟んだ向こうにいるラミアが口を開いてくる。

 

「ひこうタイプと相性がイイのは、でんきタイプといわタイプ、あとはこおりタイプじゃないですか?? 特にハクバビレッジは積雪がある山岳地帯なので、いわタイプやこおりタイプのポケモンが多く生息していると思いますけど」

 

「ラミア、ナイス~! そうなると~、アタシが捕まえるポケモンはいわタイプかこおりタイプが入ったみずタイプになるかな~」

 

「どーしてそこにみずタイプが入ってくるんですか」

 

「えー、だってみずタイプが好きなんだも~ん。手持ちは全員みずタイプにするって決めてっから!」

 

「タイプが偏ると、バランスがワルくなりますよ??」

 

「そこは、こう、強さで補うんじゃん?」

 

「まずその強さが足りてないじゃないですか」

 

「グサッ! ……こ、これからもっと強くなるの!」

 

 彼女達が会話をしている脇で、自分はふとした疑問を口にしていく。

 

「でも、エアームドってはがねタイプも入っているよね? だとしたら、いわタイプやこおりタイプってむしろ不利になるのでは?」

 

「げ! じゃあ消去法ででんきタイプになるってこと? でんきタイプのポケモン、ハクバビレッジにいるのかな~……」

 

「あのー、別にハクバビレッジで捕まえるコトに拘る必要は無いと思いますけど??」

 

 自分とメーは、無言で「それもそうだ」と納得する。あまりにも息ピッタリの頷きを見たラミアは、淡泊な様相のまま眉をひそめて呆れたものだった。

 

 ポケモンジムの一戦を見終え、施設から出てきた一同。結果はジムリーダーの勝利となり、エアームドの強さが際立っていた。この事実は決して他人事なんかではなく、ジム巡りをする以上は、自分もあの強敵と向き合う覚悟と努力が必要になることを思い知らされた。

 

 下見と視察を終えて、時刻は夕方に。自分達はポケモンを連れてハクバビレッジの中を歩き回り、見かけた食事処に入ることで腹を満たしていく。それから近くの展望台に立ち寄ると、連峰が織り成す雄大な景色を背にして集合写真を撮影した。

 

 日暮れの黄昏が地平線で光り輝く一枚。冒険の思い出に自分は満足しながら連峰の景色へと振り返ると、ふと視界の下の方で蠢く無数の影に意識が向いたものだった。

 

 人里から離れた森林地帯。人ならざる俊敏性で、雪原の上を(まば)らに移動する荒々しい集団。おそらくは野生のポケモンだが、先頭を往くその一匹の身に着けていた赤いマントがやけに印象に残ったのだ。

 

 ……誰かに着けてもらったアクセサリー? でも見るからに野生だし、じゃああれは一体? ホテルに戻った自分は、リオルと二人で過ごすひと時の中でその光景を何度も脳裏に()ぎらせていた。

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