「…………い」
─────長い長い、悪趣味な夢を見ていた気がする。だが、夢の内容はうっすら思い出せるのに、夢を見る前の記憶が飛んでいた。此処は、何処だろうか。耳から聞こえる声が気になり、■■■は重たい瞼を開ける前に周囲を分析する。
❤︎ ぶんせき
*鋭い声が鳴り響く。
*冷たい感覚が自分の頬から感じる。
*自分は何者だったのか
一体何処に居たのか思い出せない。
*あなたは考えてみた。
*……あなたは理解ができなかった。
「先生、起きてください」
「先生!!!」
思わずこの物語の主人公である、クリスは飛び起きた。目の前には、大きな胸に黒い長髪、そして青い目が印象的な女の人が自分の方を静かに睨み付けていた。頭には、特徴的な光輪が浮かんでいる。
「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは」
クリスは深く首を傾げる。自分は、そんなに寝ていたのだろうか。だが、それよりも此処は何処だろうか。
❤︎ おしゃべり
*あなたは「帰りたい」と伝えようとした……。
「はい……? 記憶が、ない……?」
「何故ここに居るのかも分からないし、自分が本当に、私達の先生なのかも分からない……?」
クリスは丁寧に説明した。自分がこの世界に来た覚えは無いこと。早く帰らなければならないこと。先生と呼ばれる存在は、恐らく自分では無いということ。
「……少々お待ちください。」
彼女はそう答えると、静かに部屋の奥へと入っていった。クリスは、静かに辺りを見渡しながら彼女を待つ。
──────数分後──────
クリスが、トリエルのバタースコッチパイの美味しさを思い出している最中、彼女が戻ってきた。だが、彼女の目には少しだけ困惑の表情が浮かび上がっていた。
「……確認いたしました。確かに、クリスさんは明確に言えば先生では有りませんでした。」
思った通りでクリスは胸を撫で下ろす。自分はまだ未成年だ。先生と呼ばれるには、後10年ぐらい生きてからになるだろう。それに、何を教えればいいのか分からなかったから本当に助かった。クリスは安心して、彼女に帰り方を訪ねようとした。
……が、その時。
「ですが……」
彼女は少しだけ言いずらそうに、そして目を少しだけ背けながら続けた。
「問題……と言うよりは、不明点が2つあります。」
クリスはその言葉を聞いて、首を傾げて考える。思い当たるのは、『自分の世界に帰る方法が不明』という事だろうか。自分だって何処から来たのか分からないし、この場所の外に出たからと言って、本当に帰れるかどうかも不明だからだ。
「1つが、クリスさんが元の世界に帰る方法が……申し訳ありませんが不明だということです。」
想像通り。こうなると、やはりある程度はこの世界に滞在して元の世界に帰る方法を模索するのが一番だろうか。でも、先程この少女は『2つ』と言った。一体何があるのだろうか。お金が無いとか、それとも実は契約が〜……だろうか?
「そしてもう1つが……」
この時、クリスはこの世界の闇に気が付かなかった。いや、気付けなかった。この物語が、何かどす黒い何かに呑まれている事。本来のシナリオとは違った道を辿っていることに。
「恐らくこの世界に先生は、
クリスとこの世界の、新たな物語が今始まろうとしていた。