「恐らくこの世界に先生は、
クリスはこの言葉を聞いた瞬間、頭の中に多くの疑問符が浮かび上がった。先生が、二人?
「1人目は、……申し訳ありませんが、何度も確認してもクリスさんでした。貴方が、この世界の先生である事はどう足掻いても変わりないようです」
クリスはその言葉を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。普段は冷静に見える顔に、初めて亀裂が入ったように眉間が深く寄る。
「ですが、もう1人の先生が存在していたようです」
彼女は言いずらそうに、まるで無かった記憶を思い出すような表情で話を続ける。
「確認したところ……私も記憶に有りませんが、シッテムの箱が有りませんでした。恐らく、クリスさんよりも前に先生が持っていったのかと。そして、本来の先生と呼ばれる存在はアビドス高等学校に派遣中との事です」
どうやら、話を聞くにその本来の「先生」という存在はシャーレ本部にあまり連絡を寄越さず、自由気ままにその学校に向かっていったらしい。恐らく、何かそこに有るのか、それとも呼ばれたから行ったのか、彼には分からない。
クリスが考察している際に、彼女は静かに続けた。
「本来、先生は1人しか存在しません。これは、あまり危険性は無いように見えますが、かなり非常事態です」
彼女がずっと、先生が二人いると言ってから焦りの表情が見える。相当焦るほどの非常事態なのだろう。クリスは、焦らせてしまった原因は恐らく自分にもあるし、どうにか彼女を安心させる、落ち着かせる為に自分に出来る事は無いか考えた。
❤︎おしゃべり
*あなたは「そんなに焦らなくてもいいよ」と伝えた。
*……ほんの一瞬、彼女の表情が和らいだ気がした。
「……お気遣いありがとうございます。ですが、クリス先生は恐らくもっと大変ですし、私達も今非常事態に陥っています」
「それと……想定外の事が多く、名乗り遅れましたが、私の名前は七神リンです。リンと呼んでいただいても構いません」
「少しの間ですが、よろしくお願いしますね。もう1人の先生……いいえ、〝クリス先生〟」
❤︎おしゃべり
*あなたは「なら、リンちゃんだね」と伝えた。
*あなたも「よろしく」を返した。
一瞬、彼女は丸く目を見開くと何処か懐かしそうな、少し寂しそうな顔をしながら呟く。
「……貴方
ジリリリリリリリリリリン!!!
その時、突然彼女のスマートフォンの通知音が鳴る。クリスは少し驚いたが、彼女の方を見て少しだけ何が起きたかを把握する。彼女は割とこの世界では偉い人なんだろうな、とこの世界を知らない彼の中でも理解出来たから。偉い人の電話が鳴る事なんて当たり前。アズゴアも昔そうだったから。
「少し失礼します」
彼女は早足でそのまま一旦離れていく。クリスは、この呆れるほど綺麗な青空を見ながら考えた。この世界のもう1人の先生、シッテムの箱、アビドス.よく分からないワードが飛び交っていた。だが、この世界に帰る頃には多分どうでも良くなっている。何故ならそんなに長居をするつもりは無いからだ。
そんなことを考えていると、彼女が大きく声を張り上げたせいで電話の内容が少しだけ、聞こえてしまった。
「……ません! …………がい……です……か!!!」
「それに、其方……先生…………!!!」
……そんなに声を張り上げてどうしたのだろう。クリスは少しだけ興味が出てきて、こっそり彼女が居るであろう場所へと向かう。そこで聞いたのは、まるで人の悪意や汚い部分が露見した結果、起こったであろう嫌な予感がする言葉だった。
「黒見セリカが、攫われたなんて!!!」