キヴォトスでひっそりと生きる少年   作:オーバジン

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飲食店を営んでいるということはまぁ、あの人ですよね。
先生は女性でいくことになりました。アンケートありがとうございました。


ご飯と言えば。

 ジャー……カチャ、カチャ……

 

 ブラックマーケットの奥の方にぽつんと立っていて、あまり知られていない飲食店で食器を洗う音と食器を置く音がテンポよく響く。その音は一人の少年によって奏でられている。

 

 その少年は整った顔立ち、少し長めの銀髪で気怠そうな雰囲気を醸し出している。本人談やサオリ、カイザー理事、彼をよく知るブラックマーケットの住人たちはそこまで雰囲気通りではないらしい。

 

「……今日はお客さんはいつもより少ないかな?……いや、いつも少ないか。」

 

 少年、篝火コウはいつものように席の多く空いた店内を見渡してそう呟く。今日はアルバイトのサオリもいないためコウは暇そうにしている。

 

「……なんとなくだけど、今日はあの人が来るような気がするな……一応準備しておこうかな。」

 

 そうしてコウは料理の下準備をしていく。着々と料理の準備をしていく。

 

「~~♪」

 

 コウは上機嫌に鼻歌を歌いながら来るかどうかも分からない人物のために準備をしている。来るかも分からない人物のために作っているのだ。はたから見れば滑稽だろうが、キヴォトスで男性がこれをしているとなると話が変わってくる、性的……いや、愛らしいと見られるだろう。

 

 ガララ……

 

「いらっしゃいませ、あ、ハルナさん。」「どうも、コウさん。」

 

 店に入ってきたのはブラックマーケットに似つかない、お嬢様のような気品を漂わせる綺麗な銀髪の少女、そしてキヴォトスで有名なテロリスト集団美食研究会の会長の黒舘ハルナだ。

 

「今日も来たんだね、まぁ予想はしていたけどね」「コウさんは私の事を良く分かっているようですね。」

 

「まぁまぁ、このまま立って喋っても疲れちゃうでしょ、座って座って。」

 

コウは料理を作りながらハルナにそういう。

 

「では、失礼しますね。」「そんなにかしこまらなくてもいいよ、ハルナさんはもう常連さんじゃないかな?」

 

「そうですか、ですがこれが私のいつもなので。」「そうなんだ、無理には言わないよ。」

 

 そうしてハルナはキッチンの目の前のカウンター席に座りコウはお冷を出して二人は話を弾ませていく。

 

「ではコウさん、今日もいつものでお願いしますね。」「OK、いつものね下準備は出来てるからさほど時間はかからないと思うよ。」

 

「もう下準備を済ませていたのですね。」「ハルナさんが来た時も言ったけど予想していたからね。」

 

 ハルナの言っている『いつもの』というのは『おまかせ』という意味だ、彼女がここに来たときは必ずと言っていいほど、これを注文する。

 

「今日は、何を作ってくれるのでしょうか。」「内緒だよ、と言いたいけどすぐに分かっちゃうかな。」

 

 そうして、料理を作っていく。

 

「なるほど、唐揚げですか。」「大正解」

 

 下味をつけた鶏肉をキッチンペーパーで表面のつけだれを取り除き片栗粉を付けていく、そしてその鶏肉を皮を上にして油のタップリと入り加熱した鍋に投入する。

 

 そしてそのまま3分ほど揚げて、一度取り出し少し休ませて、再び油に投入して1分ほど揚げる、そして唐揚げは完成、そしてお皿に出来立ての唐揚げとキャベツの千切りを盛り付ける。そして後はちょうど炊けた出来立ての白ご飯とお味噌汁をそれぞれお椀によそう。

 

 後はいくつかの小皿に、塩、柚子コショウ、レモン、などの調味料を準備する。

 

「まぁ、今日はシンプルに唐揚げ定食だよ。」

 

 コウはハルナが前に脂っぽいものが好きだと言っていたのを覚えていたため唐揚げを作ったのだ、量は少し少な目、彼女は美食を追い求め偶には店を爆破するほど料理に熱量を注いでいるが、意外と小食なのだ、だから少し少な目にしたのだ。

 

「それではいただきます。」

 

 そうしてハルナは唐揚げ定食を食べ始める。

 

 ザクッ…… 

 

「これは、美味しいですわね」「そう言ってもらえると嬉しいね。」

 

「下味の醤油がよく効いていて、水分をしっかり蓄えているからかジューシーで、衣が霜柱のようにザクッとした食感、そして二度揚げをしていることによって柔らかく仕上がっていますね。」

 

「この唐揚げ、下準備さえしてれば誰でも結構簡単に作れるからおすすめだよ。」

 

「そうなのですか?もしよければ教えてもらってもよろしいですか?」「うーん……まぁ、ハルナさんだしいいかな。」

 

 そうしてコウは調理方法と材料とコツを話していく。話を聞いているハルナはなるほど、と言った感じで聞いていく。

 

「思ったよりも簡単なのですね……これならジュリさんでも……いや、油を使う時点でダメですね、そもそも料理という枠組みがもう駄目そうですね。」

 

(知らない人がディスられてる……)

 

 少し話してハルナは料理を食べるのに集中して、コウは使用した調理器具を洗っていく。店内に食器を洗う音と唐揚げを食べる音が響く。

 

「ふぅ……ごちそうさまでした。」「はい、お粗末様。」

 

 量が少なかったためかすぐに食べ終わったようだ。そうして少し雑談に入る。

 

「ハルナさんはたしか美食研究会っていう部活に入ってるんだよね?」「そうですね。」

 

「いつも一人で来てるけど他の部員の人たちとは来ないの?」

 

「そうですね、コウさんはここが何処か分かります?」「?僕のお店だね。」

 

「いや、合ってるのですが、そうではなくて……」「?」

 

「このお店が立ってるのはどこでしょうか?」「ブラックマーケットだね、それがどうしたの?」

 

「もしかして分からないのですか?」「うん」

 

「ブラックマーケットですよ?」「うん、そうだね、それがどうしたの?」

 

「いや、どうしたの?ではなくてですね、ブラックマーケットですよ?危険なのですよ?」「そうなの?」

 

 コウは小さい頃からブラックマーケットで生きてきたのに加え、周りの大人は優しい者が多く、それに加えコウの母親が築いた信頼や交流のおかげで脅威から守られているため、コウはブラックマーケットの事を脅威と感じていないのだ。

 

「みんないい人だからそんなに危険じゃないと思うんだけど……」「……恐らくそれはコウさんだからですね。」

 

 ハルナもよくコウの店に来るから周りの大人たちにもよく覚えられたのだ。そしてコウのことについても聞いているのだ。コウが男性ということもあり誘拐や、性的に襲われることを周りの大人たちが防いでいるのだ。

 

 ハルナも初めはその大人たちに警戒されていたが、この店に訪れ続け、コウに何もしないというしてこなかったというのと、料理を純粋に楽しんでいるという様子がコウの保護者的大人たちから信頼を勝ち取ったのだ。

 

 ハルナ以外にも信頼を勝ち取っている人物は何人かいる、例えばバイトのサオリが言い例だろう。

 

「まぁ、私たちからしたら十分危険なので他の部員たちは遠慮してるのです。」「そうなんだ。」

 

「他人事ですね。」「まぁ、あんまり実感が無いしね。」

 

 それに周りの大人が目を光らせているのはコウにヘイローが無いから、というのも理由の一つなのだろう。ハルナもキヴォトスでヘイローの無い人間はコウの他にもう一人、先生しかいない。身体が脆いのだ、弾一発で致命傷になるからだ。

 

「まぁそういう理由で私一人でここに来ているのです。」「なるほど、そうなんだね。」

 

「でもいつかは他の部員の人たちにも来てほしいな。」「それはどうしてですか?」

 

「だってハルナさんの友達にも会ってみたいから。」

 

「ハルナさんは優しいし、いい人だから、ハルナさんの友達にもお世話になってますって言っておきたいんだ。」

 

「そ、そうですか……///ありがとうございます……///」

 

 そうして会話をするのだった。

 


 

 食事を終えたハルナはゲヘナ帰るために帰路についている。

 

(コウさん、騙すようで悪いですが私が一人で来ているのは決して危険だからではないのです。)

 

 ハルナ達美食研究会は危険を被るというより危険をもたらす側である。なので実力的には問題ないはずだ。

 

(私は、あまり此処の事を知られたくありません。)

 

(美食を追及するものとしてはこれは失格なのでしょう。)

 

(しかし、もう少しだけあなたを独り占めさせてください。)

 

 ハルナはにこやかな笑みを浮かべていたのだった。




ハルナがこのお店を知ったきっかけは、風紀委員会から逃げた時にたまたまコウのお店を見つけたという経緯です。

先生は?

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