レイドボスのお気に入り、神ゲーに行く   作:伊夜 灯

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始めまして、伊夜灯と申します。というわけで初投稿です


プロローグ1

「天誅ーーーーーーー!!!!」

 

「今更ログイン天誅なんて食らうか!天誅!」

 

「"腰抜け百姓"お前の武器よこせぇぇぇ!天誅!」

 

「黙れ農村行ってもらって来い!天誅!」

 

殺意と憎悪の悲鳴が上がる和風の屋敷。ここは『辻斬り・狂想曲オンライン』、通称「幕末」数多のVRゲームの中でもトップを争うほどに対人戦のやばいゲームである。

 

プレイヤーは維新陣営、幕府陣営に分かれて戦う一見協力型ゲームに見えるが、その正体はプレイヤー、NPC問わず「斬れば斬るほどハイスコア」という殺伐とした殺し合いの起こるゲーム。

 

初心者狩り、不意打ち、裏切り、謀殺、騙し討ち、袋叩き、復讐、報復、制裁とあらゆる方法で殺し合うこのゲームはまさに魔境。そんなゲームでPN(プレイヤーネーム)「うめつき」こと梅野月佐は今日も殺意の刃を延々と捌く。

 

「俺何も持ってないしスコアも低いのになんで狙ってくるんだよお前ら!?」

 

「サンドバッグ」

 

「試し切り」

 

「練習相手」

 

「いくら何でもストレートすぎるだろ!、おい!」

 

四方八方からの刀と銃弾を愛用の武器『物干し竿』を振り回して弾き飛ばす。ちなみにこの物干し竿、特段特殊な武器というわけではなくただの洗濯物を干す用の棒である。しかしこの環境で使われるためか異様に耐久力が高い。それこそこのように銃弾や刀に対して使っても全然傷がつかないくらいには。

 

しかし耐久が高い一方で攻撃力はそこまでなく、ダメージを与えることには向かないためキルスコアを稼ぐこのゲームでは決して人気とは言えない。まぁ俺自身スコア度外視の基本不殺(・・)のスタイルでやっている以上攻撃力がない方が都合がいいのだが。

 

しかしこうも狙われ続けると結局じわじわと削られるのは目に見えているため一旦脱出に切り替える。建物内での移動で邪魔になりそうな長物(物干し竿)を閉まって屋敷を駆け抜けようとした瞬間、空いた襖から見えた着火された花火樽(・・・)

 

「ちょっ、嘘だろっ⋯⋯!?」

 

直後、響き渡る轟音と閃光。屋敷から吹き飛ばされ、熱に軽く炙られながらも転がって通りまで出る。屋敷が炎上するこの爆発の規模、ランカーの『紅蓮寧土(グレネイド)』フラバンの爆撃かと考えるが、フラバンは花火を飛ばす。じゃあ誰だ⋯⋯と考える。

 

「お、釣れた釣れたぁ!天誅いただきまぁす!」

 

「そういうことか、よ⋯⋯!」

 

背後から振り下ろされる刀を瞬時に出した物干し竿で薙ぎ払い、距離を取る。爆発で大量キルを狙いつつの逃れた奴らをハイエナ⋯⋯こんな外道戦法を取るのはうめつきの知る幕末プレイヤーの中では数人しかいない。

 

「やっぱお前かサンラク」

 

「うわ、釣れたのお前だったのかようめつき⋯⋯」

 

「そんな嫌な顔しなくても良くない?」

 

「残念だが戦っても旨味のないやつとはやらん!さらば!」

 

そう言い残して道を駆けていくサンラク。いくら相手が不殺プレイヤーだとはいえ背を向けて走っていくのは隙しかないとは思うが、攻撃されないと信じているのだろう。

 

「清々しいほどに逃げるじゃん⋯⋯、ここまで相手されないと寂しいけどなぁ」

 

「じゃあ俺とやるかい?」

 

後ろから聞こえてきた声に嫌な予感を感じながら、うめつきが振り返るとそこには大体ランキング2位のプレイヤー、当千がいた。互いに獲物を構えて油断せずお互いの一挙一投足を見逃すまいと警戒する。

 

「今日こそその首もらう!天誅!」

 

「まだ死にたくないんで遠慮しますよ!」

 

振り下ろされる刀を逸らし、当千の腹を物干し竿で突き返す。そのまま後ろに下がった当千を物干し竿のリーチの長さを活かして反撃されないように間合いを保って応戦する。

 

「相変わらず厄介だなぁそれ!」

 

「負けたくないというか死にたくないんで」

 

「にしたって守りに入り過ぎだと思うよ?たまには斬りに来てもいいのに」

 

「まぁいつか考えときます、よ!」

 

思いきり物干し竿を振り払ったうめつきだったが、それを跳んで回避した当千が物干し竿を足場にして突っ込んで行く。足場として使用された物干し竿は迫りくる当千の足で地面に固定され、動かせない。

 

回避は間に合うか怪しい、物干し竿は動かせない、カウンターするにしても腕の一本は持っていかれること必至、ここで腕を持っていかれるのは後々厳しい、ならどうするか。その答えはあることにあるが⋯⋯。迫る当千を見れば出してこいよと言わんばかりの顔。確かに出さなきゃ死だが、この人の思惑に乗せられる感じなのすごい腹立つ。

 

「もらった、天誅!」

 

「『薄千』、行きます」

 

真正面の当千を新しく出した武器で横殴りにする。そのまま壁に突っ込んだ当千を横目にうめつきは物干し竿を収納する。そして新しく構えるのは大鎌『薄千』(はくせん)。特徴はその名のように限りなく薄い刃。この武器を使うときのみ、うめつきは不殺を止め、ただの一般幕末プレイヤーになる。

 

「それ出したってことは、そういうことだね?」

 

「そうですね、不殺は一旦なしです。」

 

天が斬れと言っている。天が討てと言っている。大鎌を持った瞬間から聞こえてくる声に身を任せ、うめつきと当千は同時に地を蹴った。




大鎌『薄千』
もとは千枚漬け用の刃を大鎌に加工したもの。武器の特性で絶対に刃が折れることはない。今までそれを知らずに武器破壊を狙ったプレイヤーを片っ端から三枚おろしにしている
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