「さて、今日はオールでやるか」
練習会の後、家に帰って諸々を済ませてからシャンフロにログインした俺は決意の言葉を誰になく告げる。いや、ホントはオールはいけないって分かってるんですけど、武器も早く使いたいし夜にしか沸かないモンスターもいるらしいからね、夏休みだし、別にいいよね、うん。
自分にそう言い聞かせて正当化しつつ、それでも湧いてくる罪悪感に目を背けて宿屋を出る。そのまま武器屋に向かえば俺の顔を見たおっちゃんが合計4本の棍と大鎌を渡してくれた。
「ありがとー。これって耐久値削れたらまた来ればいいのか?」
「あぁ!持ってくればしっかり直してやるよ!」
「分かりました、じゃあまた来ます」
「いや、ちょっと待ってくれねぇか?久々に棍使うやつなんて見たから話したいことがあってよぉ」
「話したいこと……?コツとかですか?」
話したいこと、ねぇ。ただの助言か、厄介か。それとも特殊クエストか……。シャンフロはクエスト発生が異様に難解だったり偶然に頼らないといけないものもあるらしい。棍使いにしか起こらないクエストならちょっと受けてみたいものではあるが。
「いぃや、鍛冶屋に伝わる戯言なんだがよぉ、『人から選ばれない音は忘却と意思に魅入られる』ってな」
「棍が人気ないって言いたいんですかそれ」
「つーかなんだろうな……。結局選ばれないってなると棍くらいしかねぇんだよな」
「いやまぁそりゃあねぇ」
幕末でも使ってるやつ俺しかいなかったし、シャンフロでもせカンディルで持っている人見たことがない。そりゃあ剣とかハンマーみたいな明確なダメージに繋がる武器じゃないからなぁ。モンスター相手だとどうしても選ばれないんだろう。俺も普通の頭だったら使ってなかっただろうし。
「ま、これを話せるやつが来てくれてよかったぜ。ご先祖様も浮かばれるだろうさ」
「そんないないんか棍使い」
「少なくとも俺が生まれてから初めて見た」
「……じゃあもう行きますね。ちょっとこれ以上話すと俺が打ちのめされそうなので」
「そうだなぁ……、あ、武器の耐久が減ったら直してやっからうち持ってこいよー」
「分かりましたありがとうございまーす!」
武器屋を出て四駆八駆の沼荒野へと向かう。さっさとあのカエルたちを大量に狩って資金調達と防具新調してやる⋯⋯と考えてはいたものの、沼荒野についた俺を出迎えたのはまさかの光景だった。
「ギャギャギャギャギャ!!」
「ギュギャ」
「ゲギャゲギャゲギャ!!」
「昼と夜で出現するモンスター変わるタイプのエリアだったんかい⋯⋯」
昼とは違った薄暗い沼荒野と、赤い帽子を被ったゴブリンたち。いわゆるレッドキャップを思い切りと呼ばれるモンスターだろう。みかけは赤い帽子を被っていること以外に普通のゴブリンと差異はないが、武器が錆びた剣や磨製石器の石斧など全体的にグレードアップしている。こちらも新しい棍をインベントリから出して装備。
湖沼の鉄棍
澱み、鈍い輝きを放つ棍。
沼荒野の良質な鉱石から作られたそれは戦士の長年の友となるだろう。
この棍の輝きが見れるかは使い手次第。
鉱石を砕いた時、耐久値の減少が半分になる。
「「薙ぎ払い」!」
とりあえずの薙ぎ払い。スキルと重さを載せて振るった一撃はレッドキャップをしっかりと吹き飛ばす。しかし、ふっとばされた割にはダメージがないのがわかると嫌な笑みを浮かべて突っ込んでくる。そりゃダメージないなら突っ込んでくるよな。その突撃を棍で淡々と捌いていく。
「仲間どんだけ呼ぶ気だよおい⋯⋯」
捌くのはいいが、どんどん仲間を呼ばれている。こいつら体力削れたら仲間呼ぶタイプかよ。気づかなかったとはいえやばい、今見えるだけで20は超えてる。このままもっと増えていくとさばききれなくなるか⋯⋯?いや。人外魔境の幕末で過ごしてきた身、こんなやつら20だって50だって捌けるわ。あいつらにくらべたら足元にすらいない!
「なめんなレッドキャップ共⋯⋯」
フェイントや連携を絡めてくるレッドキャップの攻撃はもう届かない。数十のレッドキャップの攻撃も棍がスルスルと捌き、逆に捌いたことによって蓄積していくダメージが限界を迎え、一匹、また一匹とポリゴンとなって消えていく。
「さぁさぁいつまでお前らは耐えられるかな⋯⋯」
流石に迂闊に攻撃ができないのかと悟ったのか、レッドキャップたちの攻撃が止まる。別に俺はそれを黙って見過ごすつもりはなく、むしろ吹き飛ばしてやろうと薙ぎ払いを発動させようと一歩、踏み出したところで突如レッドキャップたちがポリゴンとなって爆散した。
「は、ぁ⋯⋯」
俺は何もしてないし、レッドキャップが自爆スキルを持っているとも考えられない。なのに爆散した。つまり、それはバグでもなく恐ろしく理不尽な第三者がここに来ているということであり⋯⋯。
『グルルルル⋯⋯』
背筋が凍りつく。なにか飢えるような、そして何かを抑えているような恐ろしい獣の声。それはまるで
『ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」に遭遇しました。』
多くのプレイヤーに対しては絶望と羨望の対象にしかならないユニークモンスター。しかし
『グルルルル⋯⋯』
さて、棍が折られないといいけど。
幕末のおかしいところは延々と戦い続けるためにいつからか勝ちたいではなく戦いたいと思えるようになるところなんじゃないかなって思ってます。
やはりうめつきもどこか戦闘狂ではあります。しかしそこまでではなく、圧倒的強者と感じた人にだけです。そして正々堂々を好むので闇討ちなどはしません。逃げても真っ向勝負を仕掛けます
ちなみに今回の書き方がおかしい理由は一回書き上げたのをログアウトされてデータが吹っ飛んだからです。見にくかったら申し訳ありません。感想ください。