「先手いただきぃ!!」
初手、ゴブリンの手斧をリュカオーンに向けて投擲。とりあえずはこれでリュカオーンの硬さを測る……と思ったが、当たった瞬間にポリゴンとなって消えた。えぇ、手斧じゃダメージはおろか耐久全部持ってかれるレベルかぁ……。
『グルルルル……』
お返しとばかりの前脚の振り下ろし。それに対してタップステップで回避……。ほんとにデカイ敵が質量で押しつぶしてくるの攻撃として強すぎるよなぁ。……これパリィしたらどうなるんだろうな?そのまま何も起きずに潰されるのかそれとも逸れるのか。うわ気になるぅ……。ユニークモンスターとかいうバケモノ相手に検証することではないかもしれないけど気になるぅ……。
「ま、やるだけいいでしょ」
早速振り下ろさされるリュカオーンの前脚。これ死ぬよなぁ直撃したら。フラバンとかレイドボスの攻撃に似たものを感じる。振り下ろされる脚に対して受け止めるべく棍を掲げる。次の瞬間、衝撃が頭から足へと抜ける。そして踏み潰さんと容赦なくかけられる重み。今にも膝が砕けそうになるその重みを必死に堪え、受け流すために棍を動かす。無理矢理にでも棍を回せ、踏みつけられた瞬間に即死じゃないならなんとかなる⋯⋯!!
「ぃよいしょお⋯⋯!!」
『グル?』
できたわ。ついでにその勢いで一撃。ほぼ渾身の力で一撃入れたのに全然反応がない。レベルや装備の問題もあるだろうけど、これほどとは。受け流したことを疑問に思ったリュカオーンが前脚を連続で振り下ろしてくるが、それに合わせてタップステップと受け流し、ついでに一撃。およそ脚を叩いているとは思えないような硬い音を響かせて戦闘は続く。あれ、ユニークモンスターってこれで終わりかもしかして?
「そんなわけないよなぁ!?」
踏み潰すのが無理だと感じたのか突然切り替わり振るわれる前脚の横振り。まずい遅れた⋯⋯!すぐに棍を迫る前脚に向けるが受け流そうとしたのを読んだのか、掬い上げられて空中へ。
「こいつちょっと頭良すぎねーかぁ……?」
『グル』
モンスターにしては受け流しを見た時の対応が早すぎる。これもしかしてユニークモンスターってステータスだけじゃなくてそういうところも加味してのユニークモンスターなのか……!?そして地上を見ると落ちてくる餌を待ちきれずに大口を開けて飛び掛ってくるリュカオーン。俺は空中機動用のスキルなんて持っているわけがないからほぼ詰みだなぁ⋯⋯。とでも?
「空中だって殺しにくるやつは来るんだよ⋯⋯!」
インベントリに仕舞い込んだ傭兵の棍を空中で放り、無理矢理足場として跳躍。リュカオーンの跳躍がおそらく飲み込むつもりはなかったのか思ったよりも低かったので、棍を踏んだ方の足、左足を噛みちぎられるだけで済んだ。そのままリュカオーンと交差して転がるように着地。
「いったいなぁ足一本⋯⋯」
でも左足一本ですんだのなら安い。でも流石に戦闘継続はきついと感じる。一応踏み潰されるのは嫌なので膝をついて棍を構えるが、おそらくそのまま噛みつきだの横振りだので体ごとHPを持っていかれるだろう。
「お前の顔覚えたからな!絶いつか絶対仕留めてやんよ!」
悔しいが負け惜しみしか吐けない。でもまあ、こいつを目標にしてやるのも悪くないな。大口を開けたリュカオーンに何もできないことを心底悔しく思いながら、俺の意識は闇へと沈むのだった⋯⋯。
「いやどこだここ」
いつまで立ってもダメージを食らう気配がしないので、目を開けてみれば眼の前は真っ暗な闇。闇と認識できるのはなぜかと後ろを向けばそこには誰もいない寂しい客席とまだ何も始まる様子のない空のステージがあり、ステージの照明が俺の背中を照らしてたっぽい。
ステージで何があるのか、始まる前なのか終わったあとなのか、なぜここにこんな物があるのか、まずここはどこなのか。なぜここに来たのか。ものすごく考えたいことはあるけども多分席に座らないと話が進まないんだろうな。何が出てくるのか楽しみでもあるし、ちょっと座ってみるとするか。
『これから紡がれるは忘れ去られた者の奏でた旋律』
『英雄として名を馳せるもいつか、それよりも名を馳せた英雄の影に沈んだ』
『しかし彼の奏でた旋律は歴史に残らずとも事実として残る』
『そして今宵、この時、再びその旋律は音として奏でられる』
『それは、同じく忘れられたものに問うために、そして忘れられたものを継ぐために』
『われは⋯⋯問ふ。なにゆえ
『願はくばわれと今一度⋯⋯手合わせ願おう。主もわれも、語り合うには剣戟でなければ』
「えぇ⋯⋯思いっきり幕末みたいなやつなんだけど」
なにもないステージは何も変わらず、虚空から声が響いてきたかと思えばよくわからん展開になったんだが。そして口調からして明らかに
「おいおい、いいの?そんなの⋯⋯」
様相はもはや俺が延々と相手にしてきた幕末志士のオリジナル。シャンフロの世界観に合わないような和服と腰に下げた二振りの刀。どこか
「これ絶対に足一本ないのに相手にできねーだろ」
『なんだ、主足がないのか⋯⋯。足ぐらい生やせ、ほら』
「生やせるわけ無いだろうがっ!?って⋯⋯」
なんかしらんけど足見たら生えてる。元からなくなってなかったみたいに元通りになってる。なぜかは分からないが、考える理由もない。眼の前の強者と殺り会える、それだけで十分だ。いつの間にかインベントリに仕舞われた湖沼の鉄棍を取り出す。
『いざ、参る』
「こっちのセリフですよ⋯⋯!」
ランカーからすれば延々と棍で粘るうめつきも十分バケモノです。
どうせならリュカオーンじゃないやつに会わせたかったんですよね。
秋津さんだけ仲間はずれってのも嫌じゃないですか
やりたいシチュもあるのでね